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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第94話「真・王女攻略⑥」

「テトラフィーア様~~!聞いてください!!旦那様がいじめるんですー」

「夫婦喧嘩はタヌキも食わないと、古来より言い伝えられていますわね。フランベルジュ流の恋の駆け引きをお教えしますので、まずは現状を話して下さいまし」



 誰が旦那様だよ。

 そんな寝ぼけた言葉が大魔王の耳に入った日にゃ、魂に刻まれるレベルでぐるぐるげ……あれ、やばくね?


 とっても今更だが……、姫様やじいちゃんにテトラフィーア大臣は俺の婚約者だって伝えた気がしない。

 というより、じいちゃんは平然とし、ロイが青ざめている時点でヤッチマッタのが確定している。


 テトラフィーア大臣が俺達の言動を盗聴していたのは、恐らく、余計な事を言って大魔王策謀を頓挫させない為だ。

 ……で、ポンコツ姫様が俺を誘惑し始めたと。

 やっべぇ。他人の人生を案じるより、俺の身を案じた方が良さそうだぞ。



「ロイ、頼む。どうやれば切り抜けられるのか、一緒に考えてくれ」

「そうだな。テトラフィーア様を敵に回すのは絶対に避けたい事態だ」

「ユニクルフィン、フィートフィルシア卿、何の話をしておるのだ?」



 俺とロイが秘密会談を始めると、オールドディーンが混じってきた。

 大臣としての先見の明を発揮し、事態の深刻さを察知したらしい。


 なお、テトラフィーア大臣に話を聞いて貰っているポンコツ姫は、調子に乗って俺を含めた男への暴言を吐きまくっている。

 だからこれは、俺達が答えを見つけてポンコツ姫を止めるのが早いか、テトラフィーア大臣が大魔王化するのが早いかの勝負だ。



「テトラフィーア姫がレジェンダリア大臣だというのは把握しておる。だが、直接電話を掛けてくるほどの仲だとは知らなんだ」

「あぁ、なんていうのかな。ちょっと深い仲というか」


「深い仲だと?ふん、あ奴はこの大陸の経済を支配しておるのだぞ。政治利用されておるのではないか?」

「ちょっと待て。経済を支配しておるのはブルファム王国、ひいては、大臣であるじいちゃんだって話だったぞ?」


「儂は維持をしているだけだ。確かに、ブルファム王国は大陸経済の中核を担っておった。だが、思うがままにコントロールなどできん」

「どういう事だ?ブルファム王国が中核なら、誰かが実権を握っているだろ」


「現状の経済理念はブルファム王国が作った。だが、育ち過ぎたが故に状態が完結し、コントロールの振れ幅が無くなってしまっておる。下手に動かし失敗すればシステムが破綻し、数百万人が餓死するのだ」



 大魔王陛下が脱却を目指した経済状態は、ブルファム王国の管理下にあるというものだった。

 そしてその流れは、ブルファム王国にすら止められないほどに巨大化し、それを壊してしまうと未曾有の大災害となってしまうらしい。


 正直、「しっかり管理しておけよ、ブルファム王国ッ!!」って言いたいが、それを担ってきたのは俺の一族である訳で。

 文句を言うと自分の首が締まるので、さっと話を擦り変えとこう。



「で、何でテトラフィーア大臣が経済を支配してるって事になるんだ?人の手でコントロール出来ないんだろ?」

「ノウリとギョウフを飲み込んだフランベルジュは、米、麦、トウモロコシの大陸全土貿易供給量の5割3分を占めておる。これらの管理はテトラフィーア大臣が行っておるのだ」


「主食の実権を握られてると。それにしても貿易量の半分を超えてるってのは凄いな」

「主食であるからこそ、それぞれ自国内で生産しておるからだ。そして、貿易される米の行き場とは……、国をまたいで移動する冒険者だ」


「そうか。それぞれの国で食べる分を生産しているのなら、市民が貿易品を買う必要はないもんな。それに、別の国に米を運ぶのだって冒険者だ」

「そして、テトラフィーア大臣は流通を止め、冒険者を飢えさせる事が出来る。腕っ節が強く、魔法を使える戦闘職が一斉に略奪を始めればどうなる?」


「民は飢え、米の生産量が減っていく……?」

「そうだ。国家間の貿易為替で優位に立ったブルファムに対し、テトラフィーア大臣は物流を担う冒険者の方を支配したのだ」



 なるほどな。流石は趣味でサーカスを買収しようとした大魔王大臣。

 本気を出した結果、世界物流をその手に納めていると。

 ……そして、次に狙っている獲物は、英雄見習いユニクルフィン。



「ふん。奴は見目麗しいが、腹の中は石炭よりも黒かろう。ほどほどの付き合いにしておくのだぞ」

「じいちゃん。ここで、重要なお知らせがあるんだ」


「重要なお知らせだと?」

「テトラフィーア大臣は、俺の二人目の婚約者だ」


「…………。」



 ……。

 …………。

 ………………じいちゃん、絶句。



「……なに?では、アレが儂の孫になるという事か?」

「たぶん、そうなるかな」


「そうか。儂もそろそろ歳だ。引退を考える時期が来たのやも知れぬ」



 そう言って、オールドディーンは天を仰いだ。

 その顔は達観していて、すっごく遠い目をしている。



「ロイ、じいちゃんが諦めた顔してるんだけど、そんなにヤバい状況なのか?」

「何を馬鹿な事を言っているんだ、ユニフ。相手はテトラフィーア大臣だぞ。当たり前だ」


「俺は経済とか政治とか良く分からん。だから、冒険者風に教えてくれ」

「次元の壁を突き破って巨大ゲロ鳥が現れるよりも絶望的だ」


「そうか。滅茶苦茶ヤバいな」



 何がヤバいって、そんな大魔王大臣にポンコツ姫様が喧嘩を売りまくっているって事だ。

 ポンコツ姫様の蛮行はエスカレートし、俺を含めた男への妬みと化している。

 同じような境遇から成り上がったテトラフィーア大臣にしてみれば、不快にしかならない訳で……。



「男性なんてロクなもんじゃないですよね!?ユニフィン様も、私の完璧なプロポーションを見て「いらん。」って信じられないんですけど!!バカなんですか!?」



 よし、強制的に電話を奪い取ろう。

 俺がそう決意した瞬間、電話の先のテトラフィーア大臣が静かな声を発した。



「そうですわねー。男性の中には、女性への配慮が欠けている方がいらっしゃいますわね」


「ですよねー!」

「そうそう。落葉落花に正論を言ってしまうなんて、とても配慮に欠けますわ」


「……あ?」



 俺には、相手の声を聞いて感情を読み取る特殊能力は無い。

 だが、今聞こえたテトラフィーア大臣の声に込められた感情は、手に取るように分かった。


 ……滅茶苦茶、殺意こもってるぅぅぅぅぅ!!



「え?落葉落花……?誰が……?」

「貴方ですわよ、アルファフォート様」


「え、私……?」

「頭の中に詰まっているお花畑すら枯れ果てて、見るに堪えないドライフラワーと化していますわ」


「……は?え、ふざ……」

「ふざけてなどおりませんわー。貴女の価値は、せいぜい穴を開けたこんにゃく程度。そんなに目立ちたいなら、日配食品コーナーでセール品として売り出してはいかがですの?」



 日配食品コーナーとは、食品加工業者から買って来た加工品を売る場所だ。

 その性質上、賞味期限が短く、夕方になるとセール品として売り出される事も多い。

 つまり、テトラフィーア大臣は「貴方は賞味期限切れが近いので、ひと山いくらで売りに出した方がいいですよ」という、とんでもない暴言を叩きつけた訳だ。

 うーん。大魔王


 それにしても……、穴を開けたこんにゃくって何だろうな?



「テトラフィーア大臣がブチギレてるのは分かるんだが……、穴を開けたこんにゃくってなんだろうな?ロイ」

「……食品に対する冒涜とだけ言っておこう」



 明確な言及を避けたロイの顔を見る限り、ロクな事じゃなさそう。

 ポンコツ姫様は顔を真っ赤に染めて激怒してるし、じいちゃんは手で顔を覆った。



「ちょっと大魔王の手助けで上手く行ったからと調子に乗ってッ!!数百年もの間、ウチの下僕だったくせにッ!!」

「積年の呪縛に打ち勝ったからこそ、私のフランベルジュは大国になったんですの。そして、ブルファム王国の統治は貴方の功績では無く、親の七光に過ぎません」


「だから、それは男尊女卑が強いせいだって言ってるでしょッ!!私だって環境さえ良ければ国の一つや二つ手に入れてますよッ!!」

「そうですの?それで、貴方はどのような努力を行い、いつ男尊女卑に妨害されたんですの?」


「全てですよ!!私は生まれた時には既に、男尊女卑に人生を妨害されているんですからッ!!」

「生まれた時?それはおかしい話ですわね」


「何がッ!?ブルファムの女性は、特に王女である私は、男尊女卑の一番の被害者なんですよッ!!」

「でも、同じ姫である貴方の姉や妹達は、それぞれの人生を見据えて行動していますわ」


「えっ?」



 此処でテトラフィーア大臣が切り込んだ。

 唐突に姉妹の話題を振り、こんにゃく姫が疑問符を浮かべている。


 ……手羽先姉妹にこんにゃく姫か。

 煮物にしたら美味そうだなー。



「あら?ご存じありませんの?貴方の姉であるテロル様はレジェンダリアで自由な生活を送っていますわ」

「それは……、きょうとうせんせー?でしたっけ?どうせ、ロクでもない仕事でしょ」


「あぁ、東塔から出た事が無いお姫様は学校というものをご存じない様で。その程度の知識で国王?片腹痛いですわー」

「また馬鹿にしてッ……!国外に逃げた姉などどうでもいいんですよッ!!私は、私と妹達の未来を案じ――」


「その妹達も、貴方よりも建設的に人生設計していますわ。そう、末妹であるヴェルサラスクとシャトーガンマですらね」

「何の話ですか!?あの子たちは私と同じ環境に居るんですよ!!外部との接触は、せいぜいロイと遊ぶくらいです!!」


「外部の有力者たるフィートフィルシア領主と関係を深め、成人後に妾として迎え入れて貰う。幼いながらに立派な戦略ですわね」



 手羽先姉妹に狙われていたと知り、ロイが絶句している。

 付き合いが浅い俺からしてみれば、純粋に懐いていたようにも見えるが……、一瞬で態度を変化させていたしな。

 可能性は十分にある気もする。



「あの子たちが、そんな……」

「思い当たる節が有りませんの?ロイと婚約したー!などと言ってたりしませんか?」


「それは……」

「他の姉妹たちも同様に、東塔に出入りしている僅かな人員の伝手を使って生き延びようとしていますわね」


「ぐ、ぐぅぅ……。でも、私は王位継承権を持つ姫の中で一番年上なんです!!ぽっと出のロイさえいなければ……」

「あぁ、それも間違っていますわ。もし、ブルファム姫の中から国王を選ぶような事態になったとしても、その席に座るのはメルテッサですもの」


「メルテッサが?確かにあの子は自立し、社会経験を積んでいますが……。本の卸売業に何ができると言うのです?」

「確かに本を売ってはいますわね。人を破滅に導く聖典『不定形福音書ザ・ヴァリアブルブック』。指導聖母・悪性マリグナンシィとしての彼女は、私に引けを取らない悪女でしてよ」


「なんですって!?」

「なんだとッ!?」



 あ、遠い目で天井を見つめていたじいちゃんが復活した。

 姫の中に指導聖母が紛れ込んでいるのが衝撃的だったみたいだ。


 それはそうとして……、確か、指導聖母・悪性ってワルトが捕まえた指導聖母だよな?

 それが姫様だったって事は、ワルトは姫に接触していたって事になる。

 あれ……?もしかしてワルトは、この塔の中に居るのか?


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