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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第92話「真・王女攻略④」

「はぁーーーー?」



 真剣なロイの告白を出迎えたのは、アルファフォート姫のやるせない溜め息だ。


 なんていうかな、うん。そう言いたくなる気持ちは十分に分かる。

 姫様にあるまじき表情で眉間に皺を寄せてしまうのだって、仕方が無いとは思う。


 ……が、これは事実だ。

 恐らく一週間もしない内にロイがこの国のトップに君臨する訳で……。

 あまり過激な事は言わない方が良いぞ。



「はぁ、いくらなんでも冗談が過ぎますよ、ロイ」

「……。」


「貴方がお父様の息子?そんな馬鹿な話はありません。思春期特有の妄想も大概にしなさい」

「……。」


「確かに私はロイの事を弟のように可愛がりましたよ?でも、それはそれ。私の優しさを勘違いしたにしても、酷い部類です」

「……。」


「フィートフィルシアの領主になって、ちょっとだけ上手く行き、魔王を味方に付けたからと言って調子に乗りすぎです。猛省なさ……、あの、みなさん、何で黙ってるんですか?」



 ……それはな。

 あまりにも酷い暴言に絶句してるからだよ。


 自分が王位継承の切り札だと信じて疑わないアルファフォート姫は、ロイが王位継承権を持つ男児だという事実を受け入れがたいらしい。

 まぁ、ロイが男である以上、アルファフォート姫に勝ち目はない。

 もしアルファフォート姫が第一子であり、ロイが第百子であったとしても、他に男が居ないならロイが王位を継承するというのが男尊女卑が強いブルファム王国のルールなのだ。


 あ、今更になって気が付いたが、大魔王陛下が絢爛謳歌の導きを使って王位を宣言しないのって、歴史的男尊女卑によって反発が起こるからか。

 うーん。大魔王陛下ですら手を引く地雷案件に、このポンコツ姫が対応できるとは思えない。



「あの……?おじいさまからもガツン!と言ってください」

「諦めるのだ。アルファフォート」


「……。ユニクルフィン様、おじい様はちょっと体調が優れないようです。もう歳ですから」

「どう見ても元気だろ。耳も遠くなってなさそうだし」


「ロイ。今なら怒りません。冗談でしたって言うのです」

「冗談じゃないんだ、アルファフォートさん。僕が国王ルイの息子であるという証拠は、レジェリクエ女王から受け取っている」



 そう言って、ロイは持っていたバックから何枚かの書状を取り出した。

 ゲロ鳥の刻印で蝋封がされているのは大魔王陛下の勅令状だとして……、あの剣と盾と薔薇のエンブレムが付いている奴は誰のだ?



「それ、テロル姉様が使っていた王族印……」

「正確には、国王筆頭侍従護衛ロイヤルメイデンの刻印だ。テロルさんの母『テレーズ』様が持っている物であり、事実上、正妃に次いで権力を持つ女性が所持する物でもある」


「……テロル姉様はレジェンダリアに捕らわれていると聞いています。レジェリクエに王族印を奪われていても不思議じゃありません」

「知っているだろう?この刻印は指輪型の魔道具で調印するものであり、蝋の中に使用者の血液が混じる仕組みになっている。鑑定に出せばテレーズ様が押したというのはすぐに分かる事だ」


「嘘です。信じません。第一、蝋封が押されているというのに書状の中身をどうやって確かめたというのですか?」

「同じものを二つ渡されている。レジェリクエ女王が僕を嵌める気でいるのでなければ、この中に『ロイ・フィートフィルシアは国王ルイの息子』だと書かれているはずだ。確かめてくれ」



 そっと席を立ったロイが、アルファフォートさんの前に書状を置いた。

 大魔王陛下の策謀と違い、ロイは真面目に王位継承の話をする事を選んだようだ。


 ロイが持っている書状は、今日の朝、大魔王陛下から直接渡されたもの。

 リリンと朝飯を食べるのに忙しくて良く見ていなかったが、ロイの顔色が三色に変化したのを覚えている。



「見ませんよ!そんな偽造書状なんて、見る価値が無いですから!!」

「アルファフォート、観念するのだ」


「嫌ですっ!!いくらおじいさまの言葉でも、聞き入れる事はできません!!」

「ロイ・フィートフィルシア卿、この書状は儂が検めよう」


「ダメですっ!!」

「先程から無礼が過ぎるぞ、アルファフォートッ!!お前は候補に過ぎんのだッ!!」


「ひんっ!」



 机の上に置かれた書状を奪おうとしたアルファフォート姫に特大の雷が落ちた。

 言葉上の表現だけじゃなく、本当にオールドディーンの指から雷が放たれ、アルファフォート姫が痺れている。

 これがブルファム王国の男尊女卑の実態か。

 普通にパワハラ案件だ。


 ……まぁ、それはそれとして。

 俺のじぃちゃん、指から雷が出るんだな。



「……ふむ。確かにテレーズの字だ。書いてある内容もフィートフィルシア卿の証言と一致しておる」

「文字を見ただけで分かるんだな。じいちゃんはテレーズさんと親交があったのか?」


「テレーズは陛下の付き人だ。大臣として何度も顔を合わせておる。それに、奴の字を模倣する事などできん」

「字の真似が出来ない?暗号ってことか?」


「字が汚すぎて一種の芸術と化しておるのだ。高名な画家が揃って唸るが、儂にはさっぱり良さが分からん」



 そう言って差し出された書状を覗いてみると、そこには抽象芸術が広がっていた。


 いや、取り繕うのは止めよう。

 こんな汚い字を芸術と呼ぶなんて、画家に失礼だ。



「というか、これが読めるんだな。まず、文字なのかどうか悩むレベルだぞ?」

「儂は様々な地方方言を理解しておるが、このテレーズ象形文字が一番難解だったわい」


「流石は大臣。文学のエキスパートなんだなー」



 やばい。10秒以上眺めていたら、書状の文字が蠢きだした。

 精神に異常をきたす前に目を離し、静観していたロイの出方を待つ。



「この書状に書いてある通り、僕の出生は隠されていた。正妃ネシア様のやっかみから逃れる為だと」

「権力の権化だったネシアと能天気天才剣士のテレーズは犬猿の仲だったからな。どっちも人間としての品性が乏しく、儂も苦労させられたものだ」



 すげぇ暴言が飛び出したんだが。

 とてもじゃないが超大国の王妃達を形容する言葉じゃねぇぞ。

 そんな地雷女ばっかり集めて、王様は一体何がしたかったんだ?



「僕としても今更だという想いはある。だが、知ってしまった以上は逃げる事も出来ない」

「よくぞ言った。若くしてフィートフィルシアを納めた手腕を儂は評価しておる。姫達とも相性は悪くない」



 あ、なんか簡単に受け入れられた。

 思っていたよりもあっさりした結末に、ロイも肩を撫で下ろしている。


 横から眺めていて思ったんだが、オールドディーンはロイが王位継承権を持っているって薄々感づいていたっぽい?

 一応は驚いていたから可能性は低いって判断だったんだろうが、選択肢の内の一つには入ってたようだな。

 それに、俺を王位継承に絡ませたくないから、ロイを推しているんだろう。



「オールドディーン様は、僕が国王の息子だって知っていたのですか?」

「知らん。だが、もしかしたらと考えた事はあるのだ」


「ちなみに、どんな感じだったのですか?」

「うむ、テレーズは……」



 ロイの実母であるテレーズさんは、娘のテロルさんを国王よりも優先させていたらしい。


 もともと護衛兼メイドとして国王に仕えていたテレーズさんは、なし崩し的に妾になってしまった。

 男尊女卑が強い事もあって、求められたら断る事が出来ないのだ。


 結果的にメイドから妾にジョブチェンジを果たしたテレーズさんは、持て余した時間の大半を育児に使い、時には国王からの呼び出しをサボる時すらあった。

 周囲からは子供第一の母親として認識されており、密かに女性の憧れ的存在だったみたいだ。



「子煩悩だったテレーズが第二子を孕んだ時、ついに男児が生まれるのかと密かに期待したものだ。だが、ネシアは快く思っておらんかった」

「ネシア様は何かをしたのでしょうか?」


「食事に毒を盛ったようだ」

「真っ黒ですね……」


「テレーズは平然としておったが……、思えば、子煩悩な母が怒り狂わぬ訳があるまい。結局、出産に失敗したテレーズは療養という形でフィートフィルシアに戻ってしまったが……」

「その子が僕だったという話です。おわかり頂けた様に、レジェリクエ女王が用意した王位継承用の切り札とは僕なのです。そしてもうすぐ、僕の世継ぎが生まれます。この子も男児だと聞いています」


「ふむ……、レジェリクエの手腕は見事と言うしかあるまい。これでは、陛下が健常であっても負けたであろうな」



 オールドディーン的には、ロイが王位を継いでくれるのが望ましい。

 正当な血統であるから国民から受け入れられやすく、大魔王陛下とのコネクションも持っている。

 さらに、既に世継ぎが生まれそうであり、ロイの統治も含めて60年以上は安泰。

 王位継承問題もこれで一段落だ。


 俺、ロイ、オールドディーンがそれぞれ納得し、細かな情報の擦り合わせをしていく。

 次々に取りだす大魔王陛下謹製の証拠品の数々に、オールドディーンですら舌を巻いたほどだった。


 そして……、良い感じに話が落ち着き始め――、痺れていたアルファフォート姫が金切り声を上げた。



「嫌です!!嫌否厭異や、イヤーーーッ!!」



 ぱぁん!っと机を叩いて立ち上がったアルファフォート姫の目には、特大の涙が蓄えられている。


 確かに、アルファフォート姫は不憫な境遇だ。

 物心ついた時には既に王位継承問題が発生していて、女児だからという理由で雑に扱われた。

 上にいる姉達は東塔を出て行き、幼い妹達の面倒を見ながら、その内に来るであろう戦略結婚の命令を待つ日々。


 そして、実母であるネシア正妃は亡くなり、国王も病に伏した。

 王位継承問題は日を追うごとに大きくなっていくも、解決の糸口は見つからない。


 そんな時、オールドディーンの孫……、アルファフォート姫が実質的な王位を手に入れる為の存在が目の前に現れた。

 きっと、縋る様な想いで望みを託していたはずで、それが今、足元から崩れ落ちてしまった訳だ。


 俺にはリリンが居る。

 だから、アルファフォート姫は受け入れられない。

 それでも、この人が幸せになる道を探してやるくらいはしても良いよな?

こんばんわ!!青色の鮫です!!


本日の更新で700話を迎える事が出来ました!!

皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます!!


それに伴い、タイトルとあらすじを変更してます。

タヌキの主張が激しい作品ではあるのですが、タイトルにも出没しているのはどうかと思っての決断です。


タヌキは賢いので、空気を読んで自重するのです。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと700話! ……あと200話以上あるのか。いつになったら追い付ける?
2021/10/17 08:38 退会済み
管理
[一言] 自重出来てないなぁ… あらすじにタヌキってそれだけでインパクトが
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