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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第78話「王城へ向かう冥王竜」

「へぇー、じゃあ温泉卿に敵も味方も集結してるのか」

「そうですわ。セブンジード隊よりも強いサーティーズですが、温泉卿では大人しくするはずですの。サチナちゃんもいますし」



 アルカディアさんに尊厳と尻尾をへし折られた冥王竜の背に乗って、俺達はブルファム王城へ進軍している。


 ホロビノよりも広く快適な背中の上にあるのは、テトラフィーア大臣が取り出した焼き菓子と紅茶。

 それらを嗜みつつ、俺やリリン、テトラフィーア大臣にロイは、それぞれの戦況を話し終えた。

 なお、アルカディアさんはクッキーに夢中なので話に参加していない。



「僕も温泉卿に興味があったんだが忙しくてな。戦争に勝利した暁には、シフィーを誘って行こうと思っていた」

「温泉郷は私の自慢。サチナが頑張っている接客は可愛らしいと好評で、レジェが監修したレストランには行列ができる。ワルトナが料金設定したお土産はお買い得で、カミナが設計した温泉施設は体の疲れを浄化する。あ、メナファスの好みに合わせて作った酒場も素晴らしい!」



 戦争の話ばかりをしてても気が重くなるし、適当な所で温泉卿の話題に切り替えた。

 悪質をブチ転がして気不味そうにしていたリリンの機嫌も直り、温泉郷初心者のロイにたっぷり自慢している。

 ちらちら大魔王共が出てくるのは不安だが、今の所は和やかなお茶会だ。



「話を聞けば聞くほど温泉郷は素晴らしいな。有楽地が少ないフィートフィルシアも見習うべき所が多いし、ぜひ訪れてみたいものだ」

「そういう事なら、もちろん招待する。戦争が終わったら温泉郷で打ち上げパーティーをしよう」


「おぉ、それは楽しみだ」

「私も楽しみ。もう一度ユニクを混浴に誘って、今度こそ私の虜にする!」


「なんだってッ!?」

「なんですのッ!?」



 せっかく安心していたのに、いきなりとんでもねぇ事を言い出しやがったぞ、このハムスター。

 ほら見ろ、冥王竜(通訳)を通してフェニクスと談笑していた大魔王陛下がこっちに来ちゃったじゃねぇか!



「あらあら、面白そうな話をしているわねぇ。余にはリリンを唆した覚えが無いのだけれどぉ?」

「温泉郷は始めてを経験するのに最適だって、カミナに教えて貰った!」


「カミナだったかぁ。それで混浴は出来たのぉ?」

「ちゃんとできた!」


「えっ、ちゃんとできたのぉ。超意外なのだけれど、どうやったのかしら?」

「白銀比様にユニクを取られたと思った私は、勢いに任せて魔王シリーズを召喚。泣き脅しを仕掛けてユニクを誘い出した」


「どっちも涙目ねぇ、分かるわぁ。それで?」

「でも誘惑の仕方が分からない。白銀比様に聞こうと思い直して脱衣所の暖簾を潜ろうとしたら、ワルトナが出てきた」


「おっとぉ、色んな意味で急展開ぃ」

「ワルトナと一緒ならいける。そう確信した私は強襲を仕掛けようとして服を脱ぎ――、ワルトナの策謀という武装を纏って、ユニクを窮地に陥れた!」



 あえて黙って聞いていたんだが……、とてもじゃないが混浴を語る説明じゃない。

 どんだけ気合い入れてんだよ、この魔王様。

 つーか、強襲を仕掛けるって始めっから沈める気だったんだな。



「武装を纏ってぇ?あぁ、水着を着たのねぇ」

「そう。ワルトナが言うには、「素肌を見せないからこそ、想像が掻き立てられるんだ。情緒だねぇ、不安だねぇ」だって」


「なるほどなるほどぉ、乙女よねぇ、未通女おぼこだものねぇ」

「そして、満を持して混浴に向かうと、ユニクはすでにアルカディアと混浴?を楽しんでいた!」


「……先を越されてるじゃない。というか楽しんでいたのね。そうなのね」



 楽しむ余裕なんて無かったぞッ!!

 アルカディアさんの横に毛深い絶望が浮いていたからなッ!!


 それにしても、大魔王陛下の眼差しが冷たい。

 リリン以外の女性と混浴していたのが気に入らないんだろうが……、何度でも言うぞ。そこにあるのは毛深い絶望だ。



「そうして、ユニクを沈めたり浮かばせたりして遊んでいる内に、ワルトナの水着が透明になった。どうせなら私のが透明になれば良かったのにと思ったけどしょうがない」

「運が悪いと言っていいのかしらぁ?逆に幸運じゃない?」


「こうなったら私も脱ぐしかない。そう思っていると……、なんとセフィナまで混浴に入ってきた!」

「世界一不幸な女よね、ワルトナって」


「お互いがビックリしている中、最初に行動を起こしたのはゴモラだった。逃げ出したセフィナを捕まえる為、混浴は中止。それからはパパ達と訓練をする日々になったので、混浴をする機会に恵まれていない」

「女王たる余が総評を述べてあげるぅ。その混沌温泉、余も参加したかったわぁ。だって絶対、楽しいものぉ」



 ……参加しなくていい。

 いや、頼むから参加しないでください。お願いします。



「じゃあ今度はレジェも一緒に入ろう。テトラは?」

「もちろん参加させていただきますわ!」


「決定。私、セフィナ、ワルトナ、レジェ、テトラ、アルカディアで今度こそユニクを籠絡させる!」



 魔王共が6人か。

 ふっ、俺にも仲間が必要だな。

 出番だぞ、ロイ、キングフェニクス。駄犬1号2号。

 ……だめだ。勝てる気がしない。


 自分の友達の少なさに愕然としていると、ロイと目があった。

 とりあえずコイツだけでも確保……、おい、目を背けんな。



「ロイ、憧れのテトラフィーア様との混浴だぞ。羨ましいだろ?一緒にどうだ?」

「はっはっは、僕は妻帯者だぞ。もうすぐ息子が生まれるというのに、そんな誘惑に乗る訳にはいかないさ」

「あらぁ、シフィーを除け者にするつもりはないわよぉ。今回の戦争の功労者の一人だものぉ」


「ほら、妻のお許しが出そうだぞ。決まりだな!」

「なら問題な……、待ってくれ、一体何が決まったんだ!?」



 言わなくても分かるだろ。破滅の運命だよ。

 そんな俺の副音声を察知しやがったロイが抵抗を続けるも、悪い顔の大魔王共からは逃げられ無かった。

 一緒に温泉に沈もうな。ロイ。


 なお、今回の混浴は全員が水着を着用するので、僅かに防御力が上昇している。

 ただの布なので物理的な防御力は皆無だが、精神的に大違いだ。

 茶色い絶望も出て来ない。



「さてとぉ、ブルファム王城も見えてきた事だしぃ、これからの作戦を伝えておくわぁ」

「王城?あ、ほんとだ。いつの間に」



 雑談に夢中で景色を全く見ていなかったが……、気がつけばブルファム王城まであと少し。

 高さ100mはあろうかという塔がいくつも並び、その中心に白と青を基調とした色合いの美しい城が聳え立っている。


 それを皆で眺めて気持ちを高めた後、大魔王陛下が口火を切った。

 一瞬で真面目な雰囲気を作り出し、緩んだ空気を引き締める。


 ……だからな、リリンにアルカディアさん。

 両手に持っているクッキーは置いておけ。



「当初の予定通り、リリン・ユニクチームはセフィナを確保する為に東塔へ行って貰うわぁ」

「まかせて。セフィナを絶対に捕まえる!それで、レジェ達は何をするの?」


「ブルファム王に会いに行くわぁ。国王・ルイに現状を伝え、王位を余に譲渡させる。その後、国政が安定してきたらロイを国王にするのだけれど……、その話は後でしっかりしましょうねぇ」



 物凄く不安そうなロイを見て笑う、大魔王陛下。

 たぶん、混浴→策謀の連続コンボを決めに来る気がする。



「ごちゃごちゃした施政は余達に任せて、あなた達は好きに暴れなさぁい……、と言いたい所だけれど、リリンやユニクにも頑張って貰う必要があるわぁ」

「ん?それは頭を使う仕事があるって事か?」


「そうよぉ。東塔にはオールドディーンとアプルクサス、二人の祖父が出入りしている。余の読みが正しければ、今も姫達と一緒に居るでしょうねぇ」



 へぇ……、そうなのか。

 正直な話、祖父とか言われてもピンと来ていない。

 最近になって、ようやく親父の顔を思い出したくらいだしな。



「レジェリクエ女王陛下、一つ良いでしょうか。ブルファム王との会談に僕は参加しなくても良いのか?息子なんだろう?」

「されると困るのよぉ。ブルファム王は王位継承権問題で憔悴しきっている。スムーズな会談を行う為には居ない方が都合がいいのぉ」


「そういう事か。ブルファム王は20年以上も思い悩んでいた事になる。育ての親が肉親じゃないと覚悟していた僕より衝撃は強いだろうしな」

「ちなみに、ロイは育ての親についてどう思ってるの?」


「この戦争が終わったらフィートフィルシアの酒を酌み交わし、文句と感謝を一晩中言い続けてやるつもりだ」

「それは良いわねぇ。レジェンダリアのお酒も持って行きなさぁい」



 ロイにとって、育ての両親は伯父、叔母の関係になる。

 騙されていたと言ってしまうのは簡単だが、ロイの今の状況は、多くの人間がロイの将来を案じたが故の結果だ。

 だからこそ、文句と感謝……裏表のない感情で語り合い、出来てしまった溝を埋めたいんだろう。



「ロイばかりじゃないわよぉ、リリン、ユニク。セフィナも大事だけれど、祖父も大切にしてあげなさい。何も知らなかった貴方達と違い、彼らは寂しい思いをしていたのだから」

「あぁ、分かってる。親父の時みたいに、いきなり斬りかかったりはしないさ」

「むしろ、私の方から積極的に仲良くしたい。宮廷料理とか楽しみ過ぎる!」



 言われるまでもなく、そんな事は分かっている。

 オールドディーンは血の繋がっていないブルファム姫を大切にしていると聞いた。

 それはもしかしたら、居なくなった親父や俺を想っての事なのかもしれない。



「さてと、行くか」

「そうしよう。セフィナを取り戻し、おじいちゃんとも仲良くなる。悪い幼虫は転がす。完璧!」

「ユニフ、リリンちゃん。道案内は僕に任せろ。東塔には何度も足を運んでいるからな」

「……すんすん。う”ぎるあ?」



 ブルファム城門に到着した俺達は、二手に分かれて行動を開始した。

 俺達の道案内はロイ。

 東塔に入るには王家の血族が必要らしいが、何度も訪れているロイが一緒なら問題ない。



「すんすん……?すんすん……?う”ぃぎるあん?」

「どうかしたの?アルカディア。そんなに匂いを嗅いで」


「微かにドングリの匂いがするし……?でも……」



 ……。

 …………。

 ……………ドングリの匂いって何だ?


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