第28話「衝撃の事実」
「さて、この広場で野営を行う訳だけれど、ロイが準備した荷物の中にテントは含まれている?」
「あぁ、勿論だ。結構広目で体を寄せれば四人は寝られる」
リリンが野営を行うと宣言してから数分の間に、あれよあれとよ、準備が行われていく。
ロイは荷台車の上の荷物を退かし、一番下に有った革で出来た袋を取り出す。
そして、革の袋を開いて折り畳まれた鉄骨とシートを広げた。
大変に満足そうである。
「うん、テントとしては悪くない。しかし、野営向きではなく、このままだと、睡眠を取ることは出来ない」
「なん、、、、だと?」
リリンが広げられたテントをつまみ上げながら、ロイのドヤ顔を完全に打ち砕く言葉を吐く。
リリンの説明では、夜行性の動物に襲撃された場合、なす統べなくこのテントは倒れてしまうという。
確かにそれは、非常にヤバイ。
テントに絡め取られながら、タヌキの迎撃なんて冗談じゃないぞ!
ロイは地に伏し、「ちくしょう、ちくしょう、………」と呟いている。
テント重そうだったもんな。岩に引っ掛かって苦労したもんな。合掌。
「まあ、それは、通常での話。私は第九守護天使持ちで、テントにもバッファを掛けられる。それに、あなた達も第九守護天使を覚えるのだから、問題ない」
「リリンちゃん………」
リリンから救いの手が伸べられて、ロイは再び二本の足で立ち上がる。
ロイもリリンが好意的に指摘して言っていることは分かっているようで、それ以上引きずることはなかった。
「よし、分かった。早速このテントを組み立てちまおうぜ?ロイ」
「ああ、ユニフ、僕のテント張りの技術に驚くが良い!」
俺達は、ロイのテントに群がり、作業を始めた。
高速で組み上げられていくテントを前に、リリンもシフィーも成す術がないようだ。
やがて、テントも完成に近づく。
最後の天幕を鉄骨に被せ、四方を固定したら完成だ。
「よし!できたぞ!」
「あぁ、そうだな!ははは、テント張りに関しちゃリリンの出番がなかったな!」
「………………………。《サモンウエポン=テント。》」
「「………………。」」
俺とロイは再び、絶句。
そりゃそうだろう。一生懸命組み立てたロイのテントなんかより、数倍は丈夫そうで所々可愛らしいリボンとかがデコレーションされたテントが出現したのだから。
ちらりとリリンの方を見ると、何処と無く誇らしげにしていた。
ちなみにロイの方を見るのは止めておいた。可哀想だからな。
「これで、二組に別れて野営が出来る。組み合わせは、私とユニク、ロイとシフィーで良い?」
「ちょっと待ってくれ!ここは男女で別れるべきなんじゃないか?」
「そそそ、そうですよ!いくらロイくんが騎士だと言っても、襲われたらどうするんですか!」
「な!シフィー。君は僕や騎士の事をそんな風に思っていたのか!」
「いやーだって、お師匠様が現役の頃は毎日、酒池肉林だったそうで、当たっちゃったお婆ちゃんに言い寄られて結婚したそうなんですよ!」
「くっ、騎士の風上にも置けない。誰だそいつは!キャンドル将軍なんて聞いたこともないぞ?」
「あぁーお師匠様はですね。お婆ちゃんにあらゆる弱味を握られて、お婿さんになっちゃったみたいです。だから、将軍時代は『ガルファレス』と名乗っていましたよ」
「んな、が、ガルファレス将軍………だと?」
「これはすごい。あの人が怒号将軍ガルファレスだったなんて」
「あれ?リリンも知ってるのか?」
「近代史に於いて、この人を語らないことは出来ない程に、有名人。30年前のブルファム皇国平定の際、少ない人員で多くの戦況を覆えし、最終的にはガルファレス将軍が取得した国は10にも上るらしい」
「へぇー。凄いじゃないか」
「あはは、でも最近じゃ、運動不足で腰が痛いみたいですし、愛想を尽かされたお婆ちゃんから別居を言い渡されました!」
「そんな………僕の憧れの人が………………。婿入りで、別居………………。」
ロイは地面に寝そべると、丸まって動かなくなってしまった。
本日最大のダメージだったようである。
「確かに、私と出会ったときにはもう、威厳なんてカケラもなかった」
「あはは、ですよねー。それに、頻尿で下手すると漏れちゃうらしいです!」
「………、………………。ぐす………。」
あれ、ロイ、泣いてる?
予想外なシフィーからの攻撃にとうとう耐えられなくなったのだろう。
俺は寂しく丸まったロイの背中を擦りながら、めんどくせぇなぁと思う他なかった。
こんばんわ、青鮫太です。
風邪、引きました。
発熱高めで執筆はつらたん、なので、本日は短めとなりました。
ご容赦ください!