表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

668/1332

第60話「王城進軍⑤」

 

「せいぜい足掻いてみると良い。飽きたら魔王の脊椎尾の露にしてあげる。」

「その自信、その油断。後悔させますわよ」



 平均よりも低めの声で交わされた威嚇。

 それは敵を廃する為に、相手の感情を揺さぶる常套手段。

 そんな罠を平然と仕掛けたリリンサは、内心で冷静に状況を見極める。



 ユニクに圧倒されていた悪質だけど、その動きは常人の域を軽々と越えている。

 もし、魔王シリーズの補正が無ければ、近接戦闘で勝利するのはとても厳しい。

 人間の身体能力で比べた場合、軍配は相手に上がる。


 だけど、私には5つの魔王シリーズに加え、星丈―ルナもある。

 それに、パパから教えて貰った魔法知識を加えれば、盤石。


 これは万に一つも負ける可能性が無い戦い――、狩り。

 だから、セフィナとユニクに誇れるような勝ち方をしよう(完封勝利を目指す)



 戦略というよりも志を改めたリリンサは、魔王の左腕の解析を魔王の心臓核によって増幅させた。

 胸の赤い宝珠が怪しく輝き、周囲一帯の耐久値を計測。

 悪質が身に纏っている最も強度の高い物質、それが魔王の靭帯翼だと当たりを付けた。



「見つけた。貴方の腰に付いてる魔王、奪わせて貰う」



 鷹の様に鋭い眼つきで、リリンサは悪質の腰に狙いを定めた。

 それは一見してポーチに見える。

 だが、魔王の右腕によって解析されてしまえば、それが神性金属の塊であると見破る事は容易い事だ。


 リリンサは、ギャリギャリギャリと異音を発しながら魔王の右腕を変形させ、指の先端の刃を赤く染めた。

 薄らと発している湯気は、ただのフェイク。

 特に意味の無いそれは、相手から見れば――、致死毒だ。



「爪が血管に届けば即死、肌を掠れば臨死、吸い込めば瀕死。どれがいい?」



 平均的な悪人顔で嘯いて、リリンサは右腕を振るった。

 その動きに合わせて撒き散らされた赤い霧、それに触れる前に悪質は空へと逃げる。

 そして、それを待ち構えていた魔王の脊椎尾が、真正面から薙ぎ払った。



「《魔王たる私が命じる!魔王の靭帯翼を奪い取って!!》」

「させませんわッ!!《開かずのレイスドア》」



 けたたましい音と共に、魔王の脊椎尾が弾かれた。

 揺らめく空気の中にあった何かに遮られ、悪質に触れる事が叶わない。



「へぇ……、やるね《ドリル尻尾、起動っ!》」



 ただの薙ぎ払いで足りないのならと、リリンサは魔王の脊椎尾を乱回転させた。

 巻き込まれた空気の摩擦によって発生した静電気が電荷となり、尻尾に纏わりついて紫電となる。


 それは、魔法では無い自然現象。

 それ故に、対応する側も物理的な障壁が必要になる。



「ちょっと痛いと思うけど、是非、死なないで欲しい。」

「くっ!《天届く断崖絶棚エアーズロックッ!!》」



 リリンサが魔王の脊椎尾を振り抜いた刹那、その間に岩の壁が出現。

 そして、破砕の音と共に撒き散らされていく。

 10秒の停滞の後、厚さ2mの壁を切削し終えた魔王の脊椎尾は、本来の目標へ向かおうとして視線を惑わせた。

 だが、そこに悪質の姿は無く、リリンサは迷わず魔王の左腕を空に翳す。



「《悪質はどこ!?》」



 この時すでにリリンサは、上空から急降下してくる悪質の姿を肉眼で捉えていた。

 だが、敵はワルトナを捕らえた聖母だという認識が、最大限の警戒を抱かせる。


 魔王の左腕から返された答え。

 空から迫って居るのは魔法で作った偽物。本体は――、背後に出現した空間の裂け目の中。



「じゃあね。マヌケな、まお――。」

「それ、こっちのセリフ。《 十重奏魔法連(デクテットマジック)・主雷撃》」



 悪質が付き出したドス刀に向かい、リリンサは主雷撃を放った。

 僅かな時間差を付けて放ったそれらが連鎖し、魔法の効果時間を引き上げる。


 25秒にも及ぶ、雷光の蹂躙。

 一瞬で過ぎ去るはずの雷が体内に蓄積し、悪質の筋繊維に深いダメージを与えた。



「かはっ……」

「ん。手応えが無い?これも偽物!」


「……《膨れ上がる熱人軍勢(イフリート・パレード)》」




 ぐらりと傾いていた悪質の後ろで、本物がニヤリと笑った。

 そして、悪質だったものが膨張分裂し、リリンサの前方180度を埋め尽くす。

 熱エネルギーで出来た人間の飽和が、リリンサを押し潰すように広がり、そして――。



「私を守って、絶対防御イージスっ!!《雷人王の掌(ゼウス・ケラウノス)っ!!》」



 魔王の脊椎尾の先端から無数に開いた砲門が、分割された雷人王の掌を撒き散らした。

 向けられた熱エネルギーを超える光で押し返し、倍以上に膨れ上がったそれらを空に向かって放出していく。

 そして、空を埋め尽くしていた魔法陣に直撃し、悪質が作ったメビウスが脆く崩れた。



「メビウスの輪がッ!?」

「ん。なぜ焦った?アレはフェイクのはず」


「五月蠅いッ!ですわッ!《火炎破城槍キャッスル・バーン!!》」



 苦し紛れに放った炎の槍が、魔王の右腕の自律防御によって切り裂かれる。

 そんな中、余裕のあるリリンサの思考は、悪質が付いた悪態の意味を探っていた。



 フェイクだと見破られてなお、悪質はメビウスの輪を消さなかった。

 あんな巨大な物を維持する為には相応の魔力を消費するはずで、目的も無しに出しておく必要性はないはず。

 なら、アレは消せない……、いや、消えてしまっては困るものだった?

 魔王の靭帯翼でないにせよ、何らかの重要な意味があったということ。


 もし逆の立場だったら……、セフィナに魔法を封印されて追い詰められた私は何をした?

 あの時に私が選んだのは……、仲間ホロビノを呼ぶ事。



「なるほど。あれは仲間に位置と状況を知らせるサインだったんだね」

「……あら?暴虐の限りを尽くした魔王ともあろうお方が、弱者の意図を汲み取れるんですの?」


「私は一人で魔王になったのではない。一人ではできない事が多いからこそ、私は頼れる友達と心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)を結成した」

「そう。ならずっと、弱者のままで居れば良かったのに」



 悪質は馬鹿では無い。

 リリンサとの戦力差は理解しており、ましてや、此処にはユニクルフィンとアルカディアもいた。

 一人でも敗北濃厚な相手が三人も徒党を組んでいる以上、その目的は勝利とは別の所にある。


 自分が弱者であると自覚している悪質は、最初から一人での勝利を狙っていない。

 一族が衰退しきるまで逃げも隠れもできなかったフォスディア家。

 その栄光を取り戻す為に指導聖母の道を選んだ彼女は、人を騙す日常を経てなお、仲間を頼る事の大切さを知っている。

 舌戦、フェイク、格闘戦、魔法合戦。

 その全てを使い、自分の仲間が到着するまでの時間を稼いでいるのだ。


 そして、そんな目論見は悪質と関係ない所――、ワルトナによって既に破綻させられていた。

 悪性マリグナンシィ悪才アンジニアス悪徳(ヴァナラティ)

 悪質の仲間達は全て、武力的、または論理的に束縛され、もうここに来る事は無い。



「貴方の仲間はここには来れない。時間稼ぎは無駄だと言っておく」

「シルバーフォックス社を倒せる人物なんていませんわよ。たとえそれが、ランク9の大魔王でもね」



 公然と語られる情報の中でも、レジェリクエのレベルが9万を超えているという話は有名だ。

 だからこそリリンサは、悪質がレジェリクエの実力を知った上でシルバーフォックス社の方が強いと言っている事に気が付いた。



 なるほど、確かにちょっと危険かも?

 私の攻撃を何度も無傷で裁く技能を持っているのにもかかわらず、応援が来るのを待っているという事は、シルバーフォックス社の実力は悪質以上という事になる。


 セブンジードじゃ勝てないかもしれない。

 むぅ、ホロビノが居れば様子を見に行かせたのに。



 リリンサはチラリと森の方へ視線を向け、小さくため息を吐く。

 そして、どうしようもないと思い直し、口直しにユニクルフィンを眺めようとして……、その姿が何処にも無い事に気が付いた。



「……ユニクっ!?」

最近、花粉症のせいで筆が進まない……。


こんな時は……、オーバーロード14巻を読んで英気を養います!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませていだいてます! [一言] なるほど。 リリンが悪質をぷち転がす事ができれば、遂にタヌキな魔王にジョブチェンジですか。 そしてこの物語のサブタイトルの回収ですね! てか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ