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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第59話「王城進軍④」

「……ボッコボコにする?舐めた事を言ってくれますわね。ふふ、格闘家の矜持を捨てた私は手強――。」

「私にひれ伏す5つの魔王よ、今ここに混じり合い再誕し、あらゆるモノをブチ壊せ。《脈動覚醒・息噴く魔王の超遺骸デモン・ジィールボディ》」



 あ、腹ペコ大魔王さんが、超魔王・ヤンデリリンになった。

 お気に入り魔王5点セットを颯爽と装備し、決め台詞を吐いていた悪質を視線で舐めつける。


 リリンが持っている魔王シリーズは現在6個。

 全部を出さないのは、「バルバロアのお下がりは、なんかやだ。後でカミナに仕立て直して貰いたい」から。

 決して悪質への想いやりがある訳ではなく、要するに、俺の知る限りで初の戦死者が出る可能性がある。


 うん、悠長に構えてる場合じゃねぇな。

 グラム抜いて覚醒までさせておこう。《神壊戦刃グラム=終焉にて語りし使命エンドロール・ゴッデス》。

 ……よし、OKだ!



「くっ、魔王シリーズを5つも纏うなんて、何度見ても頭がおかしいですわ」

「おかしいのは貴方の常識。同じ魔王シリーズを扱う者として、数の差は覆せないと悟っているはず」



 ん?バルバロアの時は鼻で笑ってたのに、今回は真面目に対応するんだな?

 それだけ悪質が魔王シリーズを使いこなしてるって事か?


 空に浮かんでいるメビウスの輪。

 小さな翼羽根で構成されているそれは、恐らく魔導杖と同じような効果だ。

 円の内部の揺らいでいる空間は、全ての魔法が内包されているとされる魔法次元へと繋がっているっぽい。

 たぶん、セフィナやクソタヌキの魔法を内蔵する魔法『悪喰=イーター』の様な、無制限で魔法を連発できるようにする為のものだろう。


 最後の魔王シリーズは魔法特化か。

 普通に考えればリリンに負けは無いが……?



「数の利など勝敗に影響を及ぼせませんわ。この魔王の靭帯翼(デモン・リグメント)には、それだけの力がございましてよ?」

「ならば丁度いい。これから私の物になる魔王の力を見せてみて?」


「ほんと、口が減らないガキですわねッ!!」



 瞬間閃光、有爆、蒸気熱。

 一瞬のうちに発生した事象がリリンを覆い尽くし、戦いの幕ごと炎上させる。


 轟々と燃え上がっていく空間の中、リリンを覆い守っていた魔王の脊椎尾が脈動した。

 その先端から25程の法門を開き、反撃の閃光を撒き散らしてゆく。



「リリン!分かってると思うが、深い怪我を負わせるんじゃねぇぞ!!モウゲンド以上は絶対ダメだ!!」

「炭化しなければOKっと。」


「前言撤回ッ!!ホロビノおしおきコース以上はダメだッ!!」

「むぅ。じゃあ、三日くらい再起不能にする事しかできない……」



 全治三日と喜ぶべき……だよな?

 生死の境を三日くらい彷徨うって事じゃないよな?


 一抹の不安しか無いが、一応、ペットと同じ扱いをする以上は死なないと思う。

 ……そのペットって伝説級の駄犬な訳だが、たぶん大丈夫だと信じてみたい。



「うわぁ、荒ぶった尻尾からレーザーが乱射されてる。これ、巻き添えを喰らったら一溜りもないな。周囲にも気を配らないと……ん?」



 とりあえず、ブルファム兵は全員捕食されてるから問題ないとして……、魔王と聖母が決戦を繰り広げているなんて知らない市民が通り掛るかもしれない。


 そんな事を思って見渡した視線の先、そこに5名の集団が立っていた。

 本来なら全力で近寄って、強引にでも離脱を勧める。

 だが、俺の直感は……余計な事をするべきじゃないと警笛を鳴らした。



「マスター、めっちゃ戦ってますけど?」

「参ったなぁ。家に帰れないじゃない」


「どーします?」

「どーもしなくていいよ。無関係なぼくらぁは見学。魔王シリーズの激突なんて、そうそう見られるもんじゃないし」



 4人の女性に囲まれた中心、根暗そうな男がやる気なさそうに声を上げた。

 その男の気配は薄く、街中ですれ違っても目に留まる事は無い。


 そして、グラムを覚醒させて感覚を伸長させているからこそ、その違和感に気が付いた。

 その集団の端にたたずむ小柄な女。

 唯一、俺の方を見ている彼女ですら……、冥王竜以上の魔力を感じる。



「ますたー。あそこにグラムがある」

「ん?グラム?ユルドがブルファムに寄り付く訳ないんだけどなぁ。おーい、そこのキミー、ちょっと話を聞かせて貰っても良いかい?」




 ************



 爆炎と爆光が吹き荒れ、二人の少女が踊り舞う。

 人体には無い尻尾を器用に操り、その先端から高出力の魔法を発射するリリンサに、悪質は多岐にわたる魔法で完璧な対応をして見せた。

 その結果、お互いに無傷であるものの、僅かな驚きをリリンサが溢す。



「これは予想外に大物。バルバロアとは大違い。」

「蛮族などと一緒にすること自体が、おこがましいですわッ!!」



 荒げた声など関係ないとでもいうように、悪びれもなく、視線を合わせる事すらせず、悪質はただ淡々と……空間に指を這わせている。

 そして、そこから様々な炎系の魔法が飛び出し、リリンサが無造作に振るった魔王の右腕に阻まれた。


 悪質が空間を指でなぞって円を描くと、そこから求めた魔法が顕現する。

 それが、魔王の靭帯翼が持つ『飛躍』の能力。

 魔法次元との隔たりを無くし、詠唱に関する様々な制約を取り払う魔王の靭帯翼は、使用者が持っている魔法才能の全てを強制的に開花させるのだ。



「随分と使い慣れてるっぽい。空の模様も面白い。」

「なんですって?」


「解析の能力を持つ魔王の左腕は欺けない。空のアレはそれっぽく見せているだけのフェイク。」



 リリンサの確信を持った指摘に、悪質は怒り狂ったような表情を見せた。

 チープな嘘を見破られて激昂する小物を演じ、その内心で手堅く思考を固めていく。



 流石は魔王ですわね。

 指導聖母すら騙せる認識錯誤を、こうもあっさり見破ってしまうとは。


 魔王シリーズには無差別に本能的な恐怖を抱かせるという特殊能力が備わっています。

 それを逆手に取り、空に浮かばせた囮にその効果を付与、さらに魔法次元であるという認識錯誤を与える事で大仰な羽根飾りが本体だと錯覚させる。


 掻き立てられた恐怖心が空の囮を壊す事ばかりを躍起にさせ、それが偽物だと知った瞬間、致命的な隙が生まれます。

 人間の感覚では突破不可能な罠のはずだったのに、わざわざ情報を喋った甲斐が無いですわ。



 一通り苦言を溢し終えた悪質は、冷静な思考でリリンサを観察し始めた。

 自分が得られる最大の利益と、自分が負う最大の損失。

 それを見極め、空間に指を走らせる。



「爆ぜろ。《収斂火災ブレスト》」

「《多層魔法連・閃光の敵対者(ライトエネミー)第九守護天使セラフィム耐熱断絶壁マテリアルインシュレット》」



 リリンサの胸元に光が灯り、パチリ。っと火花が散る。

 集められた太陽光によって熱せられた魔導服の表面が焦げるも……、それ以上の変化は起こらなかった。


 ランク8の炎魔法『収斂火災』。

 光を収斂させて物体を発火させるこの魔法は、類稀なる魔法知識が無ければ回避不能なものだ。

 太陽光という万物を透過するエネルギーを利用している以上、事前に行っていた防御手段のことごとくが意味を成さないからだ。


 そしてリリンサは、魔王の右腕で解析した情報を元に的確な対処を行った。

 閃光の敵対者で光そのものを妨害する防御魔法を纏い、第九守護天使で焦げた魔導服の内側を補強。

 そして、耐熱断絶壁で服の熱耐性を上昇させたのだ。



「これで、さっき対応された事に対する意趣返しはできた。そろそろ本気で攻める。」

「わざわざ教えて頂かなくても結構ですわッ!」



 リリンサが舌戦を仕掛けている理由、それは完璧な勝利への布石。

 時間を稼いで戦略を組み、無傷で勝利するという、ユニクルフィンが求める勝利の大前提をしっかりと把握しているが故の行動だ。


 心無き魔人達の統括者として活動してきたリリンサは、かなり人を騙し慣れている。

 効果的な脅し方や煽り方、相手から情報を奪う手段など……、10代前半の少女が行うにしてはあまりにも酷過ぎる暴虐を、ワルトナとレジェリクエから学んだのだ。


 そんなリリンサは、セフィナに誇れる勝利の為に手段を選ばない。

 たとえ魔王と恐れられていようとも、ならばその風潮を利用するとばかりに魔王を演じて開き直っている。



「せいぜい足掻いてみると良い。飽きたら魔王の脊椎尾の露にしてあげる。」

「その自信、その油断。後悔させますわ」



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