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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第55話「補給と休息」

「ちぃぃぃ……見失ったわぁ。腹立つぅ」

「あえていいますわね。カツテナイ食い逃げですわー」



 テーブルの上で無防備を晒していたゴモラは、振り下ろされたフォークを華麗に回避。

 そして、セフィナへのお土産たるアップルパイを頭に乗せ、颯爽と森の中へ消えた。


 英雄になる事をローレライに誓ったレジェリクエは、割と本気でゴモラを始末しようと後を追う。

 だが、ゴモラの美しいタヌキステップに追い付けず、呆気なく見失ってしまったのだ。



「ホントに害獣そのものねぇ。仕込んでおいて良かったわぁ」

「仕込みですの?」


「お土産の箱の中に、ワルトナ宛ての請求書を入れておいたのぉ」

「流石、陛下。抜け目ないですわ!」



 超越者の実力を図るという思惑があったとはいえ、こうも簡単に逃げられると非常に腹が立つ。

 この怒りは請求書ごときでは収まらないと奥歯を噛みしめ、レジェリクエは再びテーブルに戻った。



「はぁ……、それにしてもローレライ様は凄い方でしたわね」

「あらぁ、それはどういう意味?どうして溜め息を付くのぉ?」


「マナーや所作などの品行方正は完璧。その言動には自信が溢れ、王族としても満点。さらに英雄として圧倒的な力を持ち、思慮も深い。ついでに砕けた口調で親しみやすさまで備えられたら、非の打ち所がありませんわ」

「だってロゥ姉様だもの。それくらい当然だわ。で、何でションボリしてるのぉ」


「陛下が真愛を抱いているお方ですもの。密かにお会いするのを楽しみにしていましたのよ。でも、私、怒られただけでしたわ……」

「あぁ、そういうこと。ガッカリしなくて良いわよぉ。アレはロゥ姉様なりの叱咤激励だからぁ」


「叱咤激励ですの?」



 テトラフィーアがしょんぼりしているのは、ユニクルフィンを化物扱いした事を咎められたからだ。

 いきなり人間ではないと言われて気が動転したとはいえ、あの言動は自分でも不味かったと反省している。

 だからこそ、ローレライの叱責が心の奥深くに刺さり、言葉数を少なくさせているのだ。



「テトラがユニクルフィンに好意を寄せていると言ったから試されたのよ。ワザと棘のある言い方をして反応を探っていたの」

「じゃあ……私が苦言を呈したのは?」


「好印象だったでしょうね。ユニクルフィンへの想いが本物だからこそ、格上の人物にも立ち向かう。相手を思いやる事ができて初めて家族になれるって、ロゥ姉様は何度か口にした事があったもの」

「はぁー、良かったですわぁー」



 稀代の賢王を欺いたローレライは、不快感や強い言葉を放ち演技する事など造作もない。

 それを知っているレジェリクエは、向けられた殺気はテストだったと言ってお茶を濁した。


 ローレライの言葉の中に、ユニクルフィンへの愛情が隠されていたのをレジェリクエは感じ取った。

 そして大好きなお姉様をユニクルフィンに取られるのを阻止するべく、テトラフィーアを鼓舞している。



「さて、これで余も英雄を目指す事になった訳だけどぉ、何から取りかかろうかしら?」

「まずは戦争の決着を付けるのが望ましいですわね」


「そうよねぇ。残っているのは指導聖母・悪質マリシャス。フォスディア家の御令嬢ぉ」

「身元が判明している彼女の実家には、サンジェルマ達を向かわせてありましたわよね?」


「そうよぉ。これで指導聖母は全滅ぅ。ブルファム王国の戦力も……って、そうそう。澪騎士ってどうなったのかしら?プルぅ?」



 すっかり忘れていた澪騎士の安否確認をするべく、レジェリクエは冥王竜を呼びながら振り返った。

 そしてそこには……、和気あいあいと談笑をしている冥王竜と崩界鳥の姿。

 明け方の空を飛ぶのは気持ちいいだとか、美味しい新芽が出る森を知っているだとか、竜と鳥ならではの話題で盛り上がっている。



「くすくす……、すっかり仲良しさんねぇ」

「きんぐぅ!」

「うむ、フェニクは良い奴なのだ。眷皇種としての苦労と心構えも弁えている」


「それは良かったぁ。どんな話をしたのか後で教えてねぇ。で、澪騎士は?」

「英雄ローレライと共に『外大陸』に行くと言っていたぞ」


「……ちょっと待ちなさい。どうしてそうなった」



 ローレライは澪騎士の事に触れていなかったと気が付いたレジェリクエは、隠されていた思惑を読み取った。

 そして、ちょっとだけ悔しい思いをしながら、事情を話した冥王竜を睨みつける。



「じゃあ、ロゥ姉様は澪騎士なんかを供に選んだのねぇ。なんか悔しいぃ」

「そう睨むでない。とても怖い顔をしておるぞ?」


「だってぇ」



 英雄を目指すと言った自分は置いていかれたのに、澪騎士は一緒に行く事を許された。

 レジェリクエはそれが納得できないのだ。


 もちろん、自分はレジェンダリアの女王であり、これから大陸平定後の激務が待っている事も理解している。


 当然、ローレライと行動を共にするのは、王務をすべて放りだす事だ。

 それが許されざる事も、誘われれば付いて行ってしまう事も分かっていながら、それでも「一緒に行こう」と誘って欲しかった。

 レジェリクエは我慢させられたワガママに、たっぷりの利子を付けて支払って貰うと決め、むぅぅ。っと頬を膨らませている。



「これでブルファム王国の真っ当な戦力は全て崩壊したわね。あらぁ、戦争に勝っちゃったぁ」

「ですわね。ちなみに、真っ当じゃない戦力はあるんですの?」


「アホの子ぉ。凄く今更だけど、セフィナ一人で国落としが出来るわね。フランベルジュとか半日で滅びるわよ」

「ちょ、私の母国を滅ぼさないでくださいまし!」


「お見合い写真が送られてくるたびに、滅びればいいのに……ってぼやいてるじゃなぁい」

「いや、あれは国王様おとうさまがうざい……、ユニフィン様一筋だからですわ!」



 最愛の人を出汁に使って話を切り捨てたテトラフィーアは、切り分けたケーキを口に運んだ。

 現状で優先させるべきは体力回復。

 既に魔力を使い果たしている二人には効率のいい補給が必要不可欠だ。



「陛下、ローレライ様が最後に言っていた事が気になりますわ。どうお考えですの?」

「人間の皇、プロジア・フォルトマンねぇ」



 レジェリクエは含みを持たせて呟き、優雅な動きでケーキにフォークを通していく。

 そしてパクリと頬張り、気の抜けた声で語りだした。



「プロジアといえば、ホーライ伝説に出てくる英雄三人組の一人。まず間違いなく、ユルドルードやアプリコットの友人よねぇ」

「ですわよね?大聖母ノウィンとも顔見知りでしょうし、ひいては部下たるワルトナさんや私達とも対立しませんわ」


「プロジアは今のところ中立。余計な事をしなければ敵にならないでしょうね。ただ、ノウィンと仲が良いかには疑問が残るわ」

「それはなぜですの?」


「ロゥ姉様が「アプリコットから席を奪ってそこにいる」と言っていたからよ」



『奪って』とは、誰かに危害を加えて利益を得る行いの事をさす。

 そして、レジェリクエはその『危害』に心当たりがあるのだ。



「アプリコットの死は世界から隠蔽されていない。そして、リリンが言うには、アプリコットは自宅の寝室でお腹に大きな穴を開けて息を引き取っていた」

「……たしか、冒険者の任務に失敗し亡くなったと言っていましたわよね。不自然の塊ですわ」


「状況を整理するわ。①アプリコットは蟲量大数に殺されていない。②白銀比の権能により、世界から隠蔽されてもいない」

「③毒に置かされていたとはいえ、人間の皇種として隔絶した力を持っていた。④おそらく他殺されている」


「そして……⑤後継者として、プロジアが人間の皇種になった」



 並べられた状況を鑑みた二人は、それが触れてはならない禁忌かもしれないと思った。

『皇種の席を奪う』という、未知。

 その手段も方法も不明であるものの、どうしても脳裏にちらつく答えがある。



「プロジアは蟲量大数との戦いに参加していない。もし仮に、何らかの理由で仲違いをし、最悪の場合は……」

「アプリコットを殺し、皇種の資格を奪った……?」



 口に出してしまった事により、二人はこの考えを考察せざるを得なくなった。

 あらゆる可能性を考え、最悪の目を回避するのが施政者の仕事だ。


 それから幾つかの考察を交わし、それ以外の可能性も模索していく。

 そして結局、答えは見つからず、蟲との戦いの前に人類の皇との戦いがあるなど御免だとレジェリクエ達は笑った。



「どうあるにせよ、リリン達には教えない方が良いでしょうね」

「そうですわね。性格的に考えて、ブチ転がしに行く!って絶対に言いますわ」


「なんか、リリンに隠し事が多すぎよねぇ」

「全部、ワルトナさんのせいですわー。私たちは考えてもしょうがありませんわよ」



 現状、リリンサへ情報を伝える事は悪手でしか無い。

 そう判断した二人は、ティーカップに残っていた紅茶を飲み干し、テーブルと椅子を仕舞った。

 緊張から解き放たれ、適度に小腹が満たされた今、体が次に欲するのは休息だ。



「プルぅ……。こっちにいらっしゃい」

「ぬ、なんだ?褒美でもくれるのか?」


「もう一仕事してくれたら、たっぷりご馳走してあげるわぁ。余達を背中に乗せて運んで欲しいのぉ」



 急速に瞼が重くなってきているレジェリクエは、冥王竜の背の上で休息を取る事にした。

 時間を無駄にしない為に移動も同時に行い、道案内はグオに任せておけば大丈夫だろうと当たりを付ける。


 ちょっとだけ何かを言いたそうだった冥王竜だが、キングフェニクスの高らかな鳴き声を聞いて頷いた。

 そして、地に腹を付けて伏し、二人が背に乗るのを待つ。



「ゆっくり歩いてくれると嬉しいわ」

「うむ、任せておくが良い。もともと黒土竜は四足歩行が主なのだ。並みの騎馬などに負けない乗り心地を与えてやろう」


「あはぁ。ちょう頼もしいわぁ……」



 冷たい鱗に頬を寄せ、レジェリクエとテトラフィーアは体を預けた。

 その心地よい感触に、すぐに意識が落ちていく。



「安心して眠るがよい。そこは、この大陸でも有数の安全地帯だ」



 自分の背に向かって声をかけた冥王竜は、ゆっくりと歩き出す。

 隣を歩くのはグオとフェニクス。

 男ばかりで声をひそめながら、大陸平定後の祝勝会について話し始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 新キャラ、だよね?キャラが多すぎて覚えきれないw
2021/10/14 18:26 退会済み
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