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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第52話「大魔王後援会④」

「そう、悔しいのならレジィもこっち側にくれば良い。おねーさんの目は、その可能性を保証している」



 神の瞳からまっすぐに見つめられたレジェリクエは、ゆっくりと飲み込むように言葉を吟味した。


 言葉の意味自体は既に理解している。

 だが、目指してきた1%側への道が既に出来上がっていた事に対し、僅かな動揺が有るのだ。

 そして、静かに息を整えたレジェリクエは、その問いかけへの答えを出す。



「余は英雄になりたいわ。ロゥ姉様の瞳に可能性が映っているというのなら、見過ごすなんて出来ないもの」

「よっし、それでこそおねーさん自慢の妹だね!」


「でも、余になれるのかしら?」

「にゃはは、心配要らないよ。誰にも負けないという強い意志。それこそが、英雄になる為に最も必要な素質だ」



 レジェリクエの言葉に喜びを感じているようにも、全て知っていた上で確認をしただけにも見えるローレライは、テーブルの上に魔導規律陣を描いた。

 何かを感じたゴモラが視線を向けた先に出現したのは、虹色に輝くクリスタル。

 それがレジェリクエとテトラフィーアの顔へ光を翳している。



「レジィは英雄になる事を選んだ。そして実は、テトラフィーア姫もその資格を有していたりする」

「えっ、私もですの!?」


「そうだよ。二人ともお互いの顔を見てごらん。レベル目視を起動した上でね」



 ローレライに促されて顔を見やった二人は、同時に目を見開いた。

 お互いに驚愕が彩る顔の横、そこには『レベル99999』という神の理が浮かんでいる。



「へ、陛下!?レベルが……!」

「カンストしているわねぇ。どうやらサーティーズは美味しい獲物だったみたい」

「そう、レジィ達はレベルの限界値に到達した。あとは、ちょっとした条件で英雄の領域に踏み込む事が出来るよ」



 さっきまでの無邪気な表情から一変させ、ローレライが纏っているのは確固たる強者の風格だ。

 まるでここが人生の分岐点であるかのように、先駆者として道を示している。

 そして、既に強い意志を持っているレジェリクエと違い、テトラフィーアは瞳を揺るがせていた。



「ちょっと……これは予想外ですわね」

「どうかな?レジィと一緒に英雄を目指すなら特別にサービスしてあげるけど?」


「英雄、英雄……、そうですわね。ユニフィン様と添い遂げる以上、その肩書きも悪くありませんわ」

「ん?んー?あ、そういうこと。ユニくんも隅に置けないじゃん」


「ですが、ローレライ様のご厚意、今回は見送らせていただきますわ。私は英雄になりたくありませんの」



 テトラフィーアは丁寧に頭を下げて固辞し、その未来を受け流した。

 確かに、英雄になれば受けられる恩恵は多いのだろう。

 だが、自分の人生には不要なものだと、テトラフィーアは思ったのだ。



「英雄になれば、より大きな影響を世界に与えられますわね。もし、ユニフィン様の伴侶になる事を決意していなければ、その道を目指したと思いますわ」

「うんうん、それで?」


「ですが、ユニフィン様の周りには既に英雄クラスの方が数多くいらっしゃいます。なら、私くらいは一般人枠(癒し担当)で良いと思いましたの」

「なるほどね。テトラフィーアちゃんは良いお嫁さんになりそうだ!おねーさんが太鼓判を押してあげるよ」



 言葉を取り繕っているテトラフィーアの狙いは、戦い終えたユニクルフィンの休日の占有。

 家庭を守る女としての武器を前面に押し出すことで、自分のポジションを確保したに過ぎない。


 だが、それでいいと思ったからこそ、ローレライは良いお嫁さんになると太鼓判を押した。

 ホーライに師事する英雄見習いとしての人生を経験したローレライは、ユニクルフィンと過ごした何気ない日常の価値を十分に理解している。



「にゃはは!これで、それぞれが自分の未来を見据えた訳だ。ということで、英雄になる為の資格をおさらいしておこう」



 ローレライの声にレジェリクエ達は頷き、真っ直ぐに視線を向けた。

 二人とも英雄になる為の資格について、おぼろげながらに理解できている。

 先程ローレライが語った事に加え、それぞれが集めていた1%側の情報から推察を行っているからだ。


 だが、そんな二人であっても英雄と直接言葉を交わした事は無い。

 この会談には情報以上の価値があると判断したからこそ、その瞳に真剣さが増していく。



「英雄に覚醒する為には、神が定めし条件を5つクリアすればいい


 ・レベル99999になること。

 ・完全人化を会得し、神と同じ姿を得ること。

 ・皇種を含む超越者を殺害すること。

 ・神の因子、もしくは、神の名を冠する武器を覚醒させること。

 ・皇や超越者から複数の加護を得ること……、だ」


「これら以外にもあるけれど、この5つの条件が最もクリアしやすいって事で良いのかしら?」

「そういうこと。レジィは上の2つの条件をクリアした。あと1つクリアすればレベル上限の仮解放『レベル100000(英雄見習い)』になる」



 英雄見習い、それは友人たるワルトナがいる領域だ。

 ワルトナの話の端に見え隠れしている絶対的な自信の正体がそれだというのなら、レジェリクエは直ぐにでも手に入れたいと思った。



「この超越者システムというのは人間が皇種に対抗する為に造られたものでさ、言ってしまえば人間贔屓。人であるだけで条件の一つがクリアできるのはその為だよ」

「なるほどぉ……、そう考えると『神の因子を覚醒させる』や『皇種から複数の加護を得る』というのも他種族では難しい条件よねぇ」


「そういうこと。神の因子は人間しか持ってないしね」



 飄々とした態度で告げながら、ローレライの視線はアップルケーキタワーを壊滅させた害獣へ向けられている。

 人間以外には難しい条件。

 それを裏返せば、人間以外の超越者は難しい条件をクリアしているという事だ。


 超越者を殺しているのが確定した害獣を恐れたレジェリクエは、バケツで作ったリンゴゼリーを召喚した。



「そんな訳で、レジィは後一つ条件をクリアすればいいんだけど……、狙うのは神の因子もしくは神の名を冠する武器の覚醒だ」

「レーヴァテインやグラム、ルーンムーンもそうかしら?」


「そうだよ。だけどこれが小難しい。察している通り、神の因子を持っているだけじゃ条件は満たせないんだ」



 レジェリクエもテトラフィーアも、世絶の神の因子を持っている。

 もし、これで条件をクリアしているのなら、二人のレベルは100000になっているはずなのだ。



「実は、神の因子には『ランク』がある」

「……ランク?」


「神の因子は使い続けていると成長する。その条件は個別に違うけれど、共通しているのはランク2へと進化した神の因子は、まるで違う性能を発揮することだ」

「余の確定確率確立は一日3回までしか使えない。その回数が増えるのかしら?」


「そうなるかも知れないし、もっと別の何か……、未来視が出来るようになったり、未来の校正が出来るようになるかもしれない。そういう、神の理へ干渉出来るようになるのが超越者になる為の条件なんだ」

「なるほどぉ、英雄になるには、何らかの手段で理に干渉すれば良いのねぇ」


「レジィやテトラフィーアちゃんの神の因子は未覚醒(ランク1)。一方、おねーさんとユニくんの神の因子はランク2へ進化している」

「ユニクルフィンは覚醒者……、そんな事をワルトナが言っていたのは、ランク2の神の因子を持っているからって事なの?」


「いや、ユニくんは普通にレベル10万を超えているよ。おねーさん程じゃないけどね!」



 そう言ったローレライは認識錯誤を解除し、すぐ横にレベル表示を出現させた。

 その数値は262818。

 最大値カンストに達した二人の3倍近い数字に、それぞれが同時に息を飲む。



「ちなみに、神の因子によって戦闘特化だったり、サポート向きだったりと千差万別。まぁ、ユニくんのは分かり易い程の攻撃特化なんだけどね」

神壊因子コマンドメンツという能力で、彼の出生に大きく関与したと聞いているわ」


「そう、世界で唯一、神の因子を破壊できる神の因子。使い方を思い出しさえすれば、ユニくんはレジィ達の神の因子を一方的に停止できるよ」

「それって凄い強いわよね?英雄というのは、そういう理不尽な領域に住んでいるのね」


「勘違いしないで欲しいのは、神の因子の優劣だけが全てじゃない。実際、ワルトナちゃんは世絶の神の因子を持っていないよ」



 身近な先駆者たるワルトナよりも優れた才能を持っていると言外に告げられ、レジェリクエは自分の価値を見つめ直した。

 ローレライとの差を客観的に見定め、強かに状況を考察していく。



 余が持っている世絶の神の因子は2つ。

 数だけで言えばロゥ姉様の世絶の神の因子と同じで、それらを覚醒させれば英雄の領域に踏み込む事が出来る。


 ただし……、それを覚醒させる為の条件が分からないわ。

 確定確率確立には使用回数があるし、毎日使いきっている。

 後どれだけの年月が必要なのか、見当もつかないわね。



「言うは易し、やるは難し。とは良く言ったものねぇ。成してみなければ条件が分からないのって凄くもどかしいわ」

「にゃはは!だからこそレジィが取るべき手段は一つ。神殺しの覚醒だ」


「それって……、レーヴァテインでもいいのかしら?」

「レーヴァテインの覚醒者はおねーさんだ。残念ながら、他の神殺しを手に入れる必要がある」


「……神殺しって10個しか無いのに、アホの子が2つも持ってたわぁ。余りがあるとは思えないんだけど」

壱切合を染め尽す戒具(ドッペルシェプター)。神殺しの試作機たるその武器で代用が可能だよ。この『神の情報端末(アカシックレコード)』が有ればね」



 輝きを放っている虹色のクリスタル。

 それを手に取ったローレライは魔力を流し、その輝きを一層強めた。

 そして、それに反応するように、壱切合を染め尽す戒具にも光が宿る。



「極論、英雄になる為に必要なのは神の理へ干渉する力だ。神殺しの試作機たる千海山シリーズには備わっていないんだけど、後付けしてやれば問題ない」

「質問しても良いかしら?たとえば普通の魔道具に神の情報端末を組み込んだとして、条件を満たせるの?」


「満たせるっちゃ満たせるけど、並みの魔道具では融合させた瞬間に崩壊する。神の情報端末に秘められたエネルギーは少なくないからね」

「滝をコップで受け止めるようなものなのねぇ」



 レジェリクエは神の情報端末について知っている。

 絢爛謳歌の導きを探す際に、『どんな願いも叶えてくれる宝石』があるという話を聞いた事があったからだ。



「さぁ、武器を出してレジィ。今まで頑張ったご褒美に、おねーさんが持っている奴の中で一番強い奴をあげるとしよう」

「ありがとうロゥ姉様。それにしても、どんな願いでも叶える事が出来る宝石ね……、その力を宿すとどうなるの?」


「レジィが願った未来を授けてくれるよ。きっとね」



 そして、ローレライは差し出された壱切合を染め尽す戒具へクリスタルを接触させる。


 その変貌は一瞬の時の中、認識の外側で行われた。

 レジェリクエやテトラフィーアにとっては閃光の中の出来事。

 眩い光が過ぎ去った後には既に、その刀身に虹色が差しこんでいた。


 神の目を持つローレライだけは、どんな経緯で融合が行われたのかを視認できた。

 そして、満足した笑顔をレジェリクエに向ける。



「さてと、これで準備は整ったね。レジィ、手に入れたい未来を強く念じながら、魔力を流してごらん」

「覚醒させる事ができれば、余も1%側へ行ける……」



 静かに、確実に。

 そっと壱切合を染め尽す戒具に手を掛けたレジェリクエは、残り少ない魔力を注いでいく。


 思い続けた未来(憧れ)を、その心に宿して。



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