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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第47話「銀幕の結末」

「はわわわわ……。なんか頭痛い……」



 人生で初めて感じる気持ち悪さと頭痛に眉をひそめながら、サーティーズは目を開いた。

 視界の先にあるのは青空。

 だが、それが目の前にあるという事も含め、置かれている状況がまったく掴めていない。


 頭の下には、何やら柔らかいものがある。

 視線の端に映っているのはレジェンダリアの軍服。

 そして、首に添えられているのは、温かい誰かの指。


 やがて、サーティーズの顔に三つの影が落とされた。

 膝枕をしているナインアリアと、近くに立って見下ろしているレジェリクエとテトラフィーア。


 自分が敗北し捕獲されているのだと悟ったサーティーズは、小さく息を飲む。



「は、はわわ……」

「言っとくでありますが、変な動きをしたら首をへし折るであります。ちょっとの魔力の揺らぎもダメであります」


「はわわわわわ……っ!?」



 サーティーズが沈んでいる巨大な酒樽を眺めながら、レジェリクエ達はこれからの打ち合わせを終えた。


 レジェリクエが指定した勝敗の付け方は降参させること。

 それ故にレジェリクエ達の勝利は確定しておらず、最後の締めをする為にナインアリアにサーティーズの拘束を命じたのだ。


 時の権能といえど、能力を発動させる為には魔力が必要不可欠。

 それを肌で感知できるナインアリアの指が首に添えられている以上、絶対に先手を打つ事が出来る。



「さてとぉ。サーティーズ、降参するぅ?」

「……。」



 自分が置かれている状況を理解し、サーティーズは本気で青ざめた。

 ここから打開する手段が見つからない。

 ナインアリアを振り切るどころか、変な事を口走っただけで絶命は必至だ。


 せめて誰か仲間がいれば……、そんな事を想っていたせいか、その耳に近づいてくる足音を捕らえた。



「……陛下」

「えぇ、余ですら聞き取れる雑な足音ぉ。まったくやる気が感じられないわぁ」

「はわわわわ!!セブンジードさん!?助けてください!!」



 既に青白い顔のセブンジードが草むらを掻き分けて顔を出すと、その顔色は土気色に変わった。

 一瞬で状況を理解し、ギュッと瞳を引き絞る。

 そして、決意を固めた軍人の顔で、死地へと赴いた。



「セブンジードさーん!こっちです!!助けてぇーー!!」

「大魔王共が群がってるようにしか見えねぇぞ。どう考えても無理だろ」


「勝手に殺さないでください!!社長命令です、助けなさい!!」

「うっせぇ、パワハラで訴えんぞ」


「はわわっ!?」



 会社経営者として言われたくない脅し文句を突きつけられ、サーティーズは硬直した。

 新人教育、足りてないですね、はわわ……。と何処にも向けようがない怒りを抱いて悶えている。

 が、そんな事をしても助からないと、思いついた小技を試してみる事にした。



「はわわ、助けてください……、お願いです……なんでもしますから……」



 サーティーズが思いついた手段、それは戯楼鳴鳥で冗談交じりに使われているおねだり文句。

 この誘い文句にチャラ男が弱い事を、受付から眺めていたサーティーズは知っている。

 そして、セブンジードは見事に引っ掛かった。



「俺だってなぁ、代われるもんなら代わってやりてぇよ」

「じゃあ代わって下さい!お給料も弾みます!!」


「だって、ナインアリアの膝枕だぞッ!?俺はガチムチおっさんのだったのにッ!!後頭部に当たってた柔らかな膨らみに絶望したッ!!あれが王様の度量だというのかッ!!」

「何の話をしてるんですか!?というか、真面目に仕事してくださいよ!!」


「現在進行形で膝枕な奴に言われたかねーよ!!」



 私は社長なのに、何でこんな暴言を吐かれなくちゃいけないんですか?

 そんな言葉が頭をよぎり、初めて、サーティーズは何かがおかしいと気が付いた。


 セブンジードが一人で現れた理由。

 それはグオに勝利したからに決まっている。


 服もボロボロだが、シルバーフォックス社の社服も着ている。

 敗北したのなら拘束されているはずだし……という至極真っ当な考えが、思考回路を狂わせているのだ。



「まぁまぁ落ち着いてぇ、ナインアリア、後でセブンジードに膝枕をしてあげなさい」

「もちろん、けだもんジードさんが変な動きしたら首をへし折って良いでありますよね?なお、匂いとか嗅がれたくないので呼吸もNGであります」


「ふっざけんな!!事実上の処刑じゃねぇか!」

「私、今、処刑されそうなんですけど!?ねぇ、聞いてます!?」



 混沌とする声に眉を寄せたテトラフィーアが、タイミングを見計らって手を叩いた。

 場の空気を仕切り直させるその音に、騒いでいた人達が一斉に黙る。



「静かにして頂いても宜しくて?それとも、強制的に黙らせて欲しいですの?」

「はわわ……ごめんなさい」


「さてと、まずはセブンジードの処理ですわね。陛下、私に任せて頂いても宜しくて?」



 もちろんよぉ、と満面の笑みを溢したレジェリクエに頷き返し、テトラフィーアはヒールを鳴らした。

 サクサクサクと落ち葉を踏み、セブンジードの前に立って真っ直ぐに視線を向ける。



「セブンジード、頭が高いですわ。母国の姫の御前でしてよ。跪くのが礼儀では無くて?」

「……不用心すぎるだろ。俺はシルバーフォックス社に寝返ってるんだぞ?」


「あら、いつまで茶番を続けるつもりですの?貴方が洗脳されきっていないのは分かっていましてよ」



 平然と答えたテトラフィーアの態度に、自分の失策を悟ったセブンジードは奥歯を噛んだ。

 ここから先は一手でも間違えれば、即死。

 セブンジードの類稀なるチャラ男感覚が自然と足を折らせ、跪かせた。



「……マジか、いつバレたんですか?」

「最初っからですわ。貴方の性格的に、本気で嫌悪している人物へ近づくのは避けますわ。顔を見せた時点で大なり小なり、私達への未練が見て取れます」


「性格……?俺が洗脳されていないのを聞き分けたんじゃないのか?」

「あら、私の事を舐めてますわね。人の上に立つ者として、重用している重臣の性格くらい把握していましてよ」


「そうか、まだまだ出し抜けそうにねぇな、こりゃ……」



 降参の意味を含め、セブンジードは両手をテトラフィーアの腕に添えた。

 そして優しく持ち上げ、自分の額に触れさせる。

 フランベルジュ国内で行われている『頭を差し出す』という意味の、最大の敬礼だ。



「はわわ……?セブンジードさん?」

「そういう事だ、サーティーズ。俺を裏切らせるにゃ駄賃が足りてねぇぞ」


「なんで……?ナインアリアさんに続いて貴方まで……?」



 自分の権能に絶対的な自信があったサーティーズは、セブンジードの裏切り返しに動揺している。

 あんな酷い記憶を植え付けたのに、まだ信じられるのですか……?と、その気持ちを理解できないのだ。



「どうやら完全に勝敗が決したようねぇ、どうする、降参するぅ?」

「くっ、降参など」


「余としてはぁ、未来永劫、勝負が付かないままにするのは面白くないのだけれどぉ」

「……早まらないでください。きっと良い答えがあるはずです、はわわ」



 このままここで殺せば、未来永劫勝負が付く事は無い。

 そんな脅し文句に屈し、サーティーズは目をグルグルとさせている。

 が、良い考えが浮かばず、痺れを切らしたナインアリアが指に力を入れた事で諦めた。



「こ、こぅこ、こ、降参します。……はわわ、1100億エドロ……」



 ガックリと項垂れたサーティーズだが、その目は完全に死んでいない。

 項垂れたフリをしてチャンスを窺っているのだ。



 何らかの方法で私を拘束するつもりでしょうが……、貴方達程度では長く拘束していられませんよ。

 この状況だって、ナインアリアさんの集中力が切れたら逃げられるでしょう。

 道具に頼るなんて論外、本来、時の権能は攻略不可能な能力なのです。


 ですが……、



 拘束できる者に一人だけ心当たりがあるサーティーズは、その答えを否定した。

 自分を捨てた母が、矮小な人間の命令に従って会うとは思えないのだ。


 複数の諦めが混じった複雑な表情。

 それを隠しもせず、サーティーズは視線をあげた。



「それで、私はこれからどうなるのですか?無罪放免で釈放にはならないですよね?」

「もちろんよぉ。戦争が終わるまで身柄を拘束させて貰うわぁ」


「言っておきますけど、私に封印魔法は効きません。時の権能はとても相性がいいのです」

「……まぁ、貴方を魔法的に拘束する方法が無い訳じゃないわぁ。例えばそう、神殺しの中に内包するとかね」



 レジェリクエの思わせぶりな口調に危機感を覚え、サーティーズはすぐに記憶を読もうとして……、

 締まった首の方に危機感を覚えて中止した。



「げほげほ。犯神懐疑・レーヴァテイン、持っているのですか?」

「勿論あるわよぉ、余の記憶の中に」


「……。記憶を覗いた瞬間、私の首が折られるやつですよね、これ。誘導しないで貰えます?」



 完全に遊ばれてるのが分かっていながらも、サーティーズはレジェリクエに従うしかない。

 身体の中に残っている気持ち悪さが抜けるまでの辛抱だと、産まれて初めての二日酔いを恨めしく思っている。



「ちなみに、余はレーヴァテインを所持していない。が、それ以外の方法がない訳じゃないわ。今回貴方が落ちた酒樽ぅ、あれも1%側対策に白銀比様から教えて貰ったものだしぃ」

「あんな鬼畜な所業を母様から教わったっていうんですか!?」


「そうよぉ。幾億蛇峰を堕とすなら、お尻に酒樽をブチ込むのが早いって言ってたわぁ」



 母様がそんな事を言う訳……ありますね。

 冷静に考えると確信があるその言葉に、サーティーズは悲しくなった。

 自分の母の入れ知恵によって敗北したと知り、物凄く気分が沈んでいく。



「超越者は神から授かりし恩恵として、強力な肉体を得ているわね?それ故に毒物に耐性を持っている者も多いと聞いたわぁ」

「そうですね。種族の違いによって差がありますが、普通の生物の毒とかは気にならなくなりますよ」


「が、お酒は大体の生物に効く。何で効くのかって?神様はお酒が大好きで酔えるようにしてあるとかぁ?」

「そんな馬鹿なことってあります?」


「さぁねぇ、今度聞いてみるわぁ。ということで、下手な毒液に漬からせるよりも、お酒に漬からせる方が効果的な訳ぇ。血流と魔力の流れが暴走し、声も発せず、僅かな時間で意識を失うって完璧じゃなぁい」

「あえて……あえて言いますが……、遊女をお酒に沈めないでください!!マナー違反ですよッ!!」



 遠巻きに話を聞いていたセブンジードは、「酒に沈めたってどういう事だよ?マジで俺達と別次元の戦いをしてるじゃねぇか」と思っている。

 そして、「あー、温泉入りてーなぁ」と、現実逃避を始めた。



「そんな訳で、貴方を拘束しておく手段がない訳じゃないわぁ、だけど、今回、余が使うのは論理の鎖。貴方の信念が強ければ簡単に脱出できるやつよぉ」

「私の信念?シルバーフォックス社・社長としての矜持を甘く見てませんか?」


「余が勝ったら依頼を受けて貰うっていう約束を覚えてるかしらぁ?貴方には……白銀比様の末の娘、サチナちゃんが経営する温泉卿『極鈴の湯』で働いて貰うわぁ」

「え、いまなん――」


「……なんだとぉぉぉぉッッ!?」



 温泉の事を考えていたら、本当に温泉が話題に上がった。

 そんな奇跡を垣間見て、セブンジードは叫ばずには居られなかった。



「陛下ッ!!あの、あの……、大陸中から愛されている最強の狐っ子サチナちゃん、あの耳って本物なんですかッ!?」

「本物よぉ。可愛いわよねぇ」


「マジかぁぁぁああああ!」



 全身で喜びを露わした全力の咆哮に、サーティーズとナインアリアがドン引きした。

 が、レジェリクエとテトラフィーアは理解を示し、納得したように頷いている。



「あの……。セブンジードさん?どういう事ですか?」

「馬っ鹿、お前サーティーズ!?情報を取り扱ってる会社の社長の癖に何で知らねぇんだよ!!」


「えっ。だって、高級温泉宿とか調べちゃったら行きたくなるじゃないですか。社員旅行で行く為のお金なんて無いですし」

「社長なのに貧しい生活してんなッ!?安いもんな、秋刀魚ッ!!」


「別に秋刀魚が好物でもいいじゃないですか!!美味しいんですよ!!」

「じゃなくってだな、ほら、この雑誌を見ろッ!!この子がサチナちゃんだッ!!」



 自分の好物を否定されて拗ねたサーティーズは、顔の前に差し出された雑誌を睨み付けた。

 が、表紙に映っている狐っ子少女を見て目を丸くしている。


 秋の季節を窺わせる着物を緩く身に纏い、日傘代わりに唐傘を差している。

 舞い散る紅葉の中、まるで後ろから声を掛けられて振り返ったようなポーズ。

 だからこそ、美しい毛並みの耳と尻尾が良く映えていた。


 全方向から見て、美少女。

 大陸全土の庇護欲を掻き立てるこの狐っ子の存在が、温泉卿を『理想郷』たらしめている。



「良いかサーティーズ、俺はガキが守備範囲外だ。が、このサチナちゃんには会ってみたいと思ってる。性的な意味で無く純粋な気持ちで!」

「まぁ、可愛いですね。それで?」


「そんだけ!?妹なんだろ!?!?」

「いや、急に妹とか言われても実感ないですし。確かに耳は本物に見えなくもないですが」



 サーティーズが表紙を凝視している上で、ナインアリアもその表紙に目を奪われている。

 あ、やば、かぁわいいでありますぅ……と、なにげに可愛い物好きな性格が刺激されて指が緩み掛け……、気分と指を引き締めた。



「この写真の構図は白銀比様が指定した物でねぇ。複数の要素を組み合わせ魔法効果を与えているって言ってたわぁ。あと、ナインアリア、指を緩めてあげてぇ」

「なんだと!?じゃあ、美少女に見えるのは魔法の効果って事か……?」


「美少女なのは素よぉ。むしろ、本人を前にすると美少女度が爆上げぇ。森羅万象がひれ伏すわぁ」

「森羅万象がひれ伏す、だとっ……!?」


「余とテトラとサチナちゃんの三人で撮った写真がこれよぉ。プライベートな写真だから魔法は掛って無いわぁ」

「なんてこった……、お前らですら引き立て役、だとぉ……」



 ゲホゲホと息を切らしながら、九死に一生を得たサーティーズは自分の扱いの酷さに泣きたくなった。

 自分だって割と美系な顔立ちだと思っている。

 でも、ここまでチヤホヤされた事は無く、その相手が妹となれば僅かな嫉妬が芽生えてしまうのだ。



「ち・な・み・にぃ。混浴に出没する絶世の美女ってサチナちゃんの母親ぁ。完璧な愛嬌の余とぉ、完璧なプロポーションのテトラが鼻で笑われる程の美女ぉ。もちろん、ばくにゅー」

「お前らを鼻で笑う程の美女。それもばくにゅーだと……ッ!?!?」


「ねぇ、セブンジード、さっきから余計な相槌が多くて邪魔ぁ。妄想を膨らませながら、あっちで大人しくしてなさい」

「申し訳ありません。この命に代えましても、あっちで大人しくしてます」



 急転直下、氷よりも冷たい絶対君臨者の眼差しを向けられ、セブンジードは自分の立場を理解した。

 あ、これ、許されてねぇ奴だ。やばい、逃亡の準備をしておこう。とひっそりと存在感を消す。



「納得してくれたかしら?サチナちゃんは正真正銘、白銀比様の娘であり、まだ8歳になっていない。もちろん白銀比様も一緒にいるわ」

「……はわわ!?じゃあ、この本に掛けられているのって記憶改変の魔術陣!?どおりで私の所に情報が来ない訳です!」


「あぁ、貴方の部下で雑誌を見た人がいても不思議じゃないものねぇ」

「そういう事です。……母様、こんな手の込んだ事をしてまで、私に会いたくないのですか……?」



 ポツリと溢された呟き、それはサーティーズの本心からの言葉だ。

 その感情を聞き取ったテトラフィーアは、悲痛な表情となり一歩前へ歩み出る。

 だが、それをレジェリクエが制止し、代わりに口を開いた。



「白銀比様は自分の子から隠れている。その理由は、その子を守る為だと言っていたわ」

「守るため……?」



 レジェリクエがテトラフィーアを制止した理由、それはレジェリクエの方が白銀比の心を知っているからだ。

 単純に言葉を交わした回数が多いのもある。

 だが、母親を知らないレジェリクエは、母親として語る白銀比の言葉が好きだった。

 だからこそ、その一字一句を覚えている。



「『身が離れど、想い図る心までは変わらんなんし。わっちと一緒にいるよりも、子らには世界を見て欲しいでありんす。自分で掴み取った未来、それがきっと真の遊楽なんし』。寂しそうに言ったこの言葉の意味、貴方なら分かるんじゃないかしら?」



 その言葉に思い当たる節があったサーティーズは、静かに目を閉じた。

 そして心の中で、「……兄様達の。」と母の言葉を思い出し、静かに目を開ける。

 その瞳には、もう、敵意や寂しさは残っていなかった。



「余の依頼を受けて欲しいわ、サーティーズ。極鈴の湯の護衛依頼を受けて貰えないかしら?」

「いいのですか?私が母様に会っても……?」


「あなたはシルバーフォックス社の社長として、極鈴の湯へ仕事をしに行くだけ。他に付加価値が付こうとも、それは変わらない」

「ふふ、笑っちゃうくらい暴論ですよ、それ」


「見せてあげればいいんじゃない?自分の足で人生を歩んだ、今の貴方を」

「……はい。シルバーフォックス社は、貴方の御依頼をお受けしたいと思います」



 緩みそうになる涙腺を必死に引き締めながら、サーティーズは仕事の時の顔へと取り繕っている。

 そして、心の中で深い感謝をレジェリクエへ向けた。



 これは……完敗です。こんな強固な拘束、私では突破できません……。


 色んなモノが建前なのは分かっています。

 母様では無く、妹のサチナちゃんと契約するのですから、力の差は明白。

 逃げようと思えば簡単に逃げられる、物理的な拘束力など無いでしょう。


 でも、この拘束を私の方から手放すなんてあり得ません。

 例えタダ働き……、いえ、従業員にお給料を払う必要がありますから、本当にタダ働きは困りますけど……、私の裁量が許す限りの割引をしてもいいです。


 我がシルバーフォックス社は数々の失敗を糧に、会社を大きくしてきました。

 その中で、今日の敗北は最も意味があるものだと思います。


 シルバーフォックス社、『銀のキツネ』。

 母様に見つけて貰う為の社名、この役割を終える事が出来るのですから。


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