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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第45話「銀幕の終局⑤」

 

「ぐるぐる!きんぐぅー!!」



 鬱蒼と生い茂る森に、厳格な声が響いた。

 それは、国王が民に語りかけるような号令。

 世界の頂きを知るもの、その戦闘開始の合図だ。



「ここで貴方が参戦するのですね……」

「きんぐー!」



 この場を支配していたサーティーズが浮かべている表情には、僅かな苦悶が浮かんでいる。

 レジェリクエとナインアリアを討ち取る為の切り札だった缶蹴りを邪魔された事にも、思う事があるのだろう。

 だが、テトラフィーアが聞き取った感情は……、確かな『寂しさ』だった。



「……なぜです?なぜ、『崩界鳥・アヴァートジグザー』として名を轟かせた貴方が、なぜ今更、人間の下になど付くのです?」

「ぐるぐるきんぐぅー!」


「その名を名乗る気も無ければ、資格もない?今はただのフェニク?眷皇種として返り咲く事を望まないのですか?」

「ぐるぐるぅきんぐー!」



 ポツリポツリと交わされた会話。

 片方の言葉しか分からない為に、部外者達は内容を知る事は出来ない。

 ただ……両方の感情を聞き取れるテトラフィーアだけは、内容を推察することが出来る。



「……陛下。なんかあっちで過去編を始めましたわー」

「あはぁ」


「陛下?」

「……いい、すごくいいわぁ!後で絶対調べるぅ!!」



『崩界鳥・アヴァートジグザー』

 直訳で意味を当てるのならば、『崩れ終わる世界の中で、稲妻すらも避けし者』だろうか。

 レジェリクエはそんな事を考えながら、魔法を通じて送られてくるテトラフィーアの話に適当に相槌を打っている。



「ぐるげるきん!」

「そうですか、説得は無駄の様ですね。恩を仇で返すような真似をしてすみません。……が、立ちはだかるなら手加減はいたしませんよ」


「きんぐぅー!」

「ふふ……、その気高き心は変わらないですね」



 両者の間に流れる感情が慈しみに変わるのを聞き流したテトラフィーアは、そろそろ事態が動きそうだと気を引き締めて銃を構えた。

 密かに打ち合わせていた作戦では、キングフェニクスの参戦が勝敗の分岐点。

 万全の盤面が完成した以上、あとは一気に詰めるだけだ。



「フェニクぅ、余達はサーティーズを殺す気はない。捕らえたいだけよぉ」

「ぐるぐる~!」


「まずは、この缶蹴り攻略から始めましょぉ」

「きんぐ!」



 任せておくがよい。

 そんな感じの頼もしき鳴声を聞いたレジェリクエとナインアリアは、二人ともが別々の方向に視線を向けた。

 そして、レジェリクエが右へ、ナインアリアが左へ、そしてキングフェニクスは自分で蹴り飛ばした缶に向かって真っ直ぐに走っていく。


 だが、軽々と音速を超えたキングフェニクスに、サーティーズが追従する。



「もう、あの頃の臆病な私では無いんですよ。足だってこんなに速くなりました」

「ぐるげ!」


「ですから……、わたしといっしょにあーそびましょ」



 キングフェニクスをプレイヤーへと迎え入れ、サーティーズは缶を見据えた。

 その脳裏に浮かぶのは、遥か昔、白銀比に置き去りにされた直後の自分。

 突然降られた雨に濡れ、失意にくれる中、見つけたのは小さな洞窟。



「きんぐうぅー!!」

「アヴァートジグザー、みーつけた!!」



 そこにいたのは、風の噂で聞き及んだ眷皇種。

 モフモフな羽毛に厳格な風格を纏わせた山の支配者・アヴァートジグザーだ。


 そして、みすぼらしい格好の少女を見たアヴァートジグザーはこう言った。

『何かの果実を持って(ぐるぐる)こい。そうすれば(きん!)しばらく此処に(ぐぅ)置いてやる(ぅぅ!)



「あはぁ、そう易々とフェニクは取らせないわよぉ」

「そう言えばあなた達も居ましたっけ。忘れてましたよ!」



 サーティーズが再び缶を踏みつけようと足を振り下ろすも、踏みしめたのは地面だ。

 今度はレジェリクエが振り抜いた長槍によって缶が弾き飛ばされ、宙を待っている。

 くるくると回転しながら登っていく缶をキングフェニクスとサーティーズが目で追い、両者ともが迷いなく空へと駆け出す。



「終わりです!レジェリクエ、アヴァートジグザーみーつけたッ!!」

「ぐるぐる、きんぐぅぅぅうっ!!」



 それはまさに、晴天の霹靂と表現するのが相応しい攻防。

 青空の下で轟く雷鳴光が渦を巻き奏でる、蹴りと突きの応酬。

 それを制し、宙を舞っていた缶を穿ったのは……、キングフェニクスのくちばしだ。



「はわわ、わたしの負けです。流石ですね!」

「きんぐぅ!」


「ありがとうございます。でも、次は負けません!」



 突き刺さったくちばしによって両断された缶が光となって消え、相対する二人の間に剣呑な空気が流れた。

 そして……、その左右から姿を現したのはレジェリクエとナインアリア。

 三方向から向けられる視線、それを諸共せずサーティーズは無邪気に遊びを提案する。



「こおり鬼に缶蹴りと、わたしの二連敗ですか。この流れは何とか変えたいところです」

「運に任せてジャンケンでもしてみるぅ?」


「あっち向いてホイとかなら戦略があって面白いですね。ですが……ここは一つ、私の得意な『だるまさんが転んだ』であーそびましょ」



『だるまさんが転んだ』

 それは、目を閉じている間に近づいてくる敵を罠に嵌め、動いている姿を目視して捕らえるという遊び。

 直接触れたり、視認した後で缶を踏む工程のある遊びと違い、だるまさんが転んだは目で捕らえるだけで効果を発揮する。

 鬼のカウント(意思)によってプレイヤーの行動が制限されるという、サーティーズが常勝無敗を誇る遊戯だ。



「だーるーーーまさーーーんが……」



 くん、っと小さく鼻を鳴らし、サーティーズが走り出した。

 だるまさんが転んだのカウント中は、その権能の影響下により視界が黒く塗り潰されて失われる。

 だが、眷皇種として備わっている他の感覚器官がその代わりを十分に果たす。



「陛下、カウントが終わったら動いちゃダメであります!!アウトを喰らうと強制的に拘束されるでありますので!」

「おーけー。要するに反射神経のもんだ……」


「転んだッ!!」



 カウント終えたサーティーズが目に映したのは、全てが静止した世界だ。

 僅かにも揺るがないレジェリクエとナインアリア、それに向かって走り終えたサーティーズは……、再び目を閉じながら鋭い爪を振りかざす。



「だ~る~~まぁ~~~」

「あはぁ、なるほど、直接攻撃ありなのねぇ」



 サーティーズが振り下ろした爪撃を紙一重で回避しながら、レジェリクエは状況の考察を終えた。

 導き出された答え、それは彼女達にとって好ましくないものだ。



 得意というだけあって、面倒な遊びを持ち出して来たわねぇ。


 サーティーズは視野が塞がれていても他の五感で代用して攻撃をする事が出来る。

 一方、余達はサーティーズのカウントに合わせた動きしかできない。

 無茶な体制……例えば空中とかでカウントを終えられてたら即、敗北。

 必然的に跳躍や空中移動は制限されることになる。


 ちなみにぃ……?



「さんが~~~、こ~~」

「《十重奏魔法連(デクテットマジック)獄炎殺バーニングデス》」


「ろんだ!」



 レジェリクエはカウントに合わせて魔法を放ち、権能の効果範囲を調べた。

 その結果、放った魔法が権能の影響を受けて停止し、霧散。

 実質的に飛び道具も封じられた状況を悟り、僅かに奥歯を噛む。



 空中を動いていた無機物も影響を受けた。

 ただし、空中を舞っていた落ち葉などは消えていない。

 余達プレイヤーが起こした現象に限定されているのねぇ。


 さて、状況は最悪の一言。

 サーティーズのみが自由に行動を起こせる上に、飛び道具が主体のテトラの支援が意味を成さない。

 高速移動を主とするナインアリアとフェニクは不利であり、ルールによって即座に敗北する可能性がある。

 そして、万が一に攻撃が通っても回復されると。


 なるほどなるほど、これは『無理ゲー』ってやつねぇ。

 だからこそ……、余が張った罠が生きてくる。


 最後の勝負をしましょう、サーティーズ。

 余の策謀に溺れ、堕ちなさぁい。

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