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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第40話「銀幕の佳境 グオVSチャラ男④」

「勝負だと?」

「うむ。銃による一騎打ち。儂に勝てば何でも質問に答えてやろう」



 唐突に提案された胡散臭い話に、セブンジードは眉をひそめた。

 だが、それは事態を有利に運ぶ為のブラフだ。

 本心では、この提案に乗る事が最も生き残る可能性が高い勝ち筋だと判断している。



 ……悪い話じゃねぇな。

 荼毘に伏す火之迦具土を使って傷一つ負せらんねぇなら、俺の勝ちは絶望的だ。

 ナインアリアが居ればまだ違っただろうが、一人じゃどうにもなんねぇ。


 だが、銃を使った一騎打ち……競技じみた勝負だってんなら話は違う。

 俺をこれからも使い倒す為に、無傷で確保したいって腹積もりなのも見え透いているしな。

 問題は……、何処に罠が仕掛けられているのか、だ。



「確かに俺は魔導銃について知りたい事が山ほどある。が、今はシルバーフォックス社の仕事中だ。俺は公私を分ける口だぞ?」

「ほっほっほ、一時は国を統べた儂を相手に薄っぺらい嘘など、片腹痛いですぞ」


「……なんだと?」

「セブンジード、貴方は洗脳されきっておりませんな」



 疑問を含まない確信めいた言葉に、セブンジードは息を飲んだ。

 それ程までに、グオに見破られた事が信じれらないのだ。



 ……いつ、バレた?

 テトラフィーア大臣には、それなりに言葉を交わせばバレるだろうと思っていた。

 粗暴な言葉を吐き続ければ嘘だと見抜かれ、俺が勝った後で寝返る布石になる予定だった。


 が、バレちまう程多くの言葉を交わすこと無く、アイツらはどっか行っちまった。

 まさか……コイツも絶対音階を持ってる?

 いや、世絶の神の因子なんつうチートスキルがダブるなんてあるのか?



 混乱するセブンジードの前では、グオが鷹揚に立っている。

 まるで全てを見透かしているかのような瞳に、無意識で一歩後ずさった。



「何を根拠に俺が洗脳されてないと思った?」

「まず、憎たらしいはずの儂達に対しての殺意が足りませんなぁ。ある程度の怪我を負わせればそれで良い。むしろ、サーティーズに治させる為には殺しちゃまずい。そんな思惑が見て取れますぞ」


「殺しちまったら身代金が取れねぇだろ」

「次に、会話ができる理知が残っている事。ブランマンの息子やカルーアなどは聞く耳がありませんでしたからな」


「情報部隊の隊長が馬鹿になったら終いだな」

「そして決定的だったのは……目ですな。洗脳されている者は、そのような野心に満ちた目は出来ぬ」



 全て分かっているのだと、グオは語った。

 サーティーズが何をしたのかも、セブンジードだけが洗脳の掛り方が甘い理由も。

 そして……洗脳された者が、どのような顛末を辿るのかも。



「シルバーフォックス社が記憶を消去するというのは有名な話。ならば、記憶を弄れても不思議ではないと儂は思っていた。何故か陛下達は否定的でしたがな」

「あぁ、俺もそう思ってた口だ」


「今回、直接話を窺って確信しましたぞ。サーティーズは自分の都合のいい記憶を植え付ける事ができ、相手の意識改革を行えるのだと」

「それも正解だろうな。が、俺が洗脳されてない理由と結びつかないぞ?」


「簡単な話ですぞ。犬が大嫌いな人物は、何らかの危害を加えられたから嫌いなのです。命の危機に瀕するほど強く噛まれれば、嫌悪するのも当然ですな」

「……。」


「だが、二度も三度も、十も二十も噛まれ続けた者にとって、たった一度噛まれた記憶が増えた所で影響力など軽微。またかと思う程度ですな」



 グオが言う『噛まれた』とは、『裏切られた』という言葉に置き換えられるものだ。


 人生で経験のない裏切りは、その人物の人格を深く抉り、傷つける。

 今まで忠誠を誓っていた、いや、忠誠を誓っていた主人からの裏切りであるからこそ衝撃は容易いものでは無く、まるで違う価値観となって発露するのだ。


 だが、セブンジードは違う。

 裏切り、裏切られ、騙し、騙され、偽られ、欺く……、そんな人生を歩んできた。

 そして……今までで一番マシな利用のされ方だと思ったからこそ、レジェンダリアに属し続けてきたのだ。



「くっくっく。今更、たった一回の裏切りで俺の心が奪えるって?まさしくチョロイ馬鹿女が考えそうなことだよな」

「ですな。数々の女を落としてきた儂も、これ程チョロイ女には心当たりがありませんぞ」


「なぁ……、洗脳されてたアイツらを利用して、陛下達を見返そうとした事を黙っててくれねぇか?それが勝負を受ける条件だ」

「ふむ?それは彼らの命の保証を得る為の副産物でしかないのでは?」


「こまけー事は良いんだよ。仲間を利用するなんて噂が立っちゃ、チャラ男の名折れだ」



 構えていた銃を下ろし、セブンジードはグオの本心を確かめた。

 警戒を解いた所を強襲するなら絶好のチャンスだと態度で表わし、弛緩した表情を浮かべる。


 しかし、グオが返したのも弛緩した笑みだった。

 二人の屈強な軍人が頬笑み会うという異常事態は、草むらから覗き見ていた者も「ヴィギルルーン……。」と鳴き出す酷さだ。



「条件を飲みますぞ。儂としても魔弾のセブンの実力は把握しておきたいですからな」

「一応聞くが、何の為に……?」


「レジェンダリアの名の由来は、『伝説』の武具が集まった土地だからと言われておりましてな。儂が魔導銃を組み上げられたのも、多くの伝説の武具を知っていたからこそ」

「話が見えないな?それがなんだ」


「儂が魔導銃を作る為に参考にした武具は5つ。歴代の王が身につけた『十本指が象る輪火(ゴレム・レイス)』、それと古来より存在していた4つの銃器型魔道具」

「なに!?」


「その一つは陛下が無敵殲滅様にプレゼントすると言って持ち出され、もう一つはテトラフィーア様が護身用として持っております」

「権力者ども。ちくしょうめ……」


「そして、余っている最後の一つが、この『バアルの裂撃』。これが欲しくはありませんかな?」



 右手の薬指を光らせ、グオは一丁の自動式拳銃を取り出した。

 それは、レジェンダリア軍に配備されている50口径魔弾可変式・デザートGRDに近しい形。

 明らかに、この銃をモデルに造られた事が分かるものであり、セブンジードの興味を引くには十分過ぎるものだ。



「欲しいな。あぁ、そりゃ欲しいさ。だが、あん畜生共が俺にそんな大層なもんをくれる訳がねぇ。……どうせ見せるだけだろ?」

「はっはっは、何をおっしゃいますかな?もう既に一丁は所持しておりますのに」


「……?」

「儂が魔導銃を量産するのに参考にした銃型魔道具は4つ。ベルゼの針撃もその一つですぞ」


「ま、マジかよッ!?」



 セブンジードが持つ最高の狙撃銃、ベルゼの針撃。

 その性能を誰よりも熟知しているセブンジードは、複雑な感情に揺さぶられている。



 ベルゼの針撃が伝説の魔道具だと?

 チェインマンが作った最高傑作って話じゃねぇのか?


 だが、そのチェインマン自身がそれを否定した。

 コイツが嘘をついている?いや、そうは見えねぇ。


 なら、俺は知らず知らずの内に国宝を与えられていた……?

 そして、俺は裏切った訳だ。

 陛下達(アイツら)の期待を裏切って敗北し、今ここにいる。



「もちろん、バアルの裂撃を下賜するのは陛下のご意向ですぞ。軍団将にするにあたり相応の装備を与えると」

「軍団将にするだとッ!?それじゃ……」


「女など抱き放題でしょうなぁ。まぁ、それはよいのだ。儂と銃での一騎打ちに勝てば、バアルの裂撃をくれてやろう。それにいくらでも質問にお答えてやるぞ。どうだ?」

「こんだけ餌をぶら下げられりゃ、乗るに決まってんだろ」



 これは餌で罠だと、セブンジードは気が付いている。


 目の前で数百億エドロのやりとりをされたとはいえ、セブンジードには全くの利益がない。

 金を得たサーティーズの元から、金を払ったレジェリクエの所に戻るのだから当然だ。


 だからこそ、分かり易い恩賞を先に与え、手懐けようという魂胆なのは分かっている。

 その布石の為に、ベルゼの針撃が国宝だという情報が伏せられていたのも理解しているのだ。


 そして……、セブンジードの脳裏に『メイ』が映った。


 金も、名誉も、銃も、手段でしか無い。

 フランベルジュ国が亡国の憂き目に遭った時、仏頂面で文句ばかり言いつつも、最後まで見捨てなかった彼女を手に入れる為に、セブンジードは『魔弾のチャラ男』になったのだ。



「で、一騎打ちってのはどういうルールだ?」

「新たな魔法の使用は禁止、お互いに撃てる弾丸は6発限り。先に弾丸を当てた方が勝ち、ですぞ」


「何で6発だ?」

「このバアルの裂撃に装填できる弾数は6発でしてな。あと、自動掃射銃だと判定が分かりづらいのもありますな」



 現在装備している銃を使うなと言われ苦々しい顔をしつつも、セブンジードはその条件を飲んだ。

 そして最も慣れ親しんだ銃、デザートGRDを腰から引き抜いて真正面に構える。



「弾丸を当てればいいんだよな?」

「無論ですぞ」


「じゃあ……、俺の勝ちだろ」



 セブンジードは速攻で銃を構えると、グオはその場から飛び退いた。

 刹那の時すら待たずに放たれた弾丸、それが向かうのはグオでは無い。

 地面に大量に落ちている、役目を終えることなくバラ撒かれていた未使用の弾丸の群れだ。



「この状況でその条件は致命的だったな。魔弾のセブンの由来を知らないのか?」



 精密射撃が得意なセブンジードが自動掃射銃を使う理由、それは自分に有利な状況を作る為だ。


 バラ撒かれる薬莢の中に未使用の弾丸が一定数混じるように細工されているその銃は、相対した敵にとって埒外の一撃を生み出す。

 もう使い道がないと思っていた弾丸が牙を剥く瞬間こそ、セブンジードが魔弾と呼ばれる由来だ。


 たった一発の弾丸が複数の仲間を呼び起こして連鎖させ、大地からマシンガンに匹敵する軍勢が飛びだした。

 跳弾させられた弾丸が一発でもグオを掠めれば、セブンジードの勝利だ。



「ふむ、流石は魔弾ですな。ですが!」



 グオが放ったのも、たった一発の弾丸だった。

 だが、それはあまりにも巨大な――、竜の顎を模した魔法の弾丸。

 一斉に飛んだ弾丸の半数を喰い破ってなお動きは止まらず、セブンジードに向かう。



「そうだよなぁ!呆気ないと実感が湧かねぇしよ!!」



 セブンジードは再び2発の弾丸を放ち、その竜のアギトを撃ち抜いた。

 一発目で相殺。

 二発目で勝利して貫通し、グオの腹を狙う。


 だが、カァン!という阻まれた音が、グオが振るったバアルの裂撃の銃底グリップエンドから響く。



「そういや、まだバッファがあったっけなぁッ!!」

「ほっほっほ、これも儂の強さですからな」



 ここでグオが勝負を仕掛けに行った。

 立て続けに4発の弾丸を放ち、空中で四方形を描く。

 それを飛ぶ四発の弾丸、その間に魔法陣が構築され始め――、



「ふっ、」



 セブンジードが小さく息を吐いた音。

 それに紛れ、2発の弾丸が4発の弾丸を迎え撃つ。


 真っ直ぐに飛んだ弾丸に装填されているのは、第九堕落天使弾フォールダウンセラフィム

 セブンジード自らが考案した、一発で魔法を破壊する事に長けた弾丸だ。


 両者が放った弾丸は、やはり両者の中央で激突した。

 それは、セブンジードが求めた結果。

 激突した弾丸同士は砕け散り、天と地に向かって飛散する。


 大地に向かった弾丸は再び仲間を起動させ、残りの2発を絡め取った。

 そして、空に昇った弾丸は太陽光を反射し、眩い光をグオへと向ける。

 突然照射された光に目を覆うグオ、その隙を――、セブンジードは見逃さない。



「悪いが、その銃は頂く《サモンウエポン=ベルゼの針撃》」



 残っている残弾数は1発。これを外せば、もう勝ちは無い。

 だが、外す訳がないのだ。

 これから召喚されるのは、セブンジードの主人から与えられていた『信頼の証』なのだから。


 だが……。



「なっ……っ!?」

「これぞまさしく、王手ですな」



 何も持っていない(・・・・・・・・)セブンジードへ、瞬きの合間に体制を立て直したグオが接近し、腹へ拳を喰い込ませた。

 更に、振り返りざまに肘撃ちを2発。

 体幹を揺さぶられ、セブンジードはあっけなく地面に落ちてゆく。


 そして組み敷かれ、後頭部にバアルの裂撃が添えられた。



「なにが起こった……?なぜ、ベルゼの針撃が召喚されなかった……?」

「それは、貴方の全財産を差し押さえておるからですぞ」


「え。」

「裏切っておる可能性がある以上、当たり前の処置ですな。他の部隊員と供用している兵装は押さえておりませんが、貴方の個人資産はすべて接収され、自宅は今頃もぬけの殻ですぞ」



 この瞬間、セブンジードは全てを理解した。

 勝負をしようと言い出したのも、チュインマンであるという正体を明かしたのも、バアルの裂け目を見せたのも。

 全ては、ベルゼの針撃の召喚に失敗した瞬間を狙う為の罠だった。


 手に掴むはずだった『信頼』の喪失。

 あまりにも酷すぎる策謀に、セブンジードは思わず声をあげた。



「……謀ったなァァッ!こんの外道共がぁあああああ!」

「セブンジードが裏切っていた場合、完膚なきまでに心をへし折れと仰せつかっておりましてな。……では、頭を垂れるがよい」



 セブンジードの魂を燃やし尽くした叫びも、グオが振り下ろしたバアルの裂撃の銃底によって霧散して行く。

 そして、完全に意識を手放す瞬間に聞いた「外道()と仰るが……、陛下達を教育したのは儂ですぞ!」という言葉に、文句を言う気力すら残っていなかった。



 **********



「ここは……?」

「目が覚めましたかな?」



 爽やかな風が吹く深緑の中、セブンジードが見上げた先にあったのは屈強な筋肉だった。

 頭の下には、やはりゴツゴツした筋肉。

 だが、この光景に思い当たる節があったセブンジードは……、



「膝枕……、だと……ッ!?」



 戦慄して飛び上がり、5mほど距離を取って銃を構えた。



「てめぇ……、俺を殺す気だな?精神的に」

「はっはっは、陛下ならこうしろと言うと思いましてな。サービスですぞ」


「よし、リベンジだ。今度は殺す」

「弾は全部抜いておるし、追加の装備も召喚できないように手を打ちましたぞ。素手で勝負いたしますかな?」


「……ホントにこの大魔王共にゃ、嫌になるぜ……」



 銃を取り上げるのではなく弾を抜いておくという嫌らしさに、いっそのこと清々しい感情を覚えたセブンジードは、腰のポシェットから水筒を取り出した。

 入ってるのは酒では無く水だ。

 だが、何か飲まなくちゃやってられない気分だった。



「で、戦況はどーなってる?陛下達は勝てたのか?」

「勝てたのか、ですか。では、負ける可能性の方が高いと?」



 日差しの高さから30分ほど気絶していたと当たりを付け、セブンジードが口を開いた。

 それにグオは答えるも、表情には影が差している。



「俺はそう思った。サーティーズは相対した人物の記憶を読んで先回り出来る。体術もお前以上、時間の巻き戻しなんつうチートスキルまで持ってる。普通に考えりゃ勝てねぇ」

「なるほど、それは困りましたな」


「なに……?」

「無論、儂はここを片付けた後で陛下達の加勢に行くつもりでした。が、それが叶わぬから、膝枕なんぞをしておった訳です」


「どーいうことだ?」

「陛下達が居るはずの奥の森の周囲一帯が黒い霧で覆われ、入る事が出来ぬ。儂の見立てでは次元が隔絶されておるのだ。……中でどのような戦いが行われているのか、想像も付きませんぞ」



 僅かに剣呑さを垣間見せたグオの言葉。

 それに意趣返しでもするように、セブンジードは呑気に答えた。



「まだ入れねぇなら戦いが続いてるって事だろ?なら……文字通り、俺達とは次元の違う戦いをしてんだろうよ」



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