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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第35話「銀幕の佳境①」

「なんでキツネまで出てくるんですの!?タヌキで十分お腹いっぱいですわよ!!近視感が半端じゃねーんですわよッッ!!」

「……え、タヌキ?えっ、えっ?」



 レジェリクエの許可を得た事により、テトラフィーアの自制心が崩壊した。

 戦争中という意識を放り出し、想いのままにツッコミを入れている。


 そして、正体を晒して優位に立とうと思っていたサーティーズはテトラフィーアの暴挙を予想しておらず、逆に困惑。

 更に、見目麗しい顔に浮かぶ青筋を見たセブンジード達は、本能的に一歩後ずさった。



「タヌキにキツネに何なんですの!?私達は一体何と戦争してますのッッ!?!?」

「そうねぇ、他にもゲロ鳥にドラゴンに、あぁ、狼も見かけたわねぇ。……あはぁ、世界大戦ん」


「これのどこが世界大戦ですのッ!?珍獣大決戦の間違いですわよッッ!!!!」



『珍獣』。

 そのカテゴリーに自分が含まれていると気が付いたサーティーズは口元をひくつかせた。

 だが、あまりの衝撃に抗議をしたいが言葉が出ず、パクパクと口を動かすばかり。


 そしてその後ろでは……。



「セブンジードさんもケダモノであります」

「黙ってろ。ナインアリア」



 という野次も飛び交っている。

 混沌とする状況の中、最初に動き出したのはサーティーズ。

 社長として名乗っている以上、多少の無礼で怒ってはならないと戒めつつ、余裕を取り繕って口を開いた。



「ふふ……、よく分かりませんが、タヌキのせいで酷い目に遭ったという事ですか?」

「えぇ。私達の天穹空母はタヌキに撃墜されましたの。屈辱ですわー」



 言われた事の意味が分からなかったサーティーズは、たっぷりと時間を掛けてテトラフィーアを凝視している。

 無言で見つめ合う二人の間に百合百合しい空気が流れ始め……、サーティーズの顔が困惑で染まった。



「はわわ!?なんですかこの赤い巨人は!?」

「あはぁ、カッコイイでしょぉ。そのロボットにはタヌキが乗ってるのよぉ」


「はわわわわ!?じゃあ、母様が言っていた『タヌキをからかうと死が垣間見える』というのは本当なんですか!?」

「本当よぉ。で、母様ってどちら様かしらぁ?」


「偉大なる狐の皇、極色万変・白銀比ですよ。知らないですか?……うん、知らないですよね。記憶も出てきませんし」



 いくつかの会話を交わした結果に起こったサーティーズの自爆発言に、レジェリクエ達は内心で拳を握った。

 そして、二人の眼に勝機を宿した光が差し込んでゆく。



「あはぁ、とんでもない大物が出て来てビックリぃ。サーティーズ社長が有名な皇種の娘とか戦慄したわぁ」

「一応知ってるんですね。でも、母様に関する文献を読んだ程度ですか。がっかりです」


「余達はとっても嬉しいわよぉ。ねぇ、グオ。かねてからシルバーフォックス社に相談したい事があるって言っていたでしょう?時間をあげるから依頼して良いわよぉ」



 華麗に話題をすり替えたレジェリクエの思惑は、サーティーズの能力解明とテトラフィーアとの密談時間を稼ぐ事。

 その為にグオに無茶ぶりを吹っかけ、サーティーズの注意を引けと言っているのだ。



「ありがとうございます、陛下。誠に幸運な出会いとお心遣いに感謝いたしますぞ」

「でも、5分だけねぇ。あんまり時間が延びると罰するわよぉ」


「心得ました。では、サーティーズ様、儂と5分だけの会談をいたしましょう。もちろん、相談料は支払いますぞ」



 さらりと言ってのけたレジェリクエ達の言葉には、複数の策謀が張り巡らせてある。

『幸運』や『感謝』といった前向きな言葉を使いサーティーズの気分を向上させ、5分という短時間を指定する事で「それくらいなら……」と気も緩ませる。

 更にダメ押しとして5分過ぎればグオを罰すると宣言し、レジェリクエがサーティーズ側に立っていると錯覚させ、トドメに賃金を支払うと切り出して、真剣に取り組まざるを得なくした。


 この結果、サーティーズはグオとの話に集中し、レジェリクエ達の密談に関与できなくなった。

 後ろの方でセブンジードが頭を抱えるも、だるい体で厄介事に首を突っ込みたくないと静観を選んでいる。



「話を聞くだけでお金が貰えるんですか?難しい依頼は出来るか分からないですよ?」

「大臣職というのは面倒でしてな。誰かに相談するにも食事会やらの根回しが必須なのです。不甲斐ない事に、今回は用意できておりませんので……これで」


「……?はわっ!?はわわわわわ!!!!こんなに頂けません!!」

「口止め料も含まれておるのです。なにぶん、儂の私情に関すること。知っているのは家族を除けば陛下くらいですからな」


「はわ、はわわ……。大臣さんてお金持ち……」



 グオが袖で隠した異次元空間から取り出したのは、1万エドロの札束が2つだ。

 社長として経理を行っているサーティーズは手に持った感触で金額を把握。

 迷うことなく、はわわわわ……。と震えだし、真剣にグオに向き合っている。


 そんな光景を見ていたレジェリクエとテトラフィーアは「チョロイですわぁー」っと内心で声を揃え、グオ達から距離を取って第九識天使で会話を始めた。



「さて……、サーティーズは余達の記憶を読んでいるわねぇ。ちょー厄介ぃ」

「厄介どころではありませんわよね?確実に先手を取られるではありませんか」


「そうとも限らないわよ。覗き見られているのは『記憶』であって『思考』ではない。余達の視野情報から未来を推察しているのね」

「なるほど……。確かに思考が読まれているのであれば、こんな雑な策謀に引っ掛からないですわ」


「ついでにラッキーな事に、サーティーズは帝王枢機の事を知らないと自供したわ。この情報は200万エドロどころの価値じゃないわよ。もし、指導聖母側にアレの存在がバレていたら余は迷わず撤退するものぉ」

「ですわね。あんなものがある前提でブルファム王国が作戦を立てていたら、準備不足も甚だしいですわ」


「ま、この情報すらも霞むんだけれどねぇ。……シルバーフォックスって何これぇ?ネーミングセンスがアホの子レベルぅ」

「なのに、私達はなーんにも知らずにここにいると。本当にタヌキもキツネも厄介ですわー」



 レジェリクエがギリリと奥歯を噛みしめた理由、それは白銀比に洗脳されていたと気が付いたからだ。


 二人は戦争前夜、リリンサ達が温泉郷でどういう風に過ごしていたのかを調査する為に銀鈴の湯を訪れている。

 そして白銀比と様々な話をし、戦争も話題にあげていたのだ。

 当然、ブルファム王国の最大戦力として警戒している『シルバーフォックス社』の名前を出さないはずがなく……、そもそも、こんなドストレートな名前で白銀比の関与を疑わない訳がない。


 二人は白銀比の性格を思い出し、サーティーズから隠れているのだと判断。

「子らが8歳になるまでは一緒にいるなんしな」と過去に聞いており、信憑性は十分だ。



「私達はシルバーフォックス社の事を白銀比様に伺い、その記憶を消されているんですのね」

「そう。しかもサーティーズは白銀比様と会った記憶すら見ていない。これにもプロテクトが掛っているのねぇ」


「そこまでして自分の子から隠れるって、とっても拗れてませんか?」

「なにかあったのかもねぇ。でも、今はそれを最大限に利用するわよ」


「白銀比様に怒られませんか?」

「可愛い可愛いサチナの為にぃ、シルバーフォックス社へ銀鈴の湯がらみの依頼を出すだけだものぉ。これはあくまで不可抗力ぅ」


「……切り札、手に入れましたわね」

「探しているっぽいしぃ、人助けならぬ、キツネ助けよぉ」



 テトラフィーアは、サーティーズの声の中に『思慕』の感情があると聞き分けた。

 だからこそ、白銀比の居場所を最後の切り札に設定し、状況が詰んだ時の保険としたのだ。



「さて、陛下。最初っから切り札を使う訳じゃございませんわよね?」

「もちろんよぉ」


「どうしますの?」

「札束で殴るわぁ」



 暗黒よりも漆黒なレジェリクエの眼が輝き、弓のように唇が吊り上がる。

 その姿はまさに、魔王の嘲笑。

 完璧な造形美であるはずのそれを絵にしたならば、確実に呪いの絵画として扱われる酷さだ。



「確かテトラが777万エドロをあげた時、とっても喜んだのよね?そして今も、たかが200万ぽっちで大喜びしている。なら、現金で殴ってあげればいいと思わない?」

「……クリティカルヒットしそうですわね」


「でしょぉ?あれは間違いなくお金の常識を知らないわぁ。ふふ、二人掛かりで痛めつけましょう。そして、ボッコボコにした後でぇ……」

「白銀比様の名前を出してトドメを刺す。面白いですわ」



 シルバーフォックス社への対応を決めた二人は、僅かに肩の力を抜いた。

 そしてリラックスし……、それぞれが最も得意とする舌戦での臨戦態勢へ入っていく。


 一方、グオとサーティーズの会談も佳境に入っていた。



「人探しは弊社が最も得意とする業務の一つです。大まかな潜伏地が割り出せているのでしたら、1ヶ月は掛らないでしょう」

「ふむ、料金設定は如何ほどになっておりますかな?」


「私を含むスタッフ3人がかりでの捜索料金が1カ月185万エドロ。1ヶ月以上探して見つからなかった場合、2か月目から半額の93万エドロでお受けします。なお、捜索地から20km以上移動する場合は初期料金に戻ります」

「随分とお安いですが、経費を抑えるコツでも御有りですかな?」


「私は目の前の人物の記憶を覗き見る事が出来ます。ですから、居場所を知っている人に嘘を吐かれる心配がないのです」

「なるほど、それは素晴らしい技術ですな」


「いえいえ、欠点も意外と多いんですよ。古い記憶を辿る場合はじっくり見る必要がありますし、見当違いの所を探しても意味がないですから。……でも此処だけの話、初日で見つかってしまう事もある訳です。日当185万エドロですよ?逆の意味ではわわわわ!!って感じです」



 内緒話をしているだけあって、二人の声は周囲に漏れていない。

 ただし、レジェリクエ達は読唇術を持っているので会話内容は筒抜けだ。



「では、儂の8番目の息子の捜索を依頼しますぞ。場所はカラッセア周辺。闘技場に出場していたと目撃情報がありました」

「はい、お任せ下さい」



 静観していたレジェリクエ達は堅い握手を交わし合う二人へ忍び寄り、タイミング良く声をかけた。

 きっかり5分だと告げて、話の主導権を握りに行く。



「お話は終わったかしら?」

「感謝いたしますぞ、陛下。胸のつかえが取れた気分です」


「それは良かったわぁ。さて、今度は余達と会談をしましょう、サーティーズ社長」



 レジェリクエは満面の頬笑みで話を切り出し、グオは速やかに身を引いて裏方に回った。

 そして有事の際の対応……後ろにいるセブンジードへの備えとして目を光らせる。



「ふふ、いいですよ。もちろん、グオさんとの商談とは全くの無関係。こちらはかなりシビアな取引になりますので、ご覚悟して下さいね?」

「もちろんよぉ。さしあたって、テトラがどうしても言いたい事があるらしくてね。ほら、テトラ。言ってしまいなさぁい」



 レジェリクエ達が得意とする舌戦、それには役割分担が決められている。

 それは、テトラフィーアが話を掻き回し、レジェリクエが取り纏めるという……、劇場型詐欺だ。



「では遠慮なく。……セブンジードがッッ!!寝取られましたわッーーーー!!」

「寝取って無いですよっ!!本当に私のイメージどうなってるんですかっ!?!?」



 大陸を振るわせるほどの金切り声と、それに抗議する怒声。

 二つの叫び声が絡み合い、ナインアリアが噴き出した。



「寝取ったって、どんどん風評被害が酷くなるんですけど!?私のイメージって遊女しか無いんですか!?学業も頑張ってましたよ!?」

「え、だって、陛下の寝室にお呼ばれされていましたわよね?」


「まぁ……、って、何で知ってるんですか!?」

「陛下の寝室には隠しカメラが300台ほどございまして、別室でモニターされてますのよ。流石は本業の方だ。と小耳に挟みましたの」


「王宮で噂されちゃってるんですか!?!?はわわわわわわ」



 こんな酷過ぎる暴露も、当然、動揺を誘う為に仕掛けた策謀だ。

 だが、そこに嘘は無い。

 一片の曇りもなく事実であり、テトラフィーアの脳内に浮かび上がった隠しカメラの場所を覗き見て、サーティーズは戦慄する。



「あんな場所に……、それじゃ、全部見え……」

「国王って困るわよねぇ。プライバシーが無いものぉ」


「プライバシーが無いのは私の方ですよ!?酷すぎます!!」

「ごめんねぇ。お詫びも兼ねてセブンジードの身代金を奮発するから許してぇ」



 ここでレジェリクエが切り込んだ。


 サーティーズの羞恥心を煽り、それに対する補償をセブンジードの身代金と連結させる。

 こうする事で、セブンジードを取り戻す足掛かりを組んだのだ。



「はわわ……。そうですねぇ……。セブンジードさんはとっても優秀な方で、止める間もなく我が社の社員を痛めつけてくださいました。当然、被傷者の方にお見舞いをしなければなりません。そこに私に対する慰謝料も含めますと……とてもお高くなりますよ」

「テトラ外務大臣、適正価格よりも色を付けた値段で交渉しなさぁい」

「分かりましたわ」



 ここで囮役のテトラフィーアの出番がやってくる。

 複数の役割を切り替える事こそ、劇場型詐欺の醍醐味だ。



「まず、何人生き残っているか知りたいですわ」

「全員無事ですよ。傷も完治しています」


「命の保証がありますのね。なら、サーティーズ社長の言い値を出しますわよ。おいくらですの?」

「えっ!?いいんですか!?」


「陛下に色を付けろと言われてしまってますので。常識の範囲内なら、ご満足いただける金額で結構ですわ」



 テトラフィーアが言う常識の範囲内とは、日常的に行われている取引の金額を超えていなければ良いという事だ。

 その『日常的な取引』には国家間の為替や輸入なども含まれており、事実上の無制限といっても良い。

 なお、テトラフィーアが懸念したのは『ユニクルフィンの資産価値、10垓エドロぉ』とかいう、ふざけた悪ノリがあった為である。



「そーですねー。テトラフィーア大臣はとっーてもお金持ちみたいですし……、ざっと3億エドロ……って所でしょうか?」

「……はい?」


「すみません、調子に乗りました!!」

「そんな端金はしたがねで良いんですの?」


「えっ?」

「えっ?」



 サーティーズは、思い切って告げた3億エドロの請求を『端金』呼ばわりされて固まった。

 一方、テトラフィーアも、来年度国家予算を当てるつもりでいたのに肩透かしを喰らっている。

 再び見つめあった二人の表情には、強い困惑が張り付いた。



「テトラ、ちゃっちゃと払っちゃいなさい。小切手で」

「分かりましたわぁ。ちゃちゃちゃーと。はい、どうぞ」



 そしてレジェリクエは、「思ってたより小心者ぉ」っと内心で蔑みながら、躊躇なくトドメを刺しに行く。

 これから先の策謀で、サーティーズに主導権を渡すつもりなど更々ない。

 当然、小切手を指定したのも、レジェンダリアの口座を凍結すれば下ろせないからだ。



「流石ですね。3億エドロもの大金を簡単に出せるなんて、羨ましいかぎり……でっ!?」

「どうしたんですの?」


「あの、金額が間違ってますよ。というか、桁が……」

「間違うはず無いですわよ。私、財務大臣をしていた時もございましてよ」


「え、だって……、この小切手42億エドロってなってますけど」

「合ってるじゃありませんか。3億×14人で42億エドロ。死亡者はいないんですわよね?」


「え、違っ……。はわわわわっ!?」



 予定外の所で混乱し始めたサーティーズに、テトラフィーアまで眉をしかめた。


 二人は、セブンジード隊をさっさと買い付けた後で自分達の身の安全を買うと切り出し、溢れんばかりの札束で殴る予定だった。

 一国の主たるレジェリクエの価値は如何ほどか?などと言い出し、数百億エドロを叩き付けるつもりだったのだ。



「はわわわわわ……、セブンジードさん、助けてください。こんな話があるはず無いです。これは詐欺です」

「上司に言うのは気が引けますが……、あたりめーに詐欺だろ。俺が3億エドロ?安すぎるわ」


「えっ?」

「そうでありますよ。自分とバルバロアの価値が一緒とか、マジねーであります。最悪でありますね」


「えっ?」

「そうね、私達2等級奴隷の資産価値って『1200万エドロ/時』だったんだし、もうちょっと欲しいわね」


「え”ぇ”!?」



 皆が納得の表情を浮かべる中、サーティーズ一人だけが混乱している。

 それぞれ口に出してはいないものの、その総意は「3億エドロとか舐めてんのか?」。

 つい半年前まで、貯金全額が1000万エドロしかなかったナインアリアですら、安すぎると抗議をしている。



「あの……テトラフィーア様。一つお伺いしても良いでしょうか?」

「なんですの?」


「身代金の相場って……?」

「ピンキリですわね。まぁ、ランク6に達している軍人や冒険者の身代金ともなると、億を下ることは、まずありえませんわ」


「はわわ!?え、だって、いつも300万エドロくらいしか貰えませんよ……?」



 受け入れがたい事実を目の当たりにした事で、サーティーズの口が滑った。

 当然、そんな特大の隙をテトラフィーアが見逃すはずがない。



「なるほど、指導聖母の方ですわね?」

「あ、いえ……。そうです。身代金の受け渡しとかって悪才さんに委託してるんですけど、必要経費を天引きしたらそのくらいしか残らないって」


「利益率1%の身代金なんて聞いた事が有りませんわよ。確実にボッタくられてますわ」

「はわ!?はわわわわッッ!?!?」



 その後、テトラフィーアの詳しい解説を聞いたサーティーズは10分間、絶句した。


 必要経費を天引きするなどといっても、その必要経費の殆どがシルバーフォックス社の人件費である事。

 日常的に人身販売が行われているレジェンダリアでは、身代金の引き渡しなど、隷属手帳の接触で終わる程度の些事である事。


 結果、悪才が行った事と言えば奴隷商の真似ごとであり、せいぜい人件費として50万エドロも出せば十分だと告げた所で、サーティーズの顔から色が抜け落ちた。

 そして、立ち直るのに10分の時間を必要とし――、空気を読めないバルバロアが代表して身代金の案を出す。



「私を末端価格の3億エドロと見積もって、各々別個の査定にするのはどうだろうか?例えば、私とのレベル差に1万エドロを掛けると良さそうではないか?」



 九死に一生を得たバルバロアのレベルは上昇し、50082になっている。

 そこから算出すると、最高レベルのセブンジードで約3億エドロの上乗せ。

 そこから順に、カルーア、ナインアリア……となり、身代金の総額は70億エドロとなった。



「70億エドロ……?はわ、はわわわわ、はわわわわ……」

「それじゃダメよぉ。色をつけなさいと言ってるでしょぉ、テトラぁ」

「そうですわね。じゃ、社長が好きな7に掛けまして……、はい、77億7777万7777エドロの小切手ですわ!」


「にゃにゃ……!?はわ、はわわ、はわわわわわ……。」



 大魔王一派どころか、仲間であるはずのセブンジード達からも札束で殴られたサーティーズは「レジェンダリアは、なんて恐ろしい国なんですか……」と、心の底から震えあがっている。


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