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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第27話「大魔王反省会②」

「敬虔なる信徒よ、自らの過ちを懺悔せよ。さすれば、聖母であらん僕は、大いなる海のごとく広い御心で罪を赦すであろう」

「懺悔するのは貴方の方よぉ。ちょっとそこに座りなさい」



 全長3m程の漆黒の獣から、精錬無垢な法衣の聖母が舞い降りた。

 まるで雲のように軽やかに地上へと降り立ったその聖母は、額に青筋を立てている軍服ロリ女王の前に悠々と進み……、速攻でぺろっ。っと舌を出して、「はっはっは、マジごめん」と頭を下げた。



「あらあら、無条件で謝るなんてらしく無いじゃなぁい。どうしたのぉ?熱でもあるの?」

「そうだねぇ。ストレスで寝込むのはこれからかな」


「熱は無いのねぇ。じゃあ、素直に謝った理由は、タヌキに噛まれて可笑しくなってるのかしらぁ?」

「……まさにその通りなのが、マジで始末に負えないねぇ」



 不機嫌な感情を全く隠していないレジェリクエは、頑張って陽気を演じているワルトナへ鋭い視線を向けている。

 その横に居るのはテトラフィーア。

 こちらも感情を顔に出しているが、苛立ちというよりも困惑の方が強い。

 その視線が捉えているものは……。



「ぐすっ……。ぇぐっ……。ぇぇぅ……。」



 ラグナガルムの上で泣きべそをかいているセフィナだ。


 レジェリクエから電話を受け事実確認を終えたワルトナは、セフィナを連れ立って此処にやってきた。

 その想いも寄らぬ登場にテトラフィーアは困惑し、レジェリクエの苛立ちは留まる所を知らない。

 まさに一触即発の空気の中、ゴモラだけは平常運転でセフィナの涙を拭いている。



「ねぇ、ワルトナ。何で連れてきたのかなぁ?泣きべそかいてるのを見せて同情でも誘うつもりかしらぁ?」

「断じて違うね。だけど、それは後で話すとしようか。とても長くなるからね。……セフィナ、こっちにおいで」



 ワルトナは自分の意図を説明せず、未だに嗚咽を漏らしているセフィナを呼び寄せた。

 そして、ラグナガルムはワルトナの言葉を察し、セフィナが背中から降り易いように身を伏せる。

 更に、勇気づけるように「くぅん!」っと鳴いてから、セフィナの背中を押して送りだした。



「すんっ……、すんっ……。わるっとな、さん……」

「さぁ、セフィナ。どうすればいいか分かるね?」



 トボトボと歩いてきたセフィナの手を引いたワルトナはレジェリクエの前に連れ出し、後ろに回って優しく肩を抱いた。

 ここまでくれば何をさせようとしているのかは、レジェリクエやテトラフィーアにも分かっている。

 だが、二人はあえて何も言わず、セフィナが声を出すのを見守った。



「あの……。おっきなとりさん……、壊してごめんなさい」

「あらあら、ちゃんと謝りに来たのねぇ、偉いわぁ。それで、何でこんな事をしたのかしら?」


「お姫様がおっきな鳥さんを凄く怖がってたの。だけど、ちゃんと見たら可愛いから、だから、もっと近くで見せてあげようと思って、それで……」

「それであんな事をしたのねぇ」



 13歳相応の拙い言葉での謝罪。

 セフィナの目尻にはいっぱいの涙が溜まり、言葉には嗚咽が混じり、ビクビクと肩も揺らしている。

 だが、一度たりともレジェリクエから視線を外さなかった。

 真っ直ぐな瞳が涙で濡れていようとも、そこには誠心誠意が込められている。



「ひっく、私っ、おっきな鳥さんを捕まえるのに夢中で……、すごく大きいから本気でやらないとって思って……、それでね、ひっく、ちょっと乱暴に、ひっく、ごめんなさい……」

「そうね、あのおっきな鳥さんは私の大事なもので、壊れてしまったのは凄く残念な事よ」


「ごめっ、ひっくっ、本当に、ごめんなさい……」

「でも、セフィナは怖がりな姫様のために頑張ったんでしょ?そして、しっかりと反省して謝った。なら、もう泣かなくて良いのよ」



 レジェリクエは慈しみが宿る優しい手つきで、セフィナの頭を撫でた。

 僅かに力を込めてゴシゴシと撫でつけ、その反動で零れた涙も綺麗に掬う。

 そして、華の様な笑みを浮かべ、セフィナに視線を合わせた。



「人間は誰でも……、セフィナの大好きなリリンサおねーちゃんですら失敗をする事があるわね。そんな時はどうすればいいと思う?」

「ごめんなさいって謝ります」


「その次は?」

「もう失敗しないように気をつけます。日記にも書きます」


「そう、それが大事なこと。ねぇセフィナ、これからはおっきな鳥さんを見かけても撃墜しないでくれる?」

「うん、しません」


「姫様にしてって言われたら?」

「それでもしません」


「リリンサおねーちゃんに言われたら?」

「それは……、ほんとにいいの?って、十回くらい確認します。その後、ワルトナさんに聞いて、良いよって言われたらします」


「そう。セフィナはお利口さんね。赦してあげるから、仲直りの指切りをしましょう」



 ゆーびきりぐーるげー、うそついたら、くちばし1000回つーっつく。ぐーるぐるげー。


 レジェンダリア風の指切りで約束を交わしたレジェリクエとセフィナの間に流れているのは、澄み切った朗らかな空気だ。

 まさに、大人と子供のそれ。

 いや、外見的には姉と妹のそれに近いですわねっと、テトラフィーアは頬笑みながら眺めている。



「ねぇ、セフィナは鳥さんが好きなのかしら?」

「はい!とっても可愛いと思います!」


「そうなのぉ、じゃあ、仲直りの印にこれをあげるわぁ。はい、特級おっきな鳥さんメダルぅ」

「わぁぁ!凄く綺麗っ!!」



 しばらく談笑して友好を深めたレジェリクエが大切そうに空間から取り出したのは、虹色に輝く大きなメダル。

 それは、レジェリクエが贈与する勲章の中の最上位、『特級ゲロ鳥勲章』だ。


 このメダルを提示する事で、テトラフィーアを含めた全てレジェンダリア国民へ、無償で依頼を出す事が出来る。

 その依頼はレジェリクエの勅令として扱われており、実質的に断る事が出来ないという凄まじい効力を備えたものだ。


 そして、数々の功績を上げてきた自分ですら3枚しか贈与されていないテトラフィーアは、ひっそりと悲しい気持ちになった。



「さてと、これで懺悔は終わったねぇ。セフィナ、お姫様の所に戻ってケーキでも食べてな」

「はい!えっと、女王様、おっきな鳥さんを壊してすみませんでした!後でお詫びのお菓子をいっぱい持ってきます!!」

「そう、その時は私もいっぱいお菓子を用意しておくわねぇ。じゃあまたね、セフィナ」



 にこやかな笑顔でレジェリクエが手を振ると、タイミングを見計らっていたラグナガルムがセフィナの服を加え上げて背中に座らせた。

 そして、元気を取り戻したセフィナは満面の頬笑みで手を振りながら、ブルファム王城が有る方向へと消えていく。

 やがて姿が見えなくなった頃、ふぅ……。っとレジェリクエは溜め息を吐いて力を抜いた。



「……で。一体これはどういう事かしら、ワルトナ?どう転んでもタダじゃ済まさないわよ」

「だろうね。僕が逆の立場だったら無言で殴りかかってるかも?ははは」


「殴られたいのねぇ?そうなのねぇ?……ねぇ、謝ってすむ問題じゃない事は分かってるで――」

「そんな事は百も承知だよ。だが、セフィナ自身が反省し、ちゃんと謝りたいと言ったんだ。なら、その機会を作るのが保護者の務めだろう?」



 レジェリクエから連絡を受けたワルトナはセフィナに所に赴き、あまりの惨状に言葉を失った。

 国家予算とレジェリクエの趣味をこれでもかと継ぎ込んでいるのが明白な超兵器は筆舌しがたい無残な姿となり、それをセフィナは誇らしげに報告してきたからだ。


 そして……、ワルトナはしっかりと怒った。

 まず根本的な論理感を正す為に声を荒げて怒鳴り、他者の資産を壊してはいけないと教えた。

 次に、何故こんな事をしたのかと、その理由を聞きだしながら叱責。

 最後に、自分と交わした『大人しくしている』という約束を守れなかった事を咎めた。


 当然、ワルトナはセフィナが騙された事に気が付いている。

 それでも最後まで説教を続けたのは……、セフィナが身の危険を省みず戦場に出たからだ。



「まっ、正直セフィナはそこまで悪くない。悪いのは……、『お姫様50%』『ニセタヌキ30%』『僕15%』『セフィナ5%』って所かな」

「自己評価が高すぎるわよ。どう考えても、ほぼワルトナが悪いでしょうに」


「それを今から弁明するよ。ちょっと事情が変わったようでね。僕らの勝利に支障をきたす恐れが出てきたんだ」



 おどけた雰囲気を一変させ、ワルトナは背筋を正した。

 更に、ちらり。と視線をテトラフィーアにも向け、戦争に関する事だと示唆。

 怒りや困惑に彩られた二人も感情を放棄し、施政者たる顔で頷き合う。



「そうだね……、まず、大前提から話そうか。セフィナが乗ってきたカツテナイロボは帝王枢機・アップルルーン=ゴモラといい、世界で最も強力な武器『神殺し』をエネルギー源として稼働しているものだ」

「率直に聞くわよ、カミナが関わってるわね?そこから話しなさい」


「それは偶然……、いや、クソタヌキに目を付けられたって話だから、必然と言えば必然なんだけど」



 ワルトナが語ったのは、リンサベル家の墓地探索の後の顛末。

 カミナから直接語られた『タヌキに魅入られるまで』を過不足なく報告し、エゼキエルオーヴァー=ソドムの大破までを話し終えた。



「そんな訳で、カミナは人類を捨ててタヌキに寝返ったわけだ。レジェの天穹空母もカミナの設計でしょ?」

「そうよぉ。ねぇ、何故カミナは帝王枢機では無く、天穹空母を余に授けたのかしら?バージョンダウンなんてカミナらしくないわ」


「材料が無いんだよ。別大陸にある鉱石が何種類も必要らしくてね。ちなみに、僕らが取りに行くのは不可能。少なくとも、アップルルーンと1対1で30分くらいは戦えるようにならないと話にならないってさ」

「……アレと30分ねぇ。どれだけ恐ろしい所なの?想像できないんだけど」


「知らぬというのなら教えてあげるよ。油断してると、3秒で世界が割れる。ようするに、リリンの大魔王レーザービームを5倍強くしたのが通常攻撃って思えば話は早いかな」

「……しくじったわね。黒トカゲじゃ話にならないわ」



 今度はレジェリクエが密かに抱いていた『帝王枢機、獲得構想』をワルトナに語った。

 その大胆不敵な策謀に唖然とするも……、なるほど、面白いかも?っと肯定。

 じっくりカミナを交えて話をするべきと結論を出し、ついでにゴモラがセフィナを溺愛している事も話して大前提を終わらせる。



「セフィナがレジェの所に来た理由は本人が話した通り、だが、もちろんそれには事情がある」

「当然よねぇ。あんなもんがあるって知ってたら、どんな馬鹿でも警戒するでしょ」


「さて、何でセフィナがレジェの所に来たのか……、いや、なぜ僕がセフィナの監視を放棄していたのか、その理由を話すとしよう」



 レジェリクエ達はラグナガルムの件やタヌキの件、他にも、ワルトナがリリンサを騙している動機など、聞きたいことが山ほどある。

 だが、今は戦時下であり、ワルトナが来る前に収拾していた各地の状況を鑑みて、戦況に関わる話題を優先させる事にした。

 テトラフィーアが通信機越しに習得していた情報、その中で不測の事態が発生していたからだ。



「ワルトナさん。すみませんが、私たちも急を要しますの。勿体ぶった言い回しは好みませんわ」

「他にも緊急事態が起こったって事かな?」


「そうですわ。終末の鈴の音(べルナロク)で最も隠密活動に優れ、数々の死地から生還した『セブンジード隊』が……、全滅しましたわ」


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[一言] このセフィナの一件、関係者全員不幸になってないだろうか……。 ご愁傷様。
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