表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

626/1334

第18話「戦争の進捗」

「レジェリクエの名の下に、侵略会議を開廷するわぁ」



 テトラフィーア大臣の大魔王誘惑を受けて悶々としている内に侵略会議が始まってしまった。


 司令官室の中央に設置された円卓に着いているのは5人。

 俺、右手側にリリン、左手側に敵意剥き出しのロイ。

 そして、正面に大魔王陛下とテトラフィーア大臣だ。


 うん、なんていうかその……、どうしてもテトラフィーア大臣に視線が向いちゃうんだが。

 虚無属性な胸が並んでいるせいで大変立派に見え……あ、やべ。右側からも殺意を感じる。

 ほどほどにしておこう。



「テトラ、各地の行軍進捗を報告してくれるかしら?」

「承りました。みなさま、こちらの資料をご覧くださいまし」



 配られたのはレジェンダリアの工作員からの調書。

 俺達が澪さんと戦っている裏側で、潜伏していたレジェンダリア軍が侵攻を開始していたようだ。


 今までは行動開始地点に移動する為になるべく戦闘を避けていたようだが、ラルラーヴァーから宣戦布告を受けたのを皮切りに一斉蜂起。

 そして、既に割り当てられた敵兵と戦闘を始めた軍も居るようで、その情報はすべて総司令官たるテトラフィーア大臣に集められているらしい。



「ユニフィン様と愛を深め有っている間に、戦闘状態に入ったとセブンジードから報告が上がって来ましたわ。敵兵8名ほどの小隊だそうですが、シルバーフォックス社の部長を名乗る人物が率いているとの事です」

「部長ねぇ。会社で部長なら、国に例えると大臣って所かしら?」


「そうですわね。『部長』は、シルバーフォックス社・社長が直接指示を出す側近の一人だとセブンジードの報告書にありましたわ」



 どうやら、ブルファム王国の三大戦力の内の一つをセブンジードが任されているらしい。


『シルバーフォックス社』『自律神話教オルオゴール』『フォスディア家』

 この三つこそブルファム王国が持つ有力な戦力であり、そこに『澪騎士ゼットゼロ』、『ラルラーヴァー』を加えた5つが俺達の攻略すべき目標。

 これら全てを倒すか無力化し、セフィナ達を奪還すれば勝利となる。



「それで、勝てるのかしら?」

「問題ないですわ。軍団長にセブンジード、副官にカルーアとナインアリア、当然、熟練の隊員もいます。新兵のバルバロアやサーティーズがいても快勝できるとのことですの」



 ちょっと待て。色々ツッコミどころが満載だぞ!?


 セブンジードが軍団長でカルーアさんが副官、ここまでは良いが……ナインアリアさんも副官なのな。

 で、バルバロアが混じってるんだが。

 まさしく生きる死亡フラグな気がするぞ?



「そこにバルバロアがいて良いのか?仮にもアイツは敵の間者だったんだろ?」

「良いんですわよ。だってバルバロアは生餌ですもの」


「……。生餌だと……?」

「敵に寝返り返した末端の構成員を残しておくほど、指導聖母は甘くありませんわ」


「言いたい事は分かるが……。でもさ、既に寝返って情報を話した後な訳だぞ。今更、バルバロアを始末する意味は薄くないか?」

「バルバロアに固執している訳ではありませんわ。『寝返った間者が生きている』事が問題ですの」


「んー?」

「敵に寝返って生きている。要約すると『寝返っても許される』となり、そんな風潮が広まれば寝返りが頻発しますわ。だからこそ、裏切り者は確実に始末しなければならないんですの」



 なるほど。言われてみればその通りだよな。

 という事は、バルバロアは命を賭けて軍役しているのに扱いは9等級奴隷(家畜並み)なのか。

 自業自得とはいえ不憫な奴だが……、ゲロ鳥と一緒に空から投下されなかっただけマシとしておこう。



「ちなみにさ、その報告っていつ受けたんだ?俺達と話している時だって言ってたけど」

「私のイヤリングは軍団長以上が胸に付けているエンブレムと同期し、リアルタイムで音声が流れていますの。片方のイヤリングで15人ずつですわ」


「……は?」

「私の耳は神の因子『絶対音階テトラコード』が宿る特別製でしてよ。やる気になれば同時に100人の声を聞き分けられますわ」



 どうやらこの大魔王大臣、各地の戦況を聞き分けているっぽい。

 いくら神の因子とやらが有るにせよ、それを聞き分けて理解するのは別問題な気がするんだが?


 で、そんな芸当をしながら平然と俺を誘惑していたと。

 ……色んな意味で将来が不安だ。



「セブンジードはシルバーフォクス社の部長を倒せそうっとぉ。テトラ、このまま社長が釣れると思う?」

「分かりませんわ。一切の情報が伏せられている正体不明の人物であり慎重な性格かと思われますが、捕らえられた仲間は必ず救い出すという人情に厚い所もございますから」


「ふふ……、セブンジードに『勝利後、ただちにその場で捕虜を尋問し、可能な限り情報収拾せよ』と命じなさい。『尋問の手段と顛末は問わない』と付け加えるのも忘れずにねぇ」



 大魔王陛下はシルバーフォックス社を壊滅させるために、社長をおびき出す作戦を立てた。

 捕らえた捕虜を尋問するという大魔王極まりない作戦を平然と指示し、純粋暗黒色な笑みを溢している。



「続いて自律神話教についてですが……、こちらにはメイを向かわせておりますわ」



 付け加えられた説明によると、自律神話教はブルファム王国各地に教会を立てているという。

 そこに集められた民衆の唯一神信仰を利用し、思うがままに人民をコントロールしているのだ。


 そんな悪い集団だが、実は自律神話教自体の戦力は大した事が無いらしく、隠密行動に慣れているメイさんの部隊が監視業務についている。



「陛下に命じられている通り、メイには情報収集のみをさせ、余剰戦力を他に回しておりますが……これでよろしいんですわよね?」

「自律神話教が保有している最大戦力の澪騎士を取った以上、他の戦力を手に入れるまで大きな動きはしないわよぉ」



 ん?澪さんが最大戦力?

 どういうことだ?



「ちょっといいか?澪さんが最大戦力ってのは、鏡銀騎士団は自律神話教に属しているって事なのか?」

「順序が逆よぉ。鏡銀騎士団に自律神話教が属しているのぉ」


「……なに?」

「自律神話教の構成員が鏡銀騎士団に身分を隠して入団し、乗っ取りを企てている。そして成功し、澪騎士を筆頭に自律神話教の意のままに動く私兵と化してしまっているのぉ」


「なるほど、澪さんの様子がおかしいような気がしたのはそのせいか……って、一大事だろッ!?」



 冥王竜とガチバトルが出来る澪さんが敵の傀儡になっているとか、笑っていられる状況じゃない。


 さっきまでのやりとりも、澪さんは絶対的に俺達の味方という大前提が有っての話だ。

 それが覆されているのなら、行方不明になっているのは非常に不味い。



「それって、確実に冥王竜を殺す為に、自律神話教が空間魔法で援護をしたって事になるんじゃないのか……?」

「ないわねぇ」


「随分ときっぱり言い切ったな。何か根拠が有るのか?」

「あれがもし事故で無く敵の仕業なら……。そんなまどろっこしい事をしないで、天穹空母に魔法を打ち込む方が早いわ。例えば、身動きができないように500mピッタリの空間に転移させ、余達を閉じ込めて餓死させる。とかねぇ」



 なるほど。一理あるな。

 というか、説明を聞いた後だとそれが最善のように思えてくる。

 一瞬でその発想に至れる頭脳が俺も欲しい。



「転移したのは、仮にも大災厄と恐れられている冥王竜。あれがすぐに帰って来れないのなら、高次元の魔法領域に閉じ込められているか、澪騎士に殺し尽くされた、あるいは懐柔されたかよ」

「懐柔か……。飯で釣られた後だし、次は住処あたりか?」


「そして、前者の場合は余達よりも優れた魔法技術を持つ人物がいる事になるんだけれど……、やっぱり、天穹空母を狙った方が効率的ぃ。よって自律神話教の仕業で無いと判断したわぁ」



 冥王竜と澪さんの戦いの結末は事故だった。

 そんな結論に至り、そして冥王竜と澪さんの失踪は確定確率確立で予言されており、計画通りだ。


 そんな訳で、自律神話教は放置するらしい。

 予想の範疇を超えた妙な動きをされると困るのでメイさんに監視させているものの、問題が無ければ戦争が終わるまで手出しをするつもりはないという。



「次に、黙示録鳴王軍アポカリプス・グルゲーを率いて進軍しているバルワンですが、予定座標でブルファム王国の正規軍と相対しておりますわ」

「流石に優秀ねぇ。煽った甲斐が有ったというものだわぁ」



 バルワンが率いている軍は今回の戦争で最大規模だ。

 天穹空母に乗った人員の他、予め潜伏させていた兵士を招集し、15万人の兵団を成して進軍中。

 それがどのくらいの戦力かというと……、俺の隣で敵意をむき出しにしていたロイが、タヌキに睨まれた時の顔になっている。



「そして、サンジェルマとトウトデンはフォスディア家の本家に強襲を仕掛けに行ってますわ。到着はおよそ2時間後。壊滅には30分と掛らないでしょうし、明日にはバルワンと合流できますわね」

「ちょっと待て、移動時間の方が長いじゃねぇかッ!?」


「当たり前ですわ。二人ともレベル9万越えですのよ。弱体化したと噂されるフォスディア家党首のレベルは7万代後半。話になりませんわね」



 なんか、『足元にある石につまずくと危ないので取り除いておく感』がすごい。

 こういう時こそ大番狂わせが起こったりする訳だが……、大魔王陛下の確定確率確立がそれをさせない。


 戦う前から勝率が分かるって、ほんと酷い能力だな。

 こんなん、事実上の無敵じゃねぇか。



「おおまかな戦況はこんな感じですわね。まだ戦いの結果が出ていない以上、計画を修正する必要性を感じませんわ」

「そうねぇ。順調で何よりだわぁ。さてと、それじゃリリンとユニクぅの出番の話をしようかしらぁ」



 どうやら、今までの戦況報告は、ここを離れる俺達向けの話だったようだ。


 俺達に視線を向けた大魔王陛下は薄く笑い、円卓の中央に美しい塔の写真を表示させた。

 そしてそれを指差し、「ここにセフィナがいるわぁ」と切り出す。



「王城に潜入したグオの報告により、この東塔にセフィナが住み込んでいると確定したわぁ。リリン達はここに行ってセフィナを奪還して欲しいのぉ」

「任せて。外壁まるごと魔王の脊椎尾で吹き飛ばして、最短距離でセフィナを奪還する!!」


「塔を壊すのはセフィナがビックリするから止めなさい」



 あ、普通に真顔で怒られた。

 まぁ、今回のツッコミは大魔王陛下に完全同意だ。

 ニセタヌキが守るであろうセフィナは無事だろうが、ワルト辺りが巻き添えを喰らいそうな気がする。



「セフィナ奪還メンバーは、リリン、ユニクぅ。それにロイとアルカディア。予定していたメンバーに変更は無いわぁ」

「分かった。セフィナを奪還し次第、魔王の脊椎尾で全てをブチ壊す!!」


「ユニクぅ。そこのアホの子姉の口に饅頭を詰め込みなさぁい。《サモンウエポン=アヴァロン饅頭20箱》」



 大して美味くないアヴァロン饅頭の在庫処理をしつつ、俺とロイで念入りに塔への侵入計画を立てていく。


 ロイの話では、東の塔の内部に入る為には王族の血縁者の同伴が必要。

 王族の血筋を判別する魔道具による侵入者対策が有る様で、ロイも入る時は王女のアルファフォート姫が迎えに来ていたんだそうだ。



「んー、通れるってんだから問題ないんだが……、よく今までロイが王族だってバレなかったな?」

「魔道具が働くのが分かっているのに姫を同伴しないなんて無礼だもの。フィートフィルシアの次期領主なら気を使って当たり前だし、そもそも、姫がロイを呼んでいるんだから迎えに来て当たり前ぇ」


「ロイが姫に呼ばれた?そこんとこ詳しく頼む」

「塔に向かう途中でロイに聞きなさぁい。暇つぶしには丁度いいでしょぉ?」



 大魔王陛下が暇つぶしって言っている一方、ロイは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 同じ姫のテトラフィーア大臣には憧れてるって言ってたのに、ブルファム王国の姫はそんな態度なんだな?



「ちなみにアルカディアを付けるのは護衛。というか、ユニクぅの天敵のタヌキ除けぇ」

「めっちゃ頑張るし!レジェなんちゃらの美味しいご飯のお礼だし!!」



 ふんす!っと鼻を鳴らしたアルカディアさんの瞳はやる気に満ちている。

 というか、なんか……、ハンバーグで懐柔されたアホタヌキそっくりな目をしてる。

 どの角度から見ても隙の無い美貌に、俺のドキドキと脂汗が止まらない。



「じゃあ、さっそく準備して行ってちょうだぁい。フィートフィルシアの時と同様、転移の魔法陣で地上に降りてねぇ」

「なら、その後は僕が道案内をした方が良さそうだな。リリンちゃん、ユニフ、アルカディアさん。任せてくれたまえ」



 色んな顔をしていたロイが普通のイケメンに戻り、誇らしげに胸を張った。


 ま、そうだな。

 無事に仲間に戻ったことだし、新人冒険者のふりでもしながら、楽しく『セフィナ奪還』と行こうぜ、ロイ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ