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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第3話「戦いの開幕①希望を費やす冥王竜VS澪騎士・ゼットゼロ」

「ぬ?我の出番のようだな?」



 あっちで雑談していた駄犬竜共が、澪さんの殺気に気が付いた。

 そして、ノコノコとゆっくり羽ばたいて俺達の方に近づいてくる。


 ……いや。何が「ぬ?」だよ。

 凄くシリアスな雰囲気だったんだから、せめてもうちょっと締りの良い顔で来いッ!!



「呼んだか?赤き先駆者(ド・レッド)よ。我の出番なんであろう?」

「それはそうだが……。一回、次元の中に引っ込んで登場シーンからやり直してくれないか?威厳がまるで見当たらねぇ」



 とりあえず提案してみたが、普通に首を傾げられた。

 この駄犬竜2号、かなり察しが悪いな。

 サチナにドッキリを仕掛けた時のホロビノは、すぐにリリンの意図を理解して森に隠れたぞ。



「おい、お前ら。私を放っておいて漫才をするとは随分と余裕があるな。纏めて叩き斬られたいのか?ん?」

「あっ、すまん。つい」



 ほら見ろ、澪さんに怒られちゃっただろ!

 というか、ただでさえ不機嫌だっていうのに、これ以上怒らせたら本気でヤバい。


 ちなみに、リリンも平均を超えて不機嫌な顔をしている。

 こっちはセフィナ奪還を断られると思ってなかったらしく、今にも目尻に涙が溜まりそう。

 うーん、戦う前から既に混沌としている。

 まともなのが俺しかいないとか、行く末が不安だ。



「そうだな、とりあえず……、リリン。澪さんの相手は冥王竜に任せるぞ」

「むぅ。ミオは敵だと言った。放っておくとセフィナ奪還の妨げになりそうなので、すぐに捕まえた方がいいと思う」


「待て待て、ちょっと落ち着け。澪さんは俺達に最大の便宜を図ってくれてるんだぞ?喧嘩を売るべきじゃない」

「……そうなの?」



 まずはリリンが抱いている誤解を解くのが優先だ。

 澪さんが俺達との敵対を望んでいない以上、無意味な戦闘は避けるべきだしな。


 ついさっきまで一触即発な雰囲気だったのに認識を改めたのは、澪さんが『冥王竜討伐を命令されている』と言ったからだ。

 俺があえて澪さんを煽って敵意を向けさせたのは、弟子同士で戦わせない為だった。

 だが、倒すべき敵は冥王竜なのだと言われ、俺達と戦うことを避けようとしている。

 だからこれは、澪さんが最大限に譲歩できる境界線の意思表示のはずだ。



「いいか、リリン。澪さんは俺達が心無き魔人達の統括者だと知っている。なら、騙し打ちをする気になれば、いつでもできたって事だろ?」

「……確かにそう。私はミオが会いに来たら最大限のもてなしをする。当然、隙だらけになるはず」


「だが、澪さんはそれをしなかったばかりか、わざわざ俺達の敵だという意思表示をしてチャンスを手放した。しかも、最優先に狩るべきは冥王竜だと言っている」

「ミオは冥王竜がブルファム王国に来るのは許せないけど、私達は敵対しても見逃すってこと?」


「澪さんにも立場があるから大っぴらに言えないんだろうけど、そういう事だろ」



 こういう解説を本人の前で言うのもどうかと思うが……、リリンを放っておいて拗らせるより全然いい。

 ご機嫌ナナメ、超魔王ヤンデリリンを放っておくと、澪さんや王宮に向かって大魔王尻尾レーザーを発射しかねない。



「まったく、お前らは喋り過ぎだ。……真面目に戦争をしろ。相手に失礼だと思わないのか?」

「むぅ!私はセフィナ奪還に全力を注いでいる!見て、セフィナに対抗する為に、このとおり尻尾も生やした!!」



 そう言って、リリンは立派な尻尾を生やして見せつけた。

 本人的には真面目にやってるつもりなんだろうが、隣で見てるとアホの子以外の何者でもない。



「そうか、良かったな。尻尾の必要性はあまり感じないが、何を仕出かすのか分からない恐ろしさは滲み出ているぞ」

「セフィナは私達の予想など軽々と越えてくる。尻尾くらい生やさなければ、到底対応できない!!」



 まぁ、それには完全に同意だ。

 なにせ、セフィナの近くにはニセタヌキがウロウロしている。

 アイツの特性は分裂だし、セフィナが魔王シリーズを平然と使ってくる可能性は十分にある。


 とりあえず、リリンの誤解は解けたようだし、暫くはアホの子談義をさせて時間を稼いでおこう。

 俺は俺で気になっている事……、駄犬共が何を企んでいるのかを調べないといけない。



「なぁ、プルゥ。ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」

「我の事をプルゥという愛称で呼んでいいのは盟約を結んでいるレジェリクエだけだぞ。赤き先駆者」


「……あっそ。じゃあ黒トカゲ。随分と澪さんと戦う事に積極的だな。何かあるのか?」

「ぬぅ?べ、別に?な、何かある訳ないではないか」



 この駄犬、嘘が下手だなぁ。

 明らかに挙動不審で、目が泳いでやがる。

 で、ホロビノの尻尾も元気よく振れていると。

 分かりやすくて凄く助かるぜ!



「おい、嘘付くんじゃねぇよ。ホロビノの尻尾でバレバレだぞ」

「我が師!?ぬぅ……。バレているのなら仕方がない、白状するが……我はドラピエクロと戦いたくないのだ」


「戦いたくない?前回は速攻で倒してただろ?」

「あの時の我は余裕が無かった。だから容赦などしなかったし、最悪、殺してしまっても良いとすら思っていた。だが、可能ならば怪我を負わせたくないのだ。……我が師も見ているし」



 ホロビノも見ているだと……?

 うーん、言われて見れば、ちょっと変だよな?


 ホロビノの白い体は凄く目立つ。

 あの時はタヌキフィーバーのせいですれ違いになったとはいえ、冥王竜ほどの強者がホロビノを見落とすなんて普通はあり得ない。

 だとすると……、ホロビノが意図的に自分の存在を目立たせない様にしていた?

 一体何の為に?



「……ホロビノ?そういえばコイツも目が泳いで……あ、尻尾が止まってやがる。後ろめたい事があるんだな」

「きゅあら!?」


「おっと、ホロビノの言葉は俺じゃ分からねぇ。……おい、黒トカゲ。通訳してくれ」

「赤き先駆者よ。お前はだいぶ調子を取り戻したようだな。その腹の立つ不遜な態度には覚えがあるぞ」



 へぇ、別に意識してなかったが、昔の俺ってこんな感じなのか。

 ……満場一致でクソガキじゃねぇか!



「ふむ。後ろめたいというか……、ドラピエクロは血統だけならば、我よりも遥かに身分が高いのだ」

「なに?」


「ドラピエクロは不可思議竜様の子であり、その身に秘めた潜在能力が異様に高い。正直な話、新しい惑星竜として迎え入れたいと思っているのだぞ。ここで怪我を負わせて仲違いするのは得策ではあるまい」



 ……なんだと?

 じゃあ、カミジャナイ?タヌキよりも格上な不可思議竜の子供が人間に飼われて、ピエロやってるって事か?

 つーか、不可思議竜の子供って……。


『駄犬』

『キツネ幼女』

『ピエロ』


 ……。

 …………。

 ………………キワモノしかいねぇぞ。

 それでいいのか?ドラゴン皇族。



「ぬはははは!そんな事はどうでも良い事なのだ。そこの人間が狙っているのは我だ。ならば、ドラピエクロの相手はお前がやればよかろう」

「なんだその変な笑い方は。まだ何か隠してんのか?」


「何もない。だが、少々肩が凝っているのだ。運動をして気晴らしをしたいくらいにな」



 そう言って、冥王竜は天穹空母に視線を向けた。

 その先では大魔王陛下が腹を抱えてこちらを見ている……気がする。



「レジェリクエよ、戦いの時だ。我を縛りし論理の鎖を解き放つが良い」



 ……我を縛りし論理の鎖?

 あぁ、ゲロ鳥牽引用紐(ハーネス)の事か。

 どんだけカッコつけた言い方しても、結局お前は荷車馬代わりの駄犬だ。諦めろ。


 俺が遠い目で成り行きを見守っていると、駄犬に装着されているハーネスが天穹空母から切り離された。

 その刹那、駄犬が漆黒の炎を纏ってハーネスを焼却。

 ほんの僅かに威厳を回復させ、再び澪さんと相対する。



「澪騎士と言ったか?待たせたな」

「ほう、不意打ちを仕掛けて来ないとは、一応の礼義は備えているんだな。どの角度から見ても冗談みたいな奴だと思っていたが……、ある意味で安心したぞ」


「我を前にして安心だと?何を馬鹿な事を言っているのだ?」

「普通のドラゴンを討伐するのと変わらないと思って安心しただけだ。気にするな」


「普通だと?……不遜であるぞ、小さき人間よ。我こそが偉大なる大厄災、希望を費やす冥王竜(ディスペアプルート)。我が眼前にて剣を抜いた物は皆、希望を費やし死に至るのだ」

「そうか。私はこれでも人類の希望などと呼ばれているのでな。そう易々と費やされるつもりはない」



 駄犬2号……もとい、冥王竜は前傾姿勢を取り、大きく翼を広げた。

 太陽光に照らされた翼に魔法紋が浮かびあがり、全体が淡い光に包まれていく。


 一方、澪さんは両手に剣を持ち、ゆったりと構えた。

 ぱっと見た感じは、戦闘状態にすら入っていない双剣士。

 だが、体から迸る殺意は、魔王シリーズに匹敵しそうなほどに研ぎ澄まされている。


 一瞬の停滞の後、希望を頂く冥王竜と澪騎士・ゼットゼロの爪と剣が交差した。



「お、始まったな。リリン、冥王竜と澪さん、どっちが勝つと思う?」

「間違いなくミオ」


「即答か。ちなみに理由は?」

「前にも話が出たけど、冥王竜はミオと相性が良くない。冥王竜は確かに魔法を無効化できるけれど、鎧に直接刻まれている魔導規律陣に影響を及ぼせない。当然、ミオが使う剣も同様」


「弱体化しないなら自力の勝負だもんな。俺が冥王竜の優位に立てるのも同じ理由だし」

「そう。そして、冥王竜は万全の状態には見えない」


「ん?」

「前に出会った時はこういうものだと思った。でも、今なら違うとハッキリわかる。冥王竜は何処かを怪我をしていて不調なのだと思う」



 そうだよな。俺もそこが気になっていた。

 師匠たるホロビノに呼び出されたとはいえ、いくらなんでも従順すぎる。


 俺達と戦った時の冥王竜より、今の冥王竜の方が弱体化しているはずだ。

 恐らく、天龍嶽に帰った後で何かあって怪我をした、もしくは親父に何かされた?

 いずれにせよ、全力で戦えないのは間違いない。


 それなのに、澪さんとの戦いに乗り気なのは何でだ?

 絶対に勝てる自信がある?

 それか、戦って勝つとホロビノからご褒美が貰える……とか?


 なにか裏があるっぽいのが気になるが……、澪さんと冥王竜が戦う事で、この場をやり過ごす大義名分が生まれる。

 勝った方も負けた方も傷を負ったと言って撤退すれば、今度は戦わずに避ける事が出来るかもしれない。



「さて、澪さんは冥王竜に任せて……、俺達はドラピエクロをどうにかするぞ」

「ん、分かった。ちゃんとピエロンに会えたのか気になっているし、丁度いい」



 煌びやかな剣閃を煌めかせながら離れていく澪さんと冥王竜から視線を外し、俺とリリンはドラピエクロへ向き直った。

 そこでは……洗練された動きで、サーカスのオープニングを演じているピエロがいる。

 どうやら天穹空母の中に人間がいっぱい居ると気が付いて、開幕のピエロダンスを披露しているようだ。


 改めて思うが……、お前は何しに来たんだよ?ドラピエクロ。



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