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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第88話「大魔王式典②総指揮官の帰還」

 

「お、俺達の女王陛下が……この大陸を統べる……だと……?」



 世界大戦の宣言を受けて静まり返った群衆から、小さな呟きが零れた。

 その声を誰が発したのかは分からない。

 だがそれでも、驚愕の果てに思考停止していた群衆の意識を覚醒させるには十分だった。



「レジェリクエ陛下が……、俺達の女王様が……、世界の頂点に立つ……?」

「イモと泥しか口に出来なかった私達を変えてくれた女王陛下が、今度は世界を丸ごと変えるというの?」

「そんなの、そんなの……最高に決まってるだろ……!この喜びを知らねぇ奴らに、今度はお前が幸せになる番だって言うとかさっ……!」



 最初はポツリポツリと、雨粒が大地に染み込むように。

 そして次第に声量が大きくなり、やがては大地を揺らす大合唱へと進化してゆく。


 不揃いだったレジェリクエ女王への賛美は次第に精錬されてゆき、やがて、群衆全てが声を揃えて身体を揺らしだした。

 そして、肩を抱き合ってさざ波立っている老若男女が、一つになった心で足踏みをして大地も揺らす。



『あぁ、今日は最高の日だ!』

『あぁ、我らは幸せだ。『運命掌握・レジェリクエ』の名の下に幸せだ!』


『泥にまみれた”友”を救い出し、幸せを肴に、酒と言葉を酌み交わそう!』

『他者に管理されている友よ、人でありたいと願うなら、我らと同じ『運命の奴隷』になるといい!』


『我らの女王陛下こそが『運命』だ。人が定めし悪理など、塵芥のごとく踏みにじる!』

『我らが友となりたいのなら、運命すらも掌握する女王陛下に忠誠を!』


『国民には、快楽を!敵国には、絶望を!!』

『あぁ、レジェリクエ女王陛下、万歳!!』

『レジェリクエ女王陛下…………万ッ歳ッッ!!』



 一糸乱れぬ動きでレジェリクエ女王への賛辞を口にする群衆。

 その目は血走り、一点の疑いもなく輝いている。


 うん、ここまで来ると圧巻の一言だ。

 つーか、なんでそんなに長い文章を声を揃えて言えるんだよ!?

 もしや、国民全てに洗脳魔法を掛けているなんて事は無い……といいなぁ。



「あはぁ。こんなに熱い思いを返してくれるなんてぇ、余は素晴らしい臣民を得たと、本当に誇りに思うわぁ!」



 群衆の盛り上がりが最高潮に達した辺りで、静観していた大魔王陛下が口を開いた。

 そして、銃で心臓を撃ち抜かれたかのように、群衆から一切の物音が消え失せる。


 マジですげぇ統率力だな、大魔王陛下。

 カリスマ性が溢れまくっている。ぶっちぎりのロリ枠なのに。



「余の隷属臣民たちよ、案ずる事は無いわぁ。これから行う『世界核戦争(ニュークリア・ウォー)』に必要な全ての準備は既に終えている。余達の勝利は揺るぎなく、10日もしない内に全ての決着が付く事になるわぁ」


「大陸平定をたったの10日で……?」

「まさか、流石に冗談だろ……?」

「いくらレジェリクエ女王陛下が凄くても、な……?」



 たったの10日で戦争を終わらせる。

 そんなレジェリクエ女王の宣言を受けた群衆は、僅かに困惑を発している。


『世界規模の戦争を10日で終わらせられるはずが無い』

『だが、俺達のレジェリクエ女王陛下なら、あるいは……!』


 そんな常識と期待が混じる葛藤は、再び群衆に熱を取り戻させた。

 そして、それをわざと起こしたであろう大魔王陛下は二コリと笑い……、群衆の期待を『確信』へと書き換えてゆく。



「もちろんそれは、余一人の力で成し得ない難題。それなのに勝利を確信しているのは……、余が最も信頼している同胞『心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)・無尽灰塵』が絶対不変の勝機を手に入れてくれたから」


「へ、陛下と共にフランベルジュを解放したという、かの誉れ高き聖女たちのリーダー、だと……?」

「空想でしか語られる事が無く、単身で悪の組織を壊滅させて回っているという話や、大陸中を廻って貧しい子供に食事を与えているという噂、他にも、伝説の生物を従えて獲物を求め彷徨い歩いているなど……俺達の憧れを一挙に背負っている御方が……?」

「ブルファムを倒すために行動をしていた……?」



 なんか、絶妙に事実に沿った噂だな。


 リリンはちょっかいを掛けて来た悪の組織には躊躇なく魔王の鉄槌を下すし、ご飯はみんなで食べた方が美味しい!派だ。

 そんでもって、超ド級神話クラスの駄犬竜を従えている。


 だが、獲物を求めて彷徨い歩いてはいないはず。

 探してたのは俺だs……獲物って俺の事か?



「知りたいッ!!俺らの総指揮官殿は、いったいどんな御方なのですか!?」


「心無き魔人達の統括者のリーダーは最強だって噂だぞ!どんだけ屈強な戦士なんだ!?」


「いや、そもそも戦士なのか!?陛下と同じく魔導師なのでは!?」


「まさか……陛下の寵愛を一身に受けているなんて事は……」


「変なことを言うなッ、陛下は俺たちの陛下だ!!独り占めなんて許さないぞ!!」



 リリンに「獲物って俺の事か?」って聞こうか迷っていると、群衆がおかしな方向に転がり始めた。


 うん、別に大魔王陛下の寵愛とか欲しくないな。

 むしろ、こっちに来るなと思っている。

 お姫様枠は既に埋まってるし。



「あらぁみんな楽しそうねぇ。でも、余は意地悪だから、その楽しみを奪っちゃうわぁ。さぁ、こっちにいらっしゃい、リリン。皆に顔を見せてあげてぇ」

「分かった」



 大魔王陛下が世界への宣戦布告をした後は、ずっとこの国の為に暗躍していた事になっているリリンを紹介する番だ。


 俺と一緒に演説台の下に控えていたリリンは、名前を呼ばれてすぐに動きだした。

 その堂々たる振る舞いを見れば、リリンが無尽灰塵であると一目瞭然だろう。


 だが、群衆の中には、10日で戦争を終わらせると言った時よりも大きな波紋が広がっていた。



「私が心無き魔人達の統括者・総帥の『無尽灰塵』。それと同時に、終末の鈴の音の総指揮官でもあり、レジェンダリア軍の頂点に立つ者!」



 リリンが登壇した瞬間、大魔王陛下が静かに手を挙げて群衆を黙らせている。

 だからこそ、リリンの鈴の音の様な声は地平線の彼方まで響き渡った。


 ごくり。っと唾を飲む群衆の表情は、驚愕一色。

 だが、その瞳の中に全員が光を灯していて……。


 そして、静かだった群衆が狂気と言えるほどに湧き上がった。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!美少女だッ!!陛下に引けを取らない無い美少女が出て来たッ!!」

「俺達の総指揮官は美少女だった!!もう一度言うぞッ!!俺達の総指揮官は美少女だったぁああああ!!」

「勝ったッ!!ブルファムに勝ったぞォォォォ!!」



 まだ戦争は始まってすらないだろ、このロリコンどもめッ!!


 リリンの姿を見るや否や、群衆全員がガッツポーズを取って拳を天高く突き上げた。

 確かにリリンは控えめに言っても美少女だが……おい、今「愛してる」って言った奴、出て来い。

 俺が相手になってやる。



「あらぁ、すごい人気ねぇ。だけど、リリンの真価は外見じゃないのぉ。……隷属臣民よ、よく聞きなさい」


「リリンが手に入れて来た至宝は、その名の通り『大陸平定に至る名宝』であったわ。その名は『絢爛詠歌の導き(エンプレス・オリジン)』。かのブルファム王国にて言い伝えられている『国王たる証の紋章冠』よ」


「つまり、このブローチが余の胸に輝いた今、正式なブルファム国王は余になったということ」


「だからこそ、余は……ブルファム国・王城を不当に占拠している逆賊どもを排除し、国王たる余の手の中に取り戻す」


「これはもう侵略戦争ではない。正しい行い……聖戦となったのよ」



 大魔王陛下は美しい笑みを浮かべながらリリンの手を取った。

 更に指を絡めて真っ直ぐ空に向かって手を翳し、その先に絢爛詠歌の導きを転移させる。


 一身に注がれた視線が、虹色に輝くブローチを捉えた。

 その幻想的な光景に飲まれた群衆は言葉を発せず、ただひたすら祈りながら事態を見守っている。



「さぁ、リリン。みんなに言葉を掛けてあげてぇ」

「ん、了解した」



 コクリと平均的に頷いたリリンを見て、「はぅあっ!?」っていう熱い吐息が至る所から湧き上がった。


 うちの腹ペコ大魔王をアイドルか何かと勘違いするのは勝手だが、手を出そうものなら容赦しねぇぞ?

 覚醒グラムで殴った後、捕らわれの聖母様の所に送り届けてやる。



「私はこの戦争をするにあたり二つの目標がある。一つは、レジェンダリアを勝利に導くこと」



 熱い視線を受け流したリリンが、平均的な普通の口調で話し出した。

 他の大魔王の影響なのか、リリンはこういう芝居が妙に得意。

 なにせ、頭のおかしいピエロドラゴンでさえ号泣しながら擦り寄ってくるレベルだ。



「だけれど、私はその事を全く心配していない。レジェやテトラ、終末の鈴の音のみんなが居れば、その程度は簡単に成し遂げられる事なのだから」


「だからこそ私は、もう一つの目標に全力を注ぐ」


「それは……ブルファム王国に捕らわれた私の妹、セフィナ・リンサベルの奪還。邪悪なる外道魔導師によって捕らえられたセフィナを奪還する事が、最も大切で特別な、私の全身全霊を掛けるべき目標」



 リリンは確固たる決意と共に、セフィナ奪還を目標だと宣言した。

 そして、妹を人質に取られていると知った群衆は……うん、一人残らずブチギレてるな。


 特に、軍人と思われる人達から発せられるブルファムへの殺意は凄まじく、魔王シリーズに届きそうな勢いだ。

 こんな殺意を滾らせた集団がロイの所に行くんだろ?

 ……生き残れる気がしねぇぜ!



「敵の首魁の名は『ワルラーヴァー』。この世界に巣食っている凄く悪い幼虫!!」



 あ、ついにワルラーヴァー(悪い幼虫)が公式になっちゃった。

 対峙した時に絶対に文句を言われる気がする。

 場合によっては国際裁判もありうるぜ!



「私は……私からセフィナを奪ったワルラーヴァーを絶対に許さない。家族の幸せを踏みにじる巨悪を許さない!」


「だから、みんなの力を私に貸して欲しい!!例え戦場に行かなくても、私の勝利を願い祈ってて欲しい。そうすれば、私はワルラーヴァ―に打ち勝つ事が出来るはずだから!!」



 リリンの演説は、しっかりとラルラーヴァーへのヘイトを煽りつつ、最後は戦争への国民意識を高めて終わった。


 へぇー、リリンも案外まともな演説をするもんだな。

 てっきり飯の事しか頭に無……あ、ゲロ鳥大臣が笑ってやがる。

 こっちからの入れ知恵だったか。



「うおぉぉぉぉ!!応援してるぞぉぉーー!リリンサちゃーーん!」

「あ、おま、その呼び方はずるいだろ!?リリンちゃーん!こっち向いてくれ~~」

「俺だーー!愛してるぞーー!結婚してくれ~~!!」



 おい、今、結婚してくれって言った奴、今すぐ出て来い。

 覚醒グラムで叩き斬ってやる。



「ん、みんなの気持ちは嬉しい。けど、その思いには答えられない!」

「あ~~、そうだよな~」

「うんうん、みんなの総指揮官だもんな」

「しょうがない、よな。抜け駆けは良くない」


「なぜなら……私には、既に将来を誓いあった婚約者がいるっ!!」

「「「「「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!!」」」」」



 ちょっと待てぇぇぇ!!

 こんな所でなんて事を言ってやがるッッ!?!?

 5億人が見てるんだぞッ!?



「リリン!いくらなんでも、そんな事をここで――」

「あ、彼が私の婚約者!!最強の英雄・ユニクルフィン!」



 ぐわぁああああ!!

 しまったッ!!自爆したぁぁぁぁッッ!!


 つい、いつものノリでツッコミを入れてしまい、それに腹ペコ大魔王さんが乗っかりやがった。

 演説台から飛び降りたリリンは俺の前に軽やかに着地して速攻で腕をからめ、群衆に向かって控え目にピース。


 おい待て。こんな可愛らしい仕草は見たこと無いんだが!?

 って、これもゲロ鳥大臣の入れ知恵かッ!!



「ユニクルフィンだとぉ?誰だアイツ!」

「なんて羨ま……軍の総指揮官たるリリンサ様を毒牙にかけるとは許せん。ぐるぐるげっ刑にしてしまえ!」



 ふっざけんな!!俺とリリンは相思相愛だぞ!?

 何が悲しくてゲロ鳥のコスプレなんぞしなくちゃならねぇんだよッ!!



「ユニク、演説はよ!皆にユニクの凄さを分からせてあげると良い!!」

「こんな状況でやれってか!?」


「むぅ、やらないの?」

「……。しょうがねぇから手短にやるぞ!」



 暴言4割、不満3割、怒り2割、静観1割が渦巻く中、俺はリリンを引きつれて演説台の上に登った。

 ざっくりとした計算だと、4億5000万人から並々ならぬ感情を向けられていることになる。


 はっ、上等じゃねぇか。

 俺とリリンが恋人同士なのは事実なんだし、どうせなら、とことんまで属性を盛ってやるぜ!!



「よお、俺がリリンに紹介された『ユニクルフィン』だ!」


「まぁ、外見じゃ強そうに見えないかもしれないし、実際、レベルは3万台と非常にショボイ訳だ」


「だけどさ、そこらの雑魚冒険者に負けるつもりは更々ねぇぞ。なにせ俺は……あの英雄ユルドルードの息子なんだからな!!」



 とりあえず親父の名前を出して様子を見てみる。

 グラムを覚醒させて強さを実演するのが手っ取り早いが、敵が見ている可能性がある以上、あまり好ましい事じゃないしな。


 つーことで、ユルドルードの名を出して賽を投げた。

 後はどんな目が出るのかを見極めて対処すればいい。

 変態呼ばわりされる気がしないでもないが……覚悟しておけばダメージが少なくて済むぜ!!



「ユルドルード様だと……?あの英雄に息子がいたのか……?」

「まさかな……だが、レジェリクエ女王陛下ならコネクションを持っていても不思議じゃないか?」

「待て、知ってるぞ!俺はあのユニクルリンに助けて貰った事があるんだ!!」


「なんだと!?それは本当か」

「ほんとだぞ!感謝だってしてる!!」



 ……感謝してるんなら、名前を間違えないで欲しいんだが!!

 誰がユニクルリンだよ!?

 俺は風呂の洗剤じぇねぇぞ!!



「どうやら俺を知ってる人がいるようだな。まぁ、俺の英雄譚はそういう人から聞けばいい。きっと驚くぜ?」


「ともかく、俺はリリンと共にブルファム王国とラルラーヴァーを討つ為に此処に来た。この俺がいる以上、盤石な勝利は揺るぎようが無い」


「大陸平定なんていう数百年に一度のビックイベントだ。せっかくだから楽しんでくれよな!」



 今までいろんな人に自己紹介をしてきたが……流石に5億人に向けるメッセージは荷が重い。

 できるだけ格好を付けたつもりだが、レジィやリリンに比べると迫力が足りなかった……かな?


 言葉を終えてしまった以上、取り消す事は出来ない。

 後はもうどうにでもなれ!と思って堂々と胸を張っていると……。


 どよめいていた群衆から、一斉に拍手が湧き上がった。



「ま、応援してやるよ!!ユニクルフィン!!」

「だな!!俺達は十分に幸せを貰ってるんだ。だったらリリンサ様の幸せだって考えてやらねぇとな!!」

「そうだそうだ、祝福するぞ!!リリンサ様、ユニクルフィン!!」



 万雷の拍手は、俺とリリンの関係を祝う為のものだった。

 リリンは様付けなのに、俺は呼び捨てされているのには思う所はあるが……、それでも、好意を向けられて嬉しくないはずが無い。


 なんかちょっと予想とは違う事になったが……まぁ、これはこれでいいのかもな!


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