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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第81話「大魔王学院・五時間目、魔王蹂躙」※挿絵あり

「《私にひれ伏す5つの魔王よ、今ここに混じり合い再誕し、あらゆるモノをブチ壊せ。《脈動覚醒・息噴く魔王の超遺骸デモン・ジィールボディ》」



 リリンが召喚召喚した5つの魔王。

 たった1つ召喚されただけで恐慌状態を引き起こす魔道具の群れが、今、超魔王の命令に従い『脈動』を開始した。


 ドクンドクン……と空気すらも鳴動させ、それらの魔王が形変わる。

 それぞれが最適化された殺意を剥き出しにし、リリンを彩る装備として、華奢な身体を覆い隠ししてゆく。


 刺し貫く事に特化した右腕は、黒紅が輝く刃を指とし。

 万物万象を捉える事に特化した左腕は、薄く光る指紋が魔力を帯びている。


 ゆったりとした魔導服の上に付けられた胸鎧の宝珠から溢れ出る光は、まさに暗黒。

 虚無を宿す胸を刺し貫けるものなど存在せず、それを絶対防御を命令された漆黒尾が守護している。


 そして、リリンの頭には、恐るべき王冠角が戴いた。

 赤色に輝く星は、まさに魔王の象徴。

 俺を幾度となく絶望に叩き落とした機神と同じ、カツテナキ・シンボル。


 ――降臨せよ。偉大なる魔王。

 これが……これこそが、我らが最高戦力。


 心無き魔人達の統括者・無尽灰塵、戦闘形態。

 超魔王・リリンサだッッ!!







挿絵(By みてみん)








「「「「なんだあれぇぇッッッ!?!?」」」」



 あ、事態について行けて無かった生徒達が一斉に叫んだ。


 それぞれが一斉に膝から崩れ落ち、涙を流しながら頭を振り乱している。

 ついに降臨してしまった超魔王様を前にして、理性が崩壊したらしい。

 まぁ、そうなるよな。

 俺も始めて魔王シリーズを見た時は凄まじい衝撃だったぜ!



「だ……誰も友達になってくれないでありますぅ。ぐすっ、自分、ずっと一人ぼっちでありますぅ……。」

「はわ、はわわわわわわわ……母様……。母様ぁ……捨てないでぇ……。」



 放たれた魔王の波動を受けた人たちが、一斉に悲しみの声を上げた。

 ナインアリアさんは膝を抱えて地面に座り込み、完全にいじけている。

 サーティーズさんに至ってはもっと深刻で、迷子になった子供のように人目も憚らず泣き始めた。


 で、イースクリムは……?



「首が飛ぶ!!俺の首が、親父の、母さんの、姉さん達の、首がぁぁぁぁぁ!!」



 ……頭を振り乱して、大絶賛錯乱中っと。

 その他の生徒も似たり寄ったりな感じだし、どっからどう見ても阿鼻叫喚地獄だぜ!



「うわー、すげぇ地獄。とりあえず、錯乱している生徒を回収するか」



 今まで魔王様が与えてくる恐怖は、言うならば形の無い未知の恐怖だった。

 漠然とした本能に訴えかける恐怖。

 生物として備わっている危機感を刺激するタイプだったんだが、この超魔王リリンが放つのは違う。


 それぞれ個人が抱えている精神的苦痛を掘り起こし、人格そのものが抱く恐怖を刺激する。

 要するに、トラウマを掘り起こされている訳だ。


 そんな訳で、俺の脳内には、アホタヌキを抱えたアルカディアさんがうろついている。

 正確には、全裸のアルカディアさんが尻に生えた絶望を振り乱しつつ、アホタヌキで前を隠しながらウロウロしている。

 豊満な果実は見えねぇわ、後ろ姿は混沌がフォールダウンしてるわ、マジで絶望以外の何者でもない。



「ユニクルフィン!あれ、アレ……!!」

「ほら、恐怖抑制シール追加しとけ。ちょっと楽になるぞ」



 集め終わった生徒達が、平気な顔をしている俺へすり寄って来た。

 個人的には平気じゃないが……それでも、他の生徒よりマシなのは間違いない。


 恐怖抑制シールをイースクリムに張り、再び協力して他の生徒にも張って行く。

 やっと落ち着き始めた生徒達を集め……お前ら目がギラギラしてるけど、大丈夫か?



「ちょぉぉ!アレは何でありますか!?なんなんでありますかぁぁッ!?」

「魔王シリーズって言ってな。人間が備えている恐怖を増幅し、相手を戦闘不能にする機能が標準で備わっている」



 一同を代表して、ナインアリアさんが怒号を飛ばしてきた。

 恐怖感が軽減されたとはいえ、迫りくる焦燥感までは拭えていないらしい。



「何でそんな物騒なもんを出しやがったでありますッ!?」

「バルバロアが出してきたのも魔王シリーズだからだよ。で、自慢されたからリリンも召喚して自慢し返してる訳だな」


「つまり……あんのバカバロアが悪いでありますね?自分達が怖い思いをしてるのは、あの変態野郎のせいでありますね?」



 おう、ついにバカ呼ばわりか。

 納得の誹謗中傷だな。


 そういえば……と気になって視線を向けてみると、バルバロアは地面に伏して吐いていた。

 至近距離で敵意剥き出しの恐怖の波動を受けちゃ、そうなるよな。

 こっちも納得のリアクションだぜ!



「アイツのせいかよ……。よし、王子権限で処してやろう。公開ぐるぐるげっ刑だ」

「はわわ……はわわわわ……ぐすっ……。いたぶり殺します」



 ちょっと待て、なんだそのぶっ飛んだ発想は!?

 俺はお前らが怖ぇぇよ!?

 ぐるぐるげっ刑って極刑っだって噂だったよな!?

 サーティーズさんに至っては『いたぶり殺す』ってドストレートに言っちゃってるし!!



「待て待て落ち着け。バルバロアの運命は大魔王ルートに決まったから、俺達が手を出すまでもないぞ」

「そうか。……で、何でお前は平然としてるんだよ?おかしいだろ」


「んー、慣れたからだな」

「「は?」」


「俺が訓練をする時の相手は、大抵があの超魔王様だ。なお、テンションが上がってくると尻尾からレーザーを出すようになる」



 あのカツテナイタヌキレーザーはマジでヤバい。

 リリンが尻尾に装填しているのは大体が『雷人王の掌』。

 要するに大規模殲滅魔法であり、それが指向性を伴って打ち出されると、カップアイスをスプーンで引っ掻いた様に地面が抉り取られる訳だ。マジやばい。



「レーザーって……。お前、ドMか何かか?」

「断じて違うぞ。ちょっと敵対しているラルラーヴァーってのが居てさ、そいつはやたら強いし、これくらいで丁度いいかと思ってさ」

「はわわ……ラルラーヴァーさん?敵対してるって、そんな危ない人がブルファム王国に居るって事ですか?」


「いるな。俺達の最終目標はラルラーヴァーと決着を付ける事だし」

「はわわわわ……そんな事ってあります……?はわわ、はわわわわ」



 軍属が決まっているサーティーズさんは、自分が立ち向かう敵の強さを知って恐れおののいているようだ。

 再び「はわわわわわ」って振動しながら頭を抱えて、考えを巡らせている。

 少し放っておいた方が良さそうだな。



「イースクリム。せっかくだし、俺達は総指揮官の本気の戦闘を見学しようぜ!」

「お前、ガチで図太すぎ。心臓がオリハルコンで出来てるのか?」


「心配すんなって。俺がここに居る以上、恐怖感以上の危機は無ぇよ。ホラー映画みたいなもんだな!」



 **********



「なんなんだそれは……?それは、一体、何の冗談だ……?」



 魔王シリーズを纏ったリリンサを見つめ、バルバロアが震えた声を発した。


 ついさっきまで酔いしれていた全能感は身を潜め、残ったのは果てが見えない恐怖のみ。

 人生の絶頂からどん底へと叩き落とされては、喉と体を震わせられただけでも十分すぎるほどの偉業だ。



「何を馬鹿な事を言ってるの?これは冗談ではないし、冗談にするつもりもない。ユニクを殺すと言った人物に、慈悲なんて与えない。」

「冗談以外の何があるというのだ……?この魔道具は、指導聖母・悪性様の配下より下賜されたものだぞ……?世界で最高の魔道具なのだぞ……?」



 指導聖母・悪性。

 いきなり現れた重要参考人の名前を記憶に刻みつつも、リリンサの興味はバルバロアの『魔王の下肢骨格(デモン・ロアボーン)』へと向けられている。



 6つ目の魔王シリーズね。絶対に手に入れたい。

 けれどそれは、この場に居る人物すべての安全を確保した上でのこと。

 魔王シリーズは、文字通り魔王のごとき強さを誇る魔道具であり、命令によっては簡単に殺戮劇を引き起こせる。

 だから私は、バルバロアを完封した上で勝利しなければならない。



 魔王シリーズを装備しているリリンサの思考も、凶暴性が増すなどの影響を受けている。

 だが、人命を最優先に考えるリリンサの本質は、ほんの僅かも変わっていない。



「知ってる。でも、お前は知らなかった。この魔王が7つあるシリーズものだという事を」



 だからこそ、リリンサは完全勝利を得るために時間稼ぎを行っている。

 初めて使用する『魔王の首冠デモン・クラウンチョーカー』。

 その機能を十全に把握するべく、僅かな時間を欲したのだ。



「魔王シリーズ?シリーズものだと……?ば、馬鹿な……」

「私の持ってる魔王は5つ。一方、お前が持ってる魔王は1つ。これでは勝負になるはずもないけど、今更降伏したとて許す訳が無い。今までのが冗談だったと思えるほどに、徹底的に転がしてあげるから覚悟して」



 ここでリリンサは、誰の目にも明らかな威圧をしかけた。

 ゆらゆらと獲物を求め揺れ動いていた魔王の脊椎尾。

 これを自分とバルバロアの視線が交差している場所へ持ってくると、迷いなく先端部を乱回転させたのだ。



「《ドリル尻尾起動、ギュィィィィィィン!》」



 リリンサが可愛らしい説明を付け咥えると、魔王の脊椎尾が唸り声を上げた。

 これには、バルバロアを含むすべての傍観者が困惑。

 一部の教師陣が「アレはなんだ!?どんな原理で動いている!?」と的ハズレな感想を漏らすも、やはり声に含まれるのは困惑だ。



「ふふっ、この尻尾で叩かれるとちょっと痛い。なにせ、一撃で第九守護天使ごと(・・)、粉微塵にすり潰される。」

「……。人の所業とは思えん。お前、ホントに、人間か?」


「私は心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)。最近はよく魔王って呼ばれる。」

「そうか。……く、くく、くはははは!!こんの、外道魔王がぁああああああああ!!」



 ただでさえ魔王シリーズを前にして選択肢が狭まっている上に、バルバロアの精神は魔王の下肢骨格に捕らわれている。

 だからこそ、彼が取れる行動など……怒りに任せての特攻しか無い。



「ん、攻めて来た」



 だが、リリンサにとっては好ましい展開ではない。

 もう少しだけ観察に徹し、より効果的な戦果をあげようと思っていたからだ。



「5つもある?それがどうしたッ!!剣を5本も持った所で、まともに戦える訳が無いだろうがッ!!」



 魔王シリーズは、たった一つでさえ、経験のない全能感を与える魔道具。

 それを5つも装備した所で持て余すという理論は、確かにあり得る話だ。

 事実、バルバロアが二つ目の魔王シリーズを装備した場合、人格が完全に崩壊し敵味方を問わずに攻撃する狂人と化すだろう。


 だが、リリンサにはそれが当てはまらない。

 荒れ狂う激情は魔王の心臓核にコントロールされ、魔王の首冠によって完全に統制されている。

 魔王シリーズの二大制御装置が揃った今、備わっている全ての機能を使用する事が出来るのだ。


 リリンサの意思により、魔王の脊椎尾が唸り声を上げてバルバロアを迎え撃つ。

 万物を破砕する先端がバルバロアへと迫り――。


 魔王の下肢骨格(バルバロア)が放った蹴りが、その回転を停止させた。



「見ろ!これが魔王の下肢骨格の力だ!!あらゆるモノが、例え攻撃であろうとも、私の前に止まり留まる事になる!!」

「ん、さすが魔王。並みの魔道具とは桁違いの性能だね。」



 魔王の下肢骨格に備わっている機能、それは『固定』と『移動』だ。


『魔人枢機・サムエル』の下半身をベースに造られた『魔王の下肢骨格』は、その膨大な質量を支えるに足る機能を宿している。

 巨躯を支える為のバランサーであった『固定』の本質は、意図せぬ物質の流動を止めること。

 さらに物体の他、エネルギー値を固定して防御しやすくし、耐久値を固定して破壊しやすくできる等、攻防一体の能力だ。



「そして!貴族たる者ッ!!皆の先陣を切らねばならんのだッ!!」



 動きを止めた魔王の脊椎尾をすり抜けるように、バルバロアが疾駆した。

 それは人間の可動範囲を超えた動き。

 備わっている『移動』の能力により、物理法則すら無視した動きを手に入れたバルバロアは、着実にリリンサとの距離を詰めていく。



「死ねぇええええええええええええ!!リリンサぁあああああああ!!」

「……でも、所詮はその程度。結局、お前じゃ私に届かない」



 リリンサは立っていた。

 ただ真っ直ぐに。殺意が剥き出しの両腕を構えることすらせず、ただただ……茫然と。


 そして、それで十分なのだ。

 全ての決着は、もう既に付いているのだから。



「なんだこれは、空気が重いッ!?身体が前に、すす、ま……な……」

「平伏せ、バルバロア。お前程度では、私の前に立つ資格すら無い」



 リリンサが静かに放った重圧は、物質的な影響をバルバロアに与えた。

 移動と固定という、機動性に特化した魔王の下肢骨格。

 その膝が折れ曲がり、君臨する魔王の前で跪いたのだ。



「なにを……なにをしたッ……!?」

魔王の首冠デモン・クラウンチョーカー。レジェの王冠に秘められた能力は『負荷』と『統率』。そして私は移動を開始したお前に空気抵抗値の100倍の負荷を掛けた。これによって、魔王の下肢骨格は機能を停止せざるを得なくなった。」


「何故だッ!?移動という結果を発生させるならば、空気抵抗など関係あるはずがない!」

「そう。関係ないから動く気なれば動けるはず。だからこそ、魔王の下肢骨格(・・・・・・・)が自らの判断として(・・・・・・・・・)、その機能を停止せざるを得ない。それが高位魔道具で良かったね。そうじゃなかったら、お前の肉体は木端微塵に弾け飛んでいた。」


「ど、どういう事だ?」

「通常の空気抵抗値の100倍、それは空気が紙ヤスリに置き変わってしまった様なもの。そんな状態で、上半身が剥き出しのまま無理矢理に移動させる?どうなるのかなんて、想像しなくても分かると思うけど?」



 自我を侵食する魔王シリーズも結局は魔道具であり、使用者がいて初めて意味を成すものだ。

 だからこそ、その能力によって使用者を損壊させない為の安全装置が備わっている。


 例にあげるのならば、可変の機能を持つ魔王の右腕。

 どんな形状へも姿を変える事が出来るが、内部に取り込まれた使用者の右腕を潰してしまう形状への変化は回避されるようにプログラムされている。

 そして、そういった安全装置がある事を知っているリリンサは、下半身を覆っている形状を見て『移動』に関する能力だと当たりを付け、自爆するように仕向けたのだ。



「確かに、所持数という乗り越えられない差もある。でも、もっとも大きな差は、魔王シリーズを使ってきた熟練度」



 ここで初めて、リリンサが一歩前へ進み出た。

 跪いて動けないバルバロアに変わり、魔王自らが歩み寄ったのだ。


 ……終焉を言い渡す為に。



「私は言ったよね。自我が飲まれているなんて論外だと。冷静に戦略を組み立てられなかったのが、お前の敗因。《総指揮官たる私が命じる。魔王の右腕よ、バルバロアの上半身を拘束しろ》」

「くるな!クルナッ!!」



 命令を受けた魔王の右腕が、魔王の下肢骨格を纏っていないバルバロアの上半身を握り絞めた。

 鋭い5枚の刃が肉に食い込むも薄皮一枚すら切り裂かず、されど、どれだけ暴れようとも決して揺るがない。



「ひっ!ひぃぃ!!」

「《総指揮官たる私が命じる。魔王の右腕よ、バルバロアの弱点はどこ?》」



 続いて唱えられたのは、魔王の左腕への命令。

 直ぐにその意を組んだ魔王の左腕は役目を果たし、魔王の下肢骨格とバルバロアの繋ぎ目を赤く発光させた。



「普通の鎧と違って癒着しているっぽいね。こういうのを剥がすととても痛いけど……魔王の右腕を使って、ちゃんと延命するから安心して?」

「ひぃぃぃ!!やめろ、やめてくれ!!たのーー」


「慈悲なんてあげないと、さっきも言った。……ドリル尻尾、起動!」



 ギュイィィィィィィィン!と再び……いや、先ほどよりも遥かに激しく唸りを上げた魔王の脊椎尾が、魔王の下肢骨格を弾き飛ばしていく。

 リリンサが初手に向けた魔王の脊椎尾は、まさに牽制。

 バルバロアを傷つける気の無い、威力を弱めたハッタリだったのだ。


 だが、勝敗が決した今、そんな手加減をするはずが無い。

 一切の躊躇なく100%の性能を発揮した魔王の脊椎尾は、苦し紛れに発動された固定の効果ごと、その外装を粉微塵に吹き飛ばした。


 そして、バラバラと落ちていく魔王の下肢骨格を見ながら、リリンサは『自動で直るはずだけど後でカミナに見て貰おう。あ、そうだ。ついでにリメイクもお願いしよう。バルバロアのお下がりとか嫌だし』などと考えている。



「お、お、おぉ……」

「ん、剥ぎ取り終わった。もう貴方に用は無い。えい。」



 まるで興味など無いと言うように、リリンサはバルバロアを地面へポイ捨てした。

 無残な姿となったバルバロアは下半身に力が入らず、ずるずると地面を這っている。



「お、お前達だけは……許しておけない……」

「ん、まだやる気なの?」



 その声に会わせ、リリンサの尻尾が唸りをあげる。

 だが、バルバロアは虚ろな目をしながらも、まったく怯んだりしなかった。



「国の為に……私は……、お前らに勝たねばならない……」

「何の話?」


「厳格だった父を殺し、王朝すらも崩壊させたレジェリクエ。あろう事か国民総奴隷などと言い出し、上辺だけの平等を謳いやがった……。貴族も平民もない国?管理者たる貴族も無しに、どうやって秩序を守るのだ……?」



 レジェリクエが父を殺した。と言われ、リリンサは僅かに動揺した。

 家族を大事にしているリリンサにとって、その言葉はランク9の魔法に匹敵する威力だ。



「人は平等などではない。平等になれる訳が無い。生まれた家系、性別、体格、病気の有無など、あげれば切りが無い。そういった生まれ持っての弱者は、やはり弱者であって切り捨てられる側なのだ。大局を見ている貴族が悪役となってでも、国の為に切り捨てなければならないのだ」



 話の見えないバルバロアの独白に対し、リリンサは脅しの意味を込めて追撃を仕掛けようかと思った。

 だが、それを止めた人物が居る。

 リリンサへ『少し話を聞くわ』と耳打ちし、事の成り行きを静かに見守っている。



「栽培されている植物がそうであるように、国を豊かにするには『間引き』が必要なのだ。それを前王チュインガム様は分かっていた。王子たるストロジャム様だって、我が家に何度も訪れては父と未来を語り合っていた」


「父は……なぜ殺されなければならなかった?ストロジャム様はなぜ、殺されたのだ……?」


「私がやらねばならぬのだ……。貴族として、他国の力を借りてでも、国を守らねばならぬのだ……。レジェリクエの血塗られた手なんかで国が救えるものか……」



 力尽きようとしているバルバロアは、もう、頭をあげる力すら残っていない。

 そんな、苦い砂を舐めながらの言葉を聞き終え、リリンサの横に立っていた人物は静かにバルバロアへ手を差し伸べる。



「バルバロア。言いたい事はそれだけなのぉ?」



 その人物は、綺麗に纏め上げられた金髪を砂で汚す事を厭わずに座りこみ、バルバロアの頬へ手を添えた。

 そして、上へ向けられたバルバロアの瞳の先には――、憐みの表情を溢す大魔王が居る。



「レジェリクエ……」

「余は女王。クラスメイトのレジィではなく、国王レジェリクエとしてここに居る。革命を願った蛮族よ、貴方の意思を言ってみなさい」



皆様こんにちわ、青色の鮫です!


本日ついに、4周年目に突入しましたッ!!

文字数も300万文字を突破し、ポイント数などもすくすく成長。これも皆様の応援があればこそ。

本当にありがとうございます!!


そんな訳で、感謝の気持ちを込めて……超魔王リリンサを公開です!

※2021.2.6 イラストリメイク


いやー夏休みはいいものですね。趣味に時間を費やせるのがサイコーに楽しい。ずっと夏休みなら良いのに!!


それでは皆様、暑いですので体調不良にお気をつけください!!(;>∀<)


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王シリーズ、思ってたんよりかっけえですな! 元がアレの系列なのも納得のかっこよさ! 今あるのが頭、両腕、尻尾、心臓?、下半身、の 6つですな!完成が待ち遠しいです! 執筆頑張ってくださいっ…
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