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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第78話「大魔王学院・お昼休み、ぷち大魔王会談」

「……婚約者だ?俺の中ではそんな事にはなっていない」

「そうですわね。私の中でもそうなっておりませんが、対外的にはそうなってますの」



 ものすっごい嫌な顔をしているイースクリムへ満面の頬笑みを溢しているテトラフィーア大臣が大魔王話術を仕掛けている。


 いきなり婚約者だとか言い出したと思ったら、二人共が速攻でそれを否定。

 何かややこしい事になっているようだが……俺の居ない所でやってくれ。



「そんなわけで、ユニフィン様。二つ目の雑務はこのイースクリムに関係ある事ですの」

「……。あぁ、給食楽しみだな!」

「雑務扱いかよ」


「もちろん、ユニフィン様にも関係ある事でしてよ?」

「ココアあげパンかー。胸がキュンとするぜ!」



 胸がキュンとするというか、普通に胃が痛い。

 これじゃ、給食も一人前しか食べられそうにない。



「つーか、この恐ろしいテトラフィーア大臣をガン無視とか、お前ってマジで図太いな」



 聞こえないフリしてんだから、絡んでくるんじゃねぇよッ!?

 いきなりの婚約者発言からの俺に関係ある雑務って、どう考えてもハーデスルート。

 せっかく腹ペコ大魔王さんが給食を貰いに行って静かだってのに、再燃焼させるような話を持ち込まないでくれ!



「で、ユニクルフィンにも関係ある?どーいうことだ?」

「それはですね、ユニフィン様こそ、私の正式な婚約者だからですわ!」


「……。なんだとッ!?」



 やっぱりこの話題か。

 つーか、リリンに負けたのにまだ諦めてない辺り、マジでエゲツナイ大魔王手段を使って来そう。

 どうすれば生き残れる?

 鳴けばいいのか?ぐるぐるきんぐぅー!



「良く聞きなさい、イースクリム。とある事情により私とユニフィン様は婚約を交わしておりますの。親同士は勿論、本人同士も了承しておりますの」

「記憶にございません」

「……コイツは記憶にないって言ってるぞ?」


「そんな訳で、私とイースクリムの親同士で決めた婚約など無効ですわ。貴方も嫌がっておりましたし、今日は正式に婚約破棄状を持ってきましたの」



 満面の頬笑みを浮かべているテトラフィーア大臣が書類を取り出し、イースクリムに差しだした。

 何やら難しい言葉がいっぱい書いてあるが、要するに親同士で決めた約束を破棄するって内容らしい。


 で、問題が二つほどある。

 一つは、この国の重鎮であり大国の姫でもあるテトラフィーア大臣が、なぜ、ただの学生と婚約を結んでいるのかという点。

 そしてもう一つは、イースクリムが受け取った婚約破棄状には、なぜか『テトラフィーア大臣との婚姻優先権・第4位』って書いてある。


 よし、ちょっと俺も話に加わっておくか。

 何らかの対応策が浮かぶかもしれないしな!



「ちょっと待ってくれ、色々聞きたい事があるんだが……?」

「はい、何でもお答えしますわよ、ユニフィン様!」


「この、婚姻優先権・第4位ってなんだ?」

「そのままの意味ですわよ。イースクリムは私と婚姻する権利を持ち、その優先権が4番目に高いという事ですわ」



 だとすると、このゲロ鳥大臣は4股……いや、俺を含めて5股を掛けてるって事か?

 ……片手の人数を手玉にとっているとか、可愛らしい顔ですんげぇ事していやがった。

 俺の中で大魔王度がぶっちぎり一位になったぞ。



「率直に聞くけど……5股だよな?それ」

「違うぞ。ユニクルフィン」


「イースクリム?」

「テトラフィーア大臣と婚約を交わしている人物は50を超えている。つーか、優先権が高い方の俺ですら全員は把握してない」



 片手どころの騒ぎじゃなかったッ!!

 50人とか軍隊か何かかッッ!?

 つーか、完全に女王アリと働きアリの関係性なってるだろ!


 レジィ大魔王陛下も大概だと思ったが、こっちは俺とフラグがある分よりダメージが深刻だ。

 本物の姫様と婚約していたと知った時の、色んな葛藤を返して欲しい。



「あら、意地悪な事を言いますのね、イースクリム。『テトラフィーア大臣との婚約』は政治戦略だと知っていて、そんな事を仰いますの」

「その政治戦略は、親父や陛下、テトラフィーア大臣がやってる事で俺には関係ない。具体的な内容とか知らないしな」


「そうですわね。商人から成り上がった大臣の息子との婚約なんて、私も重要視しておりませんでしたわ。しいていうなら、内務と外務の大臣が結束しているというパフォーマンスになる程度でしょう。……と、思っていたんですけどねー」



 ……ん?なんか一気に情報が出てきたな?


 えーと……。

 イースクリムは『商人から成りあがった大臣の息子』?

 でも、大臣ってテトラフィーア大臣とグオ大臣、ついでにぐるぐるきんぐぅー!しかいない。

 んー、だとすると……。


『商人から成りあがったと言われているグオ大臣の息子がイースクリムであり、テトラフィーア大臣と婚約を交わしていた』

『それは政治的なパフォーマンスであり、両者ともが本気じゃない。むしろ、消極的だった』

『で、テトラフィーア大臣の本命の婚約者がノコノコとやってきた今、全ての婚約を解消し、本気でユニクルフィンを捕獲しようとしている』


 って訳だ。


 色々と突っ込みたい事はあるが……。

 ……お前ってドストレートに王子じゃねぇかッ!!

 平民代表って肩書きはどっから来たんだよッ!?!?



「あなたの声色的に何かあるとは思っておりましたが、まさかグオウ大臣(・・・・・)の息子だったとは驚きでしたわー」

「なっ!マジかよ……。親父の野郎、喋りやがったのか……?」


「聞いたのは陛下からですわ。あぁ、ユニフィン様やリリン様も一緒に伺ったのでご存知ですわよ」

「どーなってやがる……?陛下は親父を切るつもりなのか?ということは婚約破棄も、もう一度、一族全ての血をレーヴァテインに吸わせる為に……?」



 いや違うぞ。

 全ては安直な口約束をしたユニクルフィンって奴のせいで、レーヴァテインとか全然関係ないぞ。



「そうか。そういうことか。お前らの体験入学の真の目的は俺を捕まえる為だったのか」

「違うぞ。セブンジードを転がすためだ」


「親父は忠臣だと思っていたんだがな。陛下に反旗を翻したってことか。そういえば、昨日は家に帰ってこなかった」

「違いますわよー。反旗を翻すどころか、地面に転がって崇めていましたわー」


「兄貴も姉貴も何やってんだよ……。もう二度と首が飛ぶのはごめんだから、忠誠を誓うって言ってたのに……」



 イースクリムは俺やリリンと同年代。

 つまり、ローレライさんが粛清をした時は5歳前後だった。


 だが、真っ青な顔色を見る限り、イースクリムもしっかりとレーヴァテインされているっぽい。

 兄貴や姉貴っていうのも、チュインガム元国王の実子達、ストロジャムやミルティーナの事だろう。



「イースクリム?顔が青いですわよ。大丈夫ですの?」

「大丈夫だ。直ぐに血が抜けて白くなる。空も飛ぶぞ、ポーン!って」


「あぁ、そういう……。私が何を言っても聞こえなさそうですので、ユニフィン様、一発で目が覚めるようなのをお願いしますわ」



 ……鳴けばいいんだな?

 ぐるぐるきんぐぅー!!


 いやいや、落ち着け、俺。

 こんなタイミングでボケ倒したら、余計にややこしくなるだろ。


 俺は真摯な顔を作って、意気消沈しているイースクリムの肩を叩く。

 そして、可能な限り真面目な顔で口を開いた。



「あー、なんていうかな。聞いてくれイースクリム」

「なんだ?死刑宣告か?」


「すまん、ほぼ、俺が悪い」

「……は?」


「テトラフィーア大臣が婚約破棄をするっていうのは、昔の俺が軽々しく交わした婚約?を守りたいからで、レーヴァテインとかグオ大臣とか、まったく関係ない」

「……はぁ?」


「要するに、昔の俺がリリンとテトラフィーア大臣を二股に掛けたのが事の発端だ。なお、これによって国がいくつも滅んでいる」

「……。じゃあ、陛下が親父の正体を暴露したのは?」


「それは説明すると長くなるんだが、簡単にいうと……話の流れ、ぶっちゃけノリだな!」

「……。すーはー。てめぇぇッ!ブン殴っても良いよなッッ!!」



 それから俺とイースクリムは廊下に飛び出し、悪鬼羅刹ごっこを繰り広げた。


 まぁ、鬼の様な形相で追いかけられようが、パワーアップした俺が捕まる訳がない。

 給食の配膳が終わるまで付きやってやるよ!



 **************



「いただきます!!」



 俺の前で美味そうなココアあげパンが光沢を放っている。

 その横には器にたっぷり盛られたワンタンスープ。

 付け合わせはホウレン草のおひたしとコロッケ。デザートに冷凍パインだ。


 俺は、リリンやナインアリアさんやサーティーズさん、さらにイースクリムやテトラフィーア大臣と机を寄せ合った。

 さらに、給食を貰って平均的にうっきうきな腹ペコ総指揮官が「テトラ達と作戦会議をする!」と言って、音を遮断させる魔法を使用。

 周囲の生徒は納得し、それぞれ別のグループを作って給食を食べている。


 ……で、何の作戦会議だよ。

 給食に集中したいだけだろ。



「はわわわわ……テトラフィーア様と一緒にお食事……はわわ……」

「緊張しなくて大丈夫ですわ。ですがもちろん、イースクリムほどの不敬はダメですわよー?」


「俺の気持ちって知ってる?なぁ、俺にも感情があるって知ってる?」

「どんまいであります!ホウレン草でも食べて元気出すでありますよ」


「もふぃふ!あげパンがとっても美味しい!」

「良かったな。で、何で二個あるんだ?」


「バルバロアの分を貰った!」



 誰に貰ったんだよ。許可を出す本人がいねぇじゃねぇか。

 というか、給食を奪うために追い出した疑惑すらあるぞ。

 ということで、バルバロア。

 給食が無い上に、大臣から有罪判決を言い渡されるから戻ってこない方が良いぞー。


 俺がバルバロアに黙祷を捧げていると、やっと事態を飲み込んだイースクリムが正気を取り戻した。



「つまり、明日の侵攻や親父が正体を暴露した事は、お前らが持ち込んだ案件が引き金だっつぅ話か?」

「そうだぜ。最も、俺達がここに来る前にレジィ陛下はブルファムと戦争を始めた訳だし、侵攻自体も前倒しになったにすぎないけどな」

「そうですわよ。グオ大臣は昨日の侵略会議で自らチュインガムだと名乗りましたわ。予定外の暴露でしたのに直ぐに人心掌握を済ませてしまうあたり、『賢王チュインガム』は伊達では無かったようですわね」



 イースクリムにはバレたから話をしても問題ないが、この席にはナインアリアさんとサーティーズさんも居る。

 二人にも事情を話して良いもんかと迷ったが……テトラフィーア大臣はグオ大臣の正体を平然と話し始めた。

 

 セフィナ関係の事は話さなかったが、レジェリクエ即位の秘密は暴露。

 まったく事情を知らなかったサーティーズさんなど、驚き過ぎて「はわわわわわ」以外の言葉を喋っていない。



「親父がチュインガムって名乗ったって事は、僅かにあった国内のわだかまりを制圧できる準備も済んだってことなんだろうな」

「わだかまり?そんなのがあるのか?」


「あぁ、簡単に言うと、貴族馬鹿みたいなのが一定数いる」

「マジかよ。大問題じゃねぇか」



 あれだけ貴族に固執してるのが一定数いるなら、クーデターとか画策していても不思議じゃない。

 で、平均的な幸せ顔であげパンを貪っているリリンが言うにはバルバロアは敵。

 なんと敵になる理由まで出てきた訳だが……ちょっとテトラフィーア大臣がどう思ってるのか聞いてみるか。



「テトラフィーアさん、ぶっちゃけバルバロアの事をどう思ってるんだ?」

「あぁ、彼はブルファムに通じていますわー」


「当たり前のようにさらっと言いやがった!!」

「彼は、『ブルファム王国との戦争に負けた後のレジェンダリア内で、貴族としての地位向上』を口実に情報を流していますわー」


「そんなとこまで断言できんのかよ!?」

「あら、お忘れですの?私は人の感情の揺らぎを聞き分けられますわ。嘘を見破るなど造作もない些事でしてよ」



 ……そう言えばそうだったな。

 ゲロ鳥大魔王の耳は地獄耳。


 大事な事なのでもう一度言おう。

 ゲロ鳥大臣の耳は、地獄耳。



「で、そこまで分かってるんなら、何で捕まえないんだ?」

「間者が一人だけじゃないからですわ。バルバロアに与えていない情報をブルファムが得てますもの」


「そういうことか。バルバロアを捕まえてしまうと警戒されて他の患者を探しにくくなると」

「ユニフィン様達に学園に来て貰ったのも、バルバロアとリリンサ様を接触させれば絶対に転がされると思ったからですわね」


「そんな裏設定が」

「ゲロ鳥は仲間の所に集まりますが、敵もそんな習性がありますの。転がして泣かせれば一網打尽に出来ますわね」


「敵の扱いがゲロ鳥並みだと……」



 なんかもう、ほんと怖いな。運命掌握・レジェリクエとその側近。

 敵の何手先の読んで行動してんだよ?



「そんな訳で、慌てて動き出す敵を探る為に、私は別室で学園を監視しておりました」

「えっっ」


「もちろん、体育館が廃墟になる一部始終や、セブンジードやバルワンの絶望顔、当然、ぶにょんぶにょんどどげしゃー!も観戦していましたわー」

「……す、すみませんでしたッ!!」


「いいんですのよー?修理に必要になる経費はブルファムから頂きますし」



 ひい!全然良いって顔してねぇ!

 笑顔なのに額に青筋が浮かんで見えるッ!!



「でも、間者が出て来なかったのは残念でしたわねー」



 そう言ってテトラフィーア大臣は脱力し、ワンタンスープに匙を沈めた。

 その優雅な作法は、両手であげパンを掴んでいる大魔王とは比べ物にならない。


 ほんの僅かな時間見惚れてしまい、慌てて俺は視線を外した。

 こんな人が俺に好意を持っていてくれるとか、なんかちょっと気恥ずかしい。



「他に怪しい人は出て来なかったのか。確かに残念だな」

「一応、前々から敵だと確定していた保健室の先生は確保しましたわ。敵は他にも居ますが……この学院以外に潜伏しているようですわね」



 嘘を聞き分けられるテトラフィーア大臣が調べた結果、学校内に怪しい人はいなかったらしい。


 どうにも雰囲気的には腑に落ちないって感じだが、テトラフィーア大臣は自分の耳に絶対の自信を持っている。

 結局、自分の聴力を信じて学院に敵が潜伏していないと判断し、後は本当に自由にして良いと俺とリリンに伝える為に出てきたんだそうだ。


 だがな。

 アレ以上自由にするとマジで尻尾とか出しそうだし、リリンの行動には注意するべきだ。

 あ、そうだ。給食センターにあげパンが残って無いか後で聞きに行こう。



「はわわわわ……バルバロアさんがブルファム王国に寝返ってたなんて……」

「女の敵でもありますし、割とガチ目に処罰して欲しいでありますねー」



 挙動不審になりながら話を聞いていたサーティーズさんも事態を理解したようで、バルバロアへの憤りを感じているようだ。

 これは……5・6時間目の授業はバルバロア狩りになりそうだな。



「むぅ!給食はやっぱり美味しい!!」



 せめてもの救いは、話をまったく聞いていない大魔王さんが満腹になっている事だけだな。

 割りと不憫なバルバロアを生き残らせる方法を考えつつ、俺もあげパンを頬張った。



 **********



「こちらバルバロア……。応答せよ。こちら……バルバロア……」

「実名で報告すんなよ、蛮族。で?」


「重要な情報を入手したのと……それと、ご報告しなければならない失敗がありまして……」

「へぇ。勿体ぶるのは好きじゃない。話してみたまえ」



 誰もいない保健室でシーツにくるまったバルバロアは、震える手で通信機を握りしめた。

 写真帳を見られ敵だとバレたと思い込み、すがる想いで口を開く。

 今から話す情報こそ、バルバロアに残された最後の希望なのだ。



「実は……私を暴行したリリンサの正体、それは、総指揮官たる無尽灰塵でしたっっ!!」

「うん。知ってた」


「…………………………………………………………………えっっ。」


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