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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第65話「大魔王学院・三時間目、恐怖のビデオ Part ②」

『はっはぁ!天は俺に味方をしたッッ!!逃げるが勝ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』



 あ、映像の中のセブンジードが逃げ出した。

 いいな。俺もこの状況から逃げ出したい。


 目の前に写し出されている映像の中では、モザイク総指揮官と獲物の見るに堪えない舌戦が繰り広げられている。

 今でこそわかる訳だが……このモザイク総指揮官、相当遊んでやがる。


 リリンは相手の実力を試す為に、あえて挑発を仕掛ける事がある。

 というか割と、いや、かなりの高確率で挑発を仕掛ける。

 そんでもって、ほぼ100%に近い確率で相手をブチ転がす訳だ。


 どっからどう見ても危険人物でしかない。

 モザイクを掛けられるのも納得だぜ!



『壁だと!?……ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!あと少しだったのに!!くそ!くそ!くそ!』

『全力を出す必要がありそうかつ、気持ちよく勝てる相手とか逃がすわけない!』



 あ、逃げだしたセブンジードが壁に激突した。

 予想外の展開にクラス中から爆笑が湧き上がり、セブンジードが辛そうにプルプル震えている。

 なんだこれ、公開処刑か何かか?


 ……うん、そろそろ現実逃避はやめよう。


 大魔王陛下の差し金により公開されたこの映像、どうみても正体を隠す気があるとは思えない。

 だって顔にモザイクを掛けてるだけだぞ?

 身元の特定につながる言葉にはゲロ鳥の鳴き声を被せてあるが、素の音声はリリンの声そのままだし。

 こんなの速攻でバレるだろ。



「うーん、総指揮官様のお顔は見せて貰えないんですね……ちょっと残念です」

「それはしょうがねぇよ、サティ。背格好が分かるだけでも凄い事なんだぞ?」


「そうですよね。それにしても、総指揮官様ってあんまり背が大きくないんですねー。意外です」

「しかも声が高い。女なのか?いや、俺達と同年代の少年って線もあるのか?」



 ……。

 ちょっと待てお前ら。マジで言ってるのか?

 どっからどう見てもリリンにしか見えないだろ。



「ねー、リリンサさんは総指揮官ってどんな人だと思います?」

「私達と同年代の女の子だと思う。ちなみに恋する乙女だとも思う!」


「恋する乙女?確かに、とてもゲロ鳥を愛していると仰ってますが……」

「……。レジェの編集が酷いと思う!」



 一応、リリンは正体を隠している事を忘れていないらしい。

 だが、余計な策謀を張り巡らせようとして、かなりカオスな事になってやがる。


 今流れていたシーンはセブンジードが戦う決意をするという、ちょっと熱い展開のはずだった。

 確か俺の記憶では……。



『ん。良い顔になったね。戦う覚悟が出来た?』

『一つ聞かせてくれ、総指揮官。紹介の時に言ってたよな?男がいるって』


『そう。彼は私の憧れであり、恋人。彼の為なら私は国だって落とせると思う!』

『そうか。くく。……なんだよ、同じじゃねえか。俺と同じで、色恋沙汰にうつつを抜かしてんじゃねえか』


『私はあなたとは違う。ユニク一筋!』

『そこはどうでもいいんだ。総指揮官は結局俺と同じ人間で、その実、その差なんて無い。それが分かりゃ……充分だろ』



 ってな感じで、チャラ男なりにリリンの事を理解するという山場だ。

 だが、流れた映像は……。



『ん。良い顔になったね。戦う覚悟が出来た?』

『一つ聞かせてくれ、総指揮官。紹介の時に言ってたよな?《ぐるぐるげっげー!》って』


『そう。《ぐるぐるげっげー!》は私の憧れであり、恋人。彼の為なら私は、国だって落とせると思う!』

『そうか。くく。……なんだよ、同じじゃねえか。俺と同じで、《ぐるぐるげっげー!》にうつつを抜かしてんじゃねえか』


『私はあなたとは違う。《ぐるぐるげっげー!》一筋!』

『そこはどうでもいいんだ。総指揮官は結局俺と同じ人間で、その実、その差なんて無い。それが分かりゃ……充分だろ』



 おい、なんだこの酷さ。

 俺の名前を隠した結果、ゲロ鳥にうつつを抜かしてる事になっちゃったんだが?

 あんな間抜け顔の鳥にリリンを取られるとか、悲しさが半端じゃねぇぞ。


 俺が大魔王編集に憤りを感じていると、ちょんちょんと控え目に肩を叩かれた。

 この感じはリリンじゃないな?

 防御魔法を貫通してないし。



「ねぇ、ユニクルフィン。ちょっといいかしら?」

「……なんだ?」



 ついに来たか。


 カルーアさんの話では、イースクリム達は認識錯誤に捕らわれ、あの映像に違和感を抱きづらくなっているらしい。

 だが、カルーアさんは認識錯誤を看破し、違和感バリバリな状態。

 雑すぎるモザイクにも思う所があるだろうし、何よりモザイク総指揮官が持っている星丈―ルナを見れば一目瞭然だ。


 俺は正体バレを覚悟して、ごくりと唾を飲み――。



「あの総指揮官、かなり若いわよね?あなた達……顔見知りじゃないでしょうね?」

「……はい?」


「英雄の息子だって言うんなら、相応のコネクションを持っていても不思議じゃないわ。で、どうなの?顔見知りじゃないの?」

「えっとぉ……。知ってるかな……」


「やっぱり知ってるのね!?教えなさい!!」



 なんでバレねぇんだよッ!?

 あんなの、どこからどう見てもリリンだろうが!!

 って、おい!

 リリンの激しい動きにモザイク処理が追いついてなくて口元が見えてんぞ!!隠せ隠せッ!!



「実はこの日、俺達も闘技場に来ててさ。この戦いもバッチリ観客席から見てたんだよ」

「そうなの!?生総指揮官を見たのね?いーなー」



 生総指揮官を見たいのか?

 それなら今すぐ右を向くべきだな。


 生総指揮官がクッキーを貪ってる姿を見れるぜ!!



「にしても、銃撃がまったく届いてないわねー。セブンジード!もうちょっと真面目にやりなさいよね!!」

「ふっざけんな!この俺の真剣な顔を見ろ!!こんな顔、陛下とテトラフィーア様に会う時以外には見せねえぞ!!」


「そうなの?見たこと無い顔だから分からないわ」

「嘘付けぇ!お前と一緒に敵兵に囲まれた時も同じ顔してたっつーの!」


「あら、そうだったかしら?」



 カルーアさんは野次を飛ばしているが、クラスの生徒達はセブンジードの流れる様な弾幕を見て圧倒されているようだ。

 セブンジードが放つ魔弾が空を切り裂き、進路上にあった闘技石段を躊躇なく抉り飛ばす。

 まさに『苛烈』の一言に尽きるこの銃裁きこそ、生徒達が目指している目標なのだろう。


 そして、熱い視線に答えるように、セブンジードが魔導銃の機能を解放した。



『貰った!《魔弾連装(ガトリング)倒木に至る風撃(エアロバスター!)》』



「はわわわ……すごいです……。あんなにいっぱい出るなんて」

魔弾連装(ガトリング)だな、アレは。分隊長の魔導銃にのみ備わってる特殊機能だ」


「あんなに出したらフラフラになっちゃいますよ……。ちゃんと栄養補給しないと」

「だな。魔弾連装は魔力の過大消費がネックだ。短期決戦を狙う分にはいいが」


「持久力が無いって、とても問題があると思うんですけど」



 ……。

 サーティーズさんのアルバイト先を知ってしまったせいで、ピンク色の会話をしているようにしか聞こえない……。

 チャラ男の魔導銃は持久力が無い。

 うーん、悪評ここに極まりって感じだな。



「なにあれ、光のドラゴンの群れですって……?流石は総指揮官様ね、そう思わない?リリンサ」

「この総指揮官、まだ本気出してないと思う」


「あんなに平然と回避してるのに本気じゃない?アイツの魔弾連装は終末の鈴音で一番速いのよ?」

「そうなの?トウトデン達は?」


「軍団将であらせられるトウトデン様達は独自の専用武器を使うから、魔導銃の腕前はセブジードが一番なのよ」

「なるほど、納得した。確かにセブンジードの銃の扱いは見事だと思う。魔弾陣詠唱バレットマジックは他の人には真似できない凄さがあったし」


「えっっ、ちょっと待って。セブンジードが魔弾陣詠唱を使ったの?」

「使った。見て、丁度のそのシーンになる」



 セブンジードの攻撃を裁いていたリリンは光の子竜を大量に作り出し、地獄のドラゴン攻めを繰り出している。

 それに対し防戦一方となりながらも、セブンジードは着々と勝利への布石を積み上げていき、そして最後のトリガーを引いた。


 そこに浮かび上がったのは、闘技場一面を覆い尽くした巨大な魔法陣。

 魔導銃によって掘られた溝が魔法陣の役割を果たし、ランク9の魔法を顕現させたのだ。



「アレって、荼毘に臥す火之迦具土(ヒノカグツチ)じゃない……」

「見たことあるの?」


「あるわよ。あの魔法はセブンジードの最強魔法。というか、終末の鈴音の隊員が扱える魔法の中で、一二を争う攻撃力を持つわ」

「なるほど。確かにあの火力と汎用性なら頷ける。再生能力があるのも高評価」


「って、確かセブンジードはこの戦いに負けるのよね?荼毘に臥す火之迦具土(ヒノカグツチ)を出したのに負けたって言うの……?」

「見てれば分かる。総指揮官の名は伊達じゃないという事!」



 カルーアさんは闘技場を照らす擬似太陽を見て唖然とし、その結末を知ってるモザイク総指揮官は平均的なドヤ顔を浮かべている。

 うん、ドヤ顔になってもしょうがないんだが……、正体を隠してるのを忘れてないか?


 そうこうしている内に、モザイク総指揮官が大量の魔導書を召喚した。



『《魔導書の使用(ディススペルマジック)凝結せし古生怪魚(ダンクルオステウス)

『馬鹿な!ランク9の魔法で作った炎の剣だぞ!?』


『別に不思議ではない。なぜなら、私が今使ったのもランク9。威力的には同等以上!』



 セブンジードの巨大な炎剣VSモザイク総指揮官の古代怪魚。

 それらが空中で激しく衝突し、対消滅。

 大迫力なその光景に、生徒どころかカルーアさんまで目を見開いている。



「何あの魔法……。火之十束剣ヒノトツカを打ち消すなんて」

「あれは凝縮せし古代怪魚(ダンクルオステウス)。水の創生魔法系ランク9であり、物質の原子活動を妨害し凝着させる効果を持つ。その性質により炎系の魔法と相性が良い……ぽい!」


「そんなこと……。じゃあ、総指揮官はセブンジードの魔法の性質を見抜いた上に、相性の良いランク9の魔法を無詠唱で使って相殺したっていうの?」

「厳密に言えば無詠唱ではない。あそこに召喚された131冊の魔導書を媒介にして詠唱を省略している……ぽい!」


「そんな馬鹿な。ランク9の魔法を無詠唱で……って、ここにも無詠唱でランク9の魔法を使ったのが居たわね」

「……。これくらい常識だと思う!」


「それはないわ。絶対に」



 なぁ、リリン。

 さっきから、ちょくちょく付けてるその『ぽい』はなんなんだ?

 誤魔化そうという気概は感じるが、逆に不自然になってるぞ。

 しかも、結果的に『それはない』って言われたし。



『生まれよ!火の蛇(ヒノカガヒコ)

『炎の蛇とか造形がショボイ。私の光の子竜(ホロビノ)の方が数倍かっこいい。手足も翼も、角だってある!』



「……ねぇ今、総指揮官様はなんて言ったの?」

「炎の蛇とか造形がショボイって言った。実際、光のドラゴンの方がカッコイイと思う!」


「いや造形とか……。あの魔法を見た敵兵って必ず全面降伏するのよ?何もかも焼きつくす炎の蛇龍。第九守護天使を纏っていても数秒しか耐えられない魔法なの。分かる?」

「威力が高い事は認める。だけど、アレよりも凄い魔法なんていくらでもあるという事。見てて」



 再びリリンが映像を指差すと、既にクライマックスに差し掛かっていた。

 闘技場を埋め尽くした炎の蛇龍。

 それを天空から見下ろしているモザイク総指揮官。


 やがてモザイク総指揮官は荘厳に手を振り上げ、終わりを告げる天雷を呼び出した。



『《大雷オオイカヅチ火雷ホノイカヅチ黒雷クロイカヅチ拆雷サクイカヅチ、これらは上体を滅ぼし、若雷ワカイカヅチ土雷ツチイカヅチ鳴雷ナルイカヅチ伏雷フイシイカヅチ、これらは肢体を滅ぼす》』

『《終りが来たのだ、我が愛しき者よ。―八の雷(ヤクサノイカヅチ)―》』



 映し出されていた灼熱一色が、白き清浄の雷で塗り潰された。

 リリンが使用した『八の雷(ヤクサノイカヅチ)』によって、セブンジードの火の蛇(ヒノカガヒコ)は一瞬で全滅。

 意図的に攻撃対象から外されたセブンジードのみが闘技場に残され、決定的な敗北が突きつけられたのだ。



「……なによこれ。アレも魔法なの……?」

「さっきのは八の雷(ヤクサノイカヅチ)というランク9の魔法。ただ……」


「ただ?」

「あの魔法は魔法十典範たる『開闢を生みし武人王(オムニバス・イザナギ)』から派生したものであり、その破壊力は通常のランク9よりも遥かに高い。魔法同士の優劣すら無視して一方的に破壊できる程に」


「そんな魔法を総指揮官様は扱えるっていうの……?はは、実際に使ったんだから、扱えるに決まってるわよね」



 へぇー、あれも魔法十典範、全ての魔法の根源の一つだったんだな。

 確かに、それならあの威力も納得だぜ。

 是非、クソタヌキにブチ込んでみて欲しい。


 ……所で、その知識はどう考えても喋っちゃダメなやつだろ。

 その解説は実質的に自白と同じだぞ。



「魔法十典範というのは全ての魔法の大元になったもので、これを――」

「あーごほんごほん、リリン?」


「……という夢を見た!」

「その誤魔化し方は無理があるわよっ!?」



 モザイク総指揮官の凄さを知って意気消沈したカルーアさんだが、リリンの解説をちゃっかりノートに書いていたりと割と強かだ。

 しかも、リリンの大魔王魔法講座を聞いているせいで理解が早く、魔法十典範が魔法の最高峰である事を理解したらしい。


 流石は大魔王国の軍人。

 今まで出会ってきたどの魔導師よりも、成長スピードが格段に速い。

 そんなカルーアさんは一通りノートを取り終えると、肩をすくめながらセブンジードに視線を飛ばした。



「なるほど……あんたが総指揮官の事を『化物』だって言った意味、やっと理解出来たわ」

「……。むぅ、化物って言ったんだ」

「ちょ、ふっざけんなカルーアッ!!その愚痴は酒の席で言った事だろうが!!」


「あら、私は素面だったわよ。野営当直だったから飲めなかったもの」

「任務中にお酒を飲むとか、教育が足りてないと思う」

「軍規ではOKなんですよ!!というか、魔導銃の情報を漏らした罰を喰らってヤサグレてたの!!半分ぐらい貴方――あ、やべ!」



 おい、殆どバレてるとはいえ、決定的な言葉を言わないで欲しいんだが?

 カルーアさんがすんごい顔でこっちを見てるじゃねぇか。



「ね、ねぇ、リリンサ。ユニクルフィンが総指揮官に会ったことあるって事は、あなたも会った事があるって事で良いのよね……?」

「……ない」


「そ、そうなんだ……。ところで、その魔導服とってもお洒落ね。流行ってるのかしら?」

「この魔導服はオーダーメイドで私しか持っていない。ちなみに色やデザインが微妙に違う奴ならレジェとかも持ってる」


「へ、へー。陛下も持ってるんだ。いいなー私も欲しいなー?」

「だめ。これは心無き魔(アンハート・デ)……。」


「……。」

「……。」


「……ふぇぇぇ……。」

「……ユニク、どうしよう……」



 うん、リリンはよく頑張ったと思うぞ。

 まだ他の生徒にはバレてないっぽいし、これはもうアレだ。

 えーと、「先輩っ!廊下で待ってます……!」だなッ!!



「カルーアさん」

「な、なにかしら……?」


「ちょっと廊下に来てくれないか?」

「……これって、すっごく叱られるやつ?」



 たぶん叱られるだろなぁ。……セブンジードが。

 なお、そこに理屈はない。

 だって大魔王陛下だもの。


 そんな事を言って落ち着かせた後、俺とカルーアさんとリリン、ついでにセブンジードが廊下に出た。

 授業は色々と察したセブンジードが手早く射影機を操作し、ナインアリア戦の放送を始めたから問題ない。

 解説役に本人を置いて来たから万全だぜ!!



「あの、その……。」

「カルーア」


「はひぃ!」

「そう畏まる事はない。私の正体は明日になれば分かる事」


「で、でも!さっきはその、失礼な事をいっぱい言って……その……」

「その程度で怒ったりしない。思い出して、セブンジードなんか無謀にも私に勝つ宣言をした上で大敗し、挙句の果てに化物扱いしている」



 そうだな。しかも現在進行形で逃亡を図ろうとしている。

 逃がさないように捕まえておこう。



「は、離してくれ、ユニクルフィン!!」

「ねぇ、セブンジード。一体どこに行くつもりなの?まだ授業中だというのに」


「なんですかその笑顔はッ!?い、嫌だぁぁ!!お仕置きは嫌だぁぁ!!俺はまだ人間でいたい!!」



 なんだこの怯えよう。

 さっき何をされたんだよ。



「カルーア、あなたの魔法知識の理解の早さには一目置いている。鍛えればかなり優秀な魔導師になると判断した」

「はひ!お、お褒めにあずかり、こ、こ、光栄でございます」


「よって、あなたの等級を引き上げたい。今は分隊長だと言っていた。なら4等級か3等級のはず」

「わ、私は4等級の上位であります……」


「ならまずは3等級で金額設定を上位にする。そして戦争で戦果をあげる事が出来たら2等級に昇進させる。それでいい?」

「うぇひひ……。よ、よろしくお願いします……」



 完全に恐縮しきってるんだが、大丈夫か?

 笑い方すらぎこちなくなってるって相当だぞ。


 カルーアさんは引きつった笑みを浮かべながら自分の手帳を取り出し、仰々しくリリンに差し出した。

 それをリリンは無言で受け取り、慣れた手つきで隷属階級を操作している。

 ん?何か他にも書いてるな?

 どれどれ……、これは……。



「はい。これであなたは3等級奴隷。確認してみて」

「はひ……。ありがとうございます。では、失礼して確認――えっ」


「そういうことだから、畏まらないで欲しい!」

「えっ、えっ、えっ……。あ、ありがとうございますっっ」



 リリンはカルーアさんの隷属手帳にメッセージを送っていた。

 その内容は『カルーア、あなたを総指揮官、リリンサ・リンサベルの弟子とする。月謝は毎月美味しいお菓子を献上すること!』だ。


 憧れの総指揮官からのメッセージを見たカルーアさんは、感極まった様子で隷属手帳を胸に抱き、深々と頭を下げた。

 何だかんだリリンは自分の仲間に優しい。

 俺やセブンジードが転がされているのも愛の鞭?なんだと思うし、結果的に強くなってるのも事実だ。


 ともかく、これでまた一人従順なシモベ……もとい、心無き魔人達の小悪魔アンハートミニデーモンが増えた訳だ。

 賑やかなパーティーでお邪魔するから覚悟しておけよ、ロイ!



「あ、そうだ。せっかくだし4時間目の授業を変更したい!」

「おい、ユニクルフィン。総指揮官が暴走し始めたぞ。止めろ」

「無理だな」


「4時間目はみんなでドッチボールをしたいと思う!」



 ……何がどうしてドッチボール?

 いや問題はそこじゃない気がするな。

 ドッチボールは、ボールを投げて当てる遊びだったはず。

 で、それが大魔王風味になるわけだ。


 俺達はともかく、生徒は全滅するんじゃないか?


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