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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第64話「大魔王学院・三時間目、恐怖のビデオ」

「リリンサさん、リリンサさん、総指揮官様の映像ですって!すっごいですよ!」

「サーティーズも総指揮官に興味があるの?」


「あるに決まってるじゃないですかっ!総指揮官様っていえば、見た人に幸福をもたらすって言われてるんですよ!誠にしやかに囁かれている噂では……天使様の映し身なんですって!」

「……天使?そんな風に名乗った事はないと思う……?」



 おい、誰だ。天使だなんて適当な事を言った奴。

 どこの世界に、レーザー兵器尻尾で軍人を恫喝する天使が居るんだよ。

 そもそも、尻尾が生えてる時点で天使じゃねぇだろ。魔王だ。



「総指揮官様のお姿を見れるなんて、きっと良い事が起こりますね!」

「そんなに見たいの?はい」


「リリンサさん、私を見ても総指揮官様のお顔は分かりませんよ。セブンジード様の持ってきた映像を見ましょう」

「むぅ……。あっちを見ても分からないのに……」



 生徒たちの惚気を聞いたリリンは早速、平均的な頬笑みを振りまいた。

 そして、サーティーズさんは天使様のドヤ顔を完全にスルー。

 そして、見る見る内に天使様の頬が膨らんでいき、平均的なぐぬぬ……!顔になった所でクッキーを与えて鎮静化を図る。


 で、リリンは「あっちを見ても分からない」って言ったな。

 だとすると、映像を見ても身元が判明しないって事なのか?



「セブンジードさん!ちょっといいか!!」

「ん?あぁ、お前も居たのかユニクルフィン。地味過ぎて見過ごしたぞ」



 悪かったな地味でッ!!

 カルーアさんにはパッとしないって言われまくったし、この国の奴らは何でこうも平常運転で誹謗してくるんだよ!?

 これも大魔王陛下の影響か!?



「リリンが居る所には俺が居るんだ。覚えておいてくれ」

「そうか。でなんか用か?出来れば、そこの可愛らしいお嬢様と一緒に大人しくしてくれると助かるんだが」


「いいぜ。だが、総指揮官の正体は陛下から最上位機密情報として扱われていたよな?そんな映像なんて見せちゃっていいのか?」

「それは問題ない。なにせ、今から見せる映像は陛下から、この時間に放送するように通達されたものだからだ」


「なに?そうなのか?」

「そうなんだよ。……ユニクルフィン。俺だってなぁ、本当は逃げ出したい。今すぐ戯楼鳴鳥に行って柔らかなおねーさん達に癒されたいんだ。だが、前後から大魔王に睨まれちゃどうする事も出来ない」



 そういって、セブンジードさんは拳をぎゅっと握りしめた。

 これが死地に赴く兵士の顔って奴か。

 ……色んな意味で渋いぜッ!!


 さて、これが大魔王陛下の差し金だという裏が取れた。

 時間まで指定されてるって事は情報の取り違いって事もないだろうし、このまま放っておいても問題なさそうだ。



「そっか。悪かったな授業を中断させて。続けてくれ」

「一つ、俺もからも言わせてくれ、ユニクルフィン。……尻尾はねーわー。なんだあれは?バケモンか!?」


「……可愛いだろ。機会があったら手を差し出してみろ。慣れると絡み付いてくるんだ」

「あんなもんに絡まれたら発狂するだろうが!」



 そうだな。一刻も早く脱出しないと、大魔王一本背負いで地面にブチ転がる事になるから注意が必要だぜ!


 俺と漫才を繰り広げたセブンジードさんはキリッとした軍人の顔に戻り、何事もなかったかのように授業を再開した。

 どうやら、映像を見せる前に注意事項があるらしい。



「えー、まずは映像を見せるに当たり、注意事項が何点かある。第一に、これから見せる映像は秘匿性が高い物だという点。故に、この映像を撮影して別のクラスの生徒に見せるとか、そういうのはやめてくれ」



 セブンジードさんの最初の注意は『この映像は大魔王陛下が持つ著作権によって保護されています。許可無き無断転載は――』ってやつだな。

 明日にはリリンの正体を暴露するとはいえ、敵に知られるリスクは極力少なくしておきたい。



「えっと、ご質問いいでしょうか?」

「なんだサーティーズ。言ってみろ」


「とても光栄に思っているのですが、どうして陛下は私達の様な一般学生に映像を見せて下さるんでしょうか?まずは、終末の鈴の音の隊員達に見せてからでも遅くないのでは?」

「良い着眼点だ、サーティーズ。確かに不自然であり、そこには陛下の思惑が隠されている」



 陛下の思惑か。どうせ「リリン達をからかって遊ぶのぉ!」とかだろ。

 だが、セブンジードさんは重苦しい声で、その真意を語り始めた。

 どうやらちゃんと理由があるらしい。



「ナインアリア、サーティーズ、バルバロア、イースクリム。この四名は明日行われる大規模進軍にて重要な役割を与えられる事になる。その為、総指揮官と直接面談を行い、その指揮下に入る事になる」

「ひえっ。入隊は聞いていましたし、すぐに任務だというのも聞いていましたが……。総指揮官様の直々の配下に、私達の様な新兵が?」


「陛下もお前達の事を大変に気にかけていてな。とっても意味深な声色で『いい切り札になる』とまで仰っている。俺も期待しているぞ、サーティーズ、ナインアリア、イースクリム、バル……バルバロアはどこに行った?このクラスだろ?」

「あの人なら保健室ですよ。リリンサさんに教えて貰った魔法でお尻を掘ったら泣いちゃいました」


「なんだその混沌ッ!?」



 セブンジードさんは類稀なる先見性を発揮し、自らの尻を押さえた。

 そして、それに呼応するように、僅かに揺れていたチョーク入れの微振動が収まる。


 ……なにか居るな。あのチョーク入れの中に。



「ちょ、マジで何してるんですかっ!!尻を狙う魔法って何っ!?」

「さっきのぶにょんぶにょんきしゃー。色々あってバルバロアの尻を抉った。ちなみの元にした魔法はランク9の水害の王」


「えぐっ……。エグイ。俺が言えるのはただそれだけです」



 そう言って、ブルリと震えたセブンジードさんは隊服の第九守護天使を活性化させた。

 あ、再びチョーク入れが微振動し始めた。

 獲物を定めてしまったようだ。



「んなわけで、今から総指揮官の威光に触れて慣れさせようってわけだな。ホント、陛下のお心遣いには涙が出るぜ!」

「そうですね。私たち一同も陛下を尊敬しております」



 サーティーズさんの声に、クラスの生徒全員が頷いた。

 まぁ、そうだろうな。そうじゃなかったら、ゲロ鳥触手プレイにはならねぇし。


 セブンジードさんは色々と諦めた顔で話を切り替え、再び映像を見る時の注意事項に戻る。

 俺としては、当たり障りのない紹介動画だと嬉しいんだが……。



「もう一つ注意するべき事は……この映像はすごく刺激が強い。というか恐怖映像に近しい何かだ。猟奇ホラー映画だと思ってくれて良い」

「えっ。」


「なにせ、総指揮官の戦闘をフィルムに収めたという貴重な映像だ。危険動物の狩りなんて目じゃねぇよ」

「えっっ。」


「だから、今からトイレ休憩を挟む。全員、体中の水分を絞り出して来い!」

「えっっっ!?」



 おい、一体どんな映像を見せるつもりだよ?

『実録!サバンナで暮らす総指揮官。~弱肉強食の頂点は、今日も獲物を求め、むぅぅ!と鳴く~』って感じか?

 それとも……。

『13日の定休日。湖畔に響く「らーめん……」という唸り声』って感じか。


 ……少なくとも、ホラー映画ではないな。

 ちょっと見たくなったし。



「あのっ!私、怖いのはちょっと……総指揮官様って、そんなお化けみたいな恐ろしいお方なんですか」

「ははっ、お化けなんかより遥かに恐ろし……ひっ。まぁ、そのなんだ、念には念を入れただけだ。ほれ、お前もトイレに行って来い」



 ぞろぞろと生徒達が出ていく中、青い顔をしたサーティーズさんがセブンジードさんに質問をしていた。

 そして、頬を膨らませている大魔王さんに睨まれ、適当な事を言って話を打ち切っている。


 教室に残ったのは、俺とリリンとセブンジードさん。

 ん?これはもしかして、人払いをしたのか?



「で、何でお前らがここに居るんだよ。リリンサ様、ユニクルフィン。明日の大規模侵攻の打ち合わせをしなくていいのか?」

「全部レジェに任せてある。私は本気で暴れるだけだから問題ない」


「問題しか見当たらないッ!!何万人、いや、何十万人を犠牲にするつもりだッ!?」

「知らない。敵を思いやる余裕なんてない。私はセフィナとワルトナ、メナファスを取り戻すだけ!」


「……どちら様ですか……?そいつら」



 獲物を想像した大魔王さんが奥歯をギリリと鳴らすと、セブンジードさんがビクリと背筋を伸ばした。

 どうやら良からぬ雰囲気を感じ取ったらしく、リリンが並べた人物の正体を気にしている。


 そうだな。教えてやるか。

 そいつらこそ、正真正銘の大魔王だってさ。



「まず、セフィナってのはリリンの妹だ。可愛い顔してリリンと同等の戦闘力を持つ」

「大魔王に妹が居る……だとぉ……」


「で、ワルトナとメナファスってのは心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)な。色々あって3人ともブルファム王国に捕まってる。で、俺達は三人を助けるためにこの国に来て、レジィ陛下に助力を願い出た訳だ」

「……。待て待て待てッッ、ちょっと待て!!それじゃ、リリンサ様並みの戦闘力を持つ大魔王がブルファムに捕まってて、それを奪還する為に大規模進軍を仕掛けるってことかッ!!」


「そうだぞ。聞いてないのか?」

「聞いてねぇえええ!!え、なに?俺ってば軍団長なんじゃねぇの?何で知らされてないの?」



 どうやら、セブンジードさんは今回の侵攻の目的を知らなかったらしい。

 俺は軍というものがどういうものかよく知らないが……最終目的を知らないのなら、そこに関わらせる気はないんだろう。


 そう思って慰めようとしたら、静観していたリリンが口を開いた。



「セブンジード、気落ちする必要はない。たぶんだけど、トウトデン達も知らないと思う」

「軍団将達も?確かに、妙に張り切ってこそ居たものの……アイツらが『総指揮官の妹の奪還』なんて知った日にゃ、あんなに大人しいはずがねぇ」


「レジェは最終局面は極少数で行うと言っていた。セフィナ奪還とブルファム王国攻略は完全に別物として考えているはず」

「そうなのか?だがよ。捕虜の奪還なんてのは、俺の隊が最も得意とする領分なんだがな?情報収集だけでも関与した方が良いはずだろ?」


「既にメイとジルバシラスには声を掛けた。レジェはセフィナを奪還する為に必要な人材の優先指名権を私にくれている。だから、私に声を掛けさせるために、セブンジードをここに誘導したんだと思う」

「そういう事かよ。もう俺は、大魔王陛下の掌の上で踊ってたわけだ」


「セブンジード、力を貸して欲しい。私は絶対にセフィナ達を取り戻さなくちゃならないから」

「はっ、拒否権がねぇし、拒否するつもりもねぇよ。……ご命令を承りました。総司令官殿。この軍団長セブンジードが、勝利の道標となる弾丸を撃ち込んで見せましょう」



 そう言って、セブンジードさんは膝を付き、ホルスターから銃を引き抜いてリリンに捧げた。

 リリンは銃を無言で受け取り弾丸が入っている事を確かめ、再びセブンジードさんに返す。

 そして、「あなたの忠誠は預かった。この戦いで戦果をあげることを期待している」と格式ばった笑顔を向ける。


 これは弾丸が入った銃を相手に預けつつ、頭を差し出す事で忠誠を誓った……って事なんだろう。

 思えば、レジィ陛下が闘技場に来る時のお伴として、数いる兵士の中から選ばれたのがセブンジードさんだった。

 こういう儀式めいた礼節を弁えているからこそ、大魔王陛下もセブンジードさんの事を重用するんだろう。



「ブルファムの野郎がね……。ユニクルフィンも当然リリンサ様と行動を共にするんだろ?」

「そうだぞ。セブンジードさんの力には期待してるぜ!」


「おいおい、さん付けなんてやめてくれ。呼び捨てで良いぞ」

「そうか?なら気兼ねなくセブンジードって呼ばせて貰うぜ!」



 そう言って、俺達は固く握手を交わした。

 大魔王に振り回されている俺達だからこそ、心で通じるものがある。


 俺達は瞳だけで大魔王苦労同盟を設立し、再び話に戻った。



「にしても、陛下やリリンサ様クラスの大魔王を捕らえているって事は、ブルファムは想像以上の戦力を持っているようですね」

「それについてはレジェも判断しかねると言っていた。ワルラーヴァーは大聖母ノウィンの陣営であると」


「ワルラーヴァーですか。ふざけた名前ですが、その実力は確かなんですね?」



 ……ラルラーヴァーな。

 もし本人の前でワルラーヴァー(悪い幼虫)だなんて言ったら、逆にふざけてんのかと思われて殺されても不思議じゃないから注意してくれ。



「正直に言う。私一人ではワルラーヴァーに全く歯が立たなかった」

「なっ!リリンサ様ですら全く歯が立たなかったですって!?」


「うん。だから、今度会った時は尻尾での超遠距離波動砲を試してみようと思っている!」

「超遠距離波動砲……。なんですか、その強そうなやつ?」


「尻尾の先から出るレーザー兵器。私の目算ではランク9の魔法20発を同時に撃ち込んだのと同等の威力を誇っている!」

「さっきの尻尾にそんな機能がッ!?つーか、そんな決戦兵器をぽんぽん出さないでください!」



 リリンがラルラーヴァーに対する作戦を告げていると、廊下の方がだいぶ騒がしてくなってきた。

 休憩に行ったクラスメイト達が戻ってきたようで、口々に総指揮官の姿を見るのが楽しみだと語っている。


 さて、これ以上、込み入った話は出来ないだろうし大人しく授業を受けるとするか。

 って、あれ……?



「こらぁ!セブンジード!!あんた面白そうなもん持ってるそうじゃない。なんであたしに先に見せないのよ!!」

「カルーアか。それは陛下の命令だからだ。ついでにいうと、お前を優遇する道理もない」


「道理が無くても優遇しなさいよ!そんなんだから、あんたはモテないのよ!」

「うるっせぇ!キャンキャン喚くな、俺は上官だぞ!?」



 ……カルーアさん、再登場すんの早過ぎだろ。


 生徒と一緒に教室に入ってきたカルーアさんは、教壇で射影機の準備をしていたセブンジードを指差して野次を飛ばし始めた。

 上司部下の関係というよりも、慣れ親しんだ幼馴染っぽい感じがするな。



「はっはん!そんな事を言っていいのかしら?あんたが総指揮官様とコネがある様に、こっちにもコネがあるんだからね?」

「……おい、何の冗談だ?カルーア。今すぐその手をどけろ」



 上官という組織図を持ち出したセブンジードに対し、カルーアさんの反撃は実に巧妙だった。

 カルーアさんは速攻で俺達の所へ駆け寄り、リリンを後ろから抱き締めた。

 そして、腹ペコ大魔王さんと一緒に不敵に笑っている。



「こっちにはね、英雄の息子とその恋人っていう、超強力なコネがあるんだからね!」

「あ、そうそう。ユニクはユルドルードの息子。で、私はユニクの恋人!」

「……は?……ユニクルフィン?」



 そんな顔で俺を見ないでくれ。セブンジード。

 俺が英雄の息子だって言うのは、大変に不本意だが本当なんだ。



「マジかよ……。お前は一般人だと思ってたのに」

「悪いな。俺も一般人でいたいと思ってるんだが、なかなか難しくてさ」


「にしても……なぁ、カルーア」

「な、なによ?」


「お前は幸せそうで良いな。その何の悩みも無さそうな顔を見ると安心するぜ。あぁ、授業を見たいんなら隅っこの方で勝手に見てろ。くれぐれも邪魔をすんじゃねぇぞ」

「なによっ!扱い酷くない!?」



 いろいろと面倒になったらしいセブンジードが投げやりに許可を出し、カルーアさんは自分で机と椅子を召喚して座った。

 場所は当然のようにリリンの真横であり、バックから取り出したノートにはびっしりと付箋が張られている。


 なるほど。さてはリリンと魔法談義をしたくてタイミングを見計らっていたな?

 で、教室に戻る生徒に便乗し乗り込んできたと。

 流石は諜報部隊に属する軍人。要領が良いぜ!



「全員戻ったな。では授業を始めるぞ。ナインアリア。ちょと前に来い」

「自分でありますか?」



 バルバロア以外の全員が着席したのを確認し、セブンジードが再び教壇の前に立った。

 今度はサポート役としてナインアリアさんを呼び寄せ、射影機の電源を入れる。



「今日見て貰うのは闘技場での映像だ。ナインアリアが総指揮官と戦った時の奴だな」

「ちょ、恥ずかしいでありますよっ!?」


「陛下の命令だ。我慢しろ」

「見せたいんなら、自分の奴を見せればいいでありますっ!?」


「それとこれとは話が別だ。悔しかったら軍団長の俺よりも偉くなるんだな。新兵ナインアリア」

「横暴でありますっ!?」



 ……アレを見せるのかよ。

 安心できる要素が一つもないんだが?

 トイレ行かせたのは必要な措置だったと納得するレベルの衝撃映像だし。


 つーか、あんなもん見せたら絶対にリリンが総指揮官だってバレるだろ。

 どうなってやがる……?



「ということで、戦った本人に解説して貰いながら総指揮官の戦闘映像を見るのが授業だ」

「酷いであります……。あとでテトラちゃんに言い付けてやるであります……」


「……。まぁナインアリアはこう言ってるが、実際は素晴らしい映像を見る事になる。肉弾戦じゃセブンジードよりもナインアリアの方が強いなんて言われる所以がここにある訳だな」

「今更フォローしても遅いであります……。テトラちゃんに叱って貰うであります……」


「と、ともかく、総指揮官の戦闘力の高さだけに注目してくれればいい。ほれ、見ろ!」



 分が悪いと悟ったセブンジードは話を打ち切り、乱暴に射影機のリモコンを操作した。

 そして、壁一面に映像が投影され……おい、ゲロ鳥のアニメーションが始まりやがったんだが?

 ん?なんか看板を取り出しやがったな。なになに……『Gerodori・Movies』?


 ホント、ゲロ鳥のごり押し感が半端じゃないな。この国。



「このオープニングムービー、凄く可愛いね。ユニク」

「だな。俺的にはタヌキムービーズじゃなくてホッとしてるし」


「それはそれでありな気がする。作って貰う?」

「どんなシリアス映画も、タヌキが出てきたらコメディにしかならんだろ。却下で」



 それこそ、連続殺人犯をタヌキが襲い出したら笑うしかない。

 狂気スプラッタ映画が、一瞬でカツテナイロボ映画になるんだぞ?

 笑うだろ、そんなん。



「あ、始まった。って、レジェ?」


『あはぁ、国王のレジェリクエよぉ。テレビから十分に離れてるかしらぁ』


「確かに近付き過ぎはダメだと思う!」


『今日は飛びきりにぃ、とてつもなくぅ、貴重な映像をお見せするわぁ。心の準備はいいかしらぁ?』


「大丈夫。あの戦いにミスはない!ちょっと油を掛けられただけ!」


『それでは、さっそくぅ、どうぞぉ』



 どうやら、今流れているのは導入部分だったようで、闘技場の映像を紹介する様な形に編集してあるらしい。

 女王陛下自らがMCを務めるとか、サービス精神が半端じゃないな。

 そして、肝心の闘技場での映像が流れ始めた。



『俺の負けですぅゥゥゥゥゥゥ!!負けました!無条件降伏!ですから、戦いはお終いってことで、どうか、お願いしますっっっ!!』



「……は?」

「あ、セブンジードさんであります!」



『そうだ、今度おいしい食事をご馳走しますよ!俺、そういうお店いっぱい知ってるんで!』

『美味しいお店なら、レジェに言えば予約してくれる。というか、わざわざお店に行かなくても、レジェはお店を召喚してくれると思う』



「……ってはぁああ!?これ、俺の時の映像じゃねぇかっ!!」

「どうやら、自分はお役御免みたいでありますね?失礼しまっす!」


「ちっくしょぉおおお!!嵌められたぁあああああ!!」



 なんか俺の知らない所で大魔王さんの陰謀があり、まんまとセブンジードが嵌められたらしい。

 流れている映像を改めてみると酷いもんであり、総指揮官と思われる人から必死に逃げ惑っている痴態が延々と流されている。


 だが、セブンジードはまだいい。自爆だし。

 問題は……。


 総指揮官の顔にモザイクが掛ってるって事だ。



「むぅぅぅぅ!なにあれ。正体がバレないってそういう事なの!?」

「おう、なんというか……雑だよな」


「雑も良いとこ。もうちょっと他に手段があった気がする。魔王装備を合成して顔を隠すとか」

「それはそれで問題あるだろ」



 公開された総指揮官の姿は酷いもんだった。


 顔にはモザイクが掛けられ、音声の至る所に打ち消し音たる「ぐるぐるげっげー!」が挿入されている。

 しかも、服には一切編集が行われていない。

 つまり、今リリンが着ている服と一緒な訳で、勘の良い人なら直ぐに気が付いてしまうだろう。


 だが、思いのほか落胆の声が少ない様な……?



「これ、高位の認識阻害か掛ってるわね」

「カルーア?」


「生徒の制服には精神系魔法の効果を弱める術式が盛り込んであるんだけど、それを逆に利用して視野情報に補正が掛る様になってるわね。制服を着ている生徒は総指揮官の顔が見えない事に違和感を抱かないはずよ」

「そうなんだ。カルーアにもそう見えてるの?」


「いいえ。私の隊服は少し弄って有って、本来の映像と歪められた情報を同時に認識し、差異が理解できるようにしてあるの。つまり、違和感バリバリよ!それにしても……」



 カルーアさんはちらりと横目でリリンを見ると、映像の中の総指揮官と見比べた。

 モザイク加工前の映像を見ている訳じゃないから確証を得られないとはいえ、疑うには十分な材料が揃っている。


 あ、星丈―ルナにもモザイクが掛ってねぇな。

 うん、カルーアさんにバレるのは時間の問題だろ。これ。


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