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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第60話「大魔王学院、休み時間②」

「ほんっっとうにありがとね、リリンサ!こんなに簡単にランク9の魔法が覚えられる日が来るなんて、想像すらしなかったわ!」

「謙遜しなくていい。魔法を簡単に覚えられたのは、あなたの魔法知識の基礎がしっかりしているから」



 あれだけツンツンしまくっていたカルーアさんが、リリンに抱きついてデレまくっている。


 大魔王授業を始めたリリンは、まず創生魔法と創星魔法の区別から語り始め、その魔法知識を余すことなく生徒へと伝授。

 最前列で聞いていたカルーアさんは、最初こそ難しい顔をしていたが……段々と理解が追いつくにつれ、目を輝かせて行った。


 そして、リリンが召喚した魔導書の山を見て平伏し、無造作に「貸してあげる」と手渡された事で歓喜乱舞。

 それから実戦形式の魔法授業へと進み、生徒の半数がぶにょんぶにょんきしゃー!の創造主になった所でチャイムが鳴った。



「でもでも、ずっと実践レベルにならなかった『時を忘れる樹精霊ピリオッド・ドリュアデス』まで、詠唱破棄で発動できたのよ!?」

「それもあなたの理解が早かったおかげ。理論を知ったとしても、結局、最後は本人の才能が必要になってくる」


「それでも、も~~~~~最高よっ!!」



 カルーアさんは、流石は現役軍人というべき才能を発揮し、早々に崇拝の異魚王ぶにょんぶにょんきしゃーを発動させた。

 そして、「ちょっと相談があるんだけど……」と、どうしても詠唱短縮が出来ないという魔導書を取り出してリリンに相談。


 その後、気が付いた時には、カルーアさんは腹ペコ大魔王の従順なシモベと化していた。

 俺とナインアリアさんが脱走を企てようとする崇拝の異魚王ぶにょんぶにょんきしゃーと激戦を繰り広げている間に、何かがあったらしい。


 ……さりげなく、ランク9の魔法が量産されまくったんだが、後で怒られたりしないよな?



「この魔導書を返しに来る時に、とびきりに美味しいお菓子を持ってくるからね!楽しみにしてなさい!!」

「ん!分かった。楽しみにしておく!!」



 そして、リリンとカルーアさんは熱い抱擁を交わした。

 うん、無事に仲良くなれてよか……って、無事じゃねぇだろ。

 尻と尊厳に重傷を負った男が、保健室に搬送されている。



「なんだかんだ、カルーアさんは良い人だったな」

「うん。最初は教育が必要かと思ったけど、話してみたら、かなり深い魔法知識がある事が分かった。私的にはかなり高評価」



 浮足立ちながら階段を下りていくカルーアさんを見送ってから、俺達は教室に戻った。

 そこには、そわそわとした雰囲気のイースクリム。

 どうやら気持ちの整理が終わって、立ち直ったらしい。



「り、リリンサさん!!」

「どうしたの?」


「俺、俺……。俺は貴方のファンです!サインをください!!」



 そう言うなり、イースクリムは白い色紙を差し出してきた。

 うん、サインが欲しくなる気持ちは分かるんだが……サイン色紙なんて良く持ってたな。


 って、あ。このサイン色紙、背景にうっすらとゲロ鳥と校章が描かれてやがる。

 学校指定のサイン色紙なんて、妙なもんを用意してやがるな。大魔王校長陛下。



「サインをすればいいの?」

「は、はい!」



 リリンは差し出された色紙とペンを手に持つと、暫く考えてから達筆な字でサインをしたためた。

 そこには……、『オタク侍の弟子 リリンサ・リンサベル!』って書いてある。

 うーん、絶妙に残念な感じだ。



「ほぉぉぉ!憧れのサイン……!」

「ユニク、何でイースクリムはあんなに嬉しそうなの?」

「憧れてるらしいぞ」


「そうなんだ。むぅ……オタク侍のジャフリート人気は凄い。実際は変態なのに……」



 いや、憧れてるのはリリンになんだが?

 訂正しておいた方が良い……のか?


 俺的にはイースクリムと友人になりたいと思っている。

 なにせ、年が近い同性の友人はロイしかいない。

 だがしかし、ロイは超大国の王子様であり、大魔王陛下に転がされるのが確定している事故物件だ。


 ここは誤解を解いてやって、イースクリムに恩でも売っておこう。



「いやいや、リリンに憧れてるんだってさ。剣術大会でリリンに負けた事があるとかで」

「むぅ?私に負けた……?」


「……覚えてないのか?」

「ん……オタク侍の罰ゲーム中だったから、とても不機嫌だったのは覚えてる」



 ……なるほど。不機嫌だったから剣の試合なのに雷光槍を使っちゃったんだな。

 使う方も使う方だが、それを有効だと判断した運営も問題だらけだろ。


 それにしても、記憶力が良いリリンが覚えていないって、どんだけ不機嫌だったんだよ。

 この腹ペコ大魔王さんは、一週間前までの食事を完全に暗唱できるんだぞ?



「ねぇ、私に負けたって言うのは本当?」

「え……?あ、あぁ、本当だ!」


「……じゃあ、この剣の時の大会?」



 さらっと覚えていない事を暴露したリリンは、空間から 『天蛇ノ落涙(アマタノラクルイ)』と『休狐の渓間(キュウコノケイカン)』を取り出してイースクリムの前に置いた。

 その目は平均的なジト目だ。

 ……うん?なんでだ?



「おう!その時の剣術大会だ!あの時は突発的な開催で、先輩方は別の大会に――」



 リリンに問い掛けられたのが相当嬉しいらしく、イースクリムが饒舌に喋っている。

 周囲の反応を見る限り、イースクリムがここまで興奮するのはかなり珍しいっぽい。

 平民派閥の生徒ですら、明らかにドンビキしている。



「あ、そうだ!そん時の写真があるんだよ!!」

「むぅう!?」



 写真なんて持ってんのかよ!?

 なら、一目見てリリンだって気が付くべきだっただろッ!?


 そんなモヤモヤした感想を抱きつつ、イースクリムが取り出した写真に視線を落とすと……。

 そこに写っていたのは、『猫耳カチューシャ、振袖着物、甲冑幼女・ロリリン』だった。


 ……。

 …………。

 ………………オタク侍、良い趣味してるじゃねぇか。



「見ないで!!ユニク、見ないで!!!」

「これは……。うん、すげぇ可愛らしいな!」


「だめっ!!恥ずかしいからっ!!見てはだめっ!!」

「だろ?ジャフリート国の姫武将として、一部の信者から信奉されてる程なんだぜ!」



 なんというか……うん、これはリリンだと気が付かなくてもしょうがない。

 だって、この写真の少女は、ものすっっっっごく可愛らしいのだ。


 黒を基調とした華やかな着物の上には、落ち着いた雰囲気のミニサイズ甲冑。

 前で抱いている刀は陶磁器のような美しさでお馴染みの、殱刀一閃・桜華。

 だが、リリンの身長が低いから大太刀の様なサイズ感となり、『背伸びして頑張ってます!』という雰囲気が滲みでている。


 そんな少女が、表彰台の一位の席で頬を膨らまし、ふてくされている。

 うーん、あざとい!!



「むぅぅぅ!こんな写真をユニクに見せるなんて!!イースクリム!今すぐ校庭に出て欲しい!!」

「待て待てリリン。何をするつもりだ?」


「バルバロアよりもブチ転がすっ!!」



 バルバロアよりも転がしたら保健室を飛び越えて、天国に搬送されるだろ。

 この平均的超魔王な表情だと、殱刀一閃で首がぽーんとされても不思議じゃない。



「却下で。まぁ、そのなんだ……、俺はこういうリリンも好きだぜ?」

「むぅぅ!?!?!?」



 たまには、こういう女の子らしい格好も新鮮で良いもんだ。

 俺が見るリリンと言えば、『魔導師・リリン』『タヌキ・リリン』『大魔王・リリン』の三択だからな。


 ……3分の2に命の危機を感じるとか、心が休まる気がしない。

 よし!じっくり写真を見て中和しておこう。



「むぅ、ユニクに褒められたから良いけど……イースクリム、今度からは気を付けて欲しい!!」

「あぁ、すまん。ちなみに他の写真もあるんだが、出さない方が良いか……?」


「そんなの当たり前!次、出したら容赦なく転がす!!」



 リリンの剥き出し大魔王オーラをまともに食らったイースクリムは……「転がされるのか……。そうか……」とちょっと危ない感じになりかけている。

 おーい、戻ってこーい。

 そっちの道は危険だぞー?

 うっかり大魔王陛下の耳に入ったりしたら、大変な事になるんだぞー?



「あ、みなさん。何をお話ししてるんですか?」



 恍惚とし始めたイースクリムを野次っていると、サーティーズさんが返ってきた。

 バルバロアを保健室に連れて行った彼女の顔がちょっとだけ赤い。

 たぶん、バルバロアの介抱を手伝ってきたんだろう。



「俺の正体とリリンの強さについてな」



 これは、俺とリリン、そしてナインアリアさんとイースクリムで打ち合わせた嘘だ。


 カルーアさんに聞かれた時に、リリンの正体は『英雄の息子・ユニクルフィンを守るために、不安定機構から派遣された凄腕魔導師』という事にしてある。

 不慮の事故とはいえ親父の名前を出したんだし、ここはネームバリューを存分に使わせて貰う事にしたのだ。


 リリンが理不尽な戦闘能力を持っているのも、英雄の息子を守るための教育を受けたから。

 リリンが常識外な魔法知識を持っているのも、英雄の息子を守るための教育を受けたから。


 そんな風に『英雄の息子を守るため』と言ってたらカルーアさん達は納得し、リリンが剣皇シーラインの弟子だという事もバレていない。

 我ながら、こんな雑でいいのか?とは思っている。



「確かに英雄の息子さんなら、護衛とか必要ですもんねー」

「ん?どういう意味だ?」


「私のアルバイト先にも英雄ユルドルードのファンが多いんですよ。ユニクルフィンさんは、ちょっと優しげな感じなので、強引な女性とかが寄ってきちゃいそうです」



 強引な女性というか、傲慢な大魔王が群がってるぞ。

 というか、護衛であるはずの腹ペコ大魔王さんが率先して俺を剥きに掛ってきたりするし、油断も隙もありゃしない。


 この話を続けてもロクな事にならなそうだし、適当に話題を振り直そう。

 出番だぞ、バルバロアッ!



「それで、バルバロアの容体はどうだった?」

「大丈夫です、ギリギリ取り返しのつかない事態にはなってません。入ったのも先っぽだけですし!」



 ……先っぽでも入っちゃダメだろッッ!?

 あんなふざけた名前と形状だが、アレは一応ランク9の魔法だぞッ!?!?



「それ……大丈夫だったのか……?」

「一週間は軟膏が必要だと思いますが……。よく効くと評判の奴を持ってるので渡してきました」



 何でそんなもんを持ってるんだよ?

 清廉なお嬢様風な顔してるのに、結構、汚れてるのか?この人。



「なるほど……。じゃあバルバロアは暫く帰ってこない?」

「そうですね。深刻そうな顔で、一人にしてくれ。って言ってましたから、暫くは再起不能な気がします」



 サーティーズさんの話を聞いていたリリンは、平均的大魔王な顔で微笑んでいる。

 今はちょっと情緒不安定な感じだから、何を言い出すか分からない怖さがあるな。

 ちょっと探りを入れてみるか?



「リリン、バルバロアが戻ってこないと嬉しいのか?」

「好都合だということ。……この隙に、バルバロアの机を漁ろうと思う!!」



 ……。

 …………。

 ………………なんでッ!?!?

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