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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第55話「大魔王学院・休み時間」

「すっげぇー怖かったな、ククラス教頭」

「うん。ちょっと久々に恐怖を感じた。あの怖さは白銀比様に匹敵すると思う!」

「自分、あんなに怒られたの、初めてかもしれないであります……」



 腹ペコ大魔王リリンと先生勇者ナインアリアさんの戦いに俺が乱入した結果。

 ……体育館が崩壊した。


 なにせ、調子に乗ったリリンとナインアリアさんの魔王大戦を止めるには、俺もグラムを抜くしか無い。

 そうなれば絶対破壊の力が攻防に加わる事になり、ここで予想外にナインアリアさんが回避しまくってくれた。


 そのおかげでリリンがヒートアップし、威力の高い魔法を連発。

 気が付いた時には、体育館は廃墟と化していた。


 ……で、それを見ていたククラスさんが背後から忍び寄り、俺達に有無を言わさず校長室へ連行。

 人生初の授業で校長室に呼び出されるとか、ヤッチマッタ感が半端じゃないぜ!



「正直、ククラス教頭に見つかった時は『俺の学園生活、終わったー』って思ったが、なんとかなって良かったぜ」

「全然良くないであります……自分、減給3カ月でありますよ……」



 まだ学生じゃない俺やリリンにはお咎めが無かったが、ナインアリアさんはしっかりと罰せられた。

 これは生徒としてではなく、教師としてあの場に居たからこその懲罰。

 生徒が備品を壊す分には仕方が無いと判断されるが、教師が壊したとなれば話は別なんだそうだ。


 それでも、『30%の減給で三か月』はかなり寛大な処置だと思う。

 なにせ、体育館を建て直すって言ってたからな。

 ……ブルファム王国を滅ぼして手に入れた金で。



「あれ、教室が騒がしいな?」

「そうだね。さっきの体験について話し合ってるっぽい?」



 学園生活終了の危機から生還した俺達は、再び教室に戻ってきた。

 まだ2時間目は始まっていないらしく、生徒の声が廊下に漏れ出ている。



「あ、戻ってきましたよ」

「ユニクルフィン、どうだ?退学になったか?」


「ギリギリセーフだったぞ。ククラス教頭の花壇を壊してたらアウトだったらしいけどな!」



 教室のドアを開けると直ぐに、サーティーズさんとイースクリムが話しかけてきた。

 この二人もそうだが、クラス全体が興奮しているっぽい。

 顔を見る限り、かなり熱い議論を交わしていたようだ。


 さて、とりあえず、まずはこれからだな。



「みんな聞いてくれ!色々とすまなかった!俺もリリンも浮かれ過ぎて調子に乗っちまったようだ。本当にすまん!」

「私からも謝りたい。転がし過ぎたと思う。ごめん!」



 大魔王陛下な陰謀があるとはいえ、このクラスの連中は何も知らされていない。

 それなのに転がされたのは、どう考えても迷惑だ。

 ククラス教頭と話している内にそう思い直した俺達は、教室に戻るなり謝罪すると決めていた。



「ユニクルフィン達、とりあえずそこに座れよ」

「おう」



 イースクリムに促されて、俺とリリンは静かに椅子に着席した。

 迷惑を掛けた事は確かだし、素直にイースクリム達の出方を窺ってみる。



「まぁ、さっきの事に思う事はある。とてつもなく」

「だろうな。正直な気持ちを言ってくれ」


「そうか。じゃあ正直に言うが……なんだあの地獄魔郷はッ!?どんな訓練をしたら、あんなのが出来るようになるんだよっ!?」



 どんな訓練って……。

 希望を戴く天王竜が率いる黒土竜軍団と戯れたり、心無き大魔王と戯れたり、カツテナイ機神と死闘を演じたりしただけだが?

 あ、頭のおかしいピエロとも戦ったっけ。



「そうだなー。冒険者をしてれば自然とこのくらいはできるようになるぞ!」

「そんな訳ないですよねっ!?イースクリムくんの剣は両断され、バルバロアくんはボロボロになったんですよ!?第九守護天使が掛っているのにもかかわらず、です」



 今度はサーティーズさんが話に乗ってきた。

 というか二人とも、思ってたよりもタフだな。

 正直、教室に戻ったら阿鼻叫喚になると思ってたんだが?



「ユニクルフィン、俺の剣を両断出来た理由、教えてくれるよな?」

「リリンサさん、バルバロイくんを保険室送りに出来た理由、教えてくれますよね?」



 そう言って、二人は俺達に詰め寄ってきた。

 どうやら代表して問い詰めているだけで、クラス中が俺達の強さに興味深々な様子。

 全員から無視されるよりは全然マシだが……こうぐいぐい来られても困るんだけど。


 うん、とりあえず、今できる事からするとしよう。


 ……。

 …………。

 ………………すまん、バルバロア。保健室で安らかに眠ってくれ。



「さぁ、教えてください!」

「そうだぞ。特に俺とサーティーズは明日から軍に入隊するんだ。出来るだけ戦力を高めておきたい」



 俺やリリンがこんなにも強い理由。

 それは……リリンは終末の鈴の音の総指揮官であり、俺達こそが心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)だからだッ!!

 って、言えたら楽なんだけどなー。

 明日になればバレるとはいえ、流石にまだ早すぎる。



「ユニク、ユニク」

「ん、何だリリン?」


「イースクリムの剣を折ったの?」

「つい力が入っちまってな。すぱっと一刀両断だよ」


「そうなんだ。むぅ、じゃあ私も折ればよかったかも……」



 ちょっと待て、一体何を折るつもりだ?

 アレ以上折ったら、保健室じゃ済まなくなるだろッ!!



「リリン。イースクリムの剣の弁償したいんだけどさ、なにか良い剣を持ってないか?」

「剣?いっぱいあるけど……どんなのがいいの?」



 素早く話題を切り替えつつ、リリンに剣を持ってないかと打診してみる。

 我ながら情けないが、俺はグラムしか持ってない。

 今度、武器屋とかに行く機会があったら纏めて何本か買っておこう。


 リリンは当然のように剣を持っているらしく、イースクリムにどんなのが良いか聞いている。

 俺が折ったのは双剣クソタヌキだったから、同じようなのがあると良いんだが……。



「弁償してくれるという気持ちは嬉しいが……、あの剣はかなり性能が高い魔剣でさ、替えが効かないんだ」

「そうなの?ちょっと見せて欲しい」


「別に良いけど……。ほら、これだよ」



 そう言って、イースクリムはブレスレットから折れた双剣を取り出した。

 クルリと持ち手を返してリリンに差し出し、良い剣だろ?っと苦笑している。



「この剣は、ジャフリートの剣術大会で準優勝した時に貰った剣なんだ」

「ジャフリート?イースクリムはジャフリート出身なの?」


「幼い時から留学してたんだよ。この剣も、初めての大会で手に入れた奴で、かなり愛着がある」



 リリンに視線を向けられたイースクリムは、「本当は別の剣を狙ってたんだけどさ。負けちゃったから手に入らなかったんだ」と言って笑った。

 たぶん照れ隠しの為に言ったんだと思うが……やめてくれ、その精神攻撃は俺に効く。


 なんかもう、絶対にロクな事にならない気がする。

 というか、リリンが「そうなの?じゃあ良い物がある」とか言って空間をごそごそし始めたから、確定的に嫌な予感がする。



「じゃあ、剣を直すまでこれを使うと良い。私が優勝した時のやつ」

「……。」



 目的の物を探し出したリリンは、イースクリムの手の上へ無造作に剣を置いた。

 それは、艶やかな鞘におさめられた、二本一対の太刀と脇差。

 リリンの愛刀『殱刀一閃・桜華』程ではないにせよ、かなりの業物なのは明らかだ。



「この刀は『天蛇ノ落涙(アマタノラクルイ)休狐の渓間(キュウコノケイカン)』という。魔剣としての性能はかなり高めのはず」

「……。」



 準優勝がクソタヌキーズで、優勝するとヘビとビッチになるのか。

 ……で、この剣を作った奴は誰だよッ!?

 ヘビとビッチは相性が災厄級に悪いんだが!?


 つーかそもそも、ネーミングからして酷すぎるだろッ!!



「ん、これじゃダメ?」

「……。い、いや、そうじゃなくて……」



 ここで腹ペコ大魔王さんの追撃!

 平均的な上目遣いッッ!!


 イースクリムの身長は俺よりもちょっとだけ高く、178cmくらいはある。

 当然、リリンが視線を向けると上目遣いになる訳で、その破壊力はランク9の魔法に匹敵するのだ。


 そうして、腹ペコ大魔王に魅了されたイースクリムは硬直した。

 そして、その顔色がどんどんと白くなっていく。


 ……これ、完全にバレたな。

 もう、どうにでもなれ。



「あの……この剣はどこで?」

「優勝した時に貰った。これが一番綺麗だったし」


「それって、ジャフリートの剣術大会ってこと……か……?」

「そう。オタク侍……シーライン主催のやつ」


「……。ユニクルヒヒィーン!ちょっと廊下に来てくれないかっ!?」



 別に構わないけどさ、俺はそんな馬みたいな名前じゃないぞ。

 俺の名前はユニクルフィン!腹ペコ魔王様の婚約者(仮)だッ!!


 イースクリムに手を引かれ、俺は無理矢理廊下に出された。

 うん、目がヤバい。

 さっきまでの気だるげな表情が、ぜんぜん見当たらねぇ!?



「ユニクルフィン、お前は剣皇様の門下生じゃないって言ったよな!?なぁ、言ったよな!?」

「言ったぞ。実際、俺は剣皇シーラインに会った事すらないからな。リリンは弟子だけど!」


「ちょっ、おま、それを早く言えよっっ!?!?」

「はは、悪い悪い。正体を知られると騒ぎになると思ってさ。お前の反応を見る限り、正しい判断だったと思うぜ!」


「あったり前だろうが、このやろぉぉぉぉ!!」



 目を血走らせたイースクリムが俺に掴みかかろうとしたが、華麗にスルーしてやった。

 ワザとらしく大げさに身体を返し、安っぽい挑発を仕掛ける。

 あ、これが同級生との触れ合いって奴か?

 うーん、殺気が凄いぜ!



「おっと、俺に剣を習うんだろ?いいのか、そんな態度で?」

「そんなもん却下だ却下ッ!!俺はリリンサさんに教えて貰うぞ!!」


「色々と言いたい事はあるが……さっき自分で、『剣が見当たらなかったんだが?』って突っ込んでただろ!」

「それでもいいんだ!俺は憧れのあの子に教えて貰いたいんだ!!」



 魔導師に剣を習ってどうするんだよ。

 そんな事を迂闊に言うと、伝説のドラゴンと鬼ごっこを繰り広げる事になるぞ!!


 かなり拗らせてしまったイースクリムを宥めようとするも、手応えがイマイチだった。

 憧れの人と出会えた事と転がされた恐怖体験で、どうやら頭がおかしくなっているっぽい。


 しょうがないので実力行使に出るか……と身構えた瞬間、階段から軍服を着た女性が上がって来た。

 その女性は俺達を見るなり「こら!教室に戻りなさい!」と声を張り上げる。



「授業が始まる時間よ。速やかに教室に入り、授業の準備に取り掛かりなさい」

「すみません」

「俺も、すみません」


「ここではうるさく言わないけど、軍属した時の返事は『申し訳ありません』よ。それも覚えておきなさい」



 俺達へ注意しているこの女性のレベルは60456。

 ぱっと見た感じ、メイさんと同じ20代前半だ。

 薄紅色の髪をポニーテールにして軍服もしっかり着こなしているし、終末の鈴の音の正規軍人なんだろう。



「ほら、行くぞユニクルフィン」

「おお、そうだな」

「ちょっと待ちなさい。赤い髪のキミも一緒に行くの?制服を着て無いけど?」



 この人はかなり勝気な雰囲気だし、これ以上怒られる前に教室に逃げよう。

 そう思った俺達はそそくさと戻ろうとして、軍服ポニーテールさんに呼び止められた。


 うん、なんか教頭先生に怒られるとか、教師っぽい人に呼び止められるとか、実に学校っぽくて良いな。

 怒られてばっかりなのは御愛嬌って奴だぜ!



「俺は体験入学生でさ、今日の授業を見学させて貰ってるんだ」

「ふぅん?レベル3万代か。ビミョーな所ね」



 俺の顔をまじまじと眺めた軍服ポニーテールさんは、訝しげな顔つきでビミョーと呟いた。

 それはレベルを見て言ったんだよな?

 顔を見てビミョーって言ったんじゃないよな?



「ユニクルフィンさん、そろそろ授業が始まるでありますよ。教室に戻……カルーアさんでありますっ!?」

「あら、ナインアリアじゃない。今日は学校に来る日なのね」


「そうであります。自分的にはもうちょっと多く来たいでありますが、軍の修練もありますので」

「いいじゃない。美味しいとこ取りをしちゃいなさいよ」



 俺を迎えに来てくれたナインアリアさんは、軍服ポニーテールさんと知り合いだったらしい。

 顔を見てすぐに敬礼を取り、その後は朗らかに談笑を交わしている。



「で、この赤いのは誰?パッとしないけど」

「パッとしなくても凄い人物でありますよ。詳しくは言えないでありますが」


「機密情報があるということね。パッとしないのに」

「そうであります。こういう、一見してパッとしないのが重要だったりするでありますよ?」



 悪かったなッ!?パッとしてなくて!!

 申し訳をする代わりに転がしてやろうかッッ!!



「ユニクルフィン、カルーアさんは正規軍人でセブンジードさんの部下だ。逆らわない方が良いぞ」

「セブンジードさんの?なら大したこと無いな」


「お前のその自信はどこから来るんだよ。ったく」



 ここでイースクリムが小声で話掛けてきた。

 セブンジードさんの戦いは見たことあるが、どう考えてもメナファスの方が実力は上だ。

 そのメナファスに俺は勝ってる訳だし、問題なく転がせると思っている。


 ……が、そんな事を言おうものなら正体がバレるので、ここは黙っておく。

 そうして上辺だけ頭を下げて教室に戻ろうとすると、2時間目のチャイムが鳴り響いた。



「あら、チャイムが鳴っちゃったわね。ほら、すぐに着席なさい。授業を始めるわよ」

「カルーアさんが授業をするであります?」


「そうよ。時間割を変更になって、私が魔法学の授業をすることになったわ」



 なるほど、2時間目は魔法学なのか。

 大魔王学学院の魔法の授業、どんなもんなのか楽しみだぜ!!


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