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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第48話「大魔王学院・陰謀大好き校長室」

「おや?もしかして私は幽閉されてると思ってたんですか?このとおり、元気に教頭先生をしてますよ」



 あっけらかんと言い放たれたその言葉に、俺どころかリリンまでもが凍りついている。


 目の前に座っている女性の名前は、『テロル・マリー・ブルファム』。

 俺の初めての友達ロイの従姉であり、レジェンダリアに捕らわれているとされていた人だ。


 ……で、どういうことだよ?ロイ。

 確か、テロルさんはレジェンダリアへと連れ去られて、酷い扱いを受けているって言ってただろ?

 奴隷として鞭で打たれるどころか、生徒に教鞭を振るう立場なんだが?



「えっと、ちょっと待ってくれ。ロイの事は知ってるし、テロルさんの事も聞いているが……教頭先生?」

「はい、教頭先生です。なんなら宮廷学科の主任もしてますよ。もとは姫ですし宮廷のマナーには詳しいですから」


「……聞いてた話とぜんっぜん違うんだがッッ!?!?というか、ロイん所に大魔王めいた脅迫文が送られて来てたぞ!?」

「それは『我が国がその身を預かっている哀れな姫君の話をしてやろう。捕虜となりておるが、結局のところ身分は奴隷。わが国を支える者共たちの『礎』となり、身を粉にして働いておるぞ』って奴ですよね?」



 そうそう、そんな感じの文だったはずだ!

 その時のロイの悲しさと悔しさが混じった顔と言ったら、……良く覚えていないけど、とにかく本気で心配していた。


 だが、今にして思えば、その脅迫文はもの凄くおかしい事ばかり。

 レジェンダリア国に属する人は、女王陛下を含めた全員が奴隷の身分であり問題にならない。

 すると残っているのは、『我が国を支える者達の礎となり、身を粉にして働いておるぞ』って所になる訳だが……。


『我が国を支える者の礎』って、教師って事かッ!?



「そういえば、その文章はちょっとおかしい。レジェっぽくない」

「ほうほう?」


「レジェが書いたんだったら、もっと相手を小馬鹿にして遊ぶと思う。明らかに別人が書いたと思われる!」

「エクセレント!正解です。ロイに手紙を書いて送ったのは私ですよ」



 自作自演だっただとッ!?!?

 明らかに大魔王的陰謀が見え隠れしているんだがッ!?


 さっきの自己紹介にもあった通り、テロルさんはブルファム王国の姫であり、フィートフィルシアとの関わりも深い。

 で、我らが大魔王陛下は、その二つを滅ぼしに掛ると本気を出している訳で。

 そして、こんな所で教頭先生をやっているって事は……。


 お前の従姉さん、裏切ってるぞッッッ!!!!

 ロイィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!



「と言う事は、テロルさんはレジィ陛下に捕まり、レジェンダリアへ寝返ったって事で良いのか?」

「ちょっと違いますね。レジェンダリアへ寝返る為に、レジィ陛下に捕まったふりをしたんです」



 最初っから計画的犯行じゃねぇか。

 お前の覚悟、茶番だったってよ、ロイ。


 突然発覚した超展開に俺は驚いて硬直し、リリンは平均的なビックリ顔でクッキーを手に取った。

 なるほど、リリン的には、騙されていたロイ≪クッキーなのか。

 んー。この顔は、ロイをどうブチ転がすかを計画している顔だな。


 親しい従姉からの精神攻撃の後に魔王様が襲来し、ロイはあっけなくブチ転がるだろう。



「なぁ、何でそんな事をしたんだ?こう言っちゃアレだが、姫様っていう立場なら不自由なく生活できるだろ?」

「正常な国の姫なら、ですね。ブルファム王国は深刻な滅亡の危機に瀕しており、もう長くはないでしょう。それにいち早く感づいた私と母は大陸の覇者になるであろうレジェンダリアへ、さっさと亡命した訳ですね」


「フットワークが軽すぎる……。仮にも姫と側室だよな?」

「正直な話、ブルファム王国の内情は愛憎渦巻く混沌無法地帯でしてね。いい加減、私も母もうんざりしてたんです」



 これは勝手なイメージだが、王様は妃や側室を何人も侍らせるものだと思っている。

 だが、どうやらそこにはドロドロした人間関係があり、それにテロルさんは嫌気が差したらしい。


 で、一芝居打って大魔王陛下の軍門に下ったと。

 ……俺には関係ない話で良かったと、心底思うぜ!



「あら?自分には関係なくって良かったーっていう顔をしてますね?」

「見破られただと!?」


「これでも教師ですから、子供の表情から察するのは得意です」

「くっ、流石は一等級奴隷ってことか。まぁ、だからと言って俺に関係ないのは事実だし、ここは緩ーく構え……」


「いえ、関係ありますよ。ユニクルフィンくん」



 ……は?

 いやいや俺には関係ないだろ?

 ロイを生贄に捧げるから勘弁してくれ。



「ブルファム王国が滅亡の危機に瀕している理由、それは王位継承権を持つ者がいないという事です」

「王位継承権?なんか、500人くらい殺されそうな雰囲気がする……」


「ブルファム王国では、男性である事が王位を継承する為に最も重要視されます。要するに、姫には王位継承権がないんですよ」

「その話はレジィ陛下に聞いたぞ。絢爛謳歌の導きがあれば、女性でも王位を継承できるってな」



 大魔王陛下が語った王位継承権のルールは、


 ①絢爛謳歌の導きを所持している。

 ②男性である。


 とされており、絢爛謳歌の導きが行方不明な為に、男性しか継承できないとされていた。

 此処までは新しい情報などは無く、何処をどうやったら俺に結び付くのかはイマイチ分からない。



「絢爛謳歌の導きが無いとされていた以上、王位を継承させる為にはどうしても男児が必要です。ですが、生まれてくる子は女の子ばかり。こればっかりはどうしようもない事ですが……」

「あぁ、男が良くっても選べないからな。なるほど、だから姫が10人以上いるなんて事になる訳だ」


「『ネシア正妃』も私の母も、最初の子供は女児。気落ちはあったようですが受け入れられました」

「なるほど、テロルさんが第二子なら、ネシア正妃の方が先だったんだな」


「ですが、その後でネシア正妃が産んだ二人の子供はどちらも女児。それにはかなりの落胆がありました」



 男児を期待していたのに4姉妹となれば、落胆してもしょうがない。

 だけどこういうのって、大抵、妃が悪いとされてしまう……って、じじぃが隠し持っていた秘伝書『人妻のススメ9月号・歴史に刻まれた悲劇、産めど増やせど姫ばかり』に載っていた。


 これは本当にどうしようもない、運命のいたずらだ。

 そしておそらく、その後もずっと女児ばかりが生まれたんだろう。



「男児が複数生まれた場合、長男に第一王位継承権が与えられます。ですので、自分の子を王にしたいネシア正妃はかなり焦っていました。自らの娘を蔑ろにし、次の子を王にねだる毎日です」

「気持ちは察するが……、あんまり良くないよな」


「私の母も空気を読んで第二子を作らないようにしてたようです。もともと一方的なアプローチの政略結婚であり興味も薄かったみたいで」

「そういえば、剣の腕を見込まれて側室に見染められたって言ってたっけ?」


「はい。寝食を共にする護衛だった母は何故か布団に引きづり込まれ……この話は子どもには刺激が強いので割愛します」



 ……俺的には、タヌキリリンに襲われる前に普通の叙事とは何なのを聞いておきたいんだが?


 じじぃはともかく、レラさんはかなり潔癖な所があって、そういう話は厳禁だったからなぁ。

 雨が降ってきた時にレラさんの洗濯物を回収したら誤解されて、「にゃははははー。……殺すよ?」って真顔で言われたし。



「そんな訳で母は注意していたようですが、うっかりロイを授かりまして」

「……?は?」


「このままではネシア正妃に何をされるか分かったもんじゃないと思った母は、フィートフィルシアにいる弟と幼馴染を無理矢理結婚させ、ロイを養子に出した訳です」

「……。まてまてまてまてまてッッッ!?!?」




 ちょっと油断してたら、トンデモねぇ爆弾を投げつけられたんだがッ!?

 それって、超ド級の機密事項だよなッッ!?どう考えてもッッッ!?!?!?



「やはり知らなかったようですね」

「知る訳ねぇだろそんなもん!!つーか、ロイ本人も知らないだろうがッ!!」


「教えてないですから。分別が無い子供に教えた所で、余計なトラブルを招くだけです」



 ……ということは、だ。

 知られていないってだけで、ブルファム王国の王位継承権第一位って、ロイって事になるんじゃ……?


 ……。

 …………。

 ………………お前、王子様らしいぞッッ!?

 ロィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!



「残念なことにネシア正妃は男児を産むこと無く病で他界してしまいました。この時点で私を含め姉妹が8人。その後、他の側室との子供も女児が生まれ、ブルファム王国は姫が10人という大所帯になったのです」

「なんつー悲しい結末だよ。その口ぶりじゃ、ロイは生まれた事になっていないだろうしな」


「なんとなく男児だと感づいていた母は事前に準備し、『死産であり、なおかつ女児であった』としました。ロイの生存を知るのは出産に立ち会った数名の女医、母と私、それと陛下とテトラフィーア、グオ大臣だけですね」

「大魔王一派は知ってるのかよ。なるほど、それで……」



 衝撃的な事実が判明し、ごちゃごちゃしていた線が一本に繋がった。

 大魔王陛下がフィートフィルシアを落とさなかった(・・・・・・・)理由、それは『ロイがいるから』だったのだ。


 絢爛謳歌の導きを所持していない大魔王陛下は、たとえブルファム王国を実質的に支配しても王にはなれない。

 だが、正当な王位継承権を持つロイを手に入れているのならば、話が180度変わってくる。

 それは、ロイを王に就かせて行う傀儡王政。

 まさに大魔王の名にふさわしい策謀で、ロイの運命は掌握されてしまうのだ。


 それを成す為に、大魔王陛下はフィートフィルシア攻略を慎重に進めていたっぽい。

 傀儡人形へ調教する為にロイの心を砕くべく、念入りに準備をしていたのだ。

 大魔王陛下が『フィートフィルシアはそれなりに雑魚だものぉ』と言っていたのに苦戦していたのも、演技だったって事だ。



「はぁ。それにしても、あのロイが王子様か。……タヌキに転がされたくせに」

「ん、それはユニクもだと思う!この間もソドムに負けた!!」


「クソタヌキはカツテナイから例外だぞ」



 タヌキに怯え、イノシシにビビり、熊と取っ組み合いを繰り広げたロイが超大国の王子。

 ちょっと想像できないな。だって、時が来れば大魔王陛下と同格になるんだぞ?

 そんなん確実に調教されるだろ。ロイが。



「それで、その話とユニクとどう関係があるの?」



 話が一段落した時に、リリンが気になっていたとばかりに口を開いた。

 あまりの衝撃に忘れかけていたが、俺にも関係あるって話だったな。


 うん、ロイを差し出すから見逃してくれ。

 ただでさえ食欲旺盛なタヌキ魔王がいるというのに、大魔王陛下まで俺の事を狙い始めたら本格的に命の危機だ。



「ロイの事は置いといて、結局ブルファム王国は王位継承者がいない訳です。そんな時は法外的措置として、歴代のラウンドラクーン大臣が一時的に『王の務めの代行』をしてきました」

「……う、わー。」


「その王の務めの中には、王位継承権を持つ者をつくるという……つまり、王家の血筋を持つ姫とのぐるぐるげっげー!も含まれる訳ですね」

「そんな所にゲロ鳥を使わないでくれっ!!」



 おいやめろ!!

 うちの腹ペコ魔王様がタヌキの格好で「ユニク、ぐるぐるげっげー、しよ?」とか言い出すだろうがッッ!!

 ただでさえ倫理感がギリギリなんだぞ!?

 然るべき条件を満たした後でのムードがぐるぐるげっげーとか、どんな嫌がらせだよッ!!



「ですが、現在の大臣であるオールドディーン卿は高齢であり、この場合は、形式だけでも大臣職を息子に継承してとなります」

「むぅ!?だめ。ユルドルードは英雄だから、そういう事はしなくていいと思う!」



 ここで全裸親父だとぉぉぉ!?!?

 それこそまさに、美女と野獣だろうがッッ!!


 颯爽と登場し、俺に身に覚えのない借金を負わせて帰って行きやがった英雄全裸ユルユルおパンツおじさま。

 そんなド鬼畜野郎と一緒になるなんて、姫が可哀そうだ。



「それも心配りませんよ。オールドディーン卿はユルドルードを呼び戻すのを諦めています。あまり仲が良くないとも仰ってました」

「むぅ?それならいい。他の誰でも好きなのと結婚すればいいと思う!」


「なんで、更にその息子『ユニクルフィン』に白羽の矢が立つ訳ですねー」

「むぅぅぅぅ!!それは絶対にダメっっ!!ユニクとぐるぐるげっげーして良いのは私だけ!」



 うわぁあああッ!!覚えちゃったッ!!

 俺の初めてがぐるぐるげっげーしてしまうッ!!


 ……うん、冷静に考えて『タヌキ×ゲロ鳥』とかレベルが高すぎるだろ。

 語感的に、英雄全裸親父に匹敵するぞ。


「ユニク一家には指一本も触れさせない!適当な人材をレジェに用意して貰う!!」

「大丈夫ですよ。もっと確実な方法を陛下は既に実行し、成果も出ていますから。ですが、絢爛謳歌の導きが手に入った以上、それも無意味となりましたけどね」



 こうなったら、可及的速やかに大魔王陛下に王位を継承して貰い、俺のハーデスエンドを回避しなければならない。


 テトラフィーア大臣もそうだが、大国の姫に興味がないかと言われれば……嘘になる。

 俺だって男だ。

 そんなロイヤリティな姫と仲良くできるなら、誰だってしたいってもんだろ。


 だが、俺にはリリンがいる。

 恋人だと明言している以上、裏切るような事は絶対にしてはならない。


 ……それはそうとして。

 未だに正体が謎なアルカディアさんが、親父の所に嫁ぎに来たブルファム王国の姫……って事は無いよな?

 上半身はまさに姫だが、下半身がモノノケなんだけど。

 ちょっと聞いてみよう。



「ちなみにさ、テロルさんの姉妹にアルカディアって子はいるのか?」

「アルカディア?アルファフォートではなく?」


「アルカディアだ。昨日レジィ陛下が捕まえてきた子だよ」

「あぁ、あの子ですか。私の姉妹ではありませんね。そもそも、あなた達のペットだと聞きましたが?」


「……ここ最近ずっと飯を食わせているし、確かにペットに近いかもしれないな!」



 みんながアルカディアさんの事をペット枠だというから、俺もそんな気がしてきたな。

 飯を美味そうに食う時の雰囲気なんか、アホタヌキにそっくりだし。

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