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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第47話「大魔王学院・策謀まみれの職員室」

「この塔、近くで見ると思ってたよりも大きい」

「十階以上ありそうだ。どんな教室があるか楽しみだぜ!」



 サーティーズさんと当たり障りしかない挨拶を交わした後、俺達は一番手前の塔にやってきた。


 三つもある塔の中でここを選んだのは単純明快、塔の屋根についているシンボルが剣と杖と銃だったからだ。

 剣も杖も冒険者のシンボルみたいなもんだし、レジェンダリア軍はカミナさんが作った重火器で武装している。

 普通に考えて、この塔が軍学校の校舎のはずだ。


 ……なお、真ん中の塔の屋根に付いているシンボルは、王冠を被ったゲロ鳥。

 そして、一番奥の塔の屋根に付いているシンボルが、剣を咥えたゲロ鳥だ。


 どちらが宮廷学校で、どちらがゲロ鳥学校なのか非常に悩むんだが?

 つーか、シンボルを被らせるなよ。



「よし、早速行くか。職員室は一階だよな?」

「そうだと言っていた。偉そうな人はもれなくブチ転がす!」



 ……分かっていたが、なんか今日の腹ペコ大魔王さん、いつもより凶暴だな。


 まだ軍学校の生徒であるサーティーズさんやバルバロアは見逃すとしても、偉そうにしている軍人を見逃す気は無いらしい。

 まぁ、それは当たり前というか、回り回って転がされた本人の為になる……と信じたい。


 軍人という事は総隊長であるリリンの部下であり、過酷な戦場に出る兵士だ。

 レベルが7万近かったセブンジードさんが実質的なナンバー4だというし、かなりの戦闘力があると思われる。


 そして、そんな人は慢心しやすく、とんでもない事態を引き起こしてしまうものだ。

 ……親父との訓練で調子に乗った俺が、カツテナキ機神を呼び起こしてしまった様に。



「リリン。俺達は体験入学をしに来たって事を忘れない様にな。……転がすなら、不慮の事故を装う形で、だ」

「分かった。ひっそりとブチ転がす!!」



 よし、リリンへの注意はこんなもんで良いだろ。

 あくまでも俺達からは手を出さない。

 相手が不遜な態度で威圧してきた場合に、事故を装って転がすのだ!


 そんな事を考えながら昇降口を上り廊下を歩いてすぐ、軍服を着たごついおっさんが部屋に入ってくのが見えた。

 なるほど、あそこが職員室だな?



「リリン、見たか?」

「もちろん。さっきの人のレベルは63103。どう考えても軍人」


「なら、あそこが職員室だろうな。いこう」

「了解。腕が鳴る」



 腕を鳴らすなと言うべきか、尻尾が唸ってないだけマシと言うべきか……。


 何度も言うが、相手が不遜な態度を取ったら転がすんだからな?

 無条件で転がしたら、ただの通り魔王だぞ?


 平均的な頬笑みを溢しながら、ずんずんと廊下を歩いていくリリン。

 そのオーラは既に魔王風味であり、何の躊躇もなく職員室のドアを勢いよく開けた。



「たのもー!」

「うっわ、もう既にダメそう!!」



 たのもー!ってどこの道場破りだよッ!?!?

 明らかに目的が変わってるじゃねえか!!



「ちょっと待てリリン、その挨拶は明らかにおかしいぞ」

「そう?軍の寄り合い所に入る時は、いつもこんな感じだけど」



 なんかそれ、大魔王陛下に騙されてないか?

 幼女時代のリリンがたのもー!って言ってから部屋に入ってくるって、かなりあざとい感じがするんだけど?


 今でこそふてぶてしい顔になっているが、昔はさぞかし可愛らしかっただろう。

 そんな幼女が、大人ばっかりの寄り合い所にかち込みを掛ける。

 いかつい顔の男共が破顔すること間違いなしだ。


 ……つーか、女王陛下からしてアレなんだが、もしかして、レジェンダリアってロリコンばっかりなのか?



「制服を着ていない子供?何か用か?」

「……。子供だと侮る貴方みたいなのを転がしに来た」



 さっき入って行ったおっさんが振り返り、リリンを見下ろしている。

 なんかもう、既に転がしそうな雰囲気なんだが?

 この腹ペコ大魔王、爆弾か何かか?



「ふぅむ?侮りはせん。かなり手強いとみた」

「ん!」


「儂の手には負えそうもない。ククラス様の案件であろう?……すまぬ、ククラス教頭はいらっしゃるか?」



 お、このおっさんやるな。

 腹ペコ大魔王プロデュースのブチ転がしを華麗に回避したぞ!


 今のリリンのレベルは、騙す気が満ち溢れている『48471(容赦しない)』。

 侮った瞬間、心無き未来が確定する大魔王な奴だ。

 だが、それを見て格下だと認識したはずのおっさんは、まったく躊躇せずに白旗を上げた。

 俺のレベル32200を見ても僅かに眉をひそめたし、レベルと実力が乖離している事に気が付いている。



「むぅ、見抜かれた。さすが私の部隊」

「いや、それは喜ばしい事だろ?って、どこで終末の鈴の音だって判断したんだ?」


「胸にバッチを付けてた。私の持ってる鈴をイメージした奴だったから間違いない」



 一瞬の出来事で良く見ていなかったが、さっきのおっさんはリリンの部隊員であるらしい。

 リリンの顔を知らない様だから比較的新しい人員なんだろうが、流石はこの国最強の部隊というだけあって、確かな観察眼を持っているようだ。


 一目でリリンの強さを見抜いたおっさんは職員室に入って行き、一人の女性を連れてきた。

 薄い青色の長い髪を後ろでまとめた、落ち着いた雰囲気の人。

 年は20歳半ばってところだな。



「こんにちわ。あなた達が校長の言っていた体験入学生ね。……なるほど、これは大抵の人が初見殺しされるでしょう」

「あれ?レジェから聞いてるの?」


「私はね。陛下が校長である以上、実質的な業務を取り仕切っているのは私を含む3人の教頭です。その中でも、面白そうな案件は優先して私の所に回して貰ってるの」

「なるほど、納得した」



 リリンが納得したと言っているのは、このククラス教頭のレベルが高いからだ。


 ククラス教頭のレベルは、なんと73241。

 普通に大魔王クラスであり、身のこなしもただ者じゃない。

 リリンを見た瞬間、僅かに身体を逸らして周囲の状況を確認したし、俺の存在に気が付くと立ち位置を調整して逃げ道を確保した。

 ……流石は大魔王学院の教頭。かなりのやり手だな。



「むぅ、警戒されてる……。聞いてたみたいに踏ん反り返ってるのが居ない。ちょっと残念」

「ふふ、そう仰らないで。私やこのスティールはちょっと観察眼に優れているだけで、踏ん反り返ってるのはそれなりにいるのよ」


「そうなの?ちなみに誰?」

「セブンジードやカルーアとかが代表例かしらね?」


「セブンジードにカルーア?分かった。見かけたら教えて」

「その内出てくると思うわよ。二人とも教壇に立つ予定だから」


「ふふ、たのしみ」



 久しぶりだな。セブンジードさん。

 首をよく洗ってから出てきてくれ。

 うちの腹ペコ大魔王さんがぺろりと唇を舐めて、すごく楽しみにしていらっしゃる。



「さ、こっちの校長室でお話ししましょう。ユニクルフィン君も」

「ユニク、いこう」

「おう」



 リリンのブチ転がしリストに新たな名前が加わったのを眺めていると、ククラス教頭に隣の部屋まで来るように勧められた。

 そこは校長室だというが、教頭でも使用できる会談室の様な扱いになっているらしい。



「ゆったり座っててね、お茶を淹れるから」

「ありがと」

「ありがとうございます?」


「そんなに畏まらなくていいわよ。もっとフレンドリーに、ね?」



 そう言いながら、ククラス教頭はティーカップに紅茶を注ぎ、茶棚からお菓子の詰め合わせを取り出した。

 流石は大魔王国というべきか、出て来た紅茶やお茶菓子は一級品。

 速攻で頬張ったリリンの反応を見る限り、かなり美味い奴なようだ。



「まずは自己紹介……をすると話が逸れてしまうから、必要事項を済ませてしまいましょう」

「もふふ?」


「あなた達の素性や経歴、その血筋、現在成そうとしてる事案、それらは、この学院では私とナインアリアのみが把握しております」

「もーふふ?」



 なるほど、ナインアリアさんに次いで二人目の協力者か。

 いくら大魔王と大臣三名の王印が押された書類があると言っても、内部の人間の協力者がいないのは何かと不安だった。

 特に、リリンが暴走しかけた時などが、物凄ーく不安だった。


 だが、実質的な責任者がリリンの素性を知っているなら安心だ。

 これで心置きなくブチ転がせ……しっかりしろ、俺。リリンに洗脳されかけてるぞ。



「なるほど、レジィ陛下に話を聞いてるんだな。いろいろ問題を起こしそうで不安だったんだ。助かるよ」

「その点については、問題を起こして頂いた方が嬉しいわ」


「……なんだって?」

「校門で挨拶運動をしていた生徒がいたでしょう?その中にサーティーズとバルバロアという生徒がいたのですが」


「あぁ、バッチリ問題を起こしたから知ってるぞ。ぐるぐるげっげーな奴だ」

「バーサークゲルゲーを一網打尽だった事も含め、かなり面白い見せものでしたよ」



 ……かなり面白い見せものだった、だと?

 つまり、俺の痴態は見られていた訳だ。

 だとすると、大魔王陛下にもばれてるわけだ。うーん、ぐるぐるげっげー。



「その二人は何かと思いこみが激しく、このままでは軍に入れても使い物になりません。少し矯正をしていただきたいのです」

「確かに、ちょっと自意識が強そうだったが……生徒ってあんなもんじゃないのか?」


「そうですね。生徒なんて所詮はあんなもんであり、多くの生徒が、最もレベルが高いあの二人を真似しようとしています。だからあの二人を調教すれば、あんなもんな生徒達に革命が起こります」



 ……あんなもんって俺が言ったんだけどさ、教育者が生徒を『あんなもん』呼ばわりはどうかと思うんだが?

 さりげなく調教とか言いやがったし、この人も大魔王系なのは間違いない。



「あんなもんとは言うけどさ、どの程度なのか見当もつかないぞ。ちょっと会話した感じだと、そこまで酷い感じもしなかったが?」

「この学院の生徒には2種類います。人生の辛さと人間の残酷さを知る子供と、それを知らぬ夢見がちな子供。あの二人は後者です」


「確かに育ちが良さそうではあったな。で、何か具体的な問題を起こしたのか?」

「えぇ。ナインアリアを獲得するべく両派閥が対立をしています。正確には、夢見がちな子供達、いわゆる『貴族派閥』が一方的に相手を嫌っているという形ですが、あまり良い状況とはいえません」



 割とありがちなトラブルが来たな。

 このレジェンダリア国は、言うならば『完全実力主義』であり、個人が持つ能力が全てだ。

 だが、その個人が持つ能力の中に『親のコネ』や『家系の財力』などが含まれていて非常にややこしい。


 実力なのに家の力を持ち出すのは反則だとは、俺は思わない。

 それだって結局、その人物が使用できる力だからだ。


 今でこそ分かる話だが、平民の家に生まれたローレライさんと、隠されていたが王家の血筋なレジィ。

 その二人が協力して王となったからこそ、貴族も民もない平等な国が出来あがったのかもしれない。



「もふ……そこでナインアリアが絡んでくるんだ?」

「はい、彼女はフランベルジュの元中級貴族であり、テトラフィーアの遊び相手に選ばれるくらいには地位が高かった。しかし、その家が没落し蒸発。一家は散り散りとなり彼女は冒険者となった訳ですね」



 ……この人、テトラフィーア大臣の事を呼び捨てにしたな。

 たしか、テトラフィーア大臣はこの国でも相当偉いはず。

 どういう事だ?



「彼女が転校してきた事により生徒の意識が変わりました。貴族も平民も、敬うべき人としてナインアリアを尊敬しています。ですが、それは自分達の身内だという想いがあっての事です」

「なるほど。貴族の人達は『元貴族のナインアリア』を尊敬しているし、そうじゃない人は『冒険者のナインアリア』を尊敬していると」


「はい。これはかなり複雑になるのですが、平民代表として矢面に立たされている生徒の名前は『イースクリム』。彼自体は物静かな性格ですがバルバロアから仕掛ける事が多く、サーティーズは静観しつつ実利を取りにいくと」

「それで、ナインアリアはどんな感じなの?」


「困っていますね。ナインアリアは貴方の部隊の未来を担う重要な人材であり、陛下もテトラフィーアも期待しています。だからこそ、ナインアリアを隊長として、イースクリム、バルバロア、サーティーズで小隊を結成させようとしているのですが」

「そういうこと。確かに、ナインアリアほどの実力者であれば転がす必要がない。というか、セブンジードの代わりにトウトデン達の副官にするべきだと思う!」


「陛下は大陸平定後を見据えた教育をしています。その時には、セブンジードもナインアリアも隊長ですよ」



 話がだんだん大きくなってきたな?

 だが、察するにセブンジードさんと今の隊長に大きな実力差は無いって事か。


 それにしても、この人、かなり深い事情を知ってそうだな?

 ちらっと登場したイースクリムも何か訳ありっぽいぞ?



「要するに、その3人の仲違いを止めろって事か?」

「結果的には。ですが、その過程で『身元不明の謎の体験入学生』が『増長した生徒に身の程を知らしめる』のが重要なのです。いくら自分が優れた能力を持っていようとも、相手の能力には干渉できないという摂理を教えたいのですよ」



 確かに、ククラス教頭が言う事は正しい。

 いくら英雄と訓練して強くなっても、クソタヌキはカツテナイ機神を持ち出しやがるからな。

 ホント、あんのチクショウめ。絶滅しろッッ!!



「それ、当然レジィ陛下は知ってるよな?というかレジィ陛下が言い出した事だろ?」

「えぇ。お願いできますか?」



 ……なにが、『ちょっと学校で遊んで来てぇ』だよ。

 最初っから、こき使うつもりだっただろ?大魔王陛下め。



「まぁ、しょうがないか。ナインアリアさんの為だと思ってやってやるよ」

「ん、ナインアリアとは友達。彼女の為なら5割増しでブチ転がす!」


「5割も乗せるな。死人が出るぞ」



 5割も乗せたら、確実に尻尾が出てくるだろ。

 ギュンギュン唸る魔王の尻尾で、貴族な子供を粉砕だッ!!



「それでだ、ククラス教頭は随分と情報通なようだな?」

「えぇ、これでも1等級奴隷ですからね。ちなみにですが、グオ大臣がグオと名乗る前から顔見知りですよ」


「……なに?それって、テトラフィーア大臣の知らない事を知っていたって事だよな?」

「そうなりますね。彼女はまだ幼かったから本格的な王政に関与する事は無かったですが、私はパーティーの席などでチュインガム元国王と顔を合わせています」



 なんか、ククラスさんから大物な雰囲気がすげぇ出てるんだけど。

 パーティーってのは国同士での交流って事だよな?

 だとすると、この人の正体って相当身分の高い人なんじゃ……?



「もう、ククラスという偽名も必要ないでしょう。改めて自己紹介をしますね」

「お、おう。お手柔らかに頼むぞ……」


「私の名前は、『テロル・マリー・ブルファム』。ブルファム国王・ルイの第二子であり、貴方たちが親しくしてくれた『ロイ』の姉です」



 ……。

 …………。

 ………………。


 お前が必ず取り戻すと誓った従姉ひと、レジェンダリアで教頭先生やってるぞッッッ!?!?

 ロイィィィィィィィッッッ!!


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