表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

527/1332

第45話「大魔王学院・朝のぐるげー運動」

「ぐるぐるげっげーー!!」



「……また居たな。これで9匹目だぞ?」



 大魔王会談から一夜が明けた今日、俺達は大魔王学院へと向かっている。

 レジィやテトラフィーア大臣の勧めにより、一日体験入学をするからだ。


 昨夜の晩餐会を堪能した俺達の目覚めは超良好で、普段の1割増しに体が軽い。

 部屋を埋め尽くさんと広がっていたテーブルを埋め尽くした宮廷料理のお陰で、大魔王会談で疲れた体が大分癒されたからな。


 そんな訳でさっそく学校に向かっている訳だが、ものすっごくゲロ鳥に遭遇するんだけ……、あ、また居やがった。

  これだけ居るとありがたみが無いな。ぐるぐるげっげー!



「見ろ、リリン。あそこにもいるぞ。……いくら国鳥に指定されているからって、流石に居過ぎだろ!」

「たぶん、ユニクに挨拶しに来てるんだと思う!!」



 ……マジかよ。

 初めて学校に行くのが嬉しくて、鼻歌の代わりに鳴いたのは失敗だったか。


 ナユタ村で青春を浪費した俺は、当然、学校に通った経験がない。

 大魔王的策謀が見え隠れてしているのが気になるが……ぶっちゃけ、かなり楽しみなのだ。


 そんな訳でテンションが高い俺が「ぐるぐるげっげー!」と鳴きまくった結果、朝っぱらからゲロ鳥祭り。

 つーか、すれ違った学生が3人なのに対して、見かけたゲロ鳥が10匹ってどういうことだよ?

 まさか本当に、ゲロ鳥を養成してるんじゃないだろうな?



「あ、ユニク見て、大きな門がある。たぶん校門だと思う」

「敷地を柵で囲ってあるっぽいな。門の奥は地面にタイルが張ってあるし、学校で間違いなさそうだ」



 隷愛城から歩いて10分。

 大きな塔が三つもそびえ立っている此処こそ、レジィとテトラフィーア大臣が誇る大魔王学園だ。


 ここに来る前にメイさんに場所を聞いたら、「あの大きい塔がある場所が学院です」と教えて貰った。

 それから、ちょっとした探検気分でリリンと塔を目指して歩き出し、無事に辿りついたわけだ。

 始業時間はまだ先だし、これならゆっくりと校内を見て回れそうだな。



「さて、俺は学校に来た事がないから、どうすればいいのかよく分からないんだが……」

「私は通っていたことがある。任せて欲しい!」


「ちなみにどうするんだ?あそこに人が立ってるけど?」

「こういうのは、元気よく挨拶しておけば大丈夫!!」



 俺達の目の前には校門があり、そこには数人の生徒が立っている。

 腕に『生徒会』って書かれた腕章を付けているその集団は朝の挨拶運動をしているらしく、快活な笑顔がとても眩しい。


 ……で、問題はお前らだよ。謎のゲロ鳥帽子軍団。

 なぜかゲロ鳥帽子を被っている集団が、なかなか必死な声でぐるぐるげっげー!!と鳴いている。

 さわやかな朝っぱらから、一体何をしてるんだよ。


 そして、平均的な頬笑みで任せて欲しいと言ったリリンは、ふんす!っと鼻を鳴らしてから胸を張り、生徒会の腕章を付けているグループに向かって歩き出した。



「ん、おはよう!」

「はい、おはようございます」


「じゃ、そういうことで!」

「お待ちください。あまりお見かけした記憶がございませんね……?失礼ですが、この学校の生徒ですか?」



 ……ふてぶてしい態度でスルー作戦、失敗。

 リリンには悪いが、当たり前の反応だと思う。



「そう、私達は一日だけ生徒!」

「一日だけ……?あぁ、体験入学にいらっしゃったんですね」


「そう。この学校がどんな感じなのか見極めつつ、踏ん反り返っている人を転がしに来た!」

「前半は良いとして、後半はやめて欲しいです」



 純粋に学校を楽しみに来た俺と違い、リリンにはしっかりとした目的がある。

 それは、

『①セフィナを入学させても問題ないかどうかを確かめる』

『②踏ん反り返っている軍人を転がす』

『③上級クラスの人と触れ合って実力を見せ、軍人になるという意識を高めさせる』の三つだ。


 セフィナを奪還した後、俺達はゆったりとした人生を歩むつもりでいる。

 その時に学校に通うのも面白いかもしれないと思っていて、この学院が第一候補だ。

 ……今更だが、総指揮官が学校に通うって、かなり混沌としてるな。


 そして二番目の目標として、ブルファム王国との戦争に参加するであろう軍人を鍛えておきたい。

 レベル10万のラルラーヴァーを筆頭に、セフィナや指導聖母といった一級戦力が敵側に揃っている。

 中途半端な覚悟で戦いに挑むと死ぬ可能性が高くなるし、リリンの心無き教育によって、少しでも生存率を上げておきたいのだ。

 ……教育で死人が出ないことを祈る。


 第3の目標も似たような感じだが、こっちは大魔王感を控えたフレンドリーな関係性を目指す。

 当然、魔王シリーズとランク0の魔法は禁止だし、出来る事ならランク7以上も使わないようにしたい。

 ……というか、そんなもん使ったら一撃で正体がバレる。高位魔法は厳禁だ!



「一日入学体験というと、どなたからか御紹介状があるかと思います。お見せください」

「ん、いいけど……。その前に、あなたの名前を教えて欲しい」


「あぁ、これは失礼しました。生徒会長の『サーティーズ・テンスティック』と申します」

「私の名前はリリンサ。そしてこれが紹介状!こっちのは彼はユニクルフィン!!」


「ありがとうございます。拝見いたしますね」



 生徒会長だと名乗ったサーティーズさんは、ブロンドの髪を一纏めにして前に垂らしている女性だ。

 伸長はリリンよりも高く、165cm程度。

 優しげな笑顔だが、何処か厳粛な雰囲気を纏わせていて、すごく真面目そうな人だ。

 レベルもそこそこ高く、49000もある。


 周囲の人もサーティーズさんと同じ服を着ているし、このカジュアルな軍服が大魔王学院の制服らしい。

 セブンジードさんが闘技場で着た奴よりもだいぶ簡素な造りだが、しっかりとした生地で着心地が良さそうだ。



「なるほど……女王陛下の推薦ですか」

「……あれ?驚かないの?」



 サーティーズさんは慣れた手つきで推薦人の名前を確認し、何事も無かったかのように受け流した。


 へぇ、大魔王陛下の名前を見ても驚かないんだな?

 普通はもっと「えええええ!?」ってなるもんだと思うんだが……。


 んーそうか、これは紹介状に押された大魔王陛下の判子が原因だな?

 女王陛下の王印なのにモチーフがゲロ鳥で、威厳がまるで感じられない。



「えぇ、女王陛下がこうして体験入学生や特待生を推薦する事は良くある事なので」

「さすがレジェ。そういう所の配慮は凄い」


「そうですね。……あれ?調印が他にも押されていますね。って、これは……?」

「それはテトラの!」


「え?テトラさんって、もしや?」

「大臣のテトラフィーア。ちなみに、そっちの小さい判子がグオ大臣で、足跡がキングフェニクス一世!」



 今朝届けられた体験入学証明書には、そうそうたるメンバーの調印が押されている。

『レジェリクエ女王陛下』に始まり、『テトラフィーア外務大臣』『グオ内務大臣』そして『キングフェニクス一世・侵略大臣』だ。


 あろう事か、俺達が10億で売り飛ばしたキングゲロ鳥は類稀なる才能を発揮し、国内に居たすべてのゲロ鳥を支配下に置いた。

 そして、その偉業を称えられ、悪ノリした大魔王陛下によって侵略大臣に任命されているらしい。


 もともと侵略活動は外務大臣の業務の中に含まれており、テトラフィーア大臣が軍部の指揮権を持っていた。

 だが、年々増大する外交の仕事に押され、休む暇もない程に多忙になってしまったらしい。

 そして、「このままでは過労で死にますわ!」とキレかけたテトラフィーア大臣が大魔王陛下と交渉し、外務と侵略活動を分けることに成功。

 その流れでフェニクス一世が侵略大臣に就任し、実質的な責任者はテトラフィーア大臣のままになったとさ。

 うーん、酷い。



「て、テトラフィーア大臣に、グオ大臣……、それにフェニクス一世の足印まであるなんて……。」

「そう、私達はこの国の女王と三権大臣に許可されてここに来ている!ちなみに、横の落書きはアルカディア!」



 ここに居ないアルカディアさんだが、実はついさっきまで俺達と一緒に居た。

 だが、今日は一人で修行をしたいらしく、通り道にあった公園で別れている。


 大魔王会談の後に案内された部屋で不貞寝していたアルカディアさんだが、超豪華な晩餐会を堪能した事で超ご機嫌になった。

 そして、物凄い勢いで宮廷料理を喰い尽くしてゆく口から語られたのは、キングフェニクス一世との激闘。

 なんでも、アルカディアさんはキングフェニクスに指一本も触れる事が出来ずに、一方的に蹴られまくったらしい。

 そして、それが気にくわなかったアルカディアさんは『武者修行するし!』と言って、公園へ旅立った。


 ……ところでさ、闘技場でリリンと互角に戦ったアルカディアさんを一方的に蹴りまくったって、強くなり過ぎだろ!?キングゲロ鳥ィィッ!!



「女王陛下はともかく、テトラフィーア大臣やダオ大臣まで調印しているなんて……。あなた達、一体何者ですか?」

「ひみつ!」


「そんな元気よく秘密だという人、初めて見ましたわよ!?」



 そう言って、サーティーズさんは引きつった笑みを浮かべた。

 うん、たぶん俺も同じような顔をしていると思う。


 レジィに言われた通り、俺達の正体は出来るだけ伏せて行動するつもりだ。

 なのに、うちの脳味噌が空腹な大魔王さんは、平均的なドヤ顔で『秘密があります』って暴露しやがった。

 これは先が思いやられるな。つーか、隠し通すのは無理だろ。



「そんな訳で、私達は体験入学をしに来た!どうすればいいか教えて欲しい!!」

「えっとそうですね、まずは職員室に行くのがよろしいかと」


「分かった。職員室ってどこ?」

「職員室はその塔の一階にありますよ。って、そうじゃなくて!」


「ん、何か用?」

「て、テトラフィーア様の調印があるという事は、お会いになられたという事ですか?」


「もちろんそう。友達だし」

「と、友達!?テトラフィーア様とですか!?」



 あれ?大魔王陛下の名前では驚かなかったのに、テトラフィーア大臣だと驚くんだな?

 それはリリンも気になったようで、サーティーズさんに質問を飛ばしている。



「大臣なテトラの方が反応が大きい?なんで?」

「そ、それはそうですよ。だって、テトラフィーア様は陛下と違って、めったなことではお会いする事ができません。大体は王宮で執務をしていると聞きますし……」


「ん、確かにそんな感じする。引き籠り?」

「引き籠りだなんて、そんな事を言うもんじゃありません!テトラフィーア大臣は、それはもう雲の上のお方ですし、街中で頻繁に出没する陛下とは違います」



 どうやら、ゲロ鳥大臣の方がレアリィティ高いらしい。

 まぁ、大魔王陛下は下町で遊びまくってるって話だし、見慣れているのかもしれない。



「そんな訳で、私達はこれから職員室に行く。場所を教えてくれてありがと」

「いえいえ、お礼を言われる程の事ではありませんよ。それであの、体験入学という事ですが、どこのクラスに入るのかって決まっています……か?」


「上級クラスだと聞いている。もうすぐ軍に入隊する人が多いとこ」

「あ、それでしたら私のクラスですわね。あの、もし、よろしければなんですが……テトラフィーア大臣のお話を聞かせて頂けませんか?」


「別にいいけど、どうしてテトラ?レジェじゃなくて?」

「私はフランベルジュ国出身で、テトラフィーア様に憧れてこの国に来ましたの」


「そうなんだ。分かった、あとで教えてあげる!」



 恐る恐るといった感じのサーティーズさんだったが、リリンが平均的な頬笑みを向けると安心したらしい。

 にこやかに笑ってリリンの手をとって、「よろしくお願いします」と頬笑み返している。


 うん、早速、友達ができそうな雰囲気だが……。

 なぜか、リリンの笑顔が大魔王風味なんだけど。

 一体何を企んでやがる?



「……ねぇ、ちなみに、あっちの人達は何をしてるの?」



 職員室の場所を聞いたリリンは、早速向かおうと歩きだし、突然止まって振り返った。

 そしてサーティーズさんに、謎のゲロ鳥軍団の事を聞いている。


 うん、それ、俺も非常に気になってた。

 そして、なんとなく嫌な予感がする。



「逃げだした鳶色鳥を捕まえようとしているゲロ鳥学科の人達ですわね。一度逃げ出すと、なかなか見つからないんですよ」

「そうなの?いっぱい居たけど?」


「いっぱい?どこら辺で見かけましたの?」

「どこって、あっちから寄って来た」


「鳶色鳥から?そんな事ってあります?」

「なら証拠を見せる。ユニク、鳴いて!!」



 ……。

 …………。

 ………………。


 軍学校の朝は、ぐるぐるげっげー!から始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ