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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第29話「魔王裁判」

「それでは、第一回・魔王裁判の開廷をぉ、レジェリクエ・レジェンダリアの名の下に宣言するわぁ」



 ……魔女裁判かな?とは思っていたが、正式に魔王裁判だと認定されてしまった。

 俺が蒔いた種が、大魔王様の手によって刈り取られようとしている。



「形式は一問一答ぉ。余が質問するからぁ、二人はそれに答えてねぇ」

「分かった。公平な審判をお願いしたい!」

「えぇ、これは私とリリンサ様の未来を決める、重要な裁判ですわ!」



 もちろん、俺にとっても重要だぜ。

 デット()オア()アライブ()的な意味で。


 それにしても、すげえ楽しそうだな。大魔王陛下。

 昨日から見てきた表情の中で一番生き生きしていらっしゃる。



「第一問ん、『ユニクルフィンに出会った時期はいつぅ?』」



 これはさっきの質問の焼き増しだな。

 まずは、分かり易い質問から確定させていくんだろう。



「私がユニクに出会ったのは、今から9年前の1月1日!!」

「くっ!私が出会ったのは9年前の11月の22日ですわ……」

「これは簡単な審判ねぇ……。勝者ぁ、リリンサぁ!」



 先に出会っている事が確定したリリンは、平均的な魔王顔で笑っている。

 うん。既に真っ黒だ。


 一方、テトラフィーア大臣は捕まったゲロ鳥の様な顔で悔しがっている。

 俺として見れば、そんな中途半端な日時を覚えているってだけで凄いと思うけどな。



「先制点は貰った。このまま一気に引き離す!!」

「そうは行きませんわよ!陛下、次の質問を!」

「そうねぇ、じゃあ、第二問はぁ……『その時の思い出を語ってぇ』」


「……っ!」

「お安いご用ですわ!」



 おっと、自然な流れでの第二門だが、リリンにとってこれはキツイ。

 なにせ、リリンの持っている情報は日記帳に書いてある事だけであり、その大半が栗きんとんに関する食レポだった。

 栗きんとん以下の思い出とか、たぶん勝負にならない。



「……テトラ、今度の先手は譲ってあげる。どうぞ」

「そうなんですの?では、遠慮なく」



 大魔王さん、露骨に時間を稼ぎに来たな。

 きっとこの隙に、魔法で封印されている栗きんとんの味を思い出すんだろう。



「私がユニフィン様と出会ったのは、ギョウフ国で迷子になった時の事ですわ」

「……迷子?」


「当時からノウリとギョウフの王子たちとは、よく遊ぶ仲でしたの。今となっては政略結婚の布石だと分かる訳ですが、昔は純粋に楽しんでましたわね」

「あぁ、遊んでいたら迷子になったって話か。どうせ結婚するなら、顔見知りの方が良いもんな」



 リリンはクッキー片手に考え込んでいるから、代わりに俺が相槌を打つ。

 ……って、地味に難易度が高い。

 地雷原を走っている気分だぜ!!



「その時も私達は鬼ごっこをしてましたわ」

「……悪鬼羅刹ごっこじゃなくて?」


「なんですの?その、極悪そうな奴は?」

「リリンや大魔王陛下が得意な奴だ」


「あー。そこまで特殊ではありませんが、追加ルールとして、隠れる方は勝利条件を手に入れる必要がありましたわね」

「追加ルール?」


「王宮はとても広いんですの。子供と言えど本気で隠れたら、マジで見つかりませんわよ?」

「確かにな。で、見つかり易くするために追加ルールを設けたと」


「その通りですわ。それは鬼が決める事ですが……。その時の勝利条件は『ジルバシラス卿にサインを貰う』『オレンジを手に入れる』の二つでしたわね」



 テトラフィーア大臣から聞いた鬼ごっこは、やっぱり小悪魔風だった。


 隠れる側は鬼に見つからないようにしながら、目標クリアを目指す。

 鬼は、目標がクリアされる前に、探しだす。


 実にシンプルだが、戦略性が高いゲームだ。

 ギョウフ国の王宮に招かれたテトラフィーア姫は、当然、ジルバシラスさんがどこに居るのか知らないし、オレンジがある厨房も分からない。

 だからこそ、メイドや執事に聞いたりして目標を探す事になる。

 一方、王子はテトラフィーア姫を見ていないか?などと聞いて回る訳だ。


 この勝負の肝は、人を操るコミュニケーション能力にある。

 どちらも出会った人に『対戦相手が来たら、嘘を教えてね』などと言っておくことで妨害できる。

 自国の王子と他国の姫、どっちも大事だし、ジルバシラスさんはさぞ困っただろう。



「それで、オレンジを探しに行った私は……たまたま王宮に来ていた行商人の積荷にオレンジを発見したんですわ。で、売って貰おうと声を掛けたら……その人、王宮に下見に来た盗賊でしたわ」

「なにその急展開ッ!?」


「オレンジ樽の中に突っ込まれた私は、最終的に、良く分からない国の、良く分からない街へ連れ込まれましたわ」

「聞いていいのか判断に困るが……。危害は加えられなかったのか?」


「えぇ、もう慣れっこですし、普通に犯人と交渉しましたので」

「……慣れてるだとッ!?!?」



 今までの話から察するに、テトラフィーア大臣の年齢は19歳。

 当時9歳なら大体10年前ってことか

 で、その幼さで誘拐され慣れてるって、どういうことだよ。



「慣れてるのか?誘拐?」

「はい。ギョウフ国とノウリ国の間はとても険悪でしてね。私がどちらかのお屋敷に遊びに行くと、もう一方が仕掛けてくるのですわ」


「……なるほど。相手の評価を落とそうとしたのか」

「あくまでも、最終的には王子と私を婚約させる為の誘拐であり盗賊もわきまえています。ですので、私も政治の場だと思って交渉を持ち掛けていましたの」



 うん、すげぇ逞しいな。このゲロ鳥大臣。

 いくら身の安全が保障されているとはいえ、相手は大人の集団だ。

 それを手玉に取ろうとするとか、もともと、大魔王になる器は十分だったって事だな。



「ちなみに何を交渉してたんだ?」

「その時に興味のある事でしたわね。海が見たければ連れていくように交渉し、宝石が欲しければ採掘場に案内させる。ある意味、王子と会うよりもこっちの方を楽しみにしておりましたわ」


「タフすぎるだろ」

「ですが、その時は別の盗賊と繋がっていたのです。そのまま連れ去られ、おかしいと気が付いた時には見知らぬ街におりましたの」


「それって不味くないか?安全の保証がないって事だろ?」

「そうですわね。なので、その盗賊と交渉を――」


「……ねぇ、いつになったらユニクが出てくるの?」



 クッキー片手にお茶を楽しんでいたリリンがツッコミを入れた。

 うん、俺もそろそろツッコミを入れようと思ってたぜ。



「もう!あと2時間くらいお話ししようと思ってましたのに」

「そうはさせない。テトラ、5分でまとめて!!」



 そうだな。流石に2時間は長いかな。

 5分とまでは言わないが、10分くらいでまとめてくれると嬉しいぜ。



「それから一ヶ月。すっかり盗賊との暮らしに慣れた私は、このまま裏の社会で生きるのも良いかと思い始めたころ……森で、ユニフィン様と出会う事になりますの」



 なんで盗賊と一緒に暮らしているんだよ!?

 なにがあったッッ!?!?



「私を攫えと命じた領主は、危険動物の駆除をしていなかったんですの。しょうがないので私と盗賊団で狩っていたところ、三頭熊に遭遇しましたわ」

「それは、魔法の心得があったテトラフィーア大臣が、盗賊を雇って危険生物狩りをしていたって事で良いのか?」


「そうですわ。当時から私は魔法が得意でしたの。でも流石に三頭熊は不味いですわ。魔法が効きませんし」

「あぁ、レベル5万程度が多い三頭熊だが、魔法を無効化されちゃ強敵すぎる」


「盗賊は一瞬で半死半生にされましたわね。三頭熊が私を残したのはワザとだったのでしょう。最初に食べようとしたんだと思いますわ」



 危険生物を退治するべく盗賊どもを操っていた、当時10歳の姫。

 自分達の策謀にミスがあり、姫を攫われた王子たち。


 ……レジェンダリアの介入が無くても、ノウリ国とギョウフ国は滅んだんじゃないか?



「近づいてくる三頭熊。恐怖で動けない私。諦めて目を瞑って、そして……バシュっ、っという音を聞きましたの」

「バシュ?」


「目の前には、私よりもひと回り小さい男の子がいましたわ。手に持っているのは不釣り合いな大剣で不格好。でも……」

「でも?」


「三頭熊の首に足を掛け、「もう熊は倒したから大丈夫だ。怖かったろ?」っと頬笑んでくれたユニフィン様の姿は、とてもとても……カッコ良かったですの!!」



 うわぁ。なにそのベタな展開。

 何で熊の頭に足を乗っけてポーズを取った?過去の俺。



「むぅ、そんな事されたら絶対に惚れてしまう……。むぅ。むぅ」

「……そうか?」


「絶対にそう。間違いない」



 俺の横で凄く悔しそうにクッキーを噛み砕いている大魔王さん。

 リリン的には受けが良いんだな。今の話。



「それから1ヶ月。私はユニフィン様やユルドルード様と行動を共にしました」

「なに?親父にも会ってるのか?それに1ヶ月も?」


「はい。ユニフィン様はフランベルジュ国へ私を送り届けてくれるとおっしゃり、ユルドルード様も賛成しました」

「まぁ、当たり前の流れだが……1ヶ月も何してたんだ?」


「それは……ずっと一緒にいたかったので、ちょっとその……妨害工作を……」

「なんだって!?」


「だって初恋だったんですわ!!初めて色を知ったんですわ!!」



 頬を染めて騒ぐゲロ鳥大臣と、平均的なジト目でクッキーを噛み砕く大魔王さん。

 ついでに、ツンだけメイドさんの方からからは殺気を感じるな。


 って、今の流れでどうして俺を睨むんだよ!?



「一つ、メイさんに質問して良いか?」

「……どうぞ」


「その時の、フランベルジュ国の雰囲気などを教えて頂けると……」

「テトラフィーア様と一緒にいた盗賊はフランベルジュ国が買収済みであり、年頃の娘の反抗期として国王陛下は黙認しておりました。ただその後の、どこぞの馬の骨か分からない不審人物に拉致された件については、その限りではありません」


「……。」

「なにせ、その人物は強力な認識阻害を掛けており素性の一切が不明でした。どう考えても第一級の不審者であり、焦った国王陛下は国際指名手配をして男を捕らえようとしております」



 国際指名手配されてんのかよ。親父と俺。

 罪状は、誘拐と公然猥褻です。



「ですが、その男はまったく捕まらず。それどころか、姫自身の姿すら見えなくなり生存すら危ぶまれ、王は心労で痩せ細って行きました」

「ちなみに、私の姿が見えなくなったのは自発的に隠れてたからですわ!」


「そんな事とは知らず、国王陛下がついに心労で吐血した頃、テトラフィーア様をお姫様だっこで抱えた不審者が王宮に登城しやがりました」

「最後の我儘にお姫さまだっこをして貰いましたの。あのトキメキは忘れられませんわ!」


「不幸にも……、あ、すみません、失言でした。幸運な事に、花の手入れを学ぶべく庭に出ていた私はテトラフィーア様の帰還に立ちあう事になりました。えぇ。」

「あの時のメイの顔も忘れられませんわね。いくらビックリしたとはいえ、あの顔は無いですわー。あんなの三頭熊が逃げ出す酷さですわよ」



 ……すまん。ツンだけメイドさん。

 俺が悪かった。本当にすまん。


 誘拐された姫の消息が途絶え、王は病に伏せ、王宮は静まり返っていた。

 事の発端のノウリ国やギョウフ国も、同じ雰囲気だったのは容易に想像できる。


 そんな所に、お姫様だっこをしながら登場する、俺。

 姫は元気どころか、頬をピンク色に染めている。


 ……よく処刑されなかったな、俺。



「これがユニフィン様と私の慣れ染めですわ!」

「むぅ、1ヶ月も一緒に居たなんて、ずるい……」


「ユニフィン様と半年も旅をしている方が何をおっしゃりますの?さ、リリンサ様の番ですわよ」



 もう既に勝ち誇った顔をしてるゲロ鳥大臣と、追いつめられたアホタヌキの様な顔をしているリリン。

 正直に話して良いぞ、リリン。

 俺的には、栗きんとん食ってる方がマシだから。



「私は……初めてユニクに出会った時、栗きんとんを一緒に食べた!!」

「栗きんとんですの?私はモンブランを一緒に食べましたわ!」


「くっ!おせち料理も食べた!!」

「おせち料理?ふふ、私は宮廷料理を食べましたわ!!」


「むぅ……。負けた……」



 ……同レベルだろ。

 つーか、飯のグレードで勝負すんのやめろ。



「あはぁ、これは甲乙つけがたいけどぉ、テトラの勝ちねぇ。勝者、テトラフィーアぁ!」



 大魔王陛下も迷ってんじゃねぇか。

 栗きんとんといい勝負するとは思わなかったぞ。


 さて、勝敗はどうでもいいが、一ヶ月も一緒にいた時の事は気になる。

 それと、ゆにクラブカードを持っているかどうかもだ。



「ちなみに、テトラフィーア大臣はゆにクラブカードは持ってるのか?」

「もちろん持っていますわ!」


「だよな。当然、持ってるよな……。って、持ってるのなら早く出してくれよ!?」



 ゆにクラブカードは俺達にとって重要な手掛かりだが、ラルラーヴァーに関わる可能性を示している。

 単純に持っているだけでも危険な代物だし、この話は大魔王陛下にも伝わっているはずなんだがな?



「はい、これが私のゆにクラブカードですわ」

「あ、金色だ。じゃあこれで2対1。私の勝ち!!」


「……って事はもしや!?」

「ふふふ、私のカードは黒。ひれ伏して欲しい!」



 テトラフィーア大臣がカードを取り出すと、リリンも負けじとカードを取り出して互いに突きつけた。

 どっちもクリアケースに入っていて、相応に大切にしているのが分かる。

 ちょっと安心したぜ。

 場合によっては名刺入れの底板に使われてるからな。ゆにクラブカード。



「リリンサ様がブラックカードの所持者だったなんて……、誤算ですわ!」

「私的には朗報。勝負はついたと思う!」

「なぁ、勝敗とかいいから、俺と親父との思い出話をしてくれ」



 よくよく考えてみれば、大事な話が何一つされてないんだが?


 あの子に関する記憶は、テトラフィーア大臣も忘れているだろう。

 だが、当時の俺の行動を知れば、ラルラーヴァーの事を知れるかもしれない。

 ついでに確認しておきたい事もあるし、かなり重要な話題だ。



「いいですわよ……。って、あれ?」

「まさか、思い出せないのか?」


「……あれ?あれ……。いや、そんな筈はないですわ。だって、ユニフィン様の事をこんなにも……」

「俺と出会った時、それと、王宮に帰った時、それ以外の記憶が思い出せない。そうだな?」


「……一緒にご飯を食べたとか、薪割りをしたとか、日常の一瞬は覚えてますの。ただ、記憶が断片的でストーリー性がないというか。……なにか、知っていますのね?」



 それから、俺とリリンが置かれている状況をテトラフィーア大臣に話した。

 リリンの過去話から始まり、『あの子』という存在を忘れている事や、ラルラーヴァーに関する事、調べに行ったワルトやメナファスが捕獲されている事に、セフィナが生きている事。

 それを聞いたテトラフィーア大臣は、顔を青くしたり赤くしたりと忙しく、セフィナが生きていると聞いた時にはリリンに抱きついて喜んでいた。


 メイさんにも言える事だが、普通に良い人なんだろうな。

 国をいくつも売ったり買ったりしてたり、主人の為に暗殺しようとしたりするが、……たぶん良い人だ。



「そうだったんですの……。知らぬ事とはいえ、お力になれず申し訳ありませんわ、リリンサ様。……それにしても、陛下!」

「あはぁ、そう怖い顔をしないでぇ」


「ユニフィン様の件といい、教えて欲しかった情報が多すぎますわよ!?私、グレそうですわっ!!」



 おう、それは俺も気になってた。

 ぶっちゃけ大魔王陛下は、フランベルジュ国の戦争の時点で俺が二股を掛けていると知っていた疑惑がある。

 侵略活動をするのに都合が良いからって、黙ってたんじゃないか?



「私の想い人がユニフィン様であると陛下はご存じですわ。なのになぜ、リリンサ様の婚約者だと教えて頂けなかったんですの……」

「テトラ……」


「もっと早く教えて頂ければ、こんなに慌てたり、苦しい思いをしたり、しなくて済んだのに……」



 あ、なんか別の意味で修羅場って来た。

 暴行されるのも困るが、こういうガチな奴はもっと困る。


 リリンが本気で怒らない理由は、レジェリクエ女王陛下に一杯喰わされていると気が付いているからだろう。

 此処は俺も真摯に言葉を受け止めよう。

 雰囲気が厳粛な物へと変わり、静かにレジェリクエ女王陛下が口を開いた。



「テトラフィーア」

「……はい」


「過去に捕らわれるのは止めなさい。貴方はそんな弱々しい女だったかしら?不甲斐ない自国の騎士をブチ転がしてボーリングした貴方は、もっと元気が良かったわよ」



 すげぇ真面目は雰囲気と声で、ボケを挟むのは止めてくれ。

 笑いそうになる。



「……確かに、私はしおらしくありませんわね」

「でしょ?なら、分かるわね?」


「はい。ユニフィン様を手に入れる為に――って、騙されませんわよッ!!大魔王陛下ッ!!」

「ちぃ。駄目だったかぁ」



 そりゃ駄目だろ。かなり雑だったぞ。


 だが、あれだけ策謀を仕掛けてくる大魔王陛下にしては変だな?

 まるで、誤魔化す気が無いような……?



「いいわ。真面目に取り合ってあげる。貴方も本気を出さないとすぐに飲み込んでしまうわよ、テトラフィーア」

「いいでしょう。受けて立ちますわ」


「初めに、余は貴方と出会った時点で、リリンサと想い人が重なっている事に気が付いていたわ」

「それは……!?」


「そう、侵略に不都合が出るから封殺した。そしてそれは、ワルトナもカミナも気が付いているでしょうね」

「確かに、ワルトナ様はその話題が出るのを嫌がっていた節がありましたわね。私に『思い人を他人に話すと願いが実らなくなる』と教えてくれたのも、確か……」


「当時は侵略に不都合が出るという、それだけの意味しか無かったわ。だけど、今は違う」

「何が違うというんですの?」


「リリンサとユニクルフィンの関係性を貴方に話せば、確実に水面下で略奪を考えるでしょう?」

「えぇ、おそらくは」

「おい。」



 平然と略奪するとか言わないで欲しんだが?

 あ、やばい。隣も魔王様に尻尾が生えそう。

 クッキーを追加しよう。



「それは困るのよぉ。色んな国際情勢がねぇ」

「国際情勢?どういう事だ?」

「あ、そういう……。厄介ですわね」


「でしょ?」

「すまん、俺にも分かる様に言ってくれ」



 コイツらの頭が良すぎるせいで、主語が無いのに会話が進むんだが?

 だが、既に三国戦争の原因になった俺は、この話題を無視できない。



「テトラフィーアはレジェンダリアの重鎮であり、フランベルジュの姫。そして、ユニクルフィンは英雄の息子」

「あぁ、そんな事は分かっ――」


「だけではないわ。ユニクルフィンの祖父は、ブルファム王国の大臣『オールドディーン卿』であり、その婚姻は国際的な意味を持つ」

「……は?」


「さらにさらにぃ、母であるイミリシュアも小貴族ではあるものの、ブルファムに名を連ねた者だと調べが付いたわぁ」

「……えっ。」


「もう一つおまけに、リリンの父のアプリコットもブルファムの貴族ねぇ」

「えっ、そうなの!?!?」


「そして、これらの人は全て、ブルファム王国と仲違いして決別しているわけねぇ」



 なんだその裏ストーリー。

 親父の野郎が言ってた、オールドディーンには気をつけろって、こういう事かよ!?



「ブルファム王国は口惜しいでしょうねぇ。ユルドルードもアプリコットも国に仕えさせていれば一騎当千。けど、逃がしてしまった」

「親父の強さだけは本物だしな」


「だから、ブルファム王国はユニクルフィンが欲しくて欲しくて、しょうがない筈なのぉ。なのにぃテトラと婚約なんて事になったら?」

「ブルファム王国が状況の打開に動き出す……?」


「そういうこと。ただでさえぇ、ラルラーヴァーとかいう恋する乙女がいるんでしょぉ?もっと話が複雑になるわよぉ」



 段々、話が見えてきたな。

 ラルラーヴァーはブルファム王国に属し、俺を狙っている。

 それは政略結婚的な意味があったのだ!!


 ……やべぇ、胸やけがしてきた。

 ぐるぐるげっげー。



「……だめ。それはだめ」

「リリン?」


「ユニク、今すぐにブルファムに行こう!!直ぐに!!」

「ちょ、どうしたんだよ、リリン!?」


「セフィナはブルファム王国に居る。だから、ブルファム王国が英雄を欲っしているというのなら、セフィナが取られてしまう!!」

「つっ!?それはやべぇ!!」



 た、確かにそうだ……。

 手頃な王子とか用意されて、ころっと騙されたら大変な事に……。

 俺達が行くまでセフィナを守ってくれ、ニセタヌキィィィ!!



「落ち着きなさい。そうはならないわ。そうでしょぉ?テトラ」

「はい。少なくとも、ブルファム王国の王子は出てきませんわね。そういう意味では、ユニフィン様を狙う方がよっぽど効率的ですわ」

「えっ。」

「なんでだ?」


「ブルファム王国には姫しかいないって事になってるのぉ。実際には一人だけ王子がいるけど、そっちはもう掌握済みぃで問題なしぃ」

「ということで、英雄の子孫を手に入れるなら、ブルファム王国の姫をユニフィン様の所に嫁がせるのが早いですわー」


「…………は?」

「…………それもだめっっ!!」



 第二勢力の姫まで出てきやがった。


 あぁ、俺の恋愛事情が混沌としまくっている。

 マジで、ハーデスルートじゃねぇかッッ!!

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