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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第26話「大魔王でーとあふたー」

「……。」

「……。」


「ぐるぐるげっげー?」

「……斬新な遺言ですね。御覚悟を」



 くっ!俺の伝家の宝刀たるゲロ鳥の鳴き真似も、ツンだけメイドには通用しないかッ!!


 渾身の鳴き真似を遺言認定しやがったツンだけメイドは、構えていた刀の切っ先を俺に向けつつ目を細めている。

 あ、これはどう見ても暗殺者の目だな。

 台所で黒虫を発見した時の目とも言う。


 うん、絶対に無駄だと思うが……とりあえず、対話を試みてみよう。



「朝っぱらから物騒だぞ、ツンだけメイドさん。ここは温和に行こうぜ?」

「温和?いえ、直ぐに冷たくして差し上げますよ」


「うわぁ、すっげぇ殺意が剥き出し。俺が何をしたって言うんだよ!?」



 前に会った時も嫌悪感の籠った目で見られていたが……。

 流石に、ここまでの殺意を向けられるほどに嫌われる事をした覚えはない。

 というか、あのとき以降、ツンだけメイドとは接触してないんだが?


 うーん、だが、絶対に何かあるよなぁ。



「ホントに俺が何をしたってんだよ。身に覚えがないぞ?」

「俺が何をした……ですって?これだけの女性を弄んでいて、知らぬ存ぜぬが言い訳ですか」



 これだけの女性を弄んだ、だと?

 俺が弄んだ……というか、弄ばれた気もするが……、それはリリンだけのはずだ。

 流石に酒に酔った勢いで一般女性に手なんて出そうものなら、魔王フル装備、超魔王・ヤンデリリン様に去勢されるし。


 だが、ツンだけメイドの負のオーラも半端じゃない。

 なにか、俺に知らない所で誤解が生まれている気がする……。



「すまん、昨日は不慮の事故的に酒を飲んじまってな、正直覚えていない。何があったんだ?」

「昨日……?関係ないですよ。ムツキに破廉恥な恰好をさせた挙句、公衆の面前で裸に剥いて辱めて泣かし、ゴミの様に捨てたそうじゃないですか。死ね」



 ……なるほど、確かに俺がしでかした事だし、身に覚えはあるな。

 事実とは全く異なるフィクションになってるけども。


 ツンだけメイドの話を聞く限り、俺がクノイチ幼女にタヌキパジャマを着せた上で、裸に剥いて捨てた事になっている。

 だが、事実は『闘技大会に参加したらクノイチ幼女が目の前に立ち塞がり、散々自爆した上でタヌキパジャマを着て俺に誘惑を仕掛け、苛立ったから場外へポイ捨てたら泣かれた』が正しい。

 うん、見事に単語を並び替え、事実とは異なる結果を導き出している。


 って、どういう報告をしたらそうなるんだよ!?

 明らかに誰かの悪意が関与してるだろ、なぁ、大魔王陛下ッ!!



「待ってくれ!それには誤解があるぞ!!」

「それだけじゃありません。他の女性にも暴行を働いたとの証言もあります」


「誰だよ、そんな適当な事を言った奴!」

「アルカディアさんですが?浴室を覗かれたので殴ったと言っておりましたよ。このゲスが」



 それは俺が暴行されたエピソードだろッ!!

 肉体的にはそうでもないが、心に酷いトラウマを負ったんだからなッ!!


 それから投げ掛けられた冷たい言葉から推理した結果、街でアルカディアさんを捕獲したのは大魔王陛下とツンだけメイドだったらしい。

 まぁ、レベルが7万を軽々と越えているアルカディアさんを止めるには自警団じゃ心もとないから仕方がない。


 問題は、捕獲されたアルカディアさんが身元引受人に俺の名前を出したって事だ。

 こういう時はリリンじゃなく俺を指名するあたり、上下関係をしっかり把握してるようだ。



「アレは不慮の事故だっつーの!見たのも背中側だしな!!」

「見たことには変わりありませんよね。ド変態」



 実際には、その後で混浴もしているし、魅惑の谷間も拝見しているが黙っておこう。

 とにかく、今は誤解を解く事が先決だ。


 なにせ、俺に残されている時間は残りあと僅か。

 俺の横にいる眠れる大魔王さんがモゾモゾと動き出しているから、あと5分もしないうちに封印が解かれてしまうのだ。

 どんなご機嫌か分からない上に、寝起きの大魔王さんはそれだけで危険。

 今日はタヌキパジャマも着てないしな。



「それに……お姫様だっこをした責任もありますね」

「お姫様だっこ?」



 お姫様だっこってなんだよ!?

 それはリリンにしかしたこと無いはずだが?



「いえ、失言でしたので……死ね!」



 って、うぉぉおお!?あぶねぇ!!

 よく分からん言葉でブラフを仕掛けてから急所を狙いに来るとは、流石レベルが6万を超えているだけはある。

 親父との訓練をしていなけりゃ、避けるのがギリギリになったかもしれない鋭さだ。



「ちっ!外したか!!」

「ちょっと待て、色んな事があるにせよ一旦落ち着こうぜ。買っておいた飲料水が確かここに……」


「そんなもの要りません!」

「オレンジジュースばっかりだな。お茶って無かったっけ?」


「なんですかその動き!?当たらないっ!!」

「お?玄米茶か。これでいいか?」



 まぁ、鋭い突きや振り払いだが、今の俺にとっちゃ遅すぎる。

 俺と親父の訓練は実戦形式であり、目に見えない剣撃を交わす訓練もしていた。

 今更、目で追える剣に当たるはずがなく、余裕で回避しながらバックを漁ってお茶を見つけ出し、ツンだけメイドに差し出す。


 鼻先1cm、寸止めの位置だ。



「っ!」

「そろそろ騒ぐのもよそうぜ、マナー違反だしな」


「……くっ!降参です」



 そう言って、カーペットの上にへたりこむツンだけメイド。

 その目は恥辱を灯している潤んだ瞳だ。


 ……やばい。ほんの少し殺気を乗せたのは失敗だったようだ。

 全裸親父や飼いタヌキと戦っていたせいで加減を間違えちまった。



「くっ!……死んで!」



 そこは、『くっ!……殺せ!』だろ。

 どんだけ殺意が滾ってんだよ。このツンだけメイド。



「ぐぅ……こんな鬼畜に……」

「なぁ、なんでこんな所に居るんだ?」

「むぅ、私にも分かるように……説明して……欲しい」



 ……あ、おはようございます大魔王さん。

 今日も立派な尻尾が唸ってますね。



 **********



「じゃ、なんでメイさんがここに居るのかを聞かせてくれるか?」



 寝起きに尻尾をギュンギュンさせていたリリンに顔を洗いに行かせ、その隙に朝飯を準備。

 といっても、備え付けられていた電話で適当に注文しただけだが……。

 やけに分厚い肉料理を運んできた睡蓮鏡さんが、『これで英気を養って2回戦でもどうぞ』なんて意味深な言葉を残していきやがった。


 暫くするとリリンも戻ってきて、俺達3人はテーブルに着いた。

 飯を食べながら、ツンだけメイドがやってきた理由を聞く。あと、出来れば昨日の夜何があったのかも聞き出したい。



「何でも何も……。あなた達のせいではありませんか」

「私達の?」


「そうです。この店の裏にある空き地での大乱闘。近隣住民から魔王が降臨したと報告があり来てみれば、確かにそこには魔王がいましたよ。えぇ。」

「むぅ、覚えてない……」


「ちなみに、魔王と戦ってたのは怪人ゲロ鳥男です。妙な奇声を発しながら酒瓶を振り回すという形容しがたい野郎です」



 ……なるほど、つまり酒に酔った俺達は店を飛び出し、裏の空き地で戦ったと。

 そして、通報されたと。

 大魔王・呑んでリリンVS怪人ゲロ鳥男なら通報されてもしょうがない。



「なんですかアレ。ちょっと人智を超えていましたよ?流石の私も顔を引きつらせて王宮に救援要請を出しました」

「王宮騎士を呼んだの?」


「いえ、御参集したのは陛下ただ一人です」

「あ、レジェが来たんだ。じゃあ特に被害とか心配なさそう」



 酒に酔った大魔王を止めるべく、大魔王陛下が出動したのか……。

 うわぁ、いやーな予感。



「私の応援要請を受けた陛下は侵略会議から抜け出してここに来られました。そして、戦っているリリンサ様達を一瞥すると……」

「一瞥すると……?」


「「あはぁ、なにこれぇ超面白ぉい。録画しなくっちゃぁ」と仰られて、ビデオを撮影に興じられました」

「うわぁあああ!?なんて事してんだよッ!?大魔王陛下ぁあああ」



 記憶を無くすほどに酔っぱらってる痴態をビデオに撮られただとッ!?!?

 なんていう致命的なミスッ!!



「むぅ、ビデオに撮られたとか。後で見せて貰おう」

「いや、見る前に処分しようぜ、リリン」


「ユニクの酔った姿はちょっとだけ気になる。後でこっそり見せて貰うだけだから安心して欲しい」



 それ、一番ダメな奴な気がするだが!?

 リリンに見せた後、心無き魔人達の統括者内で共有されて笑い者にされるコースだろ!?



「あぁ、まったく安心できないな」

「そうですね。あんなゲロ鳥乱舞を他人に見られたら、私なら迷わず自害します」



 ……なんだよゲロ鳥乱舞って。

 踊ったのか?

 もしかして、俺はぐるぐるげっげーって言いながら踊ったのか?



「それで、メイがまだ居るのは何で?いつも忙しいと言っているのに」

「はぁ、正直な話、始末をしようかどうか迷っていたら夜が開けました」


「始末?なんの?」

「それは……」



 それはな、俺を始末して亡き者にしようって事だよ。


 だが、流石にリリンに面と向かってそれを言うのは躊躇ったようだ。

 ツンだけメイドは非常に悔しそうな顔をしながら俺を睨み、はぁ。っと小さく息を吐いた。



「いえ、危害を加えるつもりはなく、穏便に事を済ます方法を模索してました」



 嘘付けぇ!

 真剣を突きつけて「ちっ!外したか!!」って言ってた癖によく言えたもんだなッ!!



「ん、どういうこと?ユニクに何かあるの?」

「それは……王宮に行けば分かります。もう、運命に身をゆだねる事にしました。私は疲れましたから……」



 そう言って、ツンだけメイドはパンをちぎって口に放り込んだ。

 心なしか、いや、確実に意気消沈している。


 こう言っちゃなんだが、ツンだけメイド本人には迷惑を掛けてないはずだよな?

 クノイチ幼女に毛嫌いされるならともかく、こんなに落ち込まれるのも府に落ちない。



「王宮に行けば分かるって、今教えてくれないか?」

「もう、これ以上、私を巻き込まないでください……」


「……?」



 それだけ言うとツンだけメイドは、カップを手にとって玄米茶を啜った。

 って、あれ、なんか涙ぐんでるような……。


 あれ、ものすっごく嫌な予感がするのは気のせいか?

 なんかこう、取り返しのつかない事態が進行してしまっているような……。



「メイ、レジェに会えば分かるという事?」

「はい、陛下は全ての事情を把握していらっしゃると思います。凄く楽しそうでしたから。きっと何もかも、すべて陛下の掌の上なのでしょう」



 えっ、何それ怖い。

 あの悪どい大魔王陛下がビデオを撮っただけで帰ったとは思えないし、何かしらの仕込みを仕掛けているはず。

 ……机の下とかに仕掛けられてたりしてな。


 そう思って覗いてみたら、露骨な盗聴器がくっ付いていた。

 まったく油断も隙もありゃしねぇ。



「それはそうと、昨日の夜、私達は戦っただけ?ぇっちな事はしてなかった?」

「えっと、それは……」


「してたの?教えて欲しい」

「ゲロ鳥の羽は毟られましたね。なお、リリンサ様は1枚も脱いでおられませんので、貞操の心配をする必要はございません。ご安心ください」



 ……それって、俺の全裸をビデオに撮られたって事なんじゃないのか?


 俺が全裸英雄と呼ばれる日は、意外と近いのかもしれない。


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