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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第23話「大魔王でーと!②」

「……は?」



 腹ペコ大魔王に誘われて辿りついた場所は、キラキラとした照明が眩しい魅惑の花園。

 じじぃが隠し持っていた秘伝本『人妻のススメ』でも時々特集されていた、大人の楽園。


 そう、たぶんここがそうなのだ。

 人生で初めて来たから憶測でしか語れないが、たぶんそうなのだろう。

 だって、『高級遊郭』って大きな文字で書いてある。


 ……は?



「リリンさん?え?」

「ユニク、覚悟をして欲しい。今日が年貢の納め時!」



 なんだその、妙に芝居がかった物言いはッ!?

 米粒一つ残さず平らげる事に定評のある大魔王さんが言うと、洒落にならねぇぞ!!


 いや待て落ち着け、俺。

 冷静さを失ったら、一気に刈り取られるぞ。魂を。

 俺は深呼吸して自律神経を落ち着かせ、何でもない事のように振る舞った。



「で、ここは何のお店だ?高級な感じだし、寿司でも食べさせてくれるのか?」

「そう、ここのお寿司は絶品。期待して良い!」



 まさかの正解ッ!?!?

 って、そんな訳あるかッ!

 高級遊郭って書いてあんだろうがッ!!



「……リリン?」

「というのは冗談。確かに出してくれるお寿司は美味しいけど、目的はもっと別にある」


「その目的とやらって?」

「……ぇっちなことをする。……って、二回も言わせないで欲しいと思う!!」



 とか言いながら、平均的な顔で頬を染めるリリン。

 照明が怪しい雰囲気を出しいているせいか、いつもの3割増しに艶めかしい。


 ……うん、なんかもうね。どうしてこうなった?


 ここは見るからに大人の男が楽しむ場所であり、現代風に言うならば娼館だ。

 当然、そういう事をする場所であり、ふてぶてしい顔の大魔王さんですら頬を染めずには居られない。


 で、何でそんな場所に俺を連れてきた?

 ここは男がひっそりとくる場所であって、恋人同士で来る場所じゃねぇだろ。



「俺の知識が間違ってるのかも知れないけど……、ここは娼館だよな?」

「そう。レジェの実家」



 ……大魔王陛下の実家って娼館なのかよ。

 イメージ通り過ぎるだろ。



「で、何で娼館なんかに連れてきた?色んなモノが間違ってるよな?」

「間違ってないはず。デートには外せない最重要ポイントだと書いてあるから」



 デートコースに娼館を入れるって、どういう神経をしてんだよッ!?あんのゲロ鳥大魔王ッ!!


 いくらなんでも、流石にそれはない。

 そういった知識が少なく、なんなら過去の記憶を丸ごと全部失っている俺ですら『確実にない』と断言できる程にない。

 どう考えても、俺とリリンで遊んでやがる。



「落ち着いて聞いてくれリリン。この店は恋人同士で来るような所じゃないぞ」

「そうなの?セブンジードのデートコースでは結構な頻度で訪れるって書いてあるけど」



 何考えてんだよ、あのチャラ男。

 もしや、男同士でもデートしてるって事なのか?


 良からぬ妄想が湧きあがってきたが、たぶん、デートだと嘘をついてお忍びで来てるんだろう。

 軍では名の知れた狙撃手だって話だし、色々としがらみがあるのかもしれない。


 って、チャラ男はどうでもいいんだよ!



「リリン、この店はな――」

「ちょっと御客さん、お店の前で騒がれると困るでありんしょ」



 必死の言い訳をして離脱を計ろうとした矢先、後ろから艶やかな声を掛けられた。

 ……ヤバい。お店の人が出て来てしまった。

 というか、既に口調がヤバい。ビッチな狐さんと酷似している。



「まぁ、見たこと無いお顔。ウチの店は一見さんお断りでありんしょ。紹介状は持ってるなんし?」

「ん、紹介状は持ってない。けど、お店に入れて欲しい。……『スイレン』」



 振り返った俺の前に居るのは、何枚もの着物を重ねた長身の女性だ。

 いや、履いている下駄の底は厚く、髪を結い上げているからそう見えるだけで、実際の身長は俺よりも低いだろう。

 そんな彼女は、目が覚める程に整った顔立ちをしていた。

 まるで絵画から抜け出してきた様な白磁の肌は、リリンやワルトとはまた違った美しさだ。


 あぁ、この人が花魁。

 男に夢と希望を与えて貪りつくす、大魔王国の深淵の住人。



「あら、今は花魁になったから睡蓮鏡すいれんきょうと名乗っているのよ。って、昔の源氏名を知ってるって事は」

「久しぶり。私のこと分かる?」


「……まぁ!こんな美人さんになってるなんてビックリよ、リリンちゃん」



 既に顔見知りとか、逃げられない感じが半端じゃねぇな。



 **********



「ささ、中でお話ししましょ」

「分かった。あ、凄い。いつ来ても豪華な部屋」


「一見さんどころか特上のお客様だもの。2等級奴隷以上の方しか通さない貴賓室よ」



 花魁の睡蓮鏡さんに捕獲された俺達は、流されるがままに部屋の中に連れ込まれてしまった。

 そのまま巧みに誘導され、豪華なお茶菓子が置いてある机につかされる。

 ……うん、やばい。これはどう考えてもヤバい。


 唯でさえここは、大魔王陛下が生まれた場所だ。

 そして、色んな意味で男が食い物にされる場所でもある。

 こ、このままじゃ……俺の倫理観がぐるぐるげっげーして、大魔王・ユルユルユニクルフィンが誕生してしまう!



「リリンちゃんがここに来たのはいつ以来かしら?」

「前に国に来た時も寄らなかったし、2年以上は来てないはず」


「2年かぁ、時が経つのは早いものねぇ。この国でも色んな事があったわ」

「そうなの?」


「そう、例えばね――」



 俺が焦りまくっている間にも、リリンと睡蓮鏡さんは世間話に興じている。

 流石は花魁だけあって、リリンに平均的なふてぶてしさを発揮させない語りの上手さ。

 さりげなく会話内容を誘導する事で、話しの主導権を握っているようだ。


 って、観察してる場合じゃない。

 この窮地を乗り切る方法を考えないと!!


 ……だめだ。何も浮かばねぇ。


 というか俺だって男だし、流されるままに良い思いをしたいという気持ちもある。

 ゲロ鳥大魔王の策謀を抜きにしても、リリンにここまで求められているのなら……とか思ってしまうのだ。


 だけどさ、それでいいのか?と考えた時に、やっぱりどこか違うんだよな。

 リリンの事を好きだからこそ、こんな暗躍まみれの結ばれ方じゃなくて、俺自身の力で手に入れたい。


 これはもう、俺の意地としか言えない小さなプライド。

 リリンと同じレベルになってからと一度決めた以上、簡単には譲ってはダメだ。



「それで、この殿方はどちら様?」

「彼の名前はユニクルフィン。英雄ユルドルードの実子であり、私の旦那様になる人!」


「まぁ!素敵な方を捕まえたわねぇ。大変だったでしょ?」

「うん、ドラゴンを捕獲するよりもずっと大変だった!」



 会話に入ろうとタイミングを見計らっていると、良い感じの流れになった。

 俺の視線を感じた睡蓮鏡さんが上手く誘導したようで、自然な流れでリリンが紹介してくれて、それに乗っかる形で俺も会話に入ってゆく。

 とりあえず、ペット扱いから脱却したい。



「ということで、俺の名前はユニクルフィン。色んな意味で有名なユルドルードの息子だが……正直、その名乗り方もどうかと思っている今日この頃だ」

「良い男を探している遊女的にはぁ、とっても満点の自己紹介ねぇ」


「よし、親父の名前は封印する事にしよう」

「あらぁ、残念。それじゃぁ、今日は何しにここへ来たのかしらぁん」



 今、気が付いたが、この人、相手する人によって口調を変えてるな。

 最初に出会った時は、それこそ花街のイメージ通りな口調だった。

 それが、リリンだと気が付いてからは気さくなお姉さん風になり、俺と話す時は艶めかしいお姉さん風になる。


 それに、俺と話す時の口調がゲロ鳥大魔王と似ているのも気になる所だ。



「ここには……レジェリクエ女王陛下の差し金で来る事になったんだよ。正直に言って、デートで娼館はないと思っている」

「あらぁ、そうでもないわよぉ。結構カップルでのご利用も多いのよぉ」



 そう言いながら、睡蓮鏡さんはガラスのコップにジュースを注いで差し出してきた。

 見るからに高そうなコップに映える濃紺色のジュース。その美しさは口を付けるのを戸惑ってしまうレベルだ。

 って、コレ、ガラスじゃなくて水晶か?


 って、いかんいかん!

 余計な事に惑わされるな、俺ッ!!



「カップルでの利用が多い?嘘だろ?」

「本当の話よぉ。このお店『妓楼鳴鳥ぎろうめいちょう』は、遊楽にも重きを置いているものぉ」



 どことなく、店の名前からゲロ鳥感がするのは考えすぎか?

 えぇい!意識を散漫にさせる罠が多すぎる!

 しっかりしろ!!俺ッ!!



「遊楽?舞踊や音楽といった見せ物って事か?」

「そうよぉ。確かにここは女が花を売る所で、それは否定しないわよぉ。でもね、レジィのせいと言うべきか、レジィの性癖と言うべきか、お仕事の形態が変わったわぁ」


「よし、くわしく話してくれ」

「元々、遊郭って言うのはねぇ、童貞臭い坊やが想像している事だけをしてる訳じゃないのぉ。歌を詠んだり舞踊を踊ったり、あらゆる事で殿方を喜ばせる事こそが、遊郭のお仕事なんだからぁ」



 ……童貞ってバレてるんだけど。



「だからぁ、女の子でも遊女の美しさに憧れる子は結構いるのぉ。ある意味で女の子の極地な訳だしねぇ」

「同意を求められても困るんだが?俺は初めて来たんだし」


「そんな訳でカップルで舞踊を見に来る人もぉ、それなりにいるのよぉ。それこそ、女の子が主導で来る事の方が多いわねぇ」

「なるほどな。確かに男が綺麗な女の人を見るのに彼女を連れてくると悲劇へ発展するが、その逆は問題にならないと」


「そしてぇ、女の子から誘う時の免罪符となるわぁ。『さっきの遊女と私、どっちが可愛い?』とか言ってねぇ、二階の個室に入っていく。そうなる様にレジィが仕向けてるのぉ」



 ……良くできてるシステムだな。

 さすが、ゲロ鳥大魔王陛下の実家だぜ。


 聞く所によると、舞踊を見た後でそのままゴールインする初々しいカップルがとても多いらしい。

 重要なのは、『女性の方から誘いたいけれど、あけすけに言うのは恥ずかしい。だから、綺麗な舞踊を見るという口実を使っている』ということだ。


 隷属手帳システムを使えば、それこそ、娼館が無くても花を売ることが出来る。

 だからこそ、好きな男性が出来た女性は積極的にならざるを得ないが、そう活発な性格の女性ばかりじゃないだろう。


 そして、ここに来てしまえば同じ目的のカップルがそれなりの数いる訳だし、男の方も分かって来ている。

 晴れてめでたく結ばれた後は、関所のある広場で焼き鳥でも食べれば良い。



「なるほどな。セブンジードさんも良く来てるってのも納得だぜ。さすがチャラ男と呼ばれているだけはある」

「んー。セブンちゃんは中々に可哀そうよぉ。不憫だわぁ」


「どういう事だ?遊びまくってるって話だろ?」

「セブンちゃんは人気があり過ぎるからぁ、テトラフィーア様がお触れを出してるのぉ」


「ゲロ鳥大じ……。テトラフィーア大臣が?」

「まぁ、幼馴染のメイちゃんの為なんだろうけどねぇ。『セブンジードに触れるべからず。抜け駆けは天誅ですわ!』なんて暗黙のルールを作られちゃぁ、遊女も誘いづらくてしょうがないわよぉ」



 それはつまり、ツンだけメイドは魔弾のチャラ男の事が好きだから、他の女は手を出すなってことか?

 しかも、それをセブンジードさんは知らないと。


 薄らと見えた、フランベルジュ国の闇。

 ドロドロしている恋愛劇に隷属連邦を掌握している大臣が加担しているとか、何それ怖い。

 絶対に関わらないようにしよう。



「ちなみにさ、うちのリリンはこの店の事を『エッチな事をするお店!』だと俺に紹介した訳だが……、そういう方法もよくあるのか?」

「無いわよ。そんだけドストレートに言えるんなら自宅でやれって感じだし」



 ……確かに。

 つーか、言葉遣いが砕けて素が出てるぞ。


 やっぱりうちの大魔王さんは、飯を食う事以外の策謀は苦手なようだ。

 うん?というか、今日は随分と静かだな?

 いつもなら、こんだけ長く話していれば暴走するはずなんだが?



「リリンどうした?今更、恥ずかしくなったのか?」

「そんなことない……。ひっく」


「……ひっく?」

「どうすればユニクを調教出来るか考えてた。ひっく。鞭は上級者向けだってパパが言ってたから、水害の王クラーケン・オブ・タイタニカで代用できないか検討中。ひっく」



 この大魔王さん、俺を調教しようとしてやがるんだが?

 しかも、鞭の代わりに大規模殲滅魔法(ランク9の魔法)を使おうとしていらっしゃる。


 まぁ、それはまだいい。

 グラムを覚醒させればどうとでもなるはずだし。


 それでさ、その言葉に混じってる嗚咽はなんだ?

 いやな予感しかしないんだが?



「リリン?おーい、リリンさーん?」

「でも、その程度の魔法じゃだめかも……白銀比様も、レジェも、勢いが大事だって……」


「目がトローンとしてるんだけど。おーい?」

「張り倒して、裸に剥いて、踏み倒す?」


「暴行、追い剥ぎ、追撃だな。それは決して、恋人同士が行う奴じゃないぞー」

「とにかく、ユニクは自覚が足りないのは確か」


「自覚がないのはリリンの方だぞー?正気を取り戻せー?」



 明らかにリリンの言動がおかしい。

 俺の言葉がまるで届いておらず、どこか上の空で高級なグラスのジュースをちびちびと飲みながら独り言をつぶやいている。


 ん?ちびちびと飲みながら?

 いつもなら、もっと勢いよく行くだろ?


 ……まさか、な。

 俺は、恐る恐る目の前に置かれたグラスを手に取り――、口を付けた。



「うん、これはもう……決闘しかないと思う!!」

「やべぇぇぇ!これ、酒だッッッ!!」



※この小説はファンタジー小説であり、フィクションです。

現代日本の法律では、未成年の飲酒は罰せられます。


なお、僕は成人してますが、飲むとぐるぐるげっげーになるので飲みません!


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