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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第22話「大魔王でーと!①」

「さぁ、ユニク。ここからは二人きり。全力でデートを楽しもう!」

「おう、せっかくだしな!大魔王とか置いといて素直に楽しむぜ!!」



 大魔王陛下との謁見を終えた俺達は、銀行in公衆浴場から抜け出して関所前の広場に戻ってきた。


 入国した時も思ったが、やはり観光地なんじゃないのかと思わせる街並みに、思わず息を飲む。

 行きかう人々は自然に笑みを溢し、幸せそうな親子連れだってかなりの数。

 裏でこそ色んな策謀が渦巻いているが市民レベルで言えば、ここはまさに天国なのかもしれない。



「それでリリン、デートコースとやらはどんな感じなんだ?」

「最初は食べ歩き!思うがまま、目に付いたがままに、食べて、食べて、食べまくる!!」


「いつもと変わらんな。それ」

「今日はレジェに美味しいお店を教えて貰っている!!最初に行くのは……そこの焼き鳥屋さんから!!」



 食べ歩きは予想の範囲内だから良いとして、最初のメニューが焼き鳥か。

 年頃の女の子とのデートなのに焼き鳥とは、大魔王様のチョイスが随分と渋い。


 俺はリリンに手を引かれながら、良い匂いがしている屋台へと近づいてゆく。

 炭火で炙られたタレの匂いに、早くも大魔王様は目を輝かせた戦闘モード。

 小声でバッファの魔法を唱えているし、この屋台は明日の朝日を拝めないかもしれない。


 そして、辿りついた場所では、歴戦の戦士感漂うおっちゃんの巧みな串裁きとゲロ鳥の絵が書かれた旗が揺らめいていた。



「へい、らっしゃい!良い鳥が焼けてるぜ!!」

「それはダメだろォォォォッッ!!」


「はい?なにがだい?」

「ゲロ鳥は国鳥なんだよな!?喰っちゃダメだろッ!!」



 公園のゲロ鳥を捕まえようとしただけで魔王城に連行される大罪だというのに、串焼きにして売っているとか極刑にされてもおかしくない。

 しかも、こんなに美味そうな匂いをさせているとか、なお、いただけない。


 俺の隣では平均的によだれが垂れてる大魔王が「おいしそう……」とか言っているが、ダメなもんはダメだ。



「はっはっは、勘違いしてるぜ兄ちゃん。この肉はゲロ鳥のじゃねぇよ」

「なんだ違うのかよ。じゃあ、あの紛らわしい旗はなんだ?」


「いや、元々はゲロ鳥も畜産されてる家畜でよ、俺もゲロ鳥やきとりを焼いてたんだがよ」

「ゲロ鳥やきとりとか、名前からしてヤバいだろ」


「あの鳴き声を聞いてる内にほだされちまってなぁ。今じゃゲロ鳥は家畜からペットに昇進よ!」



 あぁ、良かった。

 あんだけ大魔王陛下が可愛がっているペットが食用として出回ってるとか、業が深すぎる。

 だが、違う肉というなら安心だ。

 良い感じに腹も空いてるし、俺も2~3本貰おう。



「じゃ、俺らも買うか。色々な肉があるみたいだがオススメはなんだ?」

「そりゃ、もちろんウマミ・タヌ――」


「それ以外で。俺は諸事情があってタヌキは食えないんだ」



 タヌキなんぞを喰おうもんなら、確実に腹を壊す。

 場合によっては人生すら壊れる。

 というかそもそも、カツテナイ。



「そうか。そうだなぁ、じゃ、豪華鳥コカトリスなんてどうだ?肉も美味いが砂肝もいけるぞ」

「ん!じゃあそれ5本ずつ!タレと塩は別で合わせて20本!!」


「威勢がいいなぁ、嬢ちゃん!タレ・塩が別で10本ずつだな~待ってろ」



 歴戦の焼き鳥屋のおっちゃんは炭の上で踊っている焼き鳥を両腕でかっさらい、横に置いてあった壺から数種類の調味料をトッピング。

 見た感じ唐辛子や青ノリといった薬味の様で、焼き鳥の香ばしさを存分に引き出してくれるだろう。


 で、今、明らかに20本以上を紙袋に入れたんだが?



「おっちゃん、俺達が注文したのは5本ずつだぞ?」

「おっといけねぇ、入れすぎちまった!サービスにするから持ってってくれ!!」


「は?」

「銀行風呂から出てきたって事は、兄ちゃん達は亡命したんだろ?」


「あ、あぁ、そうだが……」

「なら遠慮すんな。俺は、俺が受けた恩を返したいだけだからよ」



 それからおっちゃんは、色んな串を一本ずつ紙袋に入れ始めた。

 どうやら、それも俺達に御馳走してくれるらしく嬉しそうな顔で差し出してくる。



「ほら、これも食っときな。多少冷めても美味いからよ。パンに挟んで朝飯にしても良いぞ」

「いや、流石に悪いだろ……?ざっと計算しただけでも2000エドロくらいはするぞ?」


「いいんだ。実は、俺は冒険者だったんだがヘマをやらかしちまってよ、この国に流れてきた訳だよ」

「うん?」


「正直、ヤサグレていた俺は強盗をするつもりだった。だが、ロンリゴンさんに説教されて中に連れて来られてよ」

「ちょいちょい出てくるな、ロンリゴン」


「ここで店をしていたばあちゃんに、たらふく飯を食わせて貰ったんだ。だから俺は、俺がして貰った様に亡命者に串焼きを奢ると決めている。なぁに心配すんな。肉は自分で獲ってくるからタダだし、毎日儲かってしょうがねぇくらいだからよ!!」



 そう言って、歴戦の焼鳥屋のおっちゃんは恥ずかしそうに笑った。

 きっと、瞳の先にある串に、いろんな思いがあるんだろう。


 なお、おっちゃんのレベルは5万を超えている。

 普通に歴戦の冒険者であり、そんな最強クラスの人材が焼き鳥屋をしているとか……亡命と称してスパイがやってきたら一瞬で心が折れるだろうな。



「ん、このお肉ピリッとしてて美味しい!流石は豪華だというだけはある!!」

「ホントにうめぇな。胡椒と唐辛子、山椒も混ぜてあるみたいで後味もさわやかだし!」



 せっかくなので、直ぐに紙袋から取り出して頬張ってみた。

 うん、弾力のある肉にピリッとした黒胡椒という絶妙なハーモニー。

 俺が抱いていた焼鳥の価値観が変わる程の一本だ。



「凄く美味しい。この焼き鳥は誇るべきものだと、この私が保証する!!」

「はっはっは!あんがとよ嬢ちゃん!!」


「じゃあ、手帳を出して欲しい」

「おっと、奢るって言ったろ?お代は要らんぜ」


「その好意もとても素晴らしい。だから私も好意で答えたい。貰いっぱなしは私の威厳に関わると思う!」

「おっと、そうなのかい?じゃあ、お言葉に甘えるとするかね~~」



 歴戦の焼鳥屋のおっちゃんのノリは良く、直ぐに自分の隷属手帳を取り出した。

 なんとなくリリンが何をしようとしているか分かるだけに、ちょっと申し訳なくなってくるな。

 ビックリし過ぎないと良いけど。


 俺はもしもの時にフォローに入る為に静観していると、リリンも自分の手帳を取り出しておっちゃんの手帳と接触させた。

 そして、興味深げな笑顔でおっちゃんは自分の手帳を開いて眺めている。



「なになに……『この焼き鳥屋さんを、心無き魔人達の統括者・総統・無尽灰塵の御用達店に認定する。速やかに役所に届け出てエンブレムを発行して欲しい。報酬・10万エドロ』」

「そういうこと!」


「……。なになに……?『この焼き鳥屋さんを、心無き魔人達の統括者・総統・無尽灰塵の御用達店に認定する。速やかに役所に届け出てエンブレムを発行して欲しい。報酬・1、0、万、エ、ド、ロ……。』……なにぃぃいいいいいいいいいいいい!?!?」

「私はこのお店の焼鳥が気にいった。だから、ずっとお店を続けて欲しい。美食の大魔王と敬われる私の名前は役に立つはず!」



 ついに美食の大魔王とか言い出したな。

 つーか、心無き魔人達の統括者の中でも、リリンは食べキャラ扱いなのな。



「こ、こ、これはとんでもない御無礼を!申し訳ありませんっ!!」

「いい。むしろ、態度を改めてはいけない。貴方は身元すらはっきりしていない新たな国民に無償の奉仕を行っていた。それはとても褒められるべき事で、謝る様な事では無い」


「いえ、俺は新たな人生を与えて貰ったばかりで、何か恩返しをと思ってもこんな事しかできなくて……」

「それでいいし、それがいい。なにせ、貴方の焼いた焼き鳥はとても美味しい!」


「ははっ、それじゃ……この身と人生を串に刺し、我らが盟主、心無き魔人達の統括者様へと捧げます!」



 ……串に刺すのは鳥肉だけでいいぞ。

 おっさんの人生串焼きとか、ゲロ鳥やきとり以上にヤバいからな。


 というか、食う事しか眼中にないはずのリリンが人心掌握してるんだけど。

 あっ、食い物屋限定でのみ魔王的真価を発揮するのか、ウチの腹ペコ大魔王は。


 それから歴戦の焼鳥屋のおっちゃんに握手を求められたり、旗にサインをしたりしてから次のお店へと進んだ。

 その後で何件か似たような事をしたから、心無き魔人達の統括者・無尽灰塵の顔と名前は急速に知れ渡っていく事になるはずだ。


 んー、店に感動したのは確かなんだろうけど……。何かリリンらしくない気もするな?




「リリン、あえて名前の知名度を広げる様な事をしてないか?」

「してる」


「なんでだ?」

「私は変態の幼虫を本気で潰すつもりでいる。その為には相応の戦力が必要だし、その下準備」


「ラルラーヴァーと焼き鳥屋になんの関係が?」

「それは……特に考えてない!」



 考えてないのかよ!!

 やっぱりうちの大魔王は食う事にしか頭が働かないようだ。

 ちょっと安心したぜ!!



「さて、じゃ、次はどこに行く?」

「着いた」


「ん?着いたって……え?」



 ふらふらと買い食いをする事に夢中になり、俺達は段々と大通りから離れていった。

 そしてそれは、狡猾な方の大魔王の手引きによるデートコース通りだったらしい。

 ふっ、油断した俺が愚かだったぜ。



「ちょっと待てリリン。この店は……?」

「今日泊まるホテル」


「ほ、ホテル……だと……?」

「そう、ここはレジェの実家の……、ぇっちな事をするお店!」



 ……。

 …………。

 ………………え。


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