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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第20話「大魔王城下町⑤」

「なるほどなぁ。積極的に民を受け入れているのも、自国の経済を安定させる為なのか」

「余の国はぁ、良い意味でも悪い意味でも大きくなりすぎたわぁ。急成長過ぎて受け皿たるインフラストラクチャー、『生活基盤』が未熟なままなのぉ。だからこそ、ゆとりある人材が必要になるのぉ」


「でもさ、人が増えればコントロールが難しくなるだろ?必要な食料だって増えていくが、受け入れる難民は食糧を持っていない。どうしてるんだ?」

「それは違うわぁ。貧しいとあえぐ民草のうちぃ、だいたい7割くらいは知識不足による自滅がほとんどなのぉ」


「自滅?どういう事だ?」

「深刻な食糧不足を引き起こす連作障害というのはねぇ、同じ植物を作り続けるからなるのぉ。ということでぇ、違う食用植物がひっそりと育っている事が多いのよぉ」


「そういうことか。食用とされていない植物でも、国によっては食べられてたりするもんな。それらの流通を促せば双方にとってメリットしかないと」



 レジェとの会談は、非常に有意義に進んでいる。

 流石は国王とも言うべき思慮の深さで、俺の疑問がするすると解けていくからだ。


 俺が気になった食糧問題についても、大魔王システムを上手に運用する事で解消しているようだ。

 例えば、貧相な農民が亡命に来たとする。

 その農民は、強いてあげるなら竹細工が得意だという程度で、他に特技を持たない男だった。


 だが、『竹細工』に目を付けたレジェは、新たな食料源を得る事になる。

 その男の村ではまったく思いもよらなかったことだが、他国では『生えたばかりの竹(タケノコ)』は珍味として親しまれており、5倍の重さの麦と交換することが出来たのだ。


 そして、双方の領地が隷属連邦となっている今、貿易交渉など容易。

 その村は品質の良いタケノコの産地として栄える事になった。



「だからこそ余はねぇ、侵略をするのぉ。貧しいと嘆く愚か者から貧困を奪い取り、代わりに富を与えるのよぉ」

「ほんと、話を聞けば聞く程にレジェの凄さが分かるな」

「むぅー。」


「あはぁ。綺麗事じゃご飯は食べれない。余はねぇ、豊かな国の王になりたいのよぉ」

「豊かな国の王か。それを実現させるためには、民が幸せに暮らすことが必要不可欠だもんな」

「むぅうー。」


「そうよぉ。私一人が富み着飾っても、それは豚に衣装を着せるのと同じぃ。優れた環境の中で王となる事こそ価値があるのぉ」

「レジェが国主なら、この国はずっと安泰だな!」

「むぅうう……」


「ありがとねぇ。ところでぇ……」

「むぅうう!!」



 ん?なんだ、リリン?

 腕の締めすぎで、防御魔法に亀裂が入ったんだが?


 ……は?



「ちょ、リリン!?第九守護天使にヒビが!!このままじゃ腕が折れる!!」

「むぅぅぅ、ユニク。レジェの甘言に乗ってはダメ」


「はい?」

「ユニクは騙されてる。ダメ!」



 ……俺が騙されてる?

 いや、騙される要素がどこにあったんだ?

 俺はレジェと雑談してただけだぞ?



「何の話だ?レジェとは他愛ない話をしてただけだぞ?」

「むぅ。ほら、毒されてる」


「毒だと?」

「もう既に呼び方が、『レジェリクエ女王陛下』から、仲が良さそうな『レジェ』になっている。無意識のうちに洗脳された証拠!」



 ……いや、そんな馬鹿な……。

 流石にそれは言いがかりだろ?リリンだってレジェって呼ぶんだしさ。


 そう思ったが、確かに最初に抱いていた危機感の様なものは随分と薄くなった気がする。

 それはまるで、俺の心にスルリと入りこまれたかのようで。

 ははは、まさかな?



「レジェッ!ユニクは私の。手を出してはダメ!」

「私がいつ手を出したのぉ?お喋りしてただけでしょぉ?」


「絶対に違う。だってレジェはいつもそう。自分に都合が良い話だけをして相手の心を弄ぶ!」

「それはそうよぉ。誰だって嫌われたくないものぉ」



 自分の都合のいい話だけをする……だと?

 確かに、会話がスムーズに進んでいたせいで分かりづらかったが、レジェリクエ女王陛下=聖人君子だと刷り込まれたような?

 というか、レジェも『相手の心を弄ぶ』って所は否定しないのな。



「むぅ!レジェの魂胆は分かっている!ユニクを籠絡して酒池肉林漬けにするつもり!」

「お酒を飲んでお肉を食べるぅ?それをしたいのはリリンじゃないのぉ?」



 ……酒池肉林だと?

 リリンが言っているのは、ビッチキツネが得意とする酒池肉林。

 レジェが言っているのは、腹ペコシスターズが得意とする酒池肉林。


 うん、どっちも自重しろ。



「ユニク!レジェは美談ばかり語るけど、裏では酷い事をいっぱいしている!!『トマト・リべリオン大作戦』とか大概に酷かった!!」



 ……なんだその、トマト・リべリオン大作戦とやらは?

 言い変えると、『トマトによる暴力的革命』だぞ?どんな革命だよ?



「あれはぁ、料理がへたくそなワルトナのせいでしょぉ?まさか(デス)(ソース)(ディスティニー)を入れるなんてぇ」

「入れてって言ったのはレジェだったはず!そのせいで敵も味方も全滅した。カミナがいなかったら死人が出るレベル!」


「余はぁスパイスを入れてって言ったのぉ。誰も激薬を入れろとは言ってないわぁ」



 ……トマトを使って料理を作ったら、死人が出そうになったのか。

 大魔王クッキング、恐るべし。



「他にも、『鮮血の流しそうめん大作戦』とかも酷かった!」

「あれはもぉ、面倒になったワルトナの暴挙でしょぉ?まさかD・S・Dでそうめんを流すなんてぇ」


「食べた人全員が吐血していた!レジェが食べて良いって言ったからホロビノも吐血した!!」

「落ち着きなさぁい、口から零れたのはD・S・Dよぉ。赤いけど血じゃないわぁ。たぶん」



 お前ら好きだなD・S・D!?

 見たこと無いけど、どんな液体だよD・S・D!?!?


 まぁ、伝説の白天竜が吐き出すレベルだし、相当危険な液体に違いない。

 というか、さっきから大体ワルトが悪いんだけど。


 うーん、確かに、難民受け入れ話の前にD・S・Dとか言われたら警戒度を上げるだろうが……リリンの話だけじゃ、ちょっと判断に困るな。

 今の所、謎の赤い液体D・S・Dが激薬だという事しか伝わってこないし。

 ……大魔王疑惑を確かめる為に、一石を投じてみるか。



「とにかく、レジェにユニクは絶対にあげない。絶対にダメ!!」

「待て待て、落ち着けリリン。俺はどこにも行かないからさ」


「むぅ、本当?」

「あぁ、本当だ。その証拠と言っちゃなんだが、セフィナと白い敵の一件が完全に片付いたら家でも建てて、リリンと一緒にゆっくり住みたいって思ってるぞ」


「むぅぅ!?」



 ……ナユタ村で。


 何を隠そう、旅に出た俺の最初の目標は『戦闘経験を積んでタヌキを狩猟する』ことだった。

 そして、『ナユタ村住民として認めて貰い、世話になった人への恩返し』がしたいのだ。


 その目標も、クソタヌキがカツテナイ機神を持ち出してくるという意味不明なイレギュラーのせいで破綻しかかっているが……まだ諦めた訳じゃない。

 少々ズルイが、あんなカツテナイクソタヌキを狙わなければ、問題なく目標を達成できる。

 アホタヌキ程度なら瞬殺できる自信があるし。


 さて、家が欲しいという餌を垂らしてみたが……どうなる?



「あらぁ、丁度良かったわぁ。城の近くに良い物件があるのぉ」

「……へぇ。どんなのだ?」


「新築一戸建てでぇ、庭が広いからペットもOKぇ」

「ほう?だけどそれだけじゃ一般的すぎてな。他に良い所はないのか?」


「あるわよぉ。国家機密会議が出来るように防音設備は万全でぇ、ランク9の魔法が直撃しても大丈夫な耐震設計ぃ。庭にはリンゴとバナナの木も植えてあるしぃ、地下には魔王装備を封印しておく倉庫が――」

「完全に俺たち専用としてデザインされてやがるッッ!!ご丁寧にクソタヌキーズへの配慮も万全だ!!」


「今ならぁ、メイドも付けるわぁ。……1000人くらいぃ」

「無駄に多い!その規模なら屋敷じゃなくて城だし!!」


「全員が清らかな乙女よぉ。四等級なムツキからぁ、一等級なテトラフィーアまでぇ食べ放題ぃ」



 クノイチ幼女からゲロ鳥大臣まで、た、食べ放題だとッ!?

 だとすると、ツンだけメイドもセットだという事かッッ!?


 いやいや待て待て、落ち着け俺。

 どう考えても、それ、美人局だろ?

 しかも大魔王風味で戦闘力が迸っている。俺は死ぬ。


 俺が真実に辿りつこうとしている間にも、レジェリクエ女王は朗らかな笑みを浮かべている。

 そして俺は気が付いてしまった。


 ……机の上にあるマイクのスイッチがONになってるな。

 うん、大魔王陛下が言質を取ろうと全力で暗躍してくる。俺は死ぬ。



「助かったぜ、リリン。どうやら俺は洗脳されかけていたようだ」

「ユニク、これからも気を引き締めておいて。あと、お家はレジェンダリア以外に建てよう」



 ふぅ、マジで危ない所だったようだ。

 どうやらレジェリクエ大魔王陛下は、俺の思想と価値観を掌握して支配下に置くべく画策していたらしい。

 あのまま話を聞いていたら、きっと大魔王美人局を仕掛けられ、奴隷契約書にサインを……って、もうサインしちまってるんだけど。


 そう言えば、ワルトもレジェンダリアには近づくなって言っていたっけ。

 ……やばい、迂闊だったかもしれない。



「もぅ、あとちょっとだったのにぃ」

「やっぱり!ダメ!!ユニクは私の!!」


「それにしても、リリンも賢くなったのねぇ。昔はお菓子さえ与えとけば自由自在だったのにぃ」

「私はもう子供じゃない。お菓子の誘惑にだって負けない!」


「そうなのぉ。じゃあ、切り札の為にとっといたこのお菓子も意味がないわねぇ。お茶受けにしちゃいましょぉ」



 そう言いながら、大魔王陛下は空間から輝かしいクッキー缶を取り出し蓋を開け、近くにあったカップに三人分の紅茶を妖美な動作で注いだ。

 そして、純黄色のジャムが乗ったクッキーを艶麗に指で摘まんで口に運ぶ。


 さくり。と優雅な音を立て、優美な動作で紅茶を一口。

 ふうぅ。と妖艶に息を吐き、精錬な動作でリリンにもクッキーを進めた。



「あ、おいしい」

「でしょぉ?取り寄せたかいがあったわぁ」



 ……すげぇ、一撃でリリンが大人しくなった。

 流石は大魔王陛下の切り札。効果は抜群だッ!!



「さ、て、とぉ、せっかく窓口に来たんだしぃ。本来のお仕事もしておきましょうねぇ」

「……そういえば、俺を売った代金を貰いに来たんだったな」



 言われて気が付いたが、確かに今までの流れは全く必要ないものだ。

 やばい、完全に俺達の動きを掌握されている。

 頼みの綱のリリンも、しっかりと口封じされてしまった。



「隷属奴隷になるとぉ、自分の体を売った代金としてお金が支払われるのぉ。それは普通の奴隷売買と一緒ぉ。受け取るのが本人なだけぇ」

「そのお金で新しい生活をスタートしろって事だろ?かなりの金額が貰えるって言うし、それだけで、亡命者は女王を崇拝するだろうな」



 確か、この国に入国する時の金額は男が250万エドロだったはず。

 それは、この大陸に住まう男性が手に入れるお金の四カ月分だという話だった。


 だとすると、300万エドロの金銭を貰えれば暫くは余裕で生活できる。

 遠目で屋台の値段を確認した感じじゃ、物価が高いってわけでもないし。



「だけどさ、そのお金ってどっから出てるんだ?」

「関所の通行料で相殺ねぇ」


「観光客の入国料か。でもさ、女性の入国料は80万エドロなんだろ?でも、女性の亡命者だって300万エドロは貰えるんだよな?」

「もちろんよぉ!入国料はルールに従った区別ぅ。でも、奴隷代金に差を付けるのは差別よぉ」


「なら、出資の方が多くて、経済が破綻しそうなもんだがな?」

「問題ないわぁ。例え、観光客より亡命者の方が多くてもぉ、まったく問題ないのぉ」


「……どういうことだ?」



 その言い方じゃ、観光客が0人で亡命者が100人でも大丈夫になるんだが。

 収入が0で、支出が4億エドロを毎日繰り返されたら、あっという間にお金が無くなるだろ?



「それはねぇ、我が国では隷属手帳を用いた『手形決済』が主流だからよぉ」

「なんか、ワルトが得意そうな言葉が出てきたな」


「隷属手帳は預金通帳の代わりになってて、商品を購入する時もそこから自動的にお金が支払われる仕組みになっているわぁ。つまり、動いているのは数字だけで現物のお金が無くても問題ないのぉ」

「……なんだそれ、詐欺か?」


「詐欺じゃないのよぉ。国民から国民への無意味なお金の移動を無くしているだけ。そして、それを突き詰めるとぉ『必要支出・他国から商品を購入するお金』『収得収入・入出国関税と貿易利益』となるわけぇ」

「つまり、国内で消費する消耗品を買う為のお金だけあれば良いって事だよな?それでも最低限は必要だろ?」


「そうねぇ、だからこの国から去る時は『隷属システムを通して手に入れた金額の総額を、出国時に払う義務がある』のぉ」

「なんだと!?そんなの無理だろ!!」


「奴隷を辞めたいのなら、お金を払うのは当然でしょぉ」



 なんて酷い!やっぱり大魔王システムじゃねぇか!!


 手に入れたお金の総額を支払う必要があるという事は、絶対に借金を負うという事になる。

『稼いだお金』―『使ったお金』=『所持金』になる訳で、亡命時に大量の通貨を持ち込んだ場合を除き、支払うのは絶対に不可能なのだ。

 当然、国を出ていくから金を貸してくれ!なんて言える訳ないしな。



「そんな訳でぇ、この国から去る人は『収入ゼロ』になって貰っているわぁ。でも、住んでいた期間は労働力として働いて貰ってるし、それを売って外貨を稼いでいるから経済は破綻しないのよぉ」

「エグイ事を考えるなぁ。……聖母」


「そうねぇ。お母さんは家庭の財布を握るものぉ。ちょっとスケールが大きいけどねぇ」



 最終的には『隷属奴隷へ支払ったお金・0エドロ』になり、『隷属奴隷が稼いで国に納めたお金』だけが残る。

 それこそ、誰かの悪意が入りこまなければ破綻する事はあり得ないし、その悪意に関しても、この大陸の諸悪の根源などと呼ばれている大魔王には及ばない。


 この国の名は、独裁掌握国レジェンダリア。

 奴隷は、抜け出せないから奴隷なのだ。



「で、俺は自分を売った代金として、いくら貰えるんだ?」

「10億エドロよぉ」


「だよな。伏せ時になっていたから予想はしていたけどさ、俺の資産価値も『10億エドロ/時』だったぞ?おかしくないか?」



 俺を働かせた場合、1時間で10億エドロを支払う必要がある。

 高評価をされてるようで嬉しいが、奴隷になった時の金額も10億エドロなのは納得出来ない。

 後で返すんだとしても、100億ぐらいはくれても良いと思う。



「あぁ、さっきも言った通り数字に深い意味はないのぉ。億を超える金額は一回で使う額じゃないから、特にねぇ」

「じゃあ何で俺の購入代金が10億エドロ?」


「キングゲロ鳥と同じくらいの価値かなってぇ」



 ……。

 ……………。

 ………………ぐるぐるッッッ!!きんぐぅぅぅぅうううううううううううううううううううううう!!


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