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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第9話「英雄の導き」

「ブルファム王国と敵対するんだろ?あの国には、お前らと同じ英雄見習いがいるぞ」



 いきなり、親父が妙な事を言い出した。

 今日の親父は変だ変だと思っていたが、ついにここまで来たか。


 つーか、記憶が無いって設定どこ行った?

 完全に何か知ってる顔してるんだが?


 親父のしたり顔はクソタヌキに通じるものがあるが……ここはあえて話に乗っておく。

 俺達がブルファム王国に侵攻するのは確定事項だ。

 敵の情報があるのなら仕入れておきたいし、なにより、ラルラーヴァーと親父が顔見知りだというのなら俺達がした考察の信憑性が増してくる。



「……なんだって?ラルラーヴァーの事を知ってるのか?」



 よし、『ビックリしつつも、興味津々に食い付いた感』はこれで良いだろう。

 リリンといい、ワルトといい、心無き魔人達の統括者は人を騙す演技が超得意。

 それを見てきた俺も、自然に出来るようになっている。



「ラルラーヴァー?あぁ、あの子は違うぞ」

「そうか、そう言うと思って……えっ?」



 って、違うのかよッ!?!?

 じゃあ誰の事を言ってんだよ!?


 親父はラルラーヴァーの本拠地がブルファム王国だと言いたいのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 だとすると、英雄クラスの第三勢力がいるって事か?


 ……それってもしかして、アルカディアさん?

 週8ペースで飯を食いに来てるんだが、敵なのか?



「じゃあ、アルカディアさんの事か?」

「あれは特に違うぞ。会うたびに、謎の進化を遂げてるがな」



 アルカディアさんは特に違うのか。

 じゃあホントに誰だ?


 親父は何かを思い出したらしく、引きつった顔で違うと否定している。

 その顔は、クソタヌキに出会った時の俺と同じ表情。

 一応は英雄である親父にこんな顔をさせるって、アルカディアさん何もんだよ。


 って、問題はそこじゃない。

 会うたびに謎の進化を遂げてるって、弟子じゃないって事だよな?

 へぇー、弟子じゃなかったのか。

 それは良かっ……。いや、全然良くないだろ。


 弟子でもない人に、何で中古パンツを履かせたッッ!?変態親父ィィッッ!!



「おい、アルカディアさんについては聞きたい事が山ほどあるぞ」

「……。今は大事な話をしてるんだ。後回しにしろ」



 俺的には、これに勝る程の大事な話はねぇんだよッ!!

 初恋が茶色い絶望に飲み込まれたんだぞッッ!?!?


 ……と叫びたがったが、冷静に我慢。

 アルカディアさんの事は既に終わった事だし、尻より出でし絶望をワルトより優先させたのがバレたら不味い。

 ここは我慢だ。

 手負いの親父なら、後からでもブチ転がせそうだしな。



「じゃあ誰の事を言ってるんだよ?ぶっちゃけ、ブルファム王国自体はそんなに警戒してないんだが」

「はぁ。そこら辺は経験の浅いガキのままか」


「あ”ん?」

「当たり前すぎて語る必要性を感じていなかった事だが、ブルファム王国はこの大陸にある国で一番でかい。歴史書を紐解けば、何度も大陸統一を成しているしな」


「……マジか」

「意味が分かったようだな。英雄になる為には、そういう国家間の勢力図も多少は勉強しておくべきだぞ」



 くっ!この変態親父、ドヤ顔で語ってやがる!!

 どんだけ頭が良くても、所詮は『ユルユルおパンツおじさま』の癖にッ!!


 そんな汚名を着ている奴に偉そうにされたくない。

 必要な事を聞き終えたら、覚悟しておけよ。


 だが、確かに俺は迂闊だったと言わざるを得ない。

 神殺しを所有し真なる覚醒が出来るようになった俺は、普通の冒険者なんて敵にならないと思っていた。

 流石に、それは甘過ぎる考えだったようだ。



「つまり、ブルファム王国は大陸統一を何度も制している程に歴史が古く、当然、それを成す為の強力な魔法があるってことだな?」

「そうだ。更に言えば、剣も、魔道具も、魔法も、何もかもが超一級品。英雄が生まれたという記録も多く、冒険者の質も高い」



 当たり前の事だが、英雄は英雄として生まれてくる訳ではない。

 そこに至る為の素質の有無は確かにあるんだろうが、剣にも魔導書にも触れなければ、才能が開花する事はないしな。


 だが、ブルファム王国には必要な条件が揃っているらしい。

 一級品の魔導書や武器の数は、英雄の誕生数に比例するのだ。



「なるほどな。で、ブルファム王国が優れているのは分かったが、その英雄見習いはどんな人物なんだ?俺よりも強いのか?」

「知らん」


「はぁん!?」

「知らねぇって言ったんだ。俺は会った事ねぇしな。ただ、コイツには気を付けておけという人物はいる」



 話を引っ張るだけ引っぱっといて知らないだとッ!?

 流石にイラっときたが、何やら訳ありらしく親父は引き締まった顔をしている。

 ほら、聞いてやるから、さっさと話せ。



「ソイツの名前は『オールドディーン』。壮年の男でブルファム王国の大臣をしている」

「……大臣?」



 ……いや、いきなり大臣とか言われても、まったく凄さが分からない。

 あ、でも、レジェンダリアの大臣はゲロ鳥に10億エドロをぽんっと支払ってくれる人だったな。


 なるほど、凄さがちょっとだけ分かったぜ。



「その人が英雄見習いだってのか?」

「おう、それも違うぞ!」


「じゃあ誰なんだよ!?話が混沌とし過ぎだろッ!!」



 いい加減にしろ、ユルユル変態親父!!

 何度も勿体つけやがって、パンツが緩いんだから情報もゆるっと流せッ!!



「まず、オールドディーンについてだが、コイツはブルファム王国の大臣でそれなりに強い」

「大臣って凄い偉い奴だったよな?戦うのか?」


「魔導師なんだよ。まぁ、魔法技術がある奴は出世しやすい、というか、自分の身を守れない奴は出世できん」



 それはそうだよな。

 これだけ魔法が飛び交ってる世界では、最後に頼るのは自分の力だ。

 大臣と言えど必要最低限の防御魔法は覚えてないと、さっさと国を乗っ取られる事になる。悪い大魔王とかに。



「で、大臣が英雄見習いじゃないんなら誰がそうなんだ?お抱えの冒険者でもいるのか?」

「姫だ」


「……は?」

「ブルファム国王の実子達は全員がオールドディーンの弟子であり、全員が英雄見習いを名乗っている」


「なんだそれはッ!?面倒な事この上ねぇぞ!!」



 姫全員が英雄見習いって、どんだけ武闘派集団ッ!?

 姫って言うか、悲鳴が飛び交うだろッ!?

 こっちはこっちで、心無き魔人達の統括者に匹敵してるじゃねぇかッ!!



「英雄見習いがいるとしても、普通は一人か二人だろ。その口ぶりじゃ少数じゃないって事だよな?」

「察しが良いな。確か10人はいたはずだ」


「心無き魔人達の統括者よりも多いだとッ!!」



 なんだその大戦力!?

 レジェンダリアにフルボッコにされてたんじゃないのかよ!?


 うん、いくらなんでも英雄見習いが10人は多すぎる。

 だって、最低限の戦闘力でセフィナ以上って事だろ?

 場合によっては、第二第三のラルラーヴァーが出てくる訳だ。


 ……クソタヌキにロボでも借りてくるか?

 あ、盛大に爆発したんだったな。ちくしょうめ。



「落ち着けユニク。この話にはオチがある」

「オチ?まさか、全員がタヌキだとか言うんじゃねぇだろうな?」


「そんな訳あるか。それはもう人間の国じゃねぇだろ」



 おう、俺もそう思うぜ。

 って、ノリツッコミをしている場合じゃない。

 可能な限り情報を集めて早く行動を起こさないと、ワルトがマジで危険だ。



「単純なこった。名乗るだけなら誰だって出来るつー話だよ」

「……は?」


「ブルファム国王の実子達は、全員が自衛の為に英雄見習いだと名乗っている。『私は英雄見習いである。だから、手を出せば痛い思いをするのは貴方の方だ』っていう、……ブラフだ」

「そんなんありかよ!?!?」



 いくらなんでも、それはダメだろッ!?

 英雄見習いはブランド名じゃねぇんだぞッ!!


 そんなことしたら、逆に本物の英雄見習いから反感を買って処罰されそう。

 ラルラーヴァーとか、結構そういうの気にしそうだし。


 だが、実際に処分されて無い所を見ると、暗黙の了解とかがあるのかもしれない。

 ん?だとすると、ラルラーヴァー公認って事か?



「なるほど、ラルラーヴァーが絡んでるなら筋が通るな」

「まぁ、気をつけるに越した事ねぇな。何人かの姫は、それに準ずる戦闘力だと聞いた事がある。まるっきり嘘だという訳でもないんだとよ」



 そうなのか?

 だとすると、超魔王覚醒前(ご機嫌ナナメ)リリンくらいの戦闘力があると思っておいた方が良いな。

 ……で、戦う事しか頭にないはずの脳筋親父の癖に、随分と戦闘以外の事に詳しいじゃねぇか。


 この親父は、戦闘に関する事と日常会話ができる程度の限定的な記憶のみしか持ってないとギンが言っていた。

 だから、ラルラーヴァーの事やセフィナの事を聞いても答えが返ってこないと思っていたんだが……うん、バッチリ会話が成立してるな?

 どういう事だ?

 ちょっと試しに、引っ掛けてみるか?



「すまんな。かなり重要な情報だったぜ、親父」

「おう、気にすんな。お前の戦闘力と良識が心配でした事だが、それも杞憂だったしな」


「俺の戦闘力と良識が心配だった?戦闘力は分かるが、良識ってなんだ?」

「人間ってのはな、強い力を持っちまうと自制心のタガが外れる事がある。そうなっちまった奴はロクなのがいねぇし、お前がそんなんだったら、ひたすらボコって矯正させただろうな」



 ひたすらボコるって、それはもう実体験済みなんだが?

 訓練と称した暴行に、怒りと殺意が高まるばかりだぞ。



「だが、お前は口こそ悪ぶってるが悪人の剣筋じゃない。安心したぞ。ユニク」

「そんな事を疑ってたのかよ?自分で言うのもアレだが、自制心がある方だと思うぞ」


「はっ!さっき、俺の事をブチ転がすとか息巻いてたじゃねぇか」



 ブチ転がすだけで済むんなら、安いもんだろうがッ!!


 だが、この後の展開次第では、ブチ転がすだけでは済まないかも知れない。

 俺は親父に気づかれないように、慎重に追い込みをかけた。



「まぁな。口に出す事で多少は冷静になるんだよ。リリンやアルカディアさんは本当にブチ転がしに行くけどな」

「だな。アルカディアとか、平然と俺に飯の要求をしてきやがる。かなり図太い性格だぞ」


「飯の要求?親父んとこでも似たような事してんのか。ちなみに何を食わせてるんだ?」

「そうだな……。一か月くらい前(・・・・・・・)にカレーを喰わしてやってからは、ちょくちょく現れてはタッパーに入れて持ち帰るぞ」


「ははは、アルカディアさんらしいな!」



 なぁ、親父。

 そのタッパーって、オレンジの絵が書いてある奴だろ?

 知ってるぜ。それは、アルカディアさんが俺達と一緒に買った物だしな。


 ……で、一か月前ね。

 へぇー、あるんだな?一か月前の記憶が。

 ギンの権能で造られたはずなのに、最近の記憶があるんだな?


 ……。

 …………。

 ……………この親父、本物じゃねぇかッッ!!



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