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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第5話「追突する暗躍」

 

「――と言う訳で、ここはリンサベル家のお墓の下に建造された『ラボラトリー・ムー』よ!」

「人んちの墓を勝手に改造してんじゃないよッッ!メカタヌキィィィッッッ!!」



 カツテナイ・タヌキ基地で慣れ親しんだ友人と邂逅を果たしたワルトナは、七転八倒の末にゆっくりとお茶を楽しんでいる。

 意気揚々と案内を始めたムーの説明を華麗に受け流し、信頼を置いている友人カミナから事情聴取を始めたのだ。


 なお、セフィナとメナファスは素直にタヌキ基地に感動。

 超未来技術とカツテナイ巨大ロボットを見て興奮し、普通に見学を楽しんでいる。



「当時のリンサベル家の許可は取ったらしいわよ。大聖母ノウィン様も良く来るらしいし」

「許可を取ってんのかよ!?……で、カミナはこんなとこで何してるんだい?さっき背筋がぞっとする言葉が聞こえた気がするんだが?」


「えぇ、実はね……」

「……実は?」


「あなた達が必死に戦ったエゼキエルオーヴァー=ソドムは、私とムーで設計しました!!」

「何であんなもん作りやがったッッ!?僕があれを見た瞬間、どんだけ絶望したと思ってんだぁぁぁぁ!!」


「黒い狼と一緒に森をウロウロしてたもんね。早く出てくればいいのにって見ていてやきもきしたわ」

「ちょ、何処で見てたの!?僕の索敵に引っ掛からなかっただろ!?」


「えぇ、ちょっと上からね。カツテナイ戦艦・アークメロンの司令官室と言った方が良いかしら?」

「アレに乗ってたの!?!?」



 柔らかな雰囲気で談笑しているカミナだが、心無き魔人達の統括者にはこのラボラトリー・ムーの存在を伏せておくつもりでいた。

 理由は単純に、今の人類にはオーバーテクノロジー過ぎるからである。


 ここに存在する技術を用いて建造した兵器は、戦争のあり方を根底から覆す程の衝撃を生みだす物となる。

 魔導師や剣士といった歩兵戦力が中心の戦争から、巨大兵器同士の殲滅戦争へ。

 現段階でもメナファスの主武器である重火器などは存在するが、その優位性は魔法を凌駕するものではなく、まだまだ世界は魔導師の時代なのだ。


 だが、魔法と兵器を高水準で掛け合わせた帝王機シリーズは、それらの物を一瞬で過去にする。

 もし、ソドム程の熟練操縦者が大国へ矛を向けたのなら、十数時間で『国』は『廃墟』と化すだろう。


 その危険性が分からないカミナではなく、帝王機に関する情報の取り扱いには細心の注意を払っていた。

 だが、そんな優しさは潰えた。

 カミナの友人の中でも特に悪辣だと自他ともに認めるワルトナに見つかってしまっては、この技術をタヌキの中で留めておくのは不可能。

 後は、どうやってセーブするのかが課題となるのだ。


 だが、カミナ的にはどうでも良くなってきたので、尊重すべき良心をブン投げた。



「で、何でワルトナはここに来たの?むしろ来れた事が驚きなんだけど」

「話すと長くなるんだけどねぇ。まぁ、一言で済ますなら……タヌキに化かされたって奴だよッ!」


「ふふ、私達って何かとタヌキに縁があるわね」

「取り憑かれてるの間違いだと思うねぇ」



 その後、ワルトナは指導聖母の中にタヌキが紛れ込んでいた事を暴露した。

 ついでに、自分が指導聖母を卒業する羽目になった理由や、指導聖母同士の権力争い、ブルファム王国の動き、メナファスの近況なども全て隠さず暴露し必要な情報交換を終える。



「へぇー、あなたも苦労してるのねぇ」

「ホントにね。うん、改めて思い出すとマジで酷いな……。なんだあの絶望、僕が何したって言うんだい?」


「現在進行形でリリンの事を騙してるわよね」

「あちゃーそうだった!僕はなんて罪な女なんだ」


「そうね、余罪も追求すると懲役100年の実刑判決ってとこじゃないかしら?」



 ワルトナとメナファスが独特の雰囲気で会話をするように、ワルトナとカミナも妙な雰囲気で会話することが多い。


 この二人の会話には、相手に物事を理解させる為の言葉の装飾が一切含まれない。

 お互いに卓越した拝聴スキルを所持しており、自分が意図した内容が100%相手に伝わるという状況は、無意味な説明に嫌気が差すことが多い二人にとってはストレスフリーな談笑なのだ。

 当然、そこには高度な嫌みや皮肉が飛び交うが、それも含めて二人は会話を楽しんでいる。



「で、那由他様にお願いしたら許可されて、のこのこ見に来たってことね?」

「そゆこと。まさかD・S・Dに食べ物としての価値を見い出す日が来るとはビックリだよ。知ってるかい、カミナ。サボテンにD・S・Dをかけると枯れるんだぜ」


「納得の結果ね。むしろ、そこに至った過程の方が気になるわ」

「ちょっとサボテンを人質に取る必要があってねぇ」



 事もなさげに言った『サボテンを人質に取る』というパワーワードにも、カミナはツッコミを入れたりしない。

 そもそもサボテンは植物であり()質にはならないなどという平凡なツッコミも、当然、入れたりしない。


 カミナは発せられなかった言葉の裏を脳内で補完し、『支配下に置きたい人物を精神的に縛る為に、大切にしているサボテンを人質の代わりにした』と納得。

 内心で「権力争いって大変ねぇ」と呟いた。



「それで、どんな目的があって来たの?何かあるんでしょ?」

「あるとも。カミナは天使シリーズという武器があるのは知っているかい?」


「旧タイプエゼキエル拡張武装の天使シリーズの事よね?魔王シリーズは様々な局面で攻勢を優位に進める為の武装であるのに対し、天使シリーズは守勢に重点を置いた武装。その性能は防衛戦で真価を発揮するものだけど、決して攻撃性能が乏しい訳じゃない。むしろ、集まってきた敵勢力を一気に殲滅する為の高出力兵器があり、危険性は魔王シリーズに劣るものじゃないわね」

「……えぇー、めっちゃ詳しそうなんだけど」


「そりゃ、設計図を丸暗記してるもの」

「……。うん、本当にキミが敵じゃなくてホッとしてるよ」



 エゼキエルオーヴァー=ソドムが大破した後、カミナはムーと基礎設計から練り直しを始めた。

 リリンサ達との戦闘データを調査した結果、全てのエネルギー回路のチューンアップが必要だと判明したからだ。


 その際にムーが目を付けたのが、旧型エゼキエルの天使シリーズに備わっている出力回路。

 そこからヒントを得るために、倉庫に眠っていた図面と模造品を引っ張り出してきて研究したのだ。



「ってことは、天使シリーズは量産されてるって事?ブルファム王国にもあるって話だけど」

「ブルファム王国にあるのがオリジナルね。ちなみに、旧型エゼキエル用にカスタマイズされたものが一式揃っているってだけで量産はされて無いわ」


「参考までに聞くけど、他のロボは魔王シリーズとか使わないのかい?」

「正確には『使えない』が正しいわね。他の帝王機はソドムのエゼキエルとは根本的な基礎設計が違うのよ」


「タヌキロボって種類があるのかよ!?」



 突然のカミングアウトに困惑しているワルトナだが、確かに言われてみれば、目の前にある帝王機は人間に近いフォルムをしている。

 どっしりとしているエゼキエルとは明らかに違うシルエットであり、「こっちの方が素早そうだねぇ」と感想を漏らした。



「ぶっちゃけて言うけどさ、天使シリーズを僕用に作って欲しいんだけど」

「それは――」

「それは無理だね!」



 唐突に話に入ってきたのは、満足顔のタヌキ帝王・ムー。

 たっぷりとセフィナとメナファスに自慢をしてきた後であり、ワルトナに上機嫌な笑顔を向けている。



「無理な理由を聞いてもいいかい?」

「材料が無い!以上!!」


「うわぁ、すごく理由がシンプル」

「魔王・天使シリーズには『神製金属』という特殊合金が使用されているんだけど、エゼキエルオーヴァーを作る時に使い切っちゃんたんだよね」


「うん、それはしょうがない。あんなの量産されたら絶望するよ、人類が」

「で、大破させやがったと。ほんっと馬鹿なんだからソドムっちは!」


「そういえば、最近くそた……ソドムを見かけないけど?」

「いくら僕が天才でも材料が無けりゃどうにもならない。作り直して欲しけりゃ鉱石を掘って来い!って言ったら全力で走ってったよ。犬かっての」


「……ちなみに、僕もその鉱石を掘ってきたらカミナに作って貰えるのかな?」

「答えはYES。カミナっちはもうその技術レベルを理解してるからね」


「よっし!持つべきものは『カミさま』ってね!」

「ただ、キミが鉱石を取りに行くのは不可能だね」


「えっ?そうなの?」



 上げてから落す。それは、指導聖母が好んで良く使う手法だ。

 それをタヌキに仕掛けられた事にも思う事があるワルトナだが、その事を後回しにせざるを得ない程に、この情報は大事なものだった。


 天使シリーズを作れないという状況は、これから起こるブルファム王国との戦争において重要な意味を持つ。

 ワルトナ側、つまりレジェンダリア側の武装が充実しないのは手痛い事だが、それよりも、リリンサの魔王シリーズに対抗できる武器を大量に持ち込まれる方が困るのだ。


 聞き及んだ情報から、ブルファム王国には天使シリーズが7つ存在しているのが確定している。

 一方、レジェンダリア国が所有している魔王シリーズは、リリンサが4つとレジェリクエが1つの合計5つしかない。

 唯でさえ数で負けているというのに、これ以上の差が付くのは有利な戦局を覆しかねないのだ。



「神製金属を精製する為の鉱石は、地質的な理由でこの大陸からは取れないんだよね。で、それがあるのは別の大陸になる訳だけど、簡単に取れる所は掘りつくしちゃってるわけ」

「なるほどね、危険生物がウロウロしている場所しか残って無いわけだ。だけど僕はシェキナの所有者、多少の危険くらいならどうとでも出来るよ」


「すっごい自身だね。でも、無理だと断言するよ」

「……理由を聞いても?」


「こっちの大陸では人間の貴族が地域を支配しているように、あっちの大陸では『皇種』が地域を支配している。そんな所を横断しながら無断での発掘活動。それがキミに出来るのかな?」

「ちょっと厳しいかな……」


「ちなみに皇種はまだいい方だよ。王蟲兵が支配してる地域に手を出しちゃったら大変だからね」



『王蟲兵』、その言葉にワルトナは反応した。


 ……王蟲兵だって?それって、ユルドおじさんが絶対に手を出すなって言ってたやつじゃないか。

 だが、その詳細は教えてくれなかった。

 中途半端に知って興味を持つと不味い事になるとか言ってさ。

 僕だって、もう子供じゃないんだけどね。


 ともかく、メカタヌキが何か知ってるならリサーチしておくべきだ。

 ホントに、棚からボテたぬき様様って感じだねぇ。



「王蟲兵ってのは、確か蟲量大数の眷皇種だったよね?キミらよりも強いのかい?」

「本気で戦えば勝てない事もない……って感じだけど、『鎧王蟲・ダンヴィンゲン』とか無理だね」


「ソドムでも?」

「ソドムっちでも無理だと思うよ。しぶとさに定評のある『希望を頂く天王竜』ですら何度も殺されかけてるってのに、命が一個しかない僕らじゃ分が悪すぎでしょ」


「……そこんとこ詳しく聞きたいんだけど。あとで超高級メロンを持ってくるからさ」

「マジで?良いよ話してあげる!」



 流石はタヌキ。食い意地張ってんな!

 そんな慣れてしまったツッコミも、今は発せられる事はない。


 ワルトナの調査対象である希望を頂く天王竜(ホロビノ)と王蟲兵。

 その両者の間に確執があると知り、ツッコミどころでは無くなっているのだ。



「ちょっと待ってくれないかしら?王蟲兵ってのは、前にワルトナが見せてくれた蟲量大数の配下って事で良いのよね?」

「そうだよ」


「じゃあ、対立しているっていう希望を頂く天王竜っていうのは?話の流れから、かなりの高位竜で眷皇種ってのは分かったんだけど」

「……。うん、なんていうかな……。そうだねぇ、簡単に言うと……」


「随分と勿体ぶるわね?話して欲しいわ」

「じゃ、遠慮なく。……ホロビノだよ!!」


「……。は?」

「だ、か、ら、僕らの可愛いホロビノの正体はドラゴンの眷皇種たる『惑星竜』で、その最上位の『希望を頂く天王竜(ウィルホープウラヌス)』だ。しかも不可思議竜の実子であり事実上の世界で2番目に格が高いドラゴン……なんだってさ」


「……あのポンコツドラゴンが?嘘でしょ?」

「嘘じゃないよ!英雄ユルドルードに聞いた実話だし、なんならノウィン様も知ってたよ!!」


「……。私、ホロビノをスポイトでばきゅーんしちゃったんだけど?」

「うん、希望を頂く天王竜の尊厳をへし折ったとか、キミの名前は歴史書に刻んでいいレベルだよね。語り継いであげようか?」


「無頓着な私でも、流石に困るからやめなさい」



 その後、ワルトナは知る限りのホロビノに関する情報をカミナと共有した。

 そして、タヌキの餌食にされた可哀そうな惑星竜達が病院に住み付いた事も暴露。


 ありえない程の超展開を知り、医師として過酷な現場に立ち会う事が多いカミナですらも絶句。

 親しい同僚の身を案じた。



「ミナチー、大丈夫かしら?それにしても……ホロビノ、いい度胸してるわね」

「ウワゴート達を回収しに行った時にミニドラを見せて貰ったけど、ロールケーキを崇拝してたから大丈夫じゃない?」


「あーぁ、久しぶりの大失態だわ。面白そうな研究が出来そうなのにスケジュールが合わないなんて」

「眷皇種を4匹も捕獲しといて言う事がそれ!?」



 **********



「マジかよ……どんだけヤベーんだよ。王蟲兵」

「ホロビノの戦闘力、舐めてたわ」

「でしょ?何の知識も無しに、こんなのが闊歩している大陸に渡るとか命知らずも大概だよ」



 ムーが語って聞かせた話は、壮大なファンタジーだと思わざるを得ない程に人智を超えていた。


 ワルトナやカミナは信じられないと何度も言いながらも、語られた話の全てに整合性が取れている実話だと理解。

 今度ホロビノに会った時に美味しいお肉でバーベキューでも食わせてやろうと誓った。



「とりあえず、天使シリーズの製造が難しそうで安心したよ。で、そんな危険な場所にソドムは行ったのかい?」

「行ったよー。旧型のエゼキエル汎用機に拡張兵装特盛りしてるから大丈夫っしょ!」


「……拡張兵装?」

「エステルとサムエルを元にして作られた武装だよ。オリジナルは手元に無いけど、チューンアップした複製品は有るからね!」


「魔王様が複製されてるだと……」

「あ、そうだ。ソドムっちが送ってきた映像があるけど見る?」


「そんなのがあるのかい?へぇ、是非とも見たいねぇ」

「うんじゃ、出て来い《悪喰=イーター》」


「……。」

「そこの壁に映像を映して!」


「……射影機かな?悪喰=イーターって、何でもありだねぇ」



 ムーが呼び出した小型の悪喰イーターがグパリと中央から割れ、核から光が発せられた。

 その光が向かう先は、汚れ一つないホワイトボードだ。


 そこに投射された映像は、カツテナイ・タヌキ物語。

 タヌキ帝王ソドムの知られざる日常が、今、解き明かされる!!


こんばんわ、青色の鮫です!!


つい先日、再びレビューを頂きました。ありがとうございます!!

何回貰ってもテンションアップです!!


そんな訳で、ノリノリで書いていたら筆に勢いが付いたので、明日も投稿したいと思います!

まったく本編に関係ないソドムの日常をお楽しみください!

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