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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第9章「想望の運命掌握」

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第2話「動き出す大魔王」

「前々から許す気は無かった。無かったけど……もう、ほんのちょっとも許さない。完膚なきまでに叩き潰してから、心無き魔人達の統括者みんなでブチ転がす。白い敵の人生を!」



 人生をブチ転がすだとッ!?!?

 それ、普通に暴行されるよりもダメなやつだろ!!


 親友なワルトを捕らえられたと知り、超魔王ヤンデリリン様が怒り狂っている。

 その怒り様は凄まじく、クソタヌキすら射殺しそうな目つきで持っているデリバリーメニューを睨みつけている程だ。


 このままでは色々とまずい。

 敵の狙いはリリンを挑発して罠に嵌める事だろうし、そもそも、この状態のリリンを放っておくと俺が齧られる。

 ……朝飯を食ったばかりだが、理性を取り戻させる為にはこれしかねぇな。



「とりあえず甘い物でも食って落ち着けリリン。好きなの頼んでいいから」

「……どのくらい頼んでいいの?」


「……右手と左手で持てるくらいだな」

「むぅ。10個くらいだね」



 リリンは俺の制限を聞いて、更に眉間に皺が寄った。

 個数制限を言われたのが気にいらなかったんだろう。


 だがな、俺は右手と左手で1個ずつ、つまり2個って意味で行ったんだぜ。

 決して、指の数の事を言った訳じゃないんだ、リリン。

 マジでいい加減にしないと、アホタヌキより太るぞ。


 リリンがご機嫌修復中な隙を見計らい、俺は一人で考察を始めた。

 参謀のワルトが捕まってしまった以上、これからは俺達が考えて行動しなければならないからだ。


 白い敵ラルラーヴァーは『ユニクルフィン』を、セフィナは『リリンサ』を欲していた。

 それを成す為に、あの手この手で俺達を手に入れようと計画していたんだろうが……。

 手紙に書いてあるとおりなら、ここに来て、俺達よりも『心無き魔人達の統括者を倒す事』を最優先に切り替えたらしい。


 で、急に目的を変えた理由ってなんだ?

 メナファスに続きワルトまでもが接触して来て、うざったくなったとか?

 いや、白い敵が昇格した事により指導聖母達の実権も掌握。その際にワルトの正体がバレた……のか?

 どっちにしろワルトが捕まってしまった以上、次に狙われるのはレジェリクエ女王か、カミナさ……って、ヤバい!!カミナさんが危険だ!!



「リリン!直ぐにカミナさんに連絡を取るぞッ!!」

「もふふぁふ!!」



 ラルラーヴァーはワルトの正体が心無き魔人達の統括者だったと理解し、リリンもその仲間だと把握されている。

 更に、メナファスも心無き魔人達の統括者であるとバレているだろう。

 二人の正体がバレたからこそ、手紙にこの名前を載せてリリンを脅して来たんだろうしな。


 そして、次に狙われるのは、恐らく……カミナさんだ。

 聖・オファニム大医院に居るのが把握されている上に、対抗できる戦力を持っていない。

 ラルラーヴァーがワルトを捕まえる事に成功し腹をくくったのなら、兵士で身を固めているレジェリクエ女王よりも、取り易いカミナさんを狙うはずだ。



「頼む!電話に出てくれ!!」

「もふふ!」



 早速リリンは携帯電魔を取り出しアップルパイを齧りながら、カミナさんに電話した。

 プルルルルルという規則的な機械音が鳴り響くも、なかなか誰も出てくれない。

 忙しいカミナさんの事だから部屋に居ないんだと思うが……電話番くらいは置いてても良い気がする。


 これは、もう既にカミナさんまで……?



「誰も出ないのか?まさかもう……」

「そんな……」



 そんな風に俺達が諦めようとした、その時。

 続いていたコール音がガチャリと途切れて通話状態となり、尽かさずリリンが電話機に向かって声をかけた。



「……!!カミナ!?」

「くるれれれ~!」



 ……誰だお前ッ!?!?



「そ、その声は、ディザス…、ウィリス!」

「くるる~~!」



 ウィリス?

 あぁ、生け贄にされたミニドラの青いやつだな?

 声を聞く限り元気そうだ。

 よしよし、生存確認っと。


 ……って、何でお前が電話に出てくるんだよ!?

 ドラゴンの生存確認とかどうでも良いし!!

 カミナさんはどうした!?



「ウィリス、カミナは?ミナチルでもいい。変わって」

「くるけ!」



 俺と違って、ドラゴンが電話番をしているという事にまったく動じていないリリンは、平均的な不機嫌声で電話を変わる様に指示を出した。


 受話器から漏れてくるガッサガッサという音を聞く限りウィリスはしっかり電話番が出来るらしく、受話器を咥えて移動しているっぽい。

 流石はドラゴン。無駄に器用な上に察しも良い。

 これなら優秀な忠犬になれるだろう。



「くるけ~~!くるけ~~!」

「あらー。お電話来ちゃったんですねー。せっかくシャワー浴びてるのにお仕事ですかー」



 そして、電話口から聞こえてきたのはミナチルさんの声だった。

 前回同様、カミナさんはここにはいないらしく、ウィリスはミナチルさんに電話機を渡しに行ったようだ。

 ガララというガラス扉が開く音と僅かな水音。それと一緒に快活な声が聞こえてきた。



「はい、こちらカミナ研究室、シャワールーム中のミナチルです」

「ミナチル、久しぶり」


「り、リリンさん!?」

「ん、そう。私はリリンサ」


「え、じゃ、近くに、ゆにふぃーも?」

「すぐ後ろで聞いてる」


「きゃあああ!!変態!何であなたはいつもいつも、こうタイミングが悪いんですか!!」



 しいて言うなら、大魔王に取り憑かれてるから、かな。


 別に見えるもんでもないし、そんなに慌てなくてもいと思うんだが乙女心という物は複雑らしく、掛け直しますから一旦切りますね!!と言って電話を切られてしまった。

 うん、俺は悪くないと思う……が、後でしっかりと謝っとこう。

 今度遊びにでも行った時に、ミニドラの群れに襲われたらたまったもんじゃない。



「……で、急に電話をかけちゃってすまんな、ミナチルさん」

「本当ですよ。シャワー中に電話をかけるなんて非常識なんですからね!」



 数分後に電話が鳴り、カボチャプリンで口が塞がっていたリリンの代わりに俺が出た。

 文句を言われるのは明らかだし、先手を打って謝罪しにいく。



「文句を言いたい気持ちは分かるが、俺はまだ見習い心無き魔人達の統括者だから未来予知はできないんだ。すまん」

「もう、これだから変態さんは。次会った時にお土産を持って来てくれたら許してあげます!」



 ……とりあえず、売店コーナーで売ってたアヴァロン饅頭でも買って送っておこう。

 この間発売したばかりの新商品な上に、スイカ味の饅頭とか珍しいし。あまり美味くないけど。



「で、何の用ですか?まさか、また重症患者さんを搬送したいとかじゃありませんよね?」

「いや、違うぞ。……そういえば、あの二人はどうなった?ドラゴンと合体したか?」


「何でそうなったと思ったんですか?ちゃんと生還なされましたよ。ほぼ、後遺症もなかったです」

「……ほぼ?」


「お二人とも、心的外傷後ストレス障害を発症し、15歳以下の幼女に怯えるようになっています。……本当に、何をしたんですか?」



 ……恐怖症候群リリンシンドロームぅぅぅ。

 まぁ、そのあれだ、ナニをアレした感じかな。はは。

 そんな事は当然言えないので適当に濁しつつ、俺は話を主題へ戻した。



「で、カミナさんは居ないのか?ちょっと直接話したい事があってさ」



 何も知らないミナチルさんには、俺達の深い事情を話したりはしない。

 余計な事を言って、ラルラーヴァーに狙われる様な事になったら申し訳ないしな。



「あー。カミナ先生は長期休暇に入られてしまってますねー」

「「長期休暇!?」」

 


 俺の声に、大人しくデザートフルコースを喰ってた……もとい、大人しく話を聞いていたリリンの声が重なった。

 長期休暇って、アポイトメントが2年待ちだったんだぞ?何処にそんな時間があるんだ?

 何かがおかしい……。



「カミナ先生は、なんかもうすっごいプロジェクトに参加しているらしく、あまり病院には帰ってきてません。受け持っていた患者様も他の医師に振り分けてしまいましたし」

「信じられない。カミナが患者をほったらかしにするなんて」


「あぁ、一応誤解なきように言っておきますが、全ての患者様の根的治療は終えていますし、不測の事態が起こっても、カミナ先生の聖薬書バイブルがあるんで大丈夫なんです」

「なにそれ?」


「ありとあらゆる病気と病状、その原因と治療方法が、『旧薬生書』『新薬生書』という二系統に分けられて解説されている書物群ですよ」

「なんか凄そうなのが出てきた」


「旧薬生書には、現代でも既知とされている医療知識の集大成が記されています。ただ、答えは一緒でもそこに至るまでのアプローチが違いすぎて、新しい技術と知識の宝庫です。一部の狂信的医師からは、『カミさまが地上に贈りたもうた聖書』とまで言われています」

「新の方は?」


「今まで不可能とされてきた医学理論が書いてありました。必死こいて研究している学者さんが立証しようとしている理論への完璧な回答が完全網羅。それを見てしまった高名な学者先生が「ワシの30年は無意味だった」と言って引退を決意したという、悪魔の書物です」



 ……ホント、心無き魔人達の統括者は加減という物を知らないらしい。

 どいつもこいつも、嬉々として人生をブチ転がそうとしてくるぜ!



「で、カミナは結局、どこで何をしてるの?」

「いえ、それが教えてくれないんですよね……。時々帰って来てるので、心配は要らないと思いますが……」



 それから続いた話では、どうやらカミナさんは自分の患者さんを治療し終え、他の医師の助けになる書物を残してから行方が分から無くなっているらしい。

 書置きが置いてあったり、工作道具が無くなっていたり、ミニドラが怯えていたりするので研究室には頻繁に戻って来ているようだが、ミナチルさんとも会わない事が多いようだ。



「ん、ミナチル。カミナにどうにか連絡を取って、私の携帯電魔に電話をかけて欲しいと伝えて」

「分かりました。必ず伝えておきますね」


「それと、ミナチル自身も身の回りには気を付けて欲しい。絶対に一人にならないで」

「……?まぁ、最近は一人でいる事はないですね。勤務中はスタッフが大勢いますし、この研究室の中ではミニドラちゃんが私を護衛してますので」


「ミナチルを護衛?なにかあったの?」

「いえ、特に何もありませんよ。たぶん、飼い犬が飼い主に良い所を見せようと張りきってるみたいなやつです。この子たちは私が買ってくるロールケーキが大好きですので」



 ……完全に忠犬と化してるじゃねぇか。

 俺的にはそれでいいんだが、ドラゴンの王たる惑星竜が揃いも揃ってそれでいいのかとツッコミも入れたくなる。


 そして俺達はミナチルさんに十分注意を促した後で電話を切り、お茶を飲みつつ一息ついた。

 それぞれじっくりと考えを整理し、お互いの意見を交換してゆく。



「カミナさんが病院を離れた真の理由って何だと思う?リリン」

「たぶん、ワルトナかレジェに病院を離れるように勧められたんだと思う」


「俺もそうだと思うぜ。だとすると、ブルファム王国に指導聖母が肩入れしてるって知って、病院に危害が及ばない様に行方を眩ませたって所か?」

「その線が濃厚。なら私達が次にやるべき事は……」


「あぁ、レジェリクエ女王と話をすべきだな」


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