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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第81話「タヌキ捜索2日目・続」

「ゆになんちゃらーー!!」

「ぐるぅ……」


「ゆになんちゃら?ゆになんちゃら?ゆになんちゃらーー!!」

「ぐぅる……ぐるげぇ……」



 大魔王リリンの理不尽な雷を受けた俺は天高く……いや、天井すれすれまで吹き飛ばされた。

 かの雷の威力は凄まじく、俺は骨の髄まで……あれ、痛くねぇ?


 んん?さっきのは雷人王の掌だった。

 ということは当然ランク9の魔法であり、まともに食らったら確実に重症になる感じの奴だが……。

 さっきリリンが使った、原初守護聖界?って奴のおかげか?


 って、雷人王の掌を躊躇なくぶちかましてくるとか、いよいよ大魔王になりつつあるよな!?

 というかここは室内だぞ!ランク9の魔法なんか使ってんじゃねえよ!!



「おいリリン!流石に雷人王はやり過ぎだ!怪我したらどうするんだよ!?」

「大丈夫。私は雷人王の正しい使い方をパパに教えて貰った」


「……正しい使い方だって?」

「そう!雷人王の掌をユニクに撃ち込んで、超絶パワーアップさせる!」


「とんでもない事を吹き込まれてるんだけど!?」



 いやいやいや、いくらリリンを俺に取られたくないからって、流石にそれはマズイだろ!?

 雷人王の超絶パワーで地獄に直行するぞ!?


 どうやら、俺はアプリコットさんに嫌われているらしい。

 まぁ、昔の俺は「娘さんを二股に掛けますね」とお許しを貰いに行ったらしいし、嫌われてても不思議じゃない……が、こんなに直接的に命を狙って来るとは思わなかったぜ。



「いや、雷人王でパワーアップはしねぇだろ」

「ふふ、それは違う!」


「あ。笑ってやがる。もうだめだ」

「雷人王の掌は英雄ホーライが愛用するバッファ魔法!!そして最も偉大なる原初の魔法、魔法十典範オムニバスの一つでもある!!」


「う”ぎるあ?オムライス?」

「オムライスではない。オムニバス!」



 この状況から食べ物を持ち出すとは……。

 食い意地張ってんな、アルカディアさん。


 だが、オムニバスとやらは俺にも馴染みが無い。

 流石にオムライスと聞き間違える事は無いが、その正体は不明だ。



「オムニバス?それに、雷人王の掌がバッファだと?」

「そう!パパが言うには、英雄ホーライは雷人王を体に纏いながら戦うらしい。凄くカッコイイのでユニクにもして貰いたいと思う!」


「うん。それを俺に説明しないでやろうとすると、普通に事故死するからな?カッコイイどころか、無残な変死体が出来あがるからな?」



 それからしっかりと危険性をリリンに言い聞かせつつ、雷人王の掌について説明して貰った。

 リリンはアプリコットさんから最上級の魔法を三つ教えてもらう予定で、その内の二つが、雷人王と原初守護聖界。

 で、俺が寝ている間に練習をしつつ、実験台にする隙を見計らっていたらしい。


 ……マジでナイスタイミングで起きたようだな、俺。

 あのまま寝ていたら、脳内アホタヌキと一緒に永眠する所だったぜ。



「今度から、そういう危険な実験は俺に許可を取ってからにしような?リリン」

「むぅ。ユニクがアルカディアのお尻を狙ってたから、止める為についやってしまった」



 まぁ、今回のは俺も悪い。

 というか、年頃の女の子に尻を見せろって脅すとか、極悪だな俺。


 ……アルカディアさんがタヌキじゃないのなら。


 うん、寝起きでボケてた頭も雷撃でバッチリ目が覚めたし、いまなら冷静かつ信憑性の高い判断を下せるような気がする。

 そして……じっくり考えた俺の答えは……。



「変な事を言ってるのは分かってるが、落ち着いて聞いてくれ。リリン」

「ん?なに?」


「実はアルカディアさんは……」

「あらら?アルカディアさんの正体に気が付いているんですのね?」


「って、あれ?なんでエーディーンさんがリリンと一緒に居るんだ?」

「うふふ、ちょっとそこで会ったんですよ」



 俺の精神連続殺人事件の犯人たる、タヌキ将軍・アホタヌキ。

 その正体は……お前だッ!!アルカディアさん!!


 って、カッコ良く宣言しようとした瞬間、俺の声はエーディーンさんに遮られた。

 リリンが俺の背後に立った時には既にいたらしく、うっきうきで俺達の漫才を眺めていたようだ。


 うん、こんな痴態を見られるとか、マジで恥ずかしいんだけど。

 そして、今見た光景は是非、胸にしまっておいて欲しい。

 具体的に言うと、ワルトに報告しないで欲しい。



「ちょっとそこで……?」

「売店の前で待ち構えていたら、早速来ていただけまして。その後、お茶のお誘いを貰ったので来たんですよ」



 おい、売店の前で待ち構えていた(・・・・・・・)ってなんだよ!?

 そこは「偶然出会って」という場面じゃないのか?


 リリンの後ろに居たエーディーンさんはいつの間にかアルカディアさんの横に座り、机の上にあったお茶菓子に手を伸ばしている。

 その華麗な動きに驚愕するが、顔には出さない。

 なぜなら……。


 アルカディアさんはエーディーンさんを見て速攻でひれ伏し、横に寄って座席を勧めた。

 その敬いっぷりは、昨日会って意気投合したって感じじゃない。

 そこには明確な上下関係。

 抗えぬ格の違いがあるように見えた。



「へぇー。お茶の誘いか。ちなみに、ワルトの傍に居なくていいのか?部下なんだろ?」

「私の主が形式上でワルトナさんの配下となっているだけですから、直接的な命令権は無いのですよ」


「そうなのか?複雑なんだな?」



 なるほど……。ワルトとそこまで密接に関わってる訳じゃないのか。

 だが、聞き捨てならない事を言ったな。


『私の主が』


 アホタヌキ疑惑のあるアルカディアさんが敬うエーディーンの『主』。

 もし、俺の疑惑がすべて正しいのだとしたら……。


 タヌキ将軍・アルカディアが敬う、タヌキ帝王・エーディーンが敬う存在とは……『タヌキの皇種・那由他』。

 世界で最も危険な存在が、ワルトの配下の中に潜伏している?



「やはり、私とアルカディアさんの正体を疑っているのですね?」

「う”ぃ!?まじ?」

「……あぁ、そうだ。タヌキじゃないかって疑ってるぞ」


「ふふ、これは絶体絶命って奴でしょうか?」

「う”ぎるあ!?バレるとソドム様にめっちゃ怒られるし!」



 おい、アホタヌキ。ソドム様って言ってんじゃねぇよ。

 それはもう自白だぞ。


 こうして、俺の初恋の相手がタヌキだった事が確定した。

 ……もう一度言おう。

 俺の初恋の相手が、アホタヌキだった事が確定した。


 ぐぁあああああああああああああああああああッッ!!



「ぐぅ!ぐぅぅぅぅぅ!!ぐあぁああああああああああああああッッッ!!!」

「ユニク?」

「ゆになんちゃら、壊れたっぽい?さっき頭を打った?」



 このちくしょう(畜生)めぇええええええ!!

 俺の初恋を返せよォォォォォッッ!!


 俺の中で激情が沸き立ち、グラムがタヌキの血を欲っしている。

 だが、現在は飛びきりに危険な状況であり、アホタヌキをしばき倒している場合じゃない。

 新たなタヌキ帝王が降臨し、呑気にお茶菓子を喰ってやがるからだ。


 これは非常に危険だ。だが、チャンスでもある。

 なにせ、隣の部屋ではギンが寝ているのだ。

 なんとかしてタヌキ帝王がここに居ると知らせれば、状況を打破できる可能性は高い。


 ……というかさ、ギンの隣の部屋まで堂々とやってくるなよ、タヌキ帝王。

 どんだけギンの事を舐めてんだよ。

 ん?だとすると、コイツが『エデン』とかいうタヌキ帝王なのか……?って、名前そのまんまじゃねぇかッッ!!



「おい、リリン。ヤバい……こいつ、タヌキ真帝王エデンだ」

「そうなの?とりあえず、お茶を出す」


「お茶の前に武器を出そうな!?」

「お茶菓子も追加で出す!」



 待て待て待て!?何かがおかしい!?

 いくらリリンがタヌキ推進派だとしても、サチナを狙うタヌキにお茶を出すのはおかしいだろ!?



「リリン……?」

「どうしたの?ユニク。あはは」



 あっ!!これヤバい奴……。


 焦って声を荒げた俺を見て、リリンは声に出して笑った。

 という事は、うん、なんからの精神攻撃を既に喰らってるっぽい……。


 ちぃ!!状況は最悪なんてもんじゃねぇ!!

 これじゃ、リリンを人質に取られているようなもんじゃねぇかッ!!



「あれ?私がタヌキ真帝王だと知っても戦意喪失しないんですね?」

「まぁな。内心ではビビりまくってるが、顔には出さねぇよ」


「……良いですね。その自信、すごく良いですね」



 何がおかしかったのか、タヌキ真帝王エデンはくすくすと声に出して笑っている。

 その笑顔の中に考えられない程の異質を感じ取り、俺の背筋は凍りついた。

 なにせ……感じている危機感が、既にギンと同レベルだ。



「で、リリンに何をしやがった?」

「認識錯誤を少々。今の彼女は、私をおもてなしするべきゲストだと思っています」


「一流の魔法知識があるリリンですら無抵抗で術に嵌ってるのか。ギンの言うとおり、ホントに害獣だな」

「知識の権能を持つ那由他様の眷族である私に、知識で勝負をすると?片腹痛いですよ」


「だとすると、ワルトも騙してやがるな?ちっ、目的はなんだ?」



 優雅にお茶を飲むエデンの風格から察するに、今の俺では手も足も出ないだろう。

 だが、エデンには戦闘以外の目的があるはずだ。

 単純に、俺やリリンを殺したいというのであれば、もう、いつでも殺せる状況だしな。


 だからこそ、そこに勝機がある。



「目的があるんだろ?教えてくれよ?」

「ありますよ」



 ギンから貰った札はリリンが管理しているから使えない。

 なら、隙を見計らって壁をぶち抜き、ギンに助けを求めるだけだ。


 どんな防御障壁を張ろうとも、絶対破壊のグラムなら突破できる。

 俺は密かにグラムを持つ手に力を込め……コーヒーカップの取っ手をへし折った。



「なにっ!?」

「良いですよね。神壊戦刃・グラム。未覚醒状態の粗暴な感じも好きですが、私的にはこちらの方が好みです。覚醒しなさい《神壊戦刃グラム=神意を見縊る者ディヴァリューエイト・ゴッデス



 そこには、悠然と座りながら、白亜のグラムを撫でているエデンの姿があった。

 そのグラムの姿は細く長く、大剣というよりも刺突剣に近い。


 だが、湧き出ている力の波動は、俺が知るどのグラムよりも強大で――。



「か、勝てない……。これはもう、勝負にすらならない……」

「これでも真帝王を名乗らされてますからね。それに見合った力くらいはあるのです」


「……一か八か、壁に体当たりでもしてみるか?」

「……一か八か、壁に体当たりでもしてみるか?」


「一字一句同じ、だと……」

「対面している者の心を読むなど容易い事。その程度できなければ、階級持ちの蟲とは遊べません」



 リリンを人質に取られ、グラムを奪われ、心を読まれているだと……。


 これが、世界最強のタヌキに次ぐ実力を持つタヌキ。

 なんかもう、ちょっとまじで……タヌキ。

 つーか、隣に座ってるアルカディアさん(アホタヌキ)もビビりまくってるじゃねえか。



「なぁ……こんな力を持った奴が俺達に何の用があるんだ?勿体ぶってないで教えてくれよ」

「いいですよ。教えてあげます……と言いたいところですが、これは迂闊に手が出せないですね」


「なに?」

「私は確認に来たのです。貴方とユルドルード、神に祝福されし新たな種がどういうものであるのか。これについては既に終えています」


「俺と親父が、神から祝福されている?」

「問題はこの子、リリンサ・リンサベルにあります。歪な形で酷く不安定で、だからこそ尊く滑稽。芸術を嗜む趣味はありませんが、この出来栄えには感嘆を覚えます。あぁ、触れてしまえば崩れてしまうのが大変に惜しい」



 それは……俺やリリンがあの子の存在を忘れている事と関係あるのか?

 だが、エデンの口ぶりでは、リリンだけが特別な状況にある様な言い方だ。


 そこには、俺が知ってはならない何かがある……気がする。



「この温泉には強者がいっぱいですね。ただ、将来性を感じる者ばかりで正直、残念な気持ちもあるのです。だからちょっとした刺激を与えて成長を促そうかと思ったのですが、なかなか上手く行きませんね」

「俺やリリン、サチナの事だな?一応ワルトもそこに入るのか?」


「彼女も髪が白いですからね。何処で混じったのか知りませんが、不可思議竜の血でも混じってるのでは?」

「は?」


「ホープにでも聞いてみたら如何ですか?どれだけ血が薄くとも、見れば一発で分かると言っていましたよ」



 ……おいドラゴンの血がワルトに混じってるってどういう事だよ。

 ワルトは人間だぞ?

 どう頑張ったらドラゴンの血が人間に……って、この宿には明確な物証が居るなのです!


 キツネを経由して生まれたサチナが人間に恋をしたら、不可思議竜が祖父になる。

 おそらくだが、大昔にそんな感じの事があったんだろう。

 ギンが絡んで無くても、人の姿を神に見立てて真似る超越者が居た場合、いつでも起こる可能性があるしな。



「それに、ホープもホープです。ダンヴィンゲンと同士打ちするなど不届き千番。私の数少ない遊び相手が二匹も養生に入ってしまっては寂しいじゃないですか」



 おい、駄犬ドラゴン。

 なんか凄そうなダンヴィンゲンと同士打ちしてんじゃねぇよ。

 つーか、百歩譲って戦ったのは良い。

 だが、戦ったんだったら勝てよ。養生してるって、普通に生き残ってるじゃねえか。



「そんな訳で、ここに来た理由は……暇つぶしです」

「大層な暇つぶしだな。こっちは命がけと来た」


「グラムの覚醒体の一つを見られたのですから良いではありませんか。……もっとも、その記憶は消えるんですけどね」

「つっ!?」




 **********



「ららら~らららら~~」

「随分とご機嫌ですね、エデン様」


「そうですよゲヘナくん。私は機嫌が良いのです!」



 鼻歌交じりで廊下を歩く二人の人影。

 クリーム色の髪を揺らして歩くエデンと、パリッとした漆黒のスーツを着こなすゲヘナ。

 二匹は楽しげに、今日あった出来事の情報交換をしている。



「リィンスウィルの子とユルドルードの子をじっくり見てきました」

「ふむ、まだ青いと思ってましたが、面白い物が見られたようですね」


「えぇ、まず、ユニクルフィンの方ですが……神の破壊因子を持っています」

「結構珍しいですよね」


「しかも、ものの見事に因子が進化を始めている。数千の神の因子と接触するなど、一体どうやったのでしょうか?」

「ほう!神の破壊因子の進化系ですか?なるほど、歴史上まだ到達した者がいない領域に踏み込み始めていると」


「えぇ。育てば、私達よりもグラムの扱いが上手くなるかもしれませんよ?」

「御冗談を。と言いたいところですが……そういえば、ユルドルードは神から力を与えられ、八匹目の始原の皇種となったんでしたね。ならば彼は、我々と同格の眷皇種でもある」



 確かにこれは面白いと、ゲヘナは笑みをこぼした。

 ゲヘナが求めている絶対強者の資格。

 それは、グラムの下位覚醒体よりも強い攻撃ができるかどうかが、判断基準の一つとなっているのだ。



「そしてリィンスウィルの子はもっと面白い。内蔵された魂がね、私の精神汚染を撥ね退け反撃を加えてきたのです。そして、彼女の中には皇種としての知識があるようでした」

「それは、那由他様が我らにも秘匿している機密事項では?」


「そうですよ。それが歪な形で、なおかつ、剥き出しの状態となっています。上手くやれば情報を抜き出す事もできるでしょうし、それを使えれば、那由他様と同格になれるかもしれませんね」

「なんと恐ろしい事を考えていますね、エデン様。あぁ、その時が楽しみで仕方がありませんよ」


「『一つの種族で皇となれるのは一匹だけ』。ですが、それには抜け道がある。それさえ知れれば私達は皇となり、何かと詰めが甘い那由他様の代わりに……蟲量大数を喰らうというのも面白いですね」



 そして、エデンも笑みをこぼした。

 その口元は僅かに湿り、彼女もまた、食欲の支配下にある事を示している。


 タヌキ真帝王・エデン

 彼女の好物は……強き者の『肉』。

 強き物を倒し、殺し、喰らう事がエデンの生き甲斐であり全てだ。



「それはそうと、ゲヘナくんは何処に行っていたのですか?」

「ソドムの所ですよ」


「ソドムくんの?わざわざ出向いたという事は、そっちも面白そうな事があったんでしょう?」

「エデン様に比べれば大したことはありませんね。ただ、ソドムの帝王機が完成したってだけですよ」

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