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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第73話「続・英雄覇道(表)創生魔法講義」

「創生魔法……?」

「そうです。そしてこの創生魔法こそ、魔導師の極地と言えるものです」



 可愛らしいテーブルにちょこんと座るリリンサは、アプリコットの言葉の意味を殆ど理解していない。

 だが、そこにあるのは期待に満ち溢れた表情であり、先程まで揺らいでいた瞳もしっかりとした物へと変わっている。


『リリンサには、創星魔法の適正がありません』

 そう言われて混乱したリリンサは、アプリコットが頬笑みを浮かべた事により安心し、すぐにその興味を創生魔法に映したのだ。



「創生魔法……。とても気になる。教えて、パパ!」

「もちろんですとも。まずはそうですね……。恐らく、中途半端になっているであろう魔法知識の補完からですね」



 そう言ってアプリコットはテーブルに上に白紙の紙を召喚。

 さらに、その紙に手を翳すと一瞬で炎が湧いて燃え尽き、図と文字が記載されたプリント用紙となる。

 それをリリンサに差し出しながら、「教科書の代わりを用意しました。これを見ながら話を聞いてくださいね」と優しく教養を始めた。



「リリンサ、魔法は大きく分けて何種類あるのかを知っていますか?」

「もちろん知っている。それは――」



 リリンサが答えた魔法は全10種類。


『火』『水』『風』『土』『光』

『虚無』『星』『バッファ』『防御』『回復』


 それを、プリント用紙を見ること無くすらすらと答えたリリンサは、ふんす!っと鼻を鳴らし、平均的な自慢顔になった。



「正解です。基礎はバッチリの様ですね」

「ん!こんなの常識!」


「おっと、では、少し難しいお話をするとしましょう。私が先ほど話した『創生魔法』と『創星魔法』についてです」

「やっと本題が来た。たのしみ」


「神様が使用する『神撃魔法』を除いたこの世界にある魔法、それらは『創生魔法』か『創星魔法』のどちらかに属する魔法と言えるでしょう」

「どっちかに属するの?」


「属します。そして、この二つの違いは何なのか分かりますか?」

「……。創生魔法は、何らかの物を創り出す……?でも、創星魔法も創り出すっぽい?……もしかして、創生魔法は物体を作り、創星魔法は見えない何かを作る……とか?」


「惜しいですが、その解釈は間違っています」



 教師の問いに対し、生徒が自信なさげに回答した時のように、リリンサはおそるおそる答えた。

 そして、不正解だったと聞いてションボリし、縋る様な眼で答えを待つ。


 それは、どこからどう見ても優秀な生徒枠であり、数年の間一緒に旅をした悪友が見たら、驚きのあまりタヌキに睨まれたドラゴンのようなマヌケな顔を晒すであろう。

 それくらい、リリンサがお菓子も食べずに、大人しく勉強しているというのは珍しい事なのだ。



「創生魔法とは……生命が起こしたあらゆる事象の帰結。つまるところ、生命体に関するあらゆる魔法が、大きな枠組みでは創生魔法になります。一方、創星魔法はそれ以外の事象、星が起こす自然現象を模した魔法が当てはまるのです」

「ん……。それって、私が攻撃魔法を使えば、それは全て創生魔法という事になる?」


「いいえ、それは違います。この場合のリリンサに関わる事象とは魔法的手段を用いない生命活動のこと。例えば……リリンサは口から炎を吐けるでしょうか?」

「……。パパ、実は……。」


「えっ。吐けるのですかっ!?」

「唐辛子を食べ過ぎた時は出るかと思った。けど、出した事は無いと思う!冗談!」


「出ちゃったら、パパはどうしようかと思いましたよ」



 小悪魔のように笑うリリンサは、大好きなパパへのイタズラが成功したと、ぐっと手を握りしめた。

 そんな、年相応よりもちょっとだけ幼いやり取りは、ずっと前に失ったリリンサの憧れ。


 絶対叶うはずの無かった憧れを叶えたリリンサは、更に無邪気に頬笑んでゆく。



「それで、炎がどうしたの?」

「リリンサは、道具や魔法を用いずに炎を出す事が出来ない。つまり、炎の魔法は生命体に関与しない事象……創星魔法という事になります」


「なるほど。だとすると……。私は涙を出せるから水の魔法は創生魔法?ん。でも、それだと水と回復魔法以外は創星魔法という事になってしまう……」



 リリンサは、自分に適性があるのは『創生魔法』の方だけというのは理解している。

 さらに、白い敵を始めとする、これから出会うであろう強大な敵と対等以上に渡り合うには、その魔法の深淵を覗く必要がある事もなんとなく分かっていた。

 だからこそ、その創生魔法の効果が創星魔法に劣っていると困るのだ。



 おそらく、セフィナは創星魔法の適正がある。

 だから私の創生魔法が劣っていると、とっても大変。

 セフィナは天才だから、きっと、次に戦う時は頂上決戦になる。

 最高峰同士の戦いとなるはずだし、魔法のスペック差のせいで負けるなんて、ダメだと思う!



「パパ。創生魔法はあんまり強くないの?このままじゃセフィナに……」

「いえいえ、魔法の種類に関しては創生魔法の方が多いですよ」


「そうなの?どうしてそうなるの?私は火も吐けないし、風も出せない。土や光や闇なんて、どうすればいいのか全く分からないのに……」

「おや?いけませんね。魔導師は発想を柔軟にしないと」


「発想を柔軟?でも、火も風も……。風?風って、吐息でもいいの?」

「正解です!生命は肺を動かし空気を流動させます。それに、それだけじゃなく、日常的に素肌は空気が触れているし動けば空気も揺らぎます」



 なるほど……。と、リリンサは思った。

 確かにそれならば、風は自分に関わる事象だと納得したのだ。


 そして、地の魔法は、石や岩など身体から生み出しようが無い故に創生魔法の枠組みでない事を理解し、更に思考を進めてゆく。



「ん。なら、水と風と回復魔法。それに、バッファも創生魔法ということ!」

「それで終わりだと思いますか?」


「えっ、まだ足りない?怪しいのは光魔法だけど……。私は光らないし……。」

「勉強熱心なリリンサにヒントを上げましょう。身体の中には、電気信号という物が流れているのですよ」


「あっ!それ、友達から聞いたことあると思う!」



 おい、それは殆ど答えだろ。この親バカめ。

 この場に全裸と名高い英雄がいたとしたらツッコミを入れたであろう事も、当事者二人しかいないのなら起こりようが無い。


 お互いに満足げな表情を交わし合い、アプリコットはまとめに入った。



「ということで、創生魔法とは……『水』『風』『光』『バッファ』『回復』。それと、一部の防御魔法を加えたものとなります」

「一部の防御魔法?どういうこと?」


「防御魔法には、個体を対象として発動する『防御系』と、空間そのものを対象とする『結界系』の二つがありますね?』

「うん。第九守護天使が前者で、失楽園を覆うが後者!」


「はい、そしてこの前者、防御系は『創生魔法』に含まれるのです」



 アプリコットの説明を纏めた内容は、リリンサの手元のプリント用紙に既に記載されている。

 それを発見したリリンサは、すぐに視線を走らせて熟読し始めた。


『創生魔法』

『水』『風』『光』『バッファ』『回復』『防御』。これらの魔法の多くを占めた総称であり、内包し帰結するべきもの。

 人が、考え、願い、生み出せし物は一方通行であり、止まらぬ生命の進化こそ、創生魔法の真髄。


『創星魔法』

『火』『土』『虚無』『星』『結界防御』。これらの魔法の多くを占めた総称であり、内包し回帰するべきもの。

 星として定められた概念であり、これらは流転し廻っている。無限に繰り返す事象こそ、創星魔法の真髄。



「ちょっと難しくなってきたと思う……。」

「更に付け加えておくと、これらには例外があるのです。例えば……火魔法の中には温度を上昇させる物がありますが、これは創生魔法としても捉える事が出来ます」


「温度の上昇?私には体温があるから?」

「そうです。おや?難しそうな顔をしていますが、混乱し始めていますか?」


「ん、勉強なんて久しぶりだから……。もっと頑張る!」



 リリンサは必至にメモを取りながら、アプリコットに質問をしてゆく。

 もともとリリンサは魔法に関する勉強が好きだった。

 それをしなかったのは、家族を無くし、そんな時間を作る余裕が無かっただけなのだ。


 次第に複雑になってゆく魔法の講義を受けながら、漠然としていて直感だよりだった理論に理由を付けてゆく。



「大体、理解した。なるほど……この発想は新しい。水魔法が得意な魔導師でも、扱えない氷魔法があったりする理由はこれ……」

「そうですね。創生魔法系の水魔法に適正があっても、創星魔法系の水魔法には適正が無いというのは、よくあることです。逆にいえば、その適正がある場合、その枠組みの魔法全ては適性があるという事になるのです」


「ん……。私が星と虚無がちょっとだけ苦手なのは、私が創生魔法系だからということ?」

「その解釈で良いかと思います。少なくとも、今のうちはね」


「……?分かった」



 リリンサはテーブルに置いていたノートに、『私は創生系魔導師!雷でドカーン!』と書いて花マルをつけた。

 その微笑まし光景を見ながら、アプリコットはさらに一歩踏み込んだ講義へと進んでゆく。



「さて、おおまかに創生魔法と創星魔法の違いについてお話しましたが……では、リリンサお待ちかねの、ランク0について語っていきましょう」

「ん!きた!!これでブチ転がせる!!」


「ぶちこ……。おほん。私は先程、リリンサには創星魔法の適正がありませんといい、扱う事が出来ないと言いましたね」

「言った。でも、それはちょっとおかしい。私は火の魔法を扱える!」


「それは、その火魔法が小さいからです。正確な魔法陣を作れない場合でも、魔法陣よりも取り出す魔法が小さければ使用する事が出来る。だが、ランク0は例外なく強大であり緻密、いい加減な魔法陣では不発に終わります」



 その理屈はリリンサでも簡単に理解できた。


 魔法を使うという行為は、魔法次元から魔法を取り出しているに過ぎない。

 だからこそ、その魔法次元と自分の世界を繋ぐ魔法陣を作る事にのみ、魔力は消費されるのだ。


 未熟な魔導師は、この魔法陣を必要以上に大きく作ってしまう為に魔力の消費が激しく、魔法をたくさん使用できない。

 一方、魔法の形に一致する魔法陣を作れるリリンサやワルトナは、魔力の消費が最低限で済み、結果的に魔法を連発出来るのだ。


 そして、アプリコットの話を聞いたリリンサは、心の中で情報を整理して始めた。



 だとすると、ランク0の魔法というのは魔力消費が強大であり、完璧な魔法陣を作るしか発動する手段が無いという事。

 それは当然、魔導書を一冊まるまる読むなんて荒技で解決できない。

 ならば……。

 私に適性のある魔法を探さないとダメだと思う!



「パパ。私には創生魔法の適性があると言った。そして、創生魔法の攻撃属性は風と水と光。だったら、私は光魔法を極めたいと思う!」

「良い選択ですね。ところで、なぜ光魔法なのですか?」


「それは当然、ホーライの得意な属性だから!私はホーライに憧れて……あっ!パパはホーライの弟子だった!?」

「えぇ、えぇ、ホーライ先生は私達の師匠ですね。いつの日にか……。と、胸に熱い思いを秘めていますよ」


「ならば、生で雷人王の掌を見た事がある!?どうなの!?」

「ありますよ。あれは先生が本気で戦う時、あるいは、ユルドにブチギレた時に使用していましたので」


「教えて欲しい!雷人王の掌は私の憧れ!!あの魔法を使いこなす事こそ私の最終目標となっている!」

「ふむ……まったく関係ない話題という訳でもありませんし、良いでしょう。少し触れておきましょうか」


「ん!雷人王の掌の秘密、絶対に手に入れて見せる!!」



 リリンサのテンションは既に最高潮に達してる。

 雷人王の掌。それは、リリンサが最も愛するランク9の魔法だ。


 だが、リリンサが使用する他のランク9よりも、雷人王の掌は威力が低い。

 それを疑問に思ったリリンサとワルトナは様々な文献を読み漁り、その先に様々な進化形態がある事を突き止めている。

 そして、雷人王の掌を三つの形態にまで進化させる事に成功したリリンサの直感は、まだ進化の余地があると判断しているのだ。



 パパから教えて貰った雷人王の掌で、私は白い敵を倒す!

 ……死なない程度に、いっぱいブチ転がしたい!!



 やがて、アプリコットから”その先”が語られ始めた。

 だが、それは……リリンサが想像してたものとは、かけ離れたものだった。



「雷人王の掌……あの『バッファ魔法』は紛れもなくランク0。私が知る中で最高峰に君臨するバッファです」

「………………え?」


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