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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第70話「続・英雄覇道(表)戦闘訓練」

「お、いたいた。おーい、親父……って、アレは何をしてるんだろうな?」

「英雄同士の会談……!きっと世界を揺るがす程の、とんでもない話題に違いないと思う!」



 ……いや、物騒すぎるから勘弁してくれ。


 確かにあの二人が揃えば大抵の事が出来るんだろうが、ギンの結界から出られない親父達を当てにすることは出来ない。

 取らぬタヌキの皮算用って奴だ。


 俺達は訓練をする為に、再び親父達を訪ねた。

 あいかわらずタヌキへの殺意をギンは剥き出しにしていたが、リリンがワルトから貰ったという非常時用の最高酒でなだめて懐柔し、今夜も結界の中へ連れて来て貰ったのだ。


 で、親父とアプリコットさんは、なにやらテーブルについて熱い議論を交わしている様子。

 アプリコットさんは、近づいてくるリリンを見て柔らかく微笑んだし気が付いてるのは間違いない。……んだが、親父は振り返りもしやしねぇ。


 ……。

 隙を見せられるのも今のうちだぞ。

 ユルユル全裸・育児放棄親父。



「あんのタヌキ共に対抗するには一筋縄じゃいかねぇな。昔の俺達を一方的にボコった奴だぞ?」

「そうでしょうがね、ダウナが私に内緒で飼ってたというのなら、ソドム・ゴモラは敵ではないのでは?」


「じゃあ、そのクソタヌキーズは良いとして、残りのタヌキ共はどうすんだよ?特に、エデンとゲヘナって言ったか?今のリリンちゃんに興味を持たねえとも限らねえぞ」

「それは、あなたの息子であるユニクルフィンくんもでしょうね。二人とも、とても珍しいですから」



 取らぬタヌキの皮算用っていうか、取れぬタヌキのクソ野郎って感じの話題じゃねぇか……。

 英雄が二人揃ってタヌキ談義。

 ……もう一度言おう。


 英雄が、二人揃って、タヌキ談義。



「私達が珍しい?どういうこと?パパ」

「タヌキの興味を引くくらいにリリンサは可愛いという意味ですよ!」


「じゃあ俺は?」

「タヌキはお前のライバルだって話だ、ユニク」



 んな事は、言われなくても分かってんだよ!全裸親父!!


 明らかに、適当な事を言って話を濁そうとしてくる親父達。

 その態度を見る限り、この話を続ける気は無いようで、二人揃って椅子から立ち上がって俺達に近づいてきた。


 だとすると、あの子の過去にタヌキが関わっているって事か?

 それとも、『俺達が珍しい』というのは、あの子のせいって事なのか?


 んー、要は、タヌキをぶっ飛ばせばいいって事だよな?

 よし、その為に今夜も訓練を頑張るぜッ!!



「やっと準備運動が出来るようになったし、今日からはちゃんとした訓練を付けてくれるんだろ?」

「まぁな。つっても俺は座学なんてまどろっこしい事はしねぇ。身体に覚えさせてやるから、覚悟しとけ」



 ……普通ならビビったり、親父カッコいいなって思う場面のはずなんだが、どことなく変態感が漂うのは何でだろう。

 たぶん、ギンが親父の腕に抱きついて身体を擦りつけているからだな。

 自重しろ、ビッチキツネ。


 俺が引きつった笑みを浮かべていると、リリンは早速、アプリコットさんの所に駆けて行った。

 その速さたるや、風のごとし。

 さっき念入りにバッファを掛けてたしな!



「よろしくお願いします、パパ!」

「はい、承りました。きちんと挨拶ができてリリンサは偉いですね」


「ん!子供扱いしないで欲しい!」

「おやおや、リリンサはいくつになってもパパの子供ですよ」


「むぅ、そうだけど……」

「それでは、大人になったリリンサの凄い技を見せてくださいね。ほら、あっちでパパと訓練しましょう」


「ん、ユニク、そういう事だからまた後でね。あ、ユルドルードも!」



 そう言ってリリンはアプリコットさんの手を引いて、奥の方に駆けて行った。

 あぁ、ここに来てから、リリンの表情がすげぇ眩しい。

 平均的な表情はどこにもなく、年相応の可愛らしい少女な笑顔が絶えない。


 ……ちょっとだけ、妬けるな。

 いつか俺と二人の時にも、あんな風に笑って欲しいもんだぜ。


 よし、身も引き締まったし、早速やるか。

 まずは筋トレからだッ!!



「惑星重力制御、解放!腕立てから行くぜッッ!!いち、にぃ、さん、しぃ!」

「目標は全部やって15分だぞ。ユニク」


「じゅうごッじゅうろッじゅうなッじゅうはッじゅうくぅぅぅッ!!」



 筋トレ一回、0.2秒でやれとッ!?!?

 ちくしょう!やってやるよぉぉおおおおおおおおおお!!


 その後、滅茶苦茶、筋トレした。



 **********



「終わったぞ……親父……。ぐるげぇ……」

「40分も掛ってんじゃねぇか。遅すぎるぞ、ユニク」



 ちっくしょうめ……。これでも、一回一秒は切ってんだぞッ!?

 少しくらい褒めてくれてもいいじゃねえかッ!


 俺はなんとか一回もやり直しをする事もなく、無事に筋トレを終えた。

 だが、非常にムカつく事に、親父に煽られまくっている。


 俺が筋トレを始めると、親父は黙ってそれを見つめ、出来栄えを確認していたっぽい。

 わざわざ確認しなくても、昨日出来た事は今日になっても出来るだろ。と俺が思っていると、親父も地面に手を付けて腕立て伏せの格好し始めた。


 そして、察した俺が身構える暇もなく、地面が爆裂。

 親父の野郎、俺の間横で颯爽と腕立てを始め、華麗に抜き去っていきやがったッッッ!!


 そのあからさま過ぎる当てつけに、怒りが降り積もる俺。

 ついでに腕立ての余波で吹き飛ばされた土砂も降り積もってきて、邪魔な事この上ない。

 覚えてろよ、親父。

 絶対にひと泡吹かせてやるからなッ!!


 そんな事を三回繰り返して、俺は準備運動を終えた。

 昨日はこの時点で疲れ果てていたが、今日はなんとか大丈夫そうだ。



「ぜぇ、ぜぇ、すーはー。ぐるぐるげっげー。よし、良いぞ!」

「なんか、変なのが混じらなかったか?」


「気のせいだな。で、準備運動が終わった訳だが、何をするんだ?」

「言ってんだろ。身体に覚えさせてやるってよ」



 昨日も一昨日も筋トレをするだけで手いっぱいで、具体的な訓練の方法を聞いていない。

 親父はグラムを持っているし、それを使った模擬戦でもするのか?



「親父と戦うのか?この空間の中なら、怪我をしても大丈夫そうだしな」

「お。記憶が無くても察せるんだな?正解だ」


「そうか。さっそく雪辱を晴らすチャンスが来たようだ」

「つーことで、そのグラムをこっちに寄越せ」


「……は?」



 えっ。ちょっと流石に、グラム無しでは厳しいと思うんですが……。


 いきなり相棒を取り上げられ、困惑する俺。

 いくら模擬戦とはいえ、英雄相手に素手で勝負を挑む程、俺は脳筋じゃない。

 つーか、そっちの方向に鍛えられると、タヌキに殴り合いを挑むという死亡フラグが立つから止めて欲しいんだがッ!!


 色んな意味で戦々恐々としていると、親父はグラムに手をかざして、何かの呪文を唱え始めた。

 そして、美しかったグラムの形状が、何枚もの鉄の板が貼り付けられたかのような重鈍な姿へと変化したのだ。


 ……なんて言うか、剣というより鈍器なんだが?



「ほらよ。グラムは返すぜ、ユニク」

「なんだ、ちゃんと返してくれるのか。流石に武器無しじゃきびしぃぃぃぃぃぃ!?!?



 ぐぉおおおおおおお!?なんぞこれぇえええ!?!?

 すげぇ重いんだけどッ!?

 持った瞬間、腰が「ぐるげッ!?」って鳴ったんだけど!?


 こんなもんを軽々しく投げてくるんじゃねぇ!!



「何だこれッ!超重てぇんだけどッ!?」

「重たいに決まってんだろ。グラムの惑星重力制御を封印して、自動で重量が最適化されないようにしたからな」


「なん……だと……」

「今からお前が行う最初の訓練。それはな、惑星重力制御に頼らずに剣を振れる『筋力』と『膂力』を身に付ける事だ」



 親父から返されたグラムは、刀身が150cm、柄も合わせれば大体2mと言った所だ。

 大剣であるグラムは刃の厚みや刃幅が太く、持った感じ50kgはあるだろう。


 で、こんなガラクタで俺に何をしろと?

 剣どころか、武器としても使い物にならねぇぞ?



「このグラムで何をするんだよ?まさか、これを担いで筋トレをしろとか言わねぇだろうな?」

「筋トレばっかしてどうすんだっつーの。そのグラムを使って俺と模擬戦をすんだよ」


「……これでか?親父、バカなんじゃねぇのか?」



 出来る訳ねぇだろ、そんなことッ!!

 50kgの重石を振り回すのとは訳が違うんだぞッ!?


 グラムは剣であり、全長は2mもある。

 当たり前の事だが、こういった長物は重心が身体から離れれば離れる程、実際以上の重さとなる。

 重さ500gのビンですら、指先だけで先端を摘まんで水平に持ちあげるのは大変だしな。


 だが、親父の目は真剣だ。

 決して冗談を言っている風には見えず、本気でこの状態のグラムを俺に使わせようとしている。



「やらせたいってのは分かった。が、せめて説明をしてくれ。こんな事をして何になるんだ?」

「これは昔のお前の悪い癖の話だがな、身体が小さかったお前は、必要以上に惑星重力制御に頼り過ぎた戦い方をするようになっちまった」


「必要以上に……?それだと、どうなるんだ?」

「死ぬぞ」


「死ぬのか……。え、死んじゃうのかよ!?」

「あっけなく死ぬな。そういう武器の性能に溺れた奴は何度も目にしたし、そんな奴は大抵ロクな死に方をしねぇ」



 それは……なんとなく、言っている事は分かる気がする。

 剣はあくまでも武器であり、使用者の攻撃力を倍増(・・)させる道具でしかない。


 結局、どれだけ強い武器を持とうとも、基礎となる自分の能力が低いままでは敗北する事になる。

 それは伝説の剣のグラムでも一緒だと、親父は言いたいんだろう。



「良いかユニク。今のお前は『神壊戦刃・グラムの使い手』であって、剣士じゃねぇ。まずは剣士として正しい構えや体重移動を覚えろ」

「だが、こんな重い剣じゃ、重心移動どころか、まともに振れもしねぇぞ!?」


「俺は振れるぞ」

「英雄と一緒にするんじゃねぇッ!!」



 だが、腹の立つ事に、親父は嘘を言っていない。

 こんな常人には振る事の出来ない剣を余裕で扱えるようになって、初めて、英雄への道が開かれるって事……なのか?



「あぁ、ちなみに俺は素手で戦う。剣を持ってるお前の方が有利ってこった」

「……言いたい事は分かるが、なんだその黒オーラは?全然そんな感じがしねぇんだが?」



 親父は持っていたグラムを地面に突き刺すと、両腕を構えて、黒い湯気のような物を纏わせた。

 それは明らかに不気味であり、俺の危機感がヒシヒシと警笛を鳴らしている。



「サービスで教えてやるが、そのグラムは惑星重力制御を封印しただけで、絶対破壊は使える。要は、俺の身体を傷つけられる訳だ」

「なるほどな、それは良い事を聞いたぜ」


「ついでに言っとくが、そのグラムを使う事以外のルールはねぇから魔法も使っていいぞ。当然、バッファもな。まぁ、俺は使わんが」

「じゃ、俺もバッファは使わない……なんて、そんな手には乗らねえぞ!!」


「昔のお前は引っ掛かったんだがなぁ。ちっとは成長してるようだし、その実力を確かめてやるぜ!」



 そういった親父は、大地へ一歩、踏み出した。

 響く轟音は、地面が揺れる音。


 模擬戦とはいえ、相手は圧倒的格上だ。

 ならば……。


 本気で行くから、覚悟しとけよッ!親父ッ!!

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