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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第69話「タヌキ捜索、1日目・続」

 ……コイツら、暗劇部員か?


 飯を食べに来ただけなのに、妙な遭遇をしちゃったみたいだな。

 ワルトはコイツらの上司って事だし、敵じゃないと思うんだが……。

 いや待てよ……?

 ワルトと俺達の関係性を知っているなら、口ではどうとでも言えるよな?


 俺達の目の前で美味そうに飯を食ってる三人組からは、まるで敵意を感じない。

 だが、妙な違和感がある……気がする。

 なんかこう、水溜りだと思って踏んだら、地獄直行の落とし穴だった……みたいな?

 それにこう、猫かと思って近づいて見たら、満面の笑みのクソタヌキだった……みたいな?


 うーん、この変な感じは何なんだ?



「おや?美味しそうなのを食べてますね?それは何ですか?」

「う”ィギるあ!?こ、これは栗のヘンなのだし!もん、もん……、もんなんちゃら?って言うし!」

「アルカディア、それの名前はモンブラン」


「モンブランって言うし!えっと、食べたいんだったら献上するし!」

「えぇ、是非お願いします」



 ……アルカディアさんも挙動不審だし、違和感があるのは俺だけじゃないらしい。

 エーディーンさんにお願いされた途端に全速力で走りだし、盛大にすっ転んでいる。


 それに、冷静にモンブランだとツッコミを入れたリリンも、心なしか平均的な緊張顔だし、これは警戒しておいた方が良さそうだな。

 とりあえず、レベルの確認をしておこう。


 俺はリリンと目くばせをして意思の疎通を図ると、レベル目視を起動させた。



 ―レベル49100―

 ―レベル999999―

 ―レベル999999―



 うおぉぉ、すげぇ事になってる!!

 これがギンの言ってた『レベル999999(ミリオン)』って奴か。

 へぇーー、居る所には、いるもんなんだなー。


 それに、褐色幼女も結構レベルが高いじゃねぇか。

 レベル4万9千ともなれば、一般の冒険者で最高クラス。

 闘技場で優勝するのはキツイと思うが、立ち回りが良ければ準決勝くらいには残れそうだ。


 うーん、これならワルトの配下として十分な戦闘力があるな。

 大陸の一つや二つ、余裕で滅ぼせるだろう。



「ん!ユニク見て!レベルが凄い事になってる!!」

「おう、見てるぜ。エーディーンさんとゲフェナダルさんのレベル高いよなー」


「そうじゃない、この子のレベルの方がもっと凄いということ!」

「ん?確かにその年齢なら高い方だとは思うが……言う程か?」


「この数字は私も良く使う組み合わせ!『レベル49100』は『レベル49()10()()』ということ!」

「なんだって!?!?」


「ほう!レベルの語呂合わせに気が付くとは、見どころがあるじゃの!」



 食い意地が張ってんなッ!たぬ……ん?


 なんか妙にしっくりくる感じがしたな。

 それに、段々コイツらは敵じゃない様な気がしてきた。

 まるで白い花が満開に咲き誇る花園にいる様な、清々しい気分だぜ!



「で、何でこんな所に居るんだ?ワルトの部下なら一緒に行動するのが普通だろ?」

「腹が減っては戦は出来ぬじゃのー」



『腹が減っては戦が出来ぬ』か。

 この地で戦なんてしようもんなら、すげえ怖いキツネさんが出てくる事になるんだが……。

 そこら辺はワルトも説明しているだろうけど、今はギンも気が立っているし、注意をしておいた方が良いかもしれない。



「いやいや、この地で荒事はやめてくれよ。ここには極色万変・白銀比っていう滅茶苦茶強い皇種がいるからな」

「もぐもぐ、ふむ、キツネがいるそうじゃが自重するかのー?エーディーン?」

「まさか。むしろ良い刺激になりそうでワクワクしておりますわー、ね、ゲフェナダルくん?もぐもぐ」

「そうですね。鬼ごっこみたいなものですし、ただの御遊びですよ。もぐもぐ」



 うわー。なんという自信。

 策謀を得意とするワルトの部下にしちゃ、ちょっと脳筋過ぎじゃないか?


 それに、ギンと敵対するのはダメな気がする……。

 特に理由がある訳ではないが、なんとなく、世界大戦が勃発する様な気しかしない。



「まぁ聞いてくれって。今はギンの気が立っててな。ちょっとでも不興を買おうものなら痛い目を見るぞ?」

「ふむ?どうして気が立ってるじゃの?」


「あぁ、実はな……この地にタヌキが侵入してな」

「ほう?それは一大事じゃのー。タヌキが来たとあらば、この地は食い尽くされるかも知れんの」


「そうなんだよ。しかもさ、タヌキ帝王とか、タヌキ真帝王とか、タヌキの皇種とかいう、マジでヤベ―のが来てるかもしれないらしくてさ。今、俺達はタヌキの駆除に奔走している訳だ」

「うむ、まったくもって、翻弄されとるのー」



 あぁ、まったくだぜ。

 正直な話、俺はリリンと温泉旅行だと思って、ここに来るのを楽しみにしていたんだが……。

 温泉に着いた俺を出迎えてくれたのは、殴る蹴るの暴行だった。


 サチナ→ギン→全裸親父→リリン→ワルトの理不尽コンボ。

 しかも、その締めくくりとしてタヌキの影がチラついている始末。


 ……。どうしてこうなった。



「ふふ、ユニクルフィンさんって、面白い方ですね」

「……はい?」



 俺が今までの理不尽を振り返って遠い目をしていると、エーディーンさんに話しかけられた。


 ん?俺が面白いってどういうことだ?

 もしかして、すげぇだらしない顔をしていた……とか?

 流石に初対面の人に見せる顔くらいは引き締めておこうと、姿勢を正して視線を返す。



「俺が面白いって?どこら辺がそう思うんだ?」

「えぇ、こんなに人間らしくない方はとても珍しいもので」



 これって、褒められてない……よな?


 ……。

 …………。

 ………………人間らしくないってどういう事だよッ!?

 それはアレか!?人間に見えない程、酷い顔してたって事なのかッ!?

 どんな顔してたんだよ、俺ッ!!



「えっと、そんなに酷い顔してた……かな?」

「顔?いえいえ、私が言っているのは、雰囲気とか匂いとかですよ。もぐもぐ」



 えっ。初対面の人に匂いを嗅がれてるんだけど。

 温泉に入ったから汗臭くは無いと思うんだが……それは、俺の匂いが人間とは思えない程の酷い匂いって事なのか?


 そういうのは自分じゃ分からないって言うが……。

 流石にちょっと放置はできないので、俺の匂いを嗅いできている大魔王さんに聞いてみよう。

 ……臭いって言われたらどうしよう。



「リリン、俺って、そんなに変な匂いがするのか?」

「しない。今はボディーソープの良い匂い!」


「ほっ、良かった」



 あぁ、良かった。

 リリンにまで駄目出しされたら、どうしようかと思ったぜ。

 だけど、うん、今日の訓練が終わった後は念入りに身体を洗うとしよう。


 それにしても、もしかして俺をからかって遊んでいるってことか?

 くっ!流石は暗劇部員。性格がとってもアレな感じだぜ!



「まったく、ビックリさせないでくれよな!」

「ふふ、でも、わたしはその匂い好きですよ」


「えっ!?」

「むぅ!ダメ!ユニクは私の!!」



 何を言い出すんだよ、このお嬢様ッ!?


 改めて言う事でもないが、このエーディーンさんは凄く美人さんだ。

 正直な所、リリンやワルト、アルカディアさんと比べても見劣りしない……どころか、圧倒するんじゃないかというレベル。

 流石はレベルミリオンだけはあるな。文字通り、桁が違うぜ!


 っと、そんな人に真正面から好きと言われて嫌がる男は居ないと思うが、俺的にはリリンの方が好みだな。

 という訳で、リリンを刺激する様な事を言わないで欲しい。

 このまま行くと、テーブルクロスが血で染まる。



「これ以上ライバルが増えるのはダメだと思う!」

「ふふふ、とぉーても美味しそうですわね」


「ダメ!」

「でも、あなたはもぉーっと美味しそうですね」


「えっ!?」



 え、ちょっと待て!?

 いきなり薔薇色に染まったぞッ!?


 エーディーンさんは軽やかに立ち上がると、リリンの頬に自分の顔を寄せて百合百合し始めた。

 リリンも驚いたらしく、必死の抵抗を試みて――失敗。


 って、成すがままに弄ばれてるだとッッッ!?!?



「ん!や、だめっ!!」

「うふふー。可愛らしいですねー、いいですねー。とっても美味しそうですねー」


「あ、あっ、ゆ、ゆにく……!」

「ふふ、食べちゃいましょう、ぱくん!もぐもぐー」


「み、耳はだめだと思うっ!」



 リリンが捕食されただとッッ!?

 って、これはちょっと、この時間帯に見せていいもんじゃねぇ!!

 つーか、いい加減、リリンから離れろよッ!



「惑星重力制御、発動!リリンは返して貰うぞッ!」

「あん、もうちょっとで、奥まで届きそうでしたのに」


「奥までって……いくらワルトの部下でも、ふざけ過ぎだろ!!」



 あーもう、油断も隙もありゃしない。


 耳の奥まで舐められたリリンは、顔を真っ赤にして手ぬぐいで耳を拭っている。

 こんな恥ずかしそうな表情、初めて見たんだが?

 だが、思わぬ収穫もあったな。

 大魔王様の弱点は耳だ。

 この情報はきっとベッドの上のピンクな未来で役に立つ。覚えておこう。



「うむ、ちょっとふざけ過ぎなのは儂も同意じゃの。大人しく席に座るがよい」

「あ、すみません。つい……」


「まぁ、気持ちは分からんでもないがの。このような歪な形で皇の資格を持つ者など、儂ですら初めて見たからの」



 ……なに?

 歪な形で皇の資格を持つって、どういうことだ?


 だがまぁ、子供の言う事だし深く考えてもしょうがないか。

 なんかあるなら、ワルトが言って来るだろうしな。



「あ、ワルトが言っていたんだけど、最近現れたっていう大牧師ラルラーヴァーって知ってるか?」

「うむ、知っておるじゃの」


「おぉ!知ってるなら教えてくれないか?ワルトからは割とふわっとした情報しか聞いてなくてさ」



 我ながら、これはファインプレーだと思うぜ!


 ワルトはラルラーヴァーの外見や容姿については何も言っていなかった。

 慎重派なワルトは、ラルラーヴァーの正確な情報が確定するまで黙っているつもりなのかもしれないが、知っておいて損は無いだろう。

 俺は、鷹揚に頷いた褐色幼女に熱い視線を向け――いきなり、後頭部を殴られた。



「おい、お前ら。こんな所で何してんだよ」

「ん?ワルトナ?みんなでご飯を食べてる!」


「そりゃ見りゃ分かるんだよ!この食べキャラめ!僕が言いたいのは、なんでコイツらと一緒に飯なんか食ってるのかって事だッ!!」

「何でって、お腹が減っては戦は出来ない!」


「戦なんかするんじゃないよ!マジで!!本当にッ!!」



 一撃で俺をテーブルに沈めたワルトナは、怒り狂った形相でリリンに詰め寄っている。

 あれ……?俺達、何かまずい事をしたのか?

 ただ飯を食いながら雑談してただけなんだけど?



「待て待て、落ち着けってワルト。俺達はこの子らと雑談してただけだ」

「雑談だぁ?じゃあその雑談とやら、僕にも語ってみなよ」


「本当に大したこと話してないぞ?『リリンの耳が美味しい』とか、『俺の匂いは人間じゃない』とか『モンブラン』とか」

「話題の7割が理解できなかったんだけど……。」


「あぁ、そうそう。ギンが怒り狂ってるって話もしたな。これはワルトにも言っといた方が良さそうだ」

「……嫌な予感しかしないんだけど、一応聞いておくよ」



 残念ながら、その予感は的中してるぜ、ワルト。

 なにせ、今から話す話題はタヌキについて。

 タヌキが死ぬほど嫌いだというワルトには酷な話だが……、俺は仲間が欲しいので容赦なく語る。



「実はな……この地にタヌキが侵入したらしくてな」

「……。で?」


「そんで、ギンの子供であるサチナにちょっかいを掛けてきやがった。それに激怒したギンはタヌキ狩りを宣言した」

「うっっわッッ!!うっっわッッ!!」


「ギンはタヌキを見つけ次第、駆除をするらしいんだが……それに巻き込まれたら大変だと思ってな。この子らに教えていたって訳だ」

「巻き込まれるというか……。ホントにもう……あぁ、ホントにもう、絶滅してくんないかな……タヌキぃ」


「無理じゃの!」

「お前には言って無い。黙って飯でも食ってろッッ!!」



 いきなり現れたワルトの手には紙袋が握られている。

 尽かさずリリンが、「ワルトナ、何でここに居るの?もう出掛けたんじゃないの?」と聞くと、その理由は単純だった。


 ワルトは宿を引き払う準備をしたり、単身で大書院・ヒストリアに戻って必要な資料探しをしていたらしい。

 で、部下たるコイツらを迎えに来たら、居るはずの部屋に居ない。

 そして、捜索するついでに夕食の弁当を買いに来たら俺達と話している所を見つけ、我慢できずに俺の後頭部を殴ったらしい。


 あえて言うけど、俺の後頭部を殴る必要があったとは、到底、思えない。



「そんな訳で、ワルトもタヌキには気をつけろよ?」

「もう手遅れなんだけど……」


「は?」

「はぁ、まったくタヌキは害獣だよねぇ。……おいお前ら、呑気に飯食ってないで行くぞ」


「断るじゃの!これは正当な権利じゃしの!!」

「くっ!言うに事欠いて正論を吐きやがって……。小賢しいねぇ、転がしたいねぇ」



 そう言いながら、ギリギリと歯を軋ませたワルト。

 そのギラついた視線は俺達へと向かい――。

 突き刺すような冷たい眼差しが、俺の胸を貫いた。



「つーか、キミらもゆっくりお茶なんか飲んでないで、とっとと白銀比様の所に行ってしごかれてきなッ!!」

「お、おぉ。そうだな。そろそろ行くか?リリン」

「ん、ワルトナ、やっぱり一緒に行かない?」


「残念だが答えはNOだ。コイツらを放っておいたら、皿の1枚すら残らないからね」

「流石に皿は残るだろ。っと、そうこうしている内に時間も無くなってきたな。いくぞ、リリン」

「ん!せっかくだし、ワルトナもゆっくりご飯を食べると良い!豚の角煮と山菜チャーハンが絶品だった!」


「あ、ご遠慮するよー。胃が痛いからねぇー」



 席を立った俺と入れ替わるようにワルトは椅子に座り、凄まじく殺気だった視線で部下を威圧し始めた。

 俺達には後ろ向きに手を振って、さっさと行けと合図を送ってくる。


 なんか……すっげぇ殺伐としてるんだが、大丈夫だろうか?



「よく分からんけど、まぁ、大丈夫だろ……?」

「ちょっとアルカディアが心配だけど……」



 そう言えばそうだな。

 あのテーブルに戻ったら、知らない人ばかりになるのか。

 まぁ食事も終わってるし、気まずかったら帰るだろ?

 それよりも、これからの訓練に気持ちを切り替えて行こう。


 今日こそしっかりと訓練を付けて貰うからな!全裸親父ッ!!


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