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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第66話「結界に潜みし者」

 

 リリンとワルトのじゃれあいは苛烈を極めた。

『白い敵は幼虫かどうか!?』という議題もそうだが、他の議題も『朝食はパンかごはんか!?』や『カレーとシチューならどっち!?』という、結構どうでもいい話だった。


 一応、本人達は本気で議論を交わしているっぽいが、俺的にはどっちでもいいので基本的に中立派。

 だが、上がった議題の内の一つにだけは、参加せずには居られなかった。


『タヌキは害獣か?否か?』


 もちろん俺はタヌキ害獣派だッ!!

 ワルトもタヌキ害獣派であり、俺と意気投合し『タヌキ害獣討伐連合』を結成。

 一方リリンは『タヌキ飼育推進派』を名乗り、激しく口論を繰り広げる事になった。


 そして、激しく火花散る口論の末、俺達は辛勝をもぎ取った。

 くぅ!危ない所だったぜ!

 もし負けていたら、アホタヌキを捕獲して飼う事になりそうだったからな!


 リリンは、セフィナがゴモラを飼っているのを見たせいか、無性にタヌキを飼いたくなってしまったらしい。

「むぅ、餌付けは完璧。あとは本人の了承を得るだけ!」とか、「気が付けば近くに居る!きっと飼われたいんだと思う!」と言って食い下がって来たが……リリンの提案をワルトが完全玉砕。

 どうやら、ワルトはタヌキの事がものすっごく嫌いなようで、「はっ!僕の前にタヌキ将軍なんて並べみなよ。木端微塵にしてやるからね!帝王じゃ無ければ、瞬殺なんだからね!」っと声を荒げていたが……ちょっと涙目なのはなんでだろう?



「さて、そろそろ僕は行くとするよ。白い敵は大牧師とかいうよく分からない人物だし、念入りに準備をする必要があるからね」

「ワルトナ、今日一日だけでも白銀比様の所に一緒に来ない?お父さんに一番の友達だって紹介したい」


「……。それはまたの機会にお願いするよ。一日の遅れが取り返しのつかない事になるかもしれないんだ。ごめん」

「謝らないで欲しい。ワルトナは私の為にしてくれているんだし、私からお礼を言いたいくらい!」


「あはは、その言葉だけで十分さ」



 それだけ言うと、ワルトとリリンはどちらともなく抱き合いハグを交わした。

 本当にこの二人は仲が良い。

 声を荒げて議論を繰り広げていたのも、お互いに本音を言い合える関係だからだしな。


 二人の友情に割り込めるとは思えないが、俺も感謝をしておくべき――

 あ、そうだ。お礼として、アレでもあげるか。

 リリンに自慢された時に、ワルトも羨ましがってたしな。



「いろいろ苦労をかけて悪いな、ワルト。こんなもんで良ければ、俺からの感謝の気持ちとして貰ってくれ。一応ホーライ所縁の品だぞ?」

「えっ!僕にプレゼントをくれるの!?」


「確か、定価5億エドロくらいだったと思うぞ?まぁ、貰ったんだけどさ」

「いやいや、その値段って適当に付けた奴だから……どれどれ」



 ん?適当に付けた値段って、何でそれをワルトが知ってるんだ?

 確かにローレライさんは商品の値段はサイコロで決めたとか言ってたが……。

 指導聖母として、独自の情報網でもあるのかもしれない。


 それにしても、ずいぶん嬉しそうだな。

 目の前に飯が並べられたリリンと同じように頬を赤らめて、手渡した紙袋を開けている。

 改めて思うが、英雄ホーライ効果ってすげぇな。


 そして紙袋を開け終えたワルトは嬉々として中からソレを取り出し……笑顔が凍りついた。



「……ナイフ?」

「あぁ、それは『切れないナイフ(アン・カットレス)』って言ってな。絶対切断の能力があるらしいぞ」


「じゃなくってさ、リリンにあげたのは指輪とかブローチなのに、僕にくれるのは何でナイフなの?」

「ん?英雄ホーライ所縁の品が欲しいんだろ?グラムを持ってる俺は例外だが、その能力はかなり便利だと思うぞ。なにせ、切れない物は無いんだし」


「……僕も指輪が良かったな」

「ん?指輪?なんでだ?」


「僕だって女の子だからねぇ。不安定機構の上位使徒として着飾る必要もあるしさ」



 ……あれ?なんか選択を誤ったっぽい?

 ワルトはちょっと頬を膨らませてナイフを眺めているし、結構不満げだ。

 んー、実用性重視のワルトには喜んで貰えると思ったんだけどな。



「……悪い、やっぱりナイフなんていらないか?」

「いや、ありがたく貰っておくよ。このナイフは何でも斬れるっていうし、僕の気に入らない物を何でも斬ってくれそうだからね」


「ちなみに、何も斬る予定があるんだ?」

「そうだねぇ。僕のリリンに手でも出したら、後ろから刺されるくらいの覚悟はして欲しいかなー」



 ひぃぃぃ!失敗したッ!!

 ワルトに絶対切断ナイフとか、絶対にあげちゃダメな奴だったッッッ!!


 だが、感謝と労いの為にプレゼントしたものだし、返せというのは無しだな。

 なら……俺が取れる手段は一つだ!



「持ち合せもないし、それで今回は手を打ってくれ。良さそうな指輪を見つけたら買っておくからさ」

「えっ!ホント!?」


「ホントだぞ。まぁ、ホーライの店に出会えるかどうかも分からないし、指輪が売ってるかどうかも分からないから、ブローチとかになるかもしれないけどな」



 確かホーライの店には他にもいくつかアクセサリーが売っていたはずだ。

 ワルトは指導聖母として人前に立つ事もあるって言うし、指輪よりもブローチとかの方が良いかもしれない。


 そう思ったが、ワルトは目を輝かせながら、指輪が良いと言って来た。



「ユニ、その時は必ず指輪にしてね!絶対に指輪じゃなきゃダメだからね!」

「おう?分かった。……が、指輪に随分とこだわりがあるみたいだな?」


「そりゃそうだよ、指輪だからいいのさ」



 なんだそれ?指輪を集めてるってことか?

 アクセサリー好きって、ワルトも女の子っぽい所もあるんだな。

 うちの食べキャラも少しはそういうのを見習ってほしい。


 その後、いつもより口数の多いワルトと少し雑談。

 指輪を貰えると知ったワルトは見るからにご機嫌で、なんか期待値ばかりが爆上げしていっている気がする。

 というか、これでお眼鏡に叶わない物を出そうものなら、切れないナイフで刺されるんじゃないか?


 やべぇ、真剣に選ぶ必要がありそうだッ!!



「ふふん!それじゃ僕は行くとするよ!」

「おう、気を付けて調べてくれよ。相手は格上だっていうしな」

「戦力が必要になったらいつでも呼んで欲しい!!速攻でブチ転がす!」


「ははは、頼もしい限りだねぇ。あ、そうだ。これだけはもう一度言っておくよ」

「なんだ?」

「ん?」


「白い敵の正体はラルラーヴァーであり、指導聖母・悪逆は関係ない”シロ”だ。絶対に何があっても手出しはしないでおくれ。あー、純白すぎて目眩がするねぇ」

「関係ないなら手出しはしないぞ。わざわざ攻撃して敵を作る必要もないしな」

「ん、そういえば悪喰はどうなったの?その人も容疑者の一人のはず」


「アイツは茶色だよッ!!」



 なんだ茶色ってッ!?

 どことなく絶望感が増したじゃねえかッッ!!


 それにしても……白い敵に、純黒のセフィナ。純白の悪逆に、茶色の悪喰。

 カラフルと言っていいかビミョ―過ぎる。

 んー。地味だな。



「じゃ、キミらも訓練を頑張りなよ。じゃーねー」



 そうして、ワルトは空間魔法で扉を作ってその中に消えていった。

 部屋に残された俺とリリン。

 さて、夜まで時間があるし、ゆっくりと体を休めるとするか。



 **********



「……アヴァロンが脱獄したのです……。母様が激怒してるのですよ……」



 それから、温泉に行ったり部屋でゴロゴロしたりして身体を休めていると、サチナがやってきた。

 その手にはリリンがあげた帯が握られており、非常に悲しげな表情だ。

 ペット、兼、残飯処理係に逃げられたのがショックらしい。

 俺的にも、タヌキ帝王脱獄とかショックがでかい。



「サチナ、アヴァロンが白銀比様の結界を壊したというの?」

「実は昨晩、サチナは母様の部屋に泊まっていたのですが……。アヴァロンよりも格段にヤバいタヌキが二匹も来たのですよ」



 タヌキが二匹?

 ……クソタヌキとアホタヌキか?



「それって、頭に白い星マークがあるタヌキと、ピンクの星マークがあるタヌキ?」

「違うですよ。星マークはあったですが、一匹は身体が真っ白で、もう一匹は身体が真っ黒だったです。……アレは凄いのです。アヴァロンは可愛いですが、あんなのヤベーだけです」



 いや、タヌキってだけでヤベーけど。

 だが、クソタヌキじゃ無さそうだな?


 俺的には吉兆だが……どうやら、リリン的には好ましくないらしい。



「ユニク、そのタヌキを見かけても手出しをしてはいけない。絶対にダメ」

「なんでだ?」


「白銀比様の結界を壊せるって、どう考えても危険。少なくとも今の私には出来ない」



 なるほど、確かにそりゃそうだ。

 ギンの力は嫌という程身にしみている。なにせ、英雄の親父やアプリコットさんを擬似的に創り出している訳だからな。

 もし、あの時にアヴァロンを閉じ込めた結界が同じような力を秘めていた場合、それを壊すのは並大抵の力で出来る事じゃない。



「ちっ、そんなタヌキもいるのか……アヴァロンに、ゴモラ、謎の白黒タヌキ帝王……。タヌキ居過ぎだろッ!!」

「それにアルカディアもいた。大量侵入?」



 アルカディアさんをそこに混ぜるのは、どうかと思うぞ?リリン。

 ……上半身を見る限り、可愛らしい女の子だしな。



「それにしても……確か、ギンってタヌキが侵入しない様に結界を張ってるって言って無かったか?」

「言ってた。白銀比様の認識結界を破るとか、それもヤバいと思う……」



 タヌキ帝王ども荒ぶりすぎだろ。キツネが涙目じゃねぇかッ!


 つーか、ギンの認識結界を破って、しかもバレずに潜伏しているって滅茶苦茶ヤバいだろ。

 どう考えても結界は最高品質な訳だし、いかにタヌキが害獣なのかが分かるってもんだな。


 って、のんびり考察している場合じゃないッ!



「リリン、緊急事態だ!すぐにギンの所に行くぞ!」

「ん?どうして?飼う為に許可を貰いに行くということ?」


「飼わねぇよ!……じゃなくってさ、セフィナの近くにはゴモラがいるだろ!?」

「あ。」


「もし、怒り狂ったギンがゴモラを発見した場合、近くに居るセフィナが危険だ!直ぐに弁明しに行くぞ!!」



 まったく、本当に面倒事しか起こさねぇな!タヌキッ!!

 何匹いるか知らねえが、見つけ次第、駆除してやるからなッ!!


 俺とリリンはサチナを連れて部屋を出た。

 目指す場所は……怒り狂う七源の階級、”極”。


 数千年の時を生きる、極色万変・白銀比の根城だ。

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