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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第61話「英雄覇道(裏)③譲れぬ矜持」

~お知らせ~

ちょっと説明不足でタヌキ感(絶望)が足りなかったので、前話を1400文字ほど加筆修正しました。

(11月12日、21時40分。)


流れは同じですが、ワルトナの心理描写などが増えてます!

「なんだよそれ……。なんだよ。なんなんだよッッ、それはッッッ!!!!!!!」



 そんな不条理は認めないという、ワルトナの叫びが響く。

 その声は普段の”作っている”ワルトナ・バレンシアの声ではなく、年相応の儚い少女のものだった。

 だが、心で拒否しようとも、生存本能では理解してしまっている。

 ワルトナの目に映っている、偉大なる異形。

 人の形から離れたシルエットとなった那由他を見て、生存本能が怯え震えているのだ。



 シェキナの真なる名称を世界に示し、那由他は戦闘形態へと変貌した。

 艶やかな褐色肌の両腕は、複雑な機械鎧に覆われて見えなくなり、左右で形の違う大型武装が先端に取り付けられている。


 右腕は50cmを超える、強大な機械機構で出来たグローブ。

 遠目からでは鉤爪にも見えるその理由は、五本の指のそれぞれ外側に、矢が装填されているからだ。

 そこから続く手首の大型機構は、腰に備え付けられた大量の矢筒へと接続され、那由他の意思によって、矢が自動で生成されつがえられる。


 さらに、一際目を引くのは反対側の左腕だ。

 那由他の伸長130cmよりも巨大な『おおゆみ』が、左腕を取り込んで、融合。

 右腕と同じく複雑な機械機構であるそれは、五門の射出口を繋ぎ合せた形をしており、緩やかな弧を描いたものだ。

 そして、那由他の頭上には黄金の王冠が称えられ、そこから照準器が伸びて左目にかかっている。


 まるで異形の王であるかの様な那由他の姿を一言で表すのならば、『たった一人で数千万の軍勢と渡り合う、移動砲台』。

 恐るべき創造と装葬の化身を纏い、ワルトナへ向け那由他は笑いかけた。



「これの名はの『神栄虚空シェキナ=神命への断罪星弓ジャッジヘイト・ゴッデス』。神の想像すら撃ち抜き超える、神殺しの一つじゃの」

「な、なんなんだよ……。お前は……」


「儂の名を知りたいのかの?……儂は、悪喰プアフードとも名乗っておるじゃの!」



 ワルトナは地面にへたり込んだ体勢で、離れた位置に立つ那由他を見つめている。

 指導聖母として鍛えた鑑識眼は、どんな事をしても抗えない存在なのだと、那由他の姿を映し怯えているのだ。


 だが、ワルトナの矜持が、ほんの少しの意地を繋ぎ合せて思考を巡らせた。



 なんだ……アレは……?

 僕の持つシャキナは、正真正銘、本物の神殺しだ。

 それは間違いない。

 シェキナを始めて覚醒させた時、その情報を魂に刻み込まれているんだからね。


 なら、アレはなんだ……?

 僕の全てが、アレはヤバいと言っている。

 目も、肌も、感も、心も、全てが逃げろと訴えて来ている。

 あんなもの、おじさんが本気で戦った時と一緒じゃないか。


 はは……。

 どうやら僕は、自惚れていたらしい。

 英雄と僕の距離は、こんなにも……遠いものだったのか。



「あぁ、本当にお前は何者なんだよ、悪喰。指導聖母とか、そんなレベルじゃないだろ」

「広義では、世界を導く者であるかの?もっとも、どんな結末に導くのかはあえて語らんがのー」


「世界を導くね。はは、世界を破滅に導く邪神だと言われても、納得してしまいそうだよ」



 ……そうだ。会話をして時間を稼げ、僕。

 その時間を使って、一文字でも多く、思考を巡らせろ。


 両腕に装備したデカイ機械。

 それをシェキナだと、アイツは言い張っている。


 だが、僕の手にシェキナがある以上、それはおかしい。

 僕のを見て複製を作った?

 いや、僕はあの形態のシェキナを知らないし、そもそも、どんな文献を見ても載っていなかった。それはあり得ないだろう。


 それに、アイツは僕が知る神殺しは4つだと言い当て、そして、それら全てを召喚して見せた。

 何らかの形で、僕の記憶を読み取っている?

 記憶の取得……。神殺しの複成……。そんなこと、出来るはずが……。


 いや、待てよ?

 これと同じ現象を、僕は知っている。


『ギンの権能は、奪った記憶を元に物質を生成するものだ。俺が出会った親父もそうして造られたもので、背中にはグラムを背負っていた』


 確かにユニは、そう言っていたじゃないか。



「なんとなく、キミがどうやってそのシェキナとやらを作ったのか、いや、それを可能とした悪喰=イーターの正体について、分かってきた気がするよ」

「ほう?」



 そうだ。この状況、白銀比様なら同じ事が出来る。


 だけど、それこそ皇たる白銀比様と同じ能力をコイツが持っているなんて、ありえないだろう。

 なら、考えられる可能性は一つしかない。


 あの『悪喰=イーター』なる魔法は、白銀比様の権能を元にしてアプリコット様が作った創生魔法を、さらに模倣して作ったもの。

 そう考えれば、全てに説明が付くんだ。



 その答えに辿り着いたワルトナは、ほんの少しの希望が見えた気がして、薄らと笑った。



「なるほど……、なるほどねぇ……。キミは何処かでその力を目にし、そして、何らかの手段で自分の物とした」

「なんの事かの?」


「とぼけなくていい。確かに、その力さえあれば英雄になるのだって造作もない事だろうね」

「ふむ?」


「だけど……。その力は、あの子を助ける為の力だ!お前なんかが扱っていい代物じゃないッ!!」

「……。勘違いしておるようじゃの。だがその言葉、ちと、気分が良くないの」



 薄氷の上に成り立っている矜持を燃やし、ワルトナは己が出した答えを那由他に付きつけた。

 そしてその心の内にある感情は、8年もの間、恋焦がれている想い人への感謝の気持ちだ。



 あぁ、ユニ。やっぱり君は、僕を導いてくれるんだね。

 キミがいるから僕は……どんな理不尽だろうと、乗り越えてやろうと思えるんだ!!



「その武器が強力なのは分かる。だけど、僕の手の中にあるのも神栄虚空シェキナであり、世界最強、十の神殺しの内の一つだ」

「御託はもうよい。儂に歯向かう気概があるのなら、武器を構えるがよかろう」


「そうさせて貰うよ。いくぞッ!!《開闢の矢ハローアローッ!》」



 ワルトナは10本の矢を放ちながら走り出し、一気に距離を詰めた。


 那由他の装備は見るからに巨大であり、小回りが利きにくいと判断。

 手に持つシェキナを遊戯に使うような小弓へと縮小させ、接近戦を仕掛けたのだ。


 だが……。



「神すら見れぬ、夢となれ《阿頼矢識アラヤシキ》」



 那由他は巨大な弩たる左腕をワルトナへ向けると、右腕を叩きつけるように擦りつけた。

 金属が弾け火が舞い、それらの射出口に五本の矢が装填。

 全ての矢の先端には魔導規律陣が出現し、そして――、間髪いれずにワルトナへ向かって放たれた。



「つっ!速いッ!!」



 那由他の腕が動いたとワルトナが認識してから、僅か0.01秒。

 番えられた矢が射出を終え、魔法陣を貫き、ワルトナの眼前3mまで迫っている。

 だが、五本の矢すべては、ワルトナが走り出すと同時に放った『自動迎撃を想像した矢』によって撃ち落とされた。


 そう認識し、強く大地を踏みしめ、新たな一矢を放つべく弦を引いたワルトナの口から…………血が、こぼれ落ちる。



「がはッ!?」

「愚かじゃの。絶対知覚を持つシェキナへ技を先出しして、勝てるわけが無かろうに」


「ご、ごれば……」

「喉に刺さった矢、それをお前は知覚できまい。『阿頼耶識あらやしき』とは目に見えぬもの。その程度の覚醒体では、偽装を誤認するだけで精一杯じゃからの」



 さくりさくりと草を踏みしめながら、那由他は倒れ伏すワルトナの目の前に立つ。

 その喉元にシェキナを突きつけ、ゆっくりと矢を番え、そして――。



「ち、ちくじょうめ”……」

「大人しく負けを認め、飯を差し出せ。そうすれば生かしてやるじゃの」


「い、いやだ……。」

「ほう?」


「僕ば、負けを認めない。この意識と意思がある限り、簡単に諦めちゃだめだ、がら……」

「儂にとって、飯はお前の命よりも優先するべき事じゃの。その意思とやらに命を賭ける価値はあるのか?」


「あるさ……。僕は、あの子と約束じだんだ。幸せになるっで約束……した……」

「幸福かの?」


「そうだ。そしで、その幸福には……あの子が、あの子とユニと一緒にいる事こそが……僕の――」



 ワルトナの口から、それ以上の言葉は出なかった。

 突き刺さった矢が喉を侵食し、ワルトナの最深層、人としての根幹を成す『阿頼耶識あらやしき』と呼ばれる概念を壊し始めたからだ。


 だが、声を発する必要もなかったのだ。

 地面に伏していた体を優しく抱き起こされ、血が零れた口を大きな手で拭われる。

 そんな慈悲深い優しさは、那由他から施されたものではない。



「おい、流石に無視できねぇぞ。どういうことだ?」



 ワルトナは、自分の体を抱く鋼のごとき身体に見覚えがあった。

 太く誠実な声も、怒りを灯した表情も、やはり見覚えがある。



「かひゅ、かはっ……」

「……ちっ、手酷くやられてんな。少し痛いが我慢しろワルト、直ぐに癒す《命を巻き戻す時計王(クロノス・グラス)》」



 喉に突き刺さった不可視の矢。

 それを理解したその男は、無理やりに引き抜いて魔法を唱えた。


 温かな感覚に包まれ、汚染されたワルトナの身体が再生してゆく。

 神が定めし理を超える創生魔法は、時の流れすら巻き戻し、瞬く間にワルトナを事前の状態へと戻したのだ。


 そして、改めて事態を理解したワルトナは、男の皮鎧を強く握りしめながら、確かめるようにその名を呼んだ。



「ゆ、ユルドおじさん……?本物だよね……?」

「あぁ、本物の俺だ。やべぇ感じがしたんで来たんだが……。この状況はなんだ?ワルト」


「えっと、それは……」



 色々とまずい状況に置かれているワルトナは、言葉を詰まらせる。

 だが、その顔を見てある程度を察したユルドルードは、優しくワルトナの頭を撫で、おもむろに立ち上がり那由他を睨みつけた。



「覚醒シェキナか。お前がそれを使うとは珍しいな、ナユ。……言いたい事はあるか?」

「……。儂の飯の邪魔をするのかの?英雄・ユルドルード」

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