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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第8章「愛情の極色万変」

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第49話「再会と修行……?」

「おらッ!!ペースが落ちてんぞ!!また殴られてぇのか!!」

「881ッ!882ッッ!!883ぁぁんッッ!!」



 こんの、英雄全裸ユルユルおパンツ親父めぇえええええ!!

 今更、腕立て伏せって、何の意味があるんだよッ!!


 親父の威光を見せつけられた俺は、今まで抱いていた負の感情から一転し、尊敬と期待の眼差しを向けた。

 我ながら現金なもんだと思うが、俺が良く使う通常技で50mもある化物を一刀両断しているんだから、仕方がないと思う。


 大きさ的にはドラピエクロ以下だが、実際の実力はファラリスタウラスの方が圧倒的に上だろう。

 つまり、親父はドラピエクロや、その後出てきた鎧武者竜と球根竜、そして冥王竜にも勝てるはずだ。


 そんな、尊敬の眼差しで待っていた俺に示された訓練は、『腕立て伏せ1000回』。

 英雄的なスペシャル腕立て伏せではなく、普通の奴だ。



「……954、なんで!955、腕立てなんだよ!956、グラム関係ないだろ!!957!!」

「関係ない訳ねぇだろ。剣は腕で振るんだぞ」


「んなこと分かってるけど、998!!腕立てをしてもさっきのが出来るようになるとは思えん、999!説明しろ……、1000ッ!!」

「はぁ。いいか、グラムは神殺しといえど結局は剣なんだよ。様々な能力があるが、剣として扱えん奴はその能力を引き出せねぇ。だから、基礎体力は大事なんだ」


「はぁ、はぁ、た、確かにそうかもしれねぇが……、それは親父がいなくても出来るだろ?夜が明けるまで、時間は限られてるんだぞ?」

「ん?何を言ってんだ?お前はグラムの覚醒がしっかり制御できるようになるまで、毎日ここで訓練をするんだぞ」


「はぁ!?」

「……おい、ギン。ユニクに説明してねえのか?」



 強引に連れて来られたし、今日しか親父に会えないのかと思ったんだけど、どうやら違うらしい。

 で、親父やギンの顔を見る限り、親父の言い分が正しいっぽい。

 だったら、あんな形で連れて来ないで欲しかったんだけどッ!!


 親父はくすくす笑っている酔っ払いに詰め寄り、事情聴取を始めた。



「説明など、親子の感動的な再会には無粋でありんす~。何も知らずに会った方が、感傷もひと押しなんし~~」

「その結果、息子が殺しにかかってきたんだが?説明してねえなら、どんな風に連れてきやがった?」


「リリンサと一緒にわっちの所に話を聞きに来たなんし、それなりに話をしてやったでありんす」

「頭の良いお前の事だ。絶妙に混乱する様な事を言ったんだろうが……。あの子の正体を暴露されて、計画がご破算に張るよりかマシだな」


「でぇ、帰ろうとしたリリンサへ、『わっちはユニクルフィンと秘め事をするから先に帰れ』と、脅したなんし~~」

「あ”あ”んッ!?」


「嘘は言ってないなんしな~~。これはしっかり秘め事でありんすぅ~。『ユニクルフィンだけを先にユルドルードと会わせて、様子を見る』というのを決めたのは、お主たちでありんしょ~」

「言い方が問題なんだよッ!!どう考えても誤解されてるじゃねえか!!」


「これくらいで恋心が覚めるのなら、どうせ長くは続きはせん~~。そん時はわっちは親父子丼を食べられるなんし~~」

「願望が駄々漏れなんだけど、このビッチキツネ!!」



 そう言って親父は、目にも止まらぬ速さでギンに斬りかかり――余裕で回避された。

 ……おい、なんだ今の動きは?

 腕立てなんかよりも、その動きを教えてくれよ。



「ちっ。酒飲んでるくせに、すばしっこい」

「この空間内で、わっちに攻撃が届くはずがないでありんしょう」


「……だな、この鬱憤はコイツで晴らすか」



 おいぃぃ!!ふざけんなビッチキツネッ!!

 親父に八つ当たりされそうなんだけど!



「おら、腕立ての後はスクワット1000回だ。かかとを地面から上げるんじゃねえぞ」

「しかも、また筋トレなのかよッ!?」


「そん次は腹筋な。これらはただの準備運動だから、毎回必ず最初にやることになるぞ」

「1000回ずつって、準備運動じゃねえだろッ!!どう考えても本番だッ!!」


「だから、これが準備運動になる程に、体を鍛える必要があるんだよ。良いか見とけ」



 そう言って、親父は俺から少し離れた所で、腕立て伏せの体勢を取った。

 どうやら腕立てを俺に見せたいらしいが……。

 おっさんの腕立てを見たって、なにも楽しくねえんだが?



「腕立て伏せってのはぁ、チュドドドドッ!!こういう風に、チュドドドドッ!素早くやるんだよ。チュドドドドッ!」

「……は?」


「惑星重力制御を使って自由落下を加速させろ。チュドドドドッ!惑星重力制御を使いこなせれば、チュドドドドッ!!腕立て、腹筋、スクワット1000回なんて10分で終わるぞ。チュドドドドッ!」



 ……前言撤回。

 腕立て伏せという、俺の知らない何かが行われている。なにこれ、怖い。


 地面に手を付けて構えた親父は、ドラムを叩くスティックのような動きで上下を繰り返し、その度に土石が削れて飛び散って行く。

 ……あ。終わった。

 意味が分からずに呆然としていたら親父は軽々と腕立てを終えた。

 次はスクワットをするらしい。



「スクワットは、フォォォォン!こういう風に降下の時も筋肉を使うようにしろ。フォォォォン!これは戦闘中の回避でもよく使う動きだからな。フォォォォン!」



 ……。そんな意味不明な動きで回避はしねぇだろ。

 バネが壊れたおもちゃみたいに、ビヨンビヨンしやがって。

 そんなん戦闘中に見たら、敵がビビって回避するぞ。



「で、これが腹筋だ。ズガガガガッ!ただ地面に背中をぶつけるんじゃ無く、ズガガガガッ!こうやって、身体に乗った衝撃を地面に放出するんだ。ズガガガガッ!」



 ……おう、これも俺の知ってる腹筋じゃねぇな。

 ミニスコップで地面を掘ってるようにしか見えない。実際に地面が減っていってるし。

 なにこれ、怖い。



「こんな風に、腕立ては『攻撃』、スクワットは『回避』、腹筋は『防御』の基礎訓練になる。常識だろ?」

「そんな常識はねぇぇぇぇぇんだよ!!変態親父ィィィ!!」


「……。分かって無かった見てぇだな。腕立てからやり直せッ!!ダメ息子ォォ!!」



 そういう説明は先にしろよぉぉ!!

 こんちくしょうめぇええええ!!




 **********



「はぁ、はぁ、おぇっ……。腕立て終わった……ぞ……」

「準備運動でヘバッテんじゃねえよ。これじゃ訓練に入れねぇじゃねえか」



 あぁ、マジでこの野郎、覚えてろよ。

 親父に対し抱いていた殺意が、無尽蔵に増えて行くぜ。


 親父の言うとおりにやった腕立ては、全くの別物だった。

 最初、さっきよりも速くやる為に全力で腕を突き出し、身体を持ち上げた……んだが、逆に強すぎて腕が地面から離れてしまった。


 そこに飛んできたのは親父の足。

 この野郎は、必要以上に身体が浮いた俺の背中を足で押し潰し、地面に叩きつけやがった。

 スパルタなんてもんじゃねぇ、俺が何をしたって言うんだよ!?

 ちょっとユルユルおパンツおじさまって呼んで、変態扱いしただけじゃねえか!!


 だが、俺は訓練を続けた。

 50mの化物を一刀両断で殺すには、並みの訓練じゃ不可能だって分かってるしな。



「ユニク、背中から惑星重力制御の波動を出して、腕力と拮抗させろ。これが出来ねえと、破壊力が高い攻撃を放った際に反動で吹き飛ばされるぞ」

「……それって、人間が出来る事なのか?」


「少なくとも、俺はお前と同じ歳の時には出来たぞ」



 やる事は教えて貰ったが、肝心の方法は教えてくれない。

 なんか、聞いたら負けた気がするので、試行錯誤を繰り返しながら腕立てをする。

 一応、間違った事をした時には親父の足が飛んでくるので、指針はあるしな。


 俺が親父の5分の1のスピードで腕立てが出来るようになった時には既に、辺りは薄っすらと明るくなってしまった。

 たぶん、腕立てだけで5000回はしたきがするぜ。

 失敗するたびに1からやり直しをさせるからな、この全裸鬼畜親父はッ!



「ユニクルフィン、水を飲むなんしか?ほれ。」

「あぁ、ありがと……。ごっふぁぁぁぁぁ!?水じゃねぇぇ!?」


「くすくすくす、わっちにとっては、水みたいなもんでありんす~」



 ふっざけんなぁぁ!!この酔っ払いビッチキツネぇ!!

 こんな状態でのイタズラは、死に直結しているんだよッ!!

 流石にこれは我慢できねぇ、文句を言ってやるッッ!!



「俺は人間なんだぞッ!!お前らみたいな化物じゃねえんだぞ!!」

「……。」

「……。」


「なんだその顔!?」



 コイツら……、二人揃って「は?何言ってんのコイツ?」みたいな顔しやがって。

 俺はまだ人間なんだよ。お前らみたいな人外のバケモンじゃねぇ。

 というか、そもそもお前は人間じゃなかったな、ビッチキツネ!



「ちゃんとした水を出してやれ、ギン」

「仕方がないでありんすなぁ。ほれ、リリンサが持って来た土産に入ってた、酒を割る用のジュースでありんす」



 そう言ってギンは俺に瓶を差し出してきた。

 速攻で蓋を破壊し、勢いよく飲む俺。

 あぁ、生き返る……。

『濃縮されていますので、水で割って下さい』とか書いてあるけど、全然気にならない。



「はぁ、マジで腕立てだけで、夜が明けちまったんだが……?」

「まぁ、筋は悪くねぇ。初めてやるにしちゃ、こんなもんだろ」


「初めてやる?昔の俺もこうやってトレーニングしてたんじゃないのか?」

「馬鹿言えよ、身体の基礎も出来てねぇガキにこんな事をさせられるか。昔のお前はグラムの性能を使って誤魔化しながら戦ってたんだよ」


「……今もそれが良いんだが?」

「さっき剣筋を見た感じ、まだそうやって戦ってるみてぇだな。だがそれじゃ、あのタヌキには絶対に勝てんぞ。さっきの準備運動を会得してた若い俺が、パーティーで挑んで負けた相手なんだからな」


「……目標の壁はなんて高いんだ……。お前は本当に……クソタヌキだな……。」



 ちくしょうめ……。森林の陰でタヌキが笑ってる気がする……。

 この結界内にタヌキが侵入した場合、ギンが一匹残らず撃滅しているのでそれはないらしいが……。

 相手はタヌキだし、用心するに越した事はない。



「親父、俺はタヌキを倒せるようになる……かな?」

「タヌキぐらい勝てよ……。と言いたいが、よく考えたら俺もタヌキ帝王に勝ててねぇな」

「わっちも、那由他様にだけは、逆らえんでありんす……」



 あぁ、誰ひとりタヌキに勝ててねぇじゃねえか……。


 俺は意地と決意を改める為、オレンジ色の太陽が朝露を照らす中で、新たな目標を叫ぶ。

 それは、セフィナを手に入れ、白い敵に打ち勝った後に行う……俺の人生の目標だ。



「……俺はこの訓練で、お前をブチ転がせるだけの力を絶対に手に入れてやる。だからな……毛繕いでもして待ってろ、クソタヌキィィィィィィィィィィッッッ!!」




 ***********



「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあう……」

「ほれ、リリンサ。ユニクルフィンは返すでありんす―」


「あっ!」

「ふぁ~あ、わっちは寝るなんし~~」



 訓練を終え……られたかどうか微妙な俺は、ギンの空間魔法でリリンの部屋へ送り届けられた。

 まるで、袋に詰めたゴミを集積場所に捨てるように、俺をリリンの前に放り投げたギンは空間魔法の中へ帰ってゆく。


 あぁ……。畳に叩きつけられたが痛くない。

 だって畳だし。

 地面じゃないし、親父の蹴りで勢いもついてない。



「あうあうあう……。ゆ、ゆにく……?」

「あぁ」



 リリンが何故か、あうあう言っている。

 朝食でも食い損ねたのか?



「あ、あぁ……、こ、こんなにボロボロになるなんて……、そ、そんな」

「あぁ、激しい戦いだった」


「は、激しかったのっ!?」

「いや、戦いにすらなってなかった……まったくダメだった。遊ばれただけだ……」


「も、弄ばれたのっ!?!?」



 あぁ、眠い……。

 だから、リリンに構っている暇はない……。

 ひたすら眠くて……、頭が働かないんだ……。



「そ、そんな、まさか……ひ、一晩中っ!?」

「そうだ。始める前は楽勝だと思ったんだ……。だが、技術が違いすぎた……。ひたすら体を動かし続けるしか、俺には出来なかった……」


「そんなになの!?ねぇ、そんなに技術が凄かったの!?」

「あぁ、俺が失敗すると踏まれもした。だから必死に身体を上下させて……あぁー、体中が重い」


「踏まれたのっ!?変態なのっ!?」

「あぁ、変態以外の何者でもないな……」


「ゆ、ゆ、ゆにくが……!ユニクが、私を置いて大人の階段を上ってしまったっ!!い、一緒に登ろうって約束したのにっ!!!」

「……?まぁ、新しい境地は見えた、かな……」



 なんか話が噛み合ってない気がするが、よく分からない。

 今の俺は寝る事しか頭にない。布団……、布団……。あっ、ほんのり温かい。



「えっっ。ま、まさか、今から実践するというの!?」

「実践?いや、普通に寝る……」


「えっ!?あっ!!」

「悪い、疲れてるんだ。寝かせてくれ」


「え、あ、ちょっと待って欲しい!!」



 いや、悪いが待てそうにない。

 もう、睡魔が……。タヌキパジャマを被ったアホタヌキが、ほら、すぐそこに……。


 あ、そうだ。これだけは言っておかないと……。

 リリンだって、心の準備があるだろうしな……。



「ゆにくっ!起きて、だめ、ゆにくっっ!!」

「リリン……」


「ゆにくっ!!」

「今夜は、リリンも一緒だって、ギンが言ってたぞ」


「えっっっっっっ!?!?!?」

「初めは戸惑うかもしれないが……、一緒に頑張ろうな」


「い、一緒にするの!?初めてなのに外でするの!?」

「すまん、もう、限界だ……。ぐぅる、ぐぅる……きん、ぐぅぅ~。」


「ゆ、ゆにくっー!!」



 リリンが激しく俺の体を揺さぶっている。

 だが、親父の蹴りに比べれば、優しくあやされているのと変わらない。


 あぁ、疲労困憊で眠るのって、こんなに気持ちいいんだな……。

 大魔王なリリンさんに激しく抱かれながら、俺は、安らかな気持ちで眠りについた。


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