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第23話「懐かしき思い出・考察者カミナ」

「むぅ……せっかく良い雰囲気だったのに。邪魔しないで欲しいと思う!」

「あえて真顔で言うわね、リリン。……アレのどこら辺が良い雰囲気だったのかな?確実に加害者と被害者の関係だったわよ」



 腹ペコ大魔王に捕食されかけていた俺を救ってくれたのは、女医系大魔王さんだった。

 というか、カミナさんは入口に立ってニヤニヤしていただけだが、きっかけを得るという意味では役に立ったし、助かったという事にしておこう。


 さてと、いい感じに雰囲気がブチ壊れたし、流石のリリンもカミナさんがいる前で迫って来る事は無いだろう。

 ……ないよな?

 もしそんな事になってカミナさんが悪乗りしてきたら、大変な事になるんだが……無いよな?


 ……。

 なんか妙に怪しい気がするし、話題を変えた方が良さそうだ。

 出番だぞ!ホロビノ!!



「カミナさんが来たって事は、ホロビノはしっかり任務を果たしたんだな」

「ちゃんと来たわよ。それに私が言い付けていたお使いも、ちゃんとしてくれたわ」


「私が言い付けたお使い……だと……?」

「そうよ。この間のミニドラは両方ともオスだったから、今度はメスを連れて来てって言っておいたの」


「……。ってことは、つまり?」

「私のラボの検体……もとい、ペットが4匹に増えました」


「そうじゃねえかって思ってたぞ、ホロビノッーー!!」



 やっぱり売り飛ばしてやがったかッ!!

 というか、カミナさんの話が本当だとすると、売り飛ばす為に誘拐してきた可能性すらあるんだがッ!!


 おい、いいのか?希望を戴く天王竜。

 ドラゴンの希望たるお前が、将来有望かもしれないドラゴンを攫ってきて売り飛ばして、いいのか!?


 ……ダメだろ。

 やっぱりアイツは、眷皇種・『希望を戴く天王竜ウィルホープ・ウラヌス』なんていう大層な奴じゃなねぇな。

仲間を裏切る駄犬竜ウィルカール・ウラギル』のホロビノだッ!!



「カミナ!ミニドラに別の名前を付けないで欲しい!!この前の赤いのはナイトメアで、青いのがディザスター!決して、モルモとテスタなんていう名前ではない!」

「あら、私じゃないわよ。その名前を付けたの」


「え?違うの?」

「違うわ。名前を付けると愛着が湧くから、名付けないのがセオリーだし。でも、ミナチ―が気に入っちゃってね。私のって言うより、ミナチ―のペットになりつつあるわ」


「そうなの?じゃ、モルモって名付けたのも?」

「ミナチルね。ま、それも一時的なものだったわよ」


「ん?どういうこと?」



 ……モルモとテスタって名付けたの、ミナチルさん(小悪魔ナース)の方だったのかよ。

 だが、ナイス判断だと言わざるを得ない。


 名前を付けないのがセオリーだしって、実験体にする気満々じゃねえかッ!!

 モルモやテスタという名前が慈愛に満ちてると思うようになるなんて、カミナさん大魔王すぎるだろ!

 というか、暫定で一番酷い気がするんだがッ!?


 ここで、大魔王さん達がドラゴンにした仕打ちを思い出してみよう。



 空腹大魔王……『伝説のドラゴンを飼いならし、馬車代わりにしている』

 聖女大魔王……『迷子だと知りつつもピエロをブチ転がした上に、戦争に利用した』

 女医大魔王……『世界で2番目に強い竜皇の息子のムスコをスポイトした挙句、連れている子分を実験体扱い』

 女王大魔王……『今の所なにもしていない。ドラゴンの代わりにゲロ鳥を愛でている』



 ……ダントツでカミナさんが悪いじゃねぇかッッ!!

 あぁ、ミニドラの今後が心配になる。

 というか、合体してヒュドラみたいになってたらどうしよう。


 あの時のヒュドラは頭が5つだったが、こっちは頭が6個だ。

 ミニドラ4匹に、モウゲンドとウワゴート。


 想像すると気持ち悪すぎだろ。

 オッサン面が『ぐるぐるけ~』っと鳴くとか、色んな意味でヤバすぎる。


 流石にこんな事を言ったら俺も材料にされそうなので、心の中で封印。

 それよりも、カミナさんが言った事にリリンが食いついた。

 名前が一時的ってどういうことだ?



「カミナ、名前を付けたのが一時的ってどういう事?」

「あのミニドラ達って凄く賢いのよ。見た事もない新種だから生態を調べていたんだけど、ちょっと目を離した隙に……」


「……え?逃げられたの?」

「いや、観察記録用紙に鉛筆で文字を書いて、待遇の改善を懇願してきたわ。その時に名前も書いてあったから判明したの」



 鉛筆で文字を書いただとッ!?

 駄犬が連れてきたとは思えない賢さッ!!


 カミナさんの言葉を聞いたリリンは目をキラキラさせながら、「生まれたてなのに文字を書けるとかすごい!」と平均的な興奮顔で騒いでいる。

 だが、問題はそこに無いと思うのは、気のせいだろうか?



「へぇー文字を書いたのか。それで、なんて名前だったんだ?」

「赤いのが『ドリム』で、青いのが『ウィリス』よ。なお、ここに来る前に書かせたら、黄色いのが『ヴァリュレス』で緑色が『ライフィー』だったわ」

「赤がドリムで、青がウィリス。それに黄色がヴァリュレスで、緑がライフィ……」


「……なんか威厳が溢れてるような気がするな。すごく」

「ドラゴンの倫理観とか知らないけど、名前なんて良い意味で付けるし威厳が有っても不思議じゃないわよ。ちなみにライフィがメスね」

「むぅ。むぅ……覚えた!」



 威厳があっても不思議じゃない……か。それはどうだろうか?


 カミナさんは知らないだろうが、高位ドラゴンは死ぬと転生して子竜になるらしい。

 だとすると、ミニドラ共もヤバいドラゴンの転生体である可能性はゼロではない。


 というか、生まれたてのミニドラが人間の文字を書けるって、どう考えてもおかしいだろ。

 アホタヌキが地面に書いていた文字はタヌキ文字で、解読不能だったしな。

 よくよく思い出してみれば、ナイトメアはリリンの第九守護天使にヒビを入れたし、ディザスターは高位魔法っぽい物を使って地面の中を泳いでいた。


 ……。

 おい、ホロビノ。

 お前、カミナさんに従順な振りをして、内部にトンデモねぇ爆弾を仕込んだんじゃねえだろうな?



「まぁ、私としても娯楽としてちょうどいいわ。タヌキは捕まえ損ねたし」

「タヌキを捕まえ損ねた?カミナ、何の話?」


「リリンにも言ったと思うけど、ユニクルフィンくんと森へ行った時に出てきたタヌキを捕まえて飼おうとしたら、逃げられたのよ。あれも特殊個体っぽかったし惜しいことしたわね」

「そういうこと。……分かった。今度見かけたら、健康診断をしに行くように勧めておく!」



 俺がシリアスムードで考察しているってのに、速攻で話題を搔っ攫っていくんじゃねえよ、アホタヌキ!!


 というかリリンもおかしいだろ!?

 アホタヌキに健康診断を勧めるってどういう事だよッ!?

 アイツは妖怪に変身するし、どう考えても実験体コースだろ!



「そう言えばさ、リリンとユニクルフィンくんは竜の眷皇種に会ったんだったわよね?どうだった?」

「冥王竜の事?」


「そうに決まってるじゃない。やっぱり凄かった?」

「凄いなんてもんじゃない。あのまま戦ってたら確実に死んでいたと思う!」


「へぇーリリンですら生存が絶望視されるレベルかー。いいわね、そそられるわ。どうにか捕まえて検体にしてみたいものねー」

「うーん。カミナでも難しいと思う!」



 あれ?カミナさんは、ホロビノが眷皇種であり、冥王竜を従えている事を知らないのか?

 今の話の流れからすると、ホロビノを調べれば良いって結論になりそうなもんだが?


 なるほど、ワルトの奴、カミナさんに情報封鎖を仕掛けてるな?

 カミナさんの性格から察するに、ホロビノの正体を知れば余裕で監禁とかしそう。

 たぶん、ワルトはリリンの事を思いやって黙っていたに違いない。

 なら、俺も隠した方が良さそうだな。


 俺は別の話題を切り出しカミナさんの意識を反らそうと、口を開きかけた。

 だがタイミングが悪く、先に会話が始まってしまった。



「それにしても、よく逃げ切れたわね。流石はワルトナって事かしら?」

「それは違う。あの時はホロビノが、もぐぐ!」



 うわぁああ!速攻でバレそうなんだが!!

 俺はリリンの口に非常事態用に隠し持っていたクッキーを詰め込み、口封じ。


 だがそんな露骨な対応をすれば、カミナさんにはもろバレだ。

 実際、一片も曇り無い良い笑顔で「どういうことかな?」と威圧してきている。



「あの時はホロビノが仲裁に入ってくれてな。ドラゴントークが盛り上がって和解したみたいだぞ」

「殺意むき出しの敵と和解?ちょっと不自然よね?」



 まずは一手目。

 真実を見せて、土台固めだ!



「ホロビノって白いだろ?冥王竜が言うには白い竜は珍しいらしくてな、人間で言う所のアイドルみたいなもんなんだってさ」

「あら?白天竜は絶滅危惧種だって思ってたけど、ドラゴンから見ても珍しいのね?」


「で、会話さえ始めてしまえばホロビノのターンだった。そして華麗に説得し、最後には冥王竜がホロビノを自宅に誘ってたくらいだ」

「ホロビノは各地でドラゴンと交流しているものね。話術が上手いのかしら?」



 よし!!何とか逃げ切ったぜ!!

 話の大筋を踏襲しながら、ホロビノの正体については隠しきった。


 だが俺は油断しない。

 敵は大魔王。ここはさらに別の話題を振って、ダメ押しをしておこう。



「というか実は、カミナさんだって眷皇種に出会ってるんだぜ?」

「そうなの?いつの話かな?」


「それはな……。あの時に捕まえ損ねたタヌキの小さい方!奴はタヌキの眷皇種でありカツテナキ絶望ッ!!その名も、『タヌキ帝王・ソドム』なんだッ!!!」

「……。タヌキが性癖だからって、妄想を語るのはやめなさい」


「真顔で怒られた!?だが、俺は何度でも言うぞ!!アイツはタヌキ帝王だッ!!カツテナキ・クソタヌキだッッ!!」



 カミナさんはとっても良い笑顔で、腰に付けていたポーチからライトを取り出して、俺の眼球の動きを観察。

 さらに首筋に手を当てて体温や脈拍を計ったり、手の色や挙動を確かめたりして、俺が正常かどうかを検査してゆく。


 そして、ちょっと驚いた声で、「うわ!どこにも異常が無いわ!?」と呟いた。



「精神疾患なら何処かにサインが出るはず。だとすると、真性のタヌキ好きってことなの……!?」

「カミナ。ユニクが言っているそのタヌキは、本当にタヌキ帝王という凄いタヌキ」


「え?ユニクルフィンくんの妄想じゃなくて?」

「そう。あ、ワルトナも目撃してるし、怖がってたから冥王竜と同じ眷皇種なのは間違いないと思う!」


「ワルトナが言ってるのなら信じるわ。なるほどねぇ、どおりで得体の知れない感じがした訳だわ。あれが眷皇種か」



 くぅう!これはワルトナへの信頼が厚いって事だよな?

 決して、俺は妄想する程のタヌキ好きって思われてるって事じゃないよな?


 あぁ、ホント、タヌキが出てくるとロクでもねぇな。

 カミナさんへ警告する気も削がれてしまったし、マジでクソタヌキだ。



「ん、ちょうどいい。タヌキも私の過去に微妙に関わっているし、一旦判明した事をカミナに話してしまおう」

「それがいいわね。亡くなったはずの家族が生きている上に、葬儀に参列した全員を騙した隠し部屋。そして……リリンの過去を記した日記帳があると」


「カミナ、知恵を貸して欲しい。私達では真実に辿りつけそうもない!!」

「任せて。前回の時とは違い、ここには物証が有る。なら、絶対に答えを導き出す自信があるわ」



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