第2章幕間「リリンサの手記2」
7の月、19の日。ユニクと出会って4日目。
私は昨日、ユニクと初夜を迎えた。
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いや、同じベッドで添い寝をしただけで、想い描いていた通りとは程遠い。
けれども、初めての経験だし手記に記しておく。
そして、今日も色々と想定外の事が起こった。
というかここ最近、ユニクと出会ってから想定外が多すぎる。
レジェやワルトナが居れば、アドバイスくらいはしてくれて、もっと上手に事が運べているだろうか?
………うん。茶かされて終わりな気がする。
まぁ、想定外でありながらも、目指すべき方向にはちゃんと進んでいると思う。
……というか、思いたい。
さて、朝起きるとユニクが狼狽えていた。
え、なぜ?と私も困惑してしまったが、原因はレベルについてだった。
……ユニクは女性経験が無いらしい。
これは間違いない。同じく男性経験の無い私と同じくらいレベルが上がっていた。
あ、そうなんだ。と気持ちが高揚した時、私は大きな失敗に気がつく。
表示には一切変化のない私のレベルを見て、ユニクはどう思っただろうか?
なので、いずれバレるとしても、変な誤解は避けたい。
どうにかユニクの内心に探りを入れようと、私に何かしたか?と質問をしてみる。
結果は、『私には指どころか髪の毛一本すら触る気がない』と。
……ちょっと色々と傷ついた。心とか女としてのプライドとか。
さて、ユニクとお勉強の時間、私の知っている知識を正確に覚えてもらうため、嘘偽りなく話をする。
不安定機構の成り立ちなんかは禁域に封印されていた知識な気がするけど、英雄の息子ならば知っていても不思議じゃないし、別にいいかなと話した。
『登場人物に馬鹿しかいない』とはユニクの感想。私もそう思う。
さて、一通りの話が終わって夕食の時だった。
つい、セフィナの名前を出してしまってユニクに問いかけられてしまったのだ。
正直、こんな重い話をするのは、もっと仲が良くなってからと思っていた。
私にとって完全に不意打ちで、あからさまに狼狽えてしまったし、変な顔もしてたかもしれない。
でも、ユニクは私の家族の話を聞きたいと言ってくれている。
その強い意思に私は押され、洗いざらいの事を話した。
そうしたら、ユニクは泣いてくれた。
ユニクは見ず知らずの私の家族を想い、涙を流して悲しんでくれた。
これだけで、ユニクの優しさが伝わってきて、私の目からも涙が溢れてくる。
私の神託の対象者、ユニクルフィン。
全てを失った私の、最後の、心のよりどころ。
彼の側に使える事が神託によって定められたことを、嬉しく思う。
私は今日、本当の意味で彼に生涯を捧げることを誓ったのだ、ここに明言する。
なお、思わぬ感傷に浸ってしまったため、明日からの練習メニューを変更することにした。
多分に照れ隠しが入っているが、それはそれ。
まず、ドラゴン攻めは鉄板だろう。
ブレイクスネイクの巣に突き落とすのも良いかも知れない。
あとは、野営サバイバルもやりたい。これも確定っと
……ユニクには、私の悲痛な話なんて記憶の角に追いやって欲しい。
暗い過去に囚われるなんて、ユニクには似合わないから。
そして、ユニクのレベルが上がって生活が安定してきたなら、何処かにいる英雄ユルドルードを探す旅に出よう。
英雄に認めてもらうために。