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第11話「大惨事悪魔会談・ユニクルフィン①」

「良いか、リリン。ホロビノルーレットは禁止だ」

「そうだよリリン。というか、使うどころか見せるのですらダメだからね!」

「分かった。ホロビノルーレットは封印する。もともと殆ど使ったこと無いし特に問題ない」



 今までは許されていたとしても、これからも許される保証はない。

 なにせ、ホロビノは何だかんだ言ってお調子者。

 俺と出会った当初、黒土竜の肩を持ちリリンと敵対し、その後、リリンに怒られて華麗に掌を返しやがった事がある。


 つまり、ホロビノは裏切りドラゴンなのだ!

 そんな奴にお仕置きを仕掛けるとか正気の沙汰じゃない。


 そんな事を続けていたら、その内、しれっと他の惑星竜を連れきて復讐されるに決まっている!

 俺はしっかりとリリンに釘を刺し、ホロビノへの嫌がらせを禁止した。

 電話越しでワルトも同意しているし、これでいいはずだ。



「そんな訳で、ホロビノに嫌がらせをするのは命がけとなったからね。ユニも気を付けておくれよ」

「おう。これからはフレンドリーに話しかけた後、頬ずりでもしてやるぜ!」


「……それはやめといた方が良いねぇ」

「なんでだ?」


「ホロビノは男が嫌いだからね。ヘタに触ろうとしたらド突かれるよ」

「そういえば、そんな設定あったな……」


「でも、どうしても頬ずりしたいって言うのなら、僕の頬を貸してあげるけど?」

「それは遠慮しておくぜ!こっちはド突かれる程度じゃすまねぇからな!」


「……。ランク9の魔法でも叩きこんでやろうか、この性癖タヌキ野郎!」



 せ、性癖タヌキ野郎だとッ!?!?

 ふっざけんな!それは、この世界で最も酷い暴言だぞッ!!


 俺は全身全霊を持ってワルトに猛抗議をした。

 こんちくしょうめ!!絶対に謝るまで許さん!

 つーか前々から一言言ってやろうと思ってたし、今回ばかりはキッチリ抗議させて貰うぜ!!

 お前が散々暗躍した結果、俺の性癖がタヌキだって噂になってるの知ってるんだからなッ!!

 レジェンダリア関係の人には、ほぼそうだと思われてるんだぞ!?


 俺とワルトの聞くに堪えない暴言合戦。

 チョコを食べながら様子を見ていたリリンも参戦し、事態はカオスな感じになってゆく。



「ふっざけんなワルト!性癖がタヌキってなんだよッ!?」

「リリンにタヌキパジャマなんて着させてるからだろ!」

「パジャマはユニクの趣味!」


「あれは俺が選んだんじゃねぇ!不慮の事故だって言っただろうが!!」

「事故でも何でも、その後もずっと添い寝してるのは事実だろ!たまにリリンが自慢してくるんだよ、このリア充め!」

「私の趣味は寝ているユニクにイタズラする事!楽しい!」


「タヌキと添い寝する事のどこがリア充!?リアルで獣(リア獣)の間違いだろッ!?」

「うっさい!キミの場合はリリンがタヌキに化けてるだけだろ!?僕なんて、僕なんて……!!」



 10分程言い争いをして、本当に無意味な戦いだと気が付いた。

 いい感じに考察が進んでいたのに、だいぶ台無しだ。


 あれもこれも、全部お前のせいだよ、クソタヌキ。

 心の底から俺の本心を贈るぜ。……絶滅しろ!クソタヌキィ!!




 **********



「すまん、ワルト。熱くなりすぎたみたいだ」

「僕こそごめん。ちょっと予定外の事が多くてイライラしてたんだ」

「……なんだかんだ、二人ともタヌキが好き?」


「「それだけはねぇよ!絶対にッ!!」」



 リリンの特大のボケに、俺とワルトの声が重なった。

 まったく、リリンには俺のタヌキ嫌いは説明したつもりだったが、イマイチ理解できていないらしい。


 ……ここでその話をすると長くなりそうなので、後でにしよう。



「そろそろ休憩も終りにして、本題に入ろうぜ。ワルト」

「そうだねぇ。希望をいただくポンコツ竜の話は切りあげるとしよう」



 ……希望を戴くポンコツ竜か。

 語呂が良いな。採用しよう。



「さて、最後の議題は『ユニクルフィン』についてだ。といっても、本人がそこにいるわけだし、ここからは僕の仮説が主体となるよ」

「いいぜ。実際、色々な事が判明しても俺たちじゃ整理しきれていないんだ。第三者のワルトが仮説を立ててくれるのなら分かりやすいしな」


「うんうん。期待されると話すかいがあるってもんだね」



 俺に関する謎は大きく分けて2つある。


 ・俺は何故、記憶を無くしたのか。

 ・過去の俺は一体何者で、リリンや白い敵にどう関わりがあるのか。


 前者の、記憶を無くした理由については見当も付いていない。

 恐らく白い敵なら何か知ってるだろうが、俺達は手掛かりになりそうな情報をまったく持っていない為、考察のしようが無いのだ。

 確実に何かを知っているはずの親父が動き出しているのが気になるが、なんとなく、白い敵とは関係ない気もするしな。


 だから考察をしていくのは、リリンやセフィナ、白い敵が過去の俺とどういう関係を持っていたのか、だ。

 そして、ワルトもそこを議題にするべく、重々しく口を開いた。



「話を整理していくよ、ユニ。まず、過去のキミは相当な女たらしだった件について」

「むぅ!」

「おいッ!」


「白い敵は言っていたんだろう?『僕はキミの事が好きなんだ』って」

「むぅぅ!!」

「確かに言っていたが、それは俺を手に入れやすくするための嘘だろ?」


「いや、僕はそうは思わない。なぜなら、キミには過去の記憶が無いからだよ」



 どういうことだ……?

 記憶が無い事と、俺に好意があるというのが嘘じゃないのと、どう繋がりがあるんだ?


 じっくり考えても関係性が良く分からない。

 ここは素直にワルトの解説を聞いた方が良いみたいだ。



「記憶が無いのを良い事に、嘘を真実だとユニに吹きこむ。確かにそういう事も出来るだろうし、一時的な傀儡を作るにはベストな方法だ」

「だろうな。もし仮にだが、リリンの代わりに白い敵が迎えに来ていたら、間違いなく俺とリリンは対立していたはずだ」


「だけどね、白い敵はそれが出来ないんだ。なんでって白い敵の目的は、英雄見習いユニクルフィンを手に入れる事。つまり、過去の記憶を取り戻し、失った戦闘力を取り戻した万全なユニクルフィンが欲しい訳だ」

「確かに白い敵は戦力に固執していたように思えるな。……そういうことか」


「記憶を取り戻すのが前提なら、いずれバレる嘘を吐くことは悪手でしかない。心証が悪くなるからね。だから、白い敵が言った『ユニの事が好き』……これは本心のはずなんだ」



 なるほど、面白い考え方だ。

 白い敵は俺に嘘を吐けない、か。


 俺には記憶がないから簡単に騙されるが、騙された事に気が付けば、その人物の事を疑うようになる。

 記憶を失っていない普通の人ならそう簡単に騙せないが、記憶のない俺は些細な嘘でも信じてしまうからだ。

 だからこそ、白い敵は俺からの心証を悪くしない為に、言動に細心の注意を払い嘘を吐かない様にしていると。



「白い敵は俺の事が好き。つまり、白い敵と俺は友好的な関係性だったと言ってる訳だな?」

「そういうこと。もてる男は辛いねー」

「ダメ!ユニクは私の!!ヤジリには絶対に渡さない!!」



 だとすると、あのヤジリさんは俺の事が好き……だと?

 まぁ、観客席から見ていた限りじゃ素直な性格じゃないし、ツンデレと言えなくもな――、こんなツンデレがあってたまるかッ!!

 どんだけ綿密に計画してんだよ!6年だぞッ!!6年ッ!!

 大規模すぎるだろッ!!


 つーか、その仮定は矛盾してる気がするんだが?



「言いたい事は分かるんだが、俺の心証はぶっちぎりに最悪だぞ?リリンの人生を滅茶苦茶にした奴を許せるわけがないだろ」

「そうじゃないとしたら?」


「……なに?」

「リリンの人生を滅茶苦茶にしたのは白い敵じゃない。もしくは、なんらかの事情があってするしかなかった。考えれば理由なんていくらでも思いつく」


「ヤジリさんもそうせざるを得ない理由があったって言いたいのか?」

「そうさ。……それに、白い敵は確実に重要人物だよね?」


「あぁ、それは間違いないだろ」

「で、白い敵は持っていたんだったよね?『黒いゆにクラブカード』をさ。そして、リリンも同じカードを持っている」



 ミナチルさんの情報によると、ゆにクラブカードは俺の過去を知る人物に授けられたという。

 それには赤、金、黒の三種類があり、階級が上がって行くらしい。


 だとすると、最上級の黒いカードの所持者は重要人物だと確定したことになり、必然的にリリンも俺の過去を知る重要人物だという疑惑が浮上する。

 だが……。



「僕が立てた仮説はこうだ。『白い敵とユニクルフィン、そしてリリンサとセフィナ、この4人は過去に出会っている』」

「ワルトナ。私はユニクに出会った記憶はない。それはおかしいと思う」



 ここでリリンから待ったが掛った。

 ワルトの話ではリリンも重要人物であり、俺の事を知っていなくてはおかしい。

 だがリリンは知らないと言っている。


 そして、俺もリリンの意見に同意だ。



「それに、セフィナの証言は白い敵がでっち上げた嘘かもしれないってワルトが言ったんだぞ?」

「いやいや、それは矛盾しないよ。リリンが覚えていないくらいに幼い頃に出会ったのなら……ね」



 リリンが小さい頃に出会っている?


 確かに、赤ん坊の時の記憶がある人物なんて、そうそういないって本で読んだ事がある。

 幼すぎる記憶は消えていくものであり、もの心つく前に出会っている可能性は否定できない。

 そしてそれならば、白い敵がセフィナにでっち上げた証言を誤認させた事にも説明が付く。


 姉であるリリンが覚えていない以上、セフィナは俺の事を覚えていないはずだ。

 だけど、白い敵がセフィナと俺が出会っている事を知っていたのなら、それっぽい事を言うことは出来る。


 記憶の中におぼろげにある、誰か。

 それを俺だと誤認させることで、セフィナをコントロールしやすくしたのかもしれない。



「それだと、私はユニクに出会っているのに忘れているという事になる……。そんな事はないと思う……」

「良いかい、リリン。どんなに楽しい記憶でも忘れることはあるんだ。例えば、家族4人だけで何処かに出掛けた、そんな記憶はあるかい?」


「えっ、4人……?お父さんと、お母さんと、私とセフィナだけで……?確かにあったと思う。あったけど、しっかりと思い出せない……?」

「人の記憶は劣化する。だから、そこから始めるべきなんだ。……僕が示す最初の一手目。それは……キミ達二人の過去をしっかり調べる事だ」



 俺とリリン、二人の過去を調べる事が最初の一手?

 だが、俺もリリンも過去を知る術がない。


 俺の所持品は記憶を失った後に手に入れたものばかりだ。

 思い出のアルバムとかあったら、ここまで苦労していないしな。

 そして、それはリリンも同じなのだ。


 リリンの家は燃えて無くなってしまっている。

 事故で火事になったと思っていた訳だが、今考えれば証拠隠滅としか思えない。

 ん?だとすると……リリンの家には、白い敵にとって知られたくない情報が存在していた?



「過去を調べるか。確かにそれは重要だと思うけど、どうやって調べるんだ?」

「うん。私の家は燃えて無くなってしまっている。当時は空間魔法も使えなかったし、家以外に何かを保管していた場所はない」

「ユニはともかく、リリンについては調べる方法はあるよ」


「そうなのか?」

「うーん?当時の私の行動範囲なんて学校と家と任務先くらいだけど……」

「確かに、幼い少女なんて周囲に影響を与えづらいさ。可愛い子がいるね!くらいの認識だったと思うよ」


「だよな?」

「うん。セフィナと二人でいると、美人姉妹だねってよく言われていた!」

「自分で言うなし。じゃなくって、当時の家族にはもう一人いただろう?」



 もう一人と言えば、該当するのはリリンのお母さんしかいない。

 ……ニセタヌキ?

 アイツは害獣枠だから駆除するべきだ。しっし。



「ん。お母さんのこと?」

「そうだ。キミのお母さんは不安定機構に勤めていた。そして、多くの同僚がいたはずだ」


「確かに、お母さんはみんなから頼りにされていた。エルドやアーベルも、みんな、お母さんの死を嘆いてくれた……」

「それこそが手掛かりなんだ。キミの家族の死には熟練の鑑定士が何十人も関わった。だからこそ、キミが知らない情報もそこにはあるかもしれない」



 ワルトの説明では、リリンの家族の死を鑑定したのは、魔導鑑定士と呼ばれる人達であり、不安定機構が誇るエリート集団なんだそうだ。

 実は、魔導鑑定士は暗劇部員に属する集団であり、非常に高い知能と多彩な知識、特出した魔法の才能を必要とする。

 なりたくてなれる職業ではなく、不安定機構の職員の中でも憧れ的存在らしい。


 リリンのお母さんも昔は魔導鑑定士だったらしく、現在の人員と友好があり、幼かったリリンの将来の夢でもあったとか?

 そして、そこまでワルトは調べたが、流石に優秀な人材が集まっているだけあってガードが堅く、行き詰ってしまったというのだ。



「重要な事だと思って、僕もこそこそ調べていたんだけどさ、魔導鑑定士リーダーの男が近寄ってきて「これ以上調べたいんなら、リリンサ本人が出向いて来い」って言ってきた。僕は指導聖母だぞ!って脅したんだけど、すげなく断られてしまったよ」

「ワルトを煙に巻ける程の人物だと……」


「だからここから先はキミらが自分で調べるしかない。いいかい、キミらはリリンの故郷『エデュミオ』へ行き、リリン自身の過去と家族の死について調べるんだ」


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