第7章余談「たぬきにっき・激闘!999タヌキ委員会!!⑦」
「《儂が食の権能により、世界に反芻するがよい。神壊戦刃・グラム=ヴァニティ》」
那由他は悪喰=イーターへ手を差し込み、突き出された柄を握る。
そして、朱色の閃雷を弾けさせながら、ゆっくりとその剣は抜き放たれ世界に再び反芻された。
それは、鮮血色と暗黒色が混じり合う、混沌の大剣『神壊戦刃・グラム=ヴァニティ』。
ユニクルフィンの持つグラムは鮮やかな赤色なのに対し、こちらのグラムは色合いが深く、ダークな雰囲気を纏っている。
だが、形状はまったくの同一。
性能や秘められた破壊の力に至るまで、一寸の狂いも無く同等だ。
そんな神を殺す為の大剣を手に取った那由他は、きまぐれに振り回し、空間を斬り刻んだ。
那由他にとってはただの素振りのつもりだが、空間が破壊され魔法次元が露出したと理解したタヌキ帝王は、一様に毛を逆立たせて畏敬を発している。
「ふむ。グラムはいつ振るっても良い感触じゃの。ほれ、ユルド、受けとるがよい」
「サンキュー、ナユ。ありがたくこの剣で、タヌキを切り刻んでやるぜ!」
そして、久しぶりのグラムの感触に満足した那由他は気楽な表情で、ユルドルードへグラムを放り渡した。
それをボーっとしながら眺めていたアルカディアは、その剣が自分に向けられる可能性に気が付くと、慌てて声を荒げる。
「そ、それはユニなんちゃらの剣!?何で那由他様が持ってるし!?奪った!?」
「違うじゃの。これは儂の権能により創造せし、『神壊戦刃・グラム=ヴァニティ』。つまり別物じゃの!」
「作った!?那由他様はすごい!う”ぎるあ!!」
一目でその剣の凄さを理解したアルカディアは、それを容易に作り出した那由他を見て、心の底から崇拝した。
今の今まで、本能では絶対者だと理解していたものの、具体的な力を目撃していない。
だからこそ、初めて那由他の力の神髄を見て、心が震えているのだ。
「う”ぎるあ……。那由他様の武器はその剣ということ?」
「よく使う武器の一つがグラムというだけで、これ以外にも無数に所持しておる。長き歴史の中には、儂が本物の神壊戦刃グラムの所有者となり、英雄の真似ごとをやっておった時代もあるしの!」
「な、那由他様が戦ってた時代……。なにそのう”ぎるあん……」
「そん時は、ちぃーと皇種が増え過ぎて人類が滅びかけたことがあっての。料理という文化が消えれば美味い飯が食えん。だから、儂が片っ端から狩ってやったじゃの。グラムでの!」
「那由他様は、その剣を作ったって言った。他にも作れぎるぎる?」
「ふむ、ソドムから儂の権能の説明を受けておらんようじゃの。せっかくじゃし、教えてやるかの!」
その言葉を聞いたアルカディアは勿論、グラムの感触を確かめていたユルドルードや、闘技石段の外側で『お前も死んでこい』コールをしていたタヌキ将軍軍団、観客席で興奮しまくっているタヌキ将軍たちも一同に歓喜に満ちた。
タヌキの遺伝子に刻まれた、憧れ。
それは、自分だけの悪喰=イーターを生み出す事であり、その機能を十全に引き出し、美食の英知を手に入れることだ。
しかし、それを成す為にはあらゆるものが不足している。
技術、魔力、知識。
高度かつ複雑な魔法陣を使用して作り出す悪喰=イーターは、人間が定めた魔法のランク分けで言う所の、『ランク0』。
大規模戦略魔法を超えた難易度であり、そう簡単に作れるものではない。
だからこそ、不足している知識を那由他から得られるチャンスに恵まれたタヌキ将軍たちは狂喜乱舞している。
観客席で暴れまくった結果、苛立ったソドムにのされて気絶したタヌキも出たほどだ。
そして、那由他は語りだした。
その陰で、ユルドルードがひっそりとメモ帳を取り出す。
「儂の悪喰=イーターとは、『食する』という事象が起こす現象を神の力で増大させ、具現化させたものじゃの」
「食べること?」
「そうじゃの。食事とは、『他者を噛み砕き』、『飲み込んだ物体を消化し』、『体内でエネルギーへと変化させ』『それを脳にて解析し』『新たな細胞を生み出す』。つまりはの……」
「つまり?」
「悪喰イーターの能力とは『万物破壊』『分解吸収』『形態変化』『真理究明』『創造』の五つに別れるじゃの」
「えっと、噛んで、飲み込んで、エネルギーにして、理解して、体を作る?」
「うむ!生物は何かを食すると、それらは何に使うべきなのかを瞬時に理解し自動で肉体として生成される。肉を喰えば筋肉を作り、水を飲めば汗を作るといった具合にの!」
「そ、そうだったんだ……。食べ物はおいしければ何でも良いって思ってたし」
「そして、儂は創造の力を使い、グラムを作り出したという訳じゃの!」
那由他の食の権能たる『悪喰=イーター』。
その第五の能力たる『創造』は、悪喰=イーターの中に保存されている知識を元に、複成物を作る事だ。
それが有機物・無機物どちらであっても、言ってしまえば、果実であろうが剣であろうが関係なく、知識さえあれば作り出す事が出来る。
しかし、那由他が知らない未知の物体は作ることは出来ない。
だがそれは、那由他にとっては問題にならない事だ。
那由他は長き時を経て、あらゆるものを喰らって来た。
それは当然、食事として喰らってきた動植物が大半を占める。
だが、人類に対する大厄災という立場でもある那由他は、その身に向けられたあらゆる攻撃も喰らい尽くして生きてきた。
だからこそ、那由他が知らない伝説の武器など存在しない。
全ての神殺しシリーズを含む名だたる至宝の全てを那由他は飲み下し、敗北させてきたのだから。
「さらに付け加えて説明しておくとの、タヌキ帝王達が使う悪喰=イーターは、この5つの能力のどれかを主軸にして作った物じゃの。例えば、ソドムのは『真理究明』。ゴモラのは『創造』、エルのは『形態変化』といった具合にの!」
「すごい。初めて知ったし……。ソドム様が真理究明というのも納得。バナナを食べて産地を当てられるし!」
「ということでの、アルカや他のタヌキ将軍も、自分の悪喰=イーターを出せるように精進するがよい!」
「分かりました!う”ぎるあ!!」
那由他の声にタヌキ将軍一同は頷き、平伏した。
皇たる那由他から激励の言葉を頂くなど、天地がひっくり返る程の恩賞なのだ。
そしてアルカディアは満足げに鳴き声を上げると、いそいそと帰り支度を始めた。
持っていた水筒を空間にしまい、颯爽と立ち去ろうとして……ユルドルードに引き留められる。
「よぉし!勉強も終わった所で、実習の時間だな。アルカ!」
「う”ぎるあ!?逃げるの失敗したし!?」
「逃がすかよ。人類の至宝の威力を確かめておかねえとな。それとも、そのガントレットを俺に返してくれるのか?ん?」
「嫌だし!これはオレンジの次に気に入ってるし!!」
「そうか。それじゃ、たっぷり戦おうじゃねえか!!」
「しまった!?逃げられ無さそう!!」
どさくさに紛れて闘技石段から逃げ出そうとしていたアルカディアの思惑は、ユルドルードに見透かされていた。
屈託のない良い笑顔でグラム=ヴァニティを構えるユルドルードは、速攻でアルカディアの前に回り込むと、バッファを高ぶらせて進路を塞ぐ。
それを見たアルカディアの毛は逆立ち、身は震え出した。
このままだと勝負にならないのは誰の目に見ても明らかであり、それを良しとしない者がこの場には二人いる。
那由他とヤジリは視線を交わし、悪い笑顔で頷き合った。
「他のタヌキ将軍は儂のバッファありで挑んだしの。アルカディアにも掛けてやらねば不公平じゃの!」
「確かにそうだね。あ、せっかくだし飛びきり凄い奴を掛けてあげなよ!」
「良い案じゃの!!では……《皇の紋章!》」
「おー!皇種のみに扱う事が許された『神が与えし特典』のバッファか。いいチョイスだね!」
那由他がハツラツとした声で唱えたバッファの魔法。
それは、皇種として覚醒した者のみが手に入れられる『神が与えし特典』の中にある魔法だ。
超越者となった者は生命としての限界が無くなり、際限なく成長する事が出来る。
さらに、皇種となった者には、神が用意した様々な特典が与えられるのだ。
代表的なもので言えば『完全言語理解』や『魔法次元と繋がり、魔力が桁違いの増える』など、どれも破格な物ばかり。
そして特別なバッファも使用できるようになる。
それこそが那由他が使った『皇の紋章』。
属する種族から生命エネルギーを少しずつ分けて貰い、己が力とする魔法だ。
このバッファが掛けられた瞬間、アルカディアは全世界のタヌキから、ほんの少しずつ力を分けて貰った。
産まれたばかりの赤ちゃんタヌキから、カツテナキ・タヌキ帝王に至るまで、一匹残らず、一定の割合で力を受け継ぐ。
それを理解したユルドルードとアルカディアは、同時に奇声を発した。
「ふっざけんなぁあああああああッ!!」
「ヴぃ!ぎぃるあああああああぁん!!」
ごおおおおおお!!っと吹き荒れる暴風の中心に立っているのはアルカディア。
その額に輝く×マークは変化し、星が描かれた魔法陣へと置き変わった。
皇種見習い、アルカディア。
強すぎる力に自我が飲み込まれかけているアルカディアは、恐るべきおじさまを見据えて、思った事を呟く。
「今なら勝てるし!!おじさまを倒して、那由他様に褒めて貰うし!!」
「あ?」
「ぼっこぼこだし!!オレンジの肥料にするし!!」
「あぁん?……やってみろ」
戦いは唐突に始まった。
仕掛けたのはアルカディアだ。
装備していた千海山を握する業腕へ魔力を巡らせ、その力を強制的に理解する。
アルカディアは、真理究明を得意とするソドムからも力を受け継いでいる。
だからこそ、悪喰=イーターを使用しなくても、自分が触れている物体に限り、解析をする事が出来るようになっていた。
そして、千海山を握する業腕が秘めていた、最も攻撃力がある機能を起動。
ユルドルードまであと3歩という所で正拳突きを繰り出す。
当然、その拳は届いていない。
……だが。
「う”ぎるあ!!」
「そんな場所でな――、ぐふぅ!」
ユルドルードの腹部に痛みが走る。
それは、防御魔法の内側へ直接届けられたアルカディアの鉄拳が腹に突き刺さった事による鈍痛だ。
その衝撃に対し、腹筋に力を入れて耐えたユルドルード。
だがしかし、その拳は一発だけであるはずがない。
「どんどん行くし!!《千手殴打》」
ドドドドドッ!!っと鈍い音が響く。
それは、アルカディアの拳がユルドルードの肉体を叩く音だ。
ユルドルードの目の前3mの位置で、アルカディアは乱舞している。
シャドウボクシングの様に、見えない敵を打ちのめす動きで、ひたすらに拳を打ち出しているのだ。
そして、それらは全てユルドルードの肉体へ直接届いている。
これは、千海山を握する業腕の機能『混沌なる時間軸』による、絶対必中・防御無視たる攻撃。
この能力は、目標とした対象物の、『過去』『現在』『未来』を同時に出現させ、混線させる。
つまり、防御魔法が掛っていない過去のユルドルードの肉体を呼び出し、現在のユルドルードと混ぜる。
それにより、防御魔法は一瞬だけ消滅。
今度はそこに、拳が着弾した未来のユルドルードの肉体を混ぜることで、アルカディアの拳がダメージを与えるのを確定させているのだ。
殴打は続く。
皇たる那由他のバッファを得た事により、一撃で岩盤を粉砕する威力を秘めた拳。
並みの生物では即死。
それを受けたのがミリオンに達していない皇種であっても、手痛いダメージとなる殴打の嵐は、延々と続く――、かと思われた。
アルカディアが気付いた違和感は、拳が当たった時の感触の変化だ。
鋼鉄のようだったユルドルードの肉体が軟化し、返ってくる感触が柔らかくなってきたのだ。
その手ごたえの無さに、「おじさま?死んだ?」と、ほんの少しだけアルカディアは拳を緩めた。
そして、そんな絶好のチャンスを英雄ユルドルードが見逃すはずがない。
帰ってくる手ごたえが『空振り』となった瞬間、アルカディアは吹き飛んでいた。
振るわれたグラムの余波に巻き込まれ、天高く舞い上がる。
「良いパンチじゃねえか、アルカ。見直したぞ」
その声は、普通の声だった。
怒りに燃えるでもなく、ダメージに喘いでいるでもない、何の変哲もない声。
まったくの無傷。
舞った土煙で汚れただけのユルドルードは、吹き飛んだ先で地面に伏しているアルカディアに歩み寄る。
「う、嘘だし……!?全然効いてないなんて、ありえないし!!」
「あぁ。驚くのも無理はねぇだろうな。結構、痛かったぜ」
「痛いで済まさないで欲しいし!!死んで!」
「この程度で死んでちゃ、蟲量大数とは戦えねぇんだよ。だから俺は体を鍛えまくっている。週一でナユと戦ってな」
「う”ぎるあ!?な、那由他様と戦ってる!?」
「そうだ。ナユが勝ったら好きな飯を作るという約束でだ。週一で死にかけてる俺からすれば、お前の拳なんざ子供の駄々と変わらん」
「そ、それでも、何度も喰らえば致命傷になるし!!千海山を握する業腕でのダメージは蓄積するし!!爆発もするし!!」
アルカディアが言っている事は事実だ。
千海山を握する業腕で与えたダメージは回復しない。
正確には、ダメージを受けた瞬間が延々と続く状態となり、未来が固定される。
そんな中で、新たな拳が確実に着弾していく。
そして、肉体の耐久値が限界を迎えた時、体を構成していた分子が崩壊し爆発するのだ。
その事を理解していたアルカディアは、絶対に勝てると思っていた。
確かにそれは、千海山を握する業腕と対峙した大半の者が辿る未来だ。
だがそれは、同等の力を持たない下位者に対した時の答え。
ユルドルードが持つ剣、『神壊戦刃・グラム』。
この剣もまた、人知を超えた力を有している。
「ダメージの蓄積か。確かにその方法なら、格上にも勝てる可能性はある」
「だったら死んで!」
「だがな、このグラムという剣は、あらゆるものを破壊する。それは俺の未来であってもだ。他者の能力により未来改変されたとしても、グラムの力で破壊し無効化出来るんだよ」
「剣を殴って無いし!おじさまを殴ってたんだし!!」
「同じ事だ。俺は魔力をグラムへ循環させている。そして、グラムの持つ破壊の力を体に取り込んでいるんだ。つまり、俺にアンチバッファは効かねぇ」
ユルドルードは、アルカディアが繰り出した最初の一発以外は、まともなダメージを受けていなかった。
拳が着弾した瞬間、巡っているグラムの力を使用しダメージを破壊。
アルカディアが感じていた鋼鉄のような感覚は、乗っていたエネルギーが破壊された事によるものだったのだ。
そして、その感覚が無くなったという事は、その対応策すらも行わなくなったという事。
ユルドルードの肉体は、アルカディアの拳が放ったエネルギーに慣れ、適応した。
これにより、受けたダメージと同等のエネルギーを瞬時に放出することで相殺。
こうして、アルカディアは攻撃手段を失ったのだ。
「皇の紋章を掛けられたと言えど、所詮は超越者にもなっていない半端な肉体じゃ完全に力を引き出せないか。警戒する必要は無かったな」
「う”ぃ……まだ、終わってないし!!この力があれば、おじさまなんて倒せるし!!」
「これを見ても、まだそんな事が言えるか?《覚醒せよ。神壊戦刃グラム=神器を斬る者》」
「う”!?」
深紅のフレームから色が抜け落ち、形状が変化する。
一見して理解する事の出来ない、刃から鞘への変化たるそれは、グラムの真なる覚醒だ。
グラムは鞘を持たない抜き身の大剣……ではない。
刃だと思っていた部分こそが鞘であり、強すぎる力を抑える拘束具だったのだ。
ユルドルードが欲したのは、刀身の広い大剣ではなく、力が凝縮された細身のロングソード。
だからこそグラムはその願い答え、姿を変えた。
今まで刀身だった鞘から真なるグラムを抜き、ユルドルードは真正面に構える。
溢れる暗黒により、その形状は判別できない。
だが、確かにそこには死があると、アルカディアの本能は悟った。
「……。怖いから終わらせて。おじさま」
「分かった」
たった4文字の別れの言葉。
それを聞いたアルカディアは目を閉じて、その時が来るのを待った。
**********
やがて気が付いた時には、アルカディアは闘技石段の待機場所に立っていた。
何が起こったのか、分からない。
だが、さっきまで自分に野次を飛ばしていた同僚が、すんごい目でこっちを見ている状況を省みて、死んだのだと思った。
そして、アルカディアは視線を闘技石段の上に向ける。
「本日の試験の結果、帝王に進化を果たしたタヌキ将軍はゼロとなりましたッ!!いやー流石に、神ですら無傷では済まないグラムを抜かれちゃ、勝ち目がないってもんだね!」
「っち。箸とジョッキで勝つつもりだったんだがな。なんか、負けた気分だぜ!」
「えー!せっかくこんな間近で英雄の戦いが見られるチャンスなのに、ソレは無いでしょ!?」
「へいへい。で、俺は勝ったわけだが、あんたの正体を教えてくれるのか?」
「あー。そう言えばそんな約束してたっけ。いいよ、教えてやろうじゃん。ボクこそが、か――」
「待つのじゃの、悪逆」
律儀に約束を果たそうとしたヤジリへ、那由他は声を掛けた。
その表情は悪い笑みを浮かべており、ソレを見たユルドルードの顔は逆に渋いものとなる。
そして、若干苛立った声で那由他へ問いかけた。
「なんだよナユ。俺はタヌキを全滅させたんだし、文句ねえだろ?」
「ふむ。確かにタヌキ将軍は全滅したの」
「なんだその引っ掛かる言い方は?」
「いやなに、まだ帝王試験は終わっていないということじゃの!」
「いや、終わっただろ。タヌキの全滅で」
「これは試験じゃの。だからこそ、不合格者へ模範解答を示す所までが試験の一環となっておるじゃの!」
「模範解答だと?何が言いたい?」
遠回しな那由他の言葉に、さらに眉間にシワが寄っていくユルドルード。
だいぶ慣れてきたとはいえ、世界で3番目に強き者との距離感を完全には掴み切れていない。
それに、那由他もワザとやっているのだ。
最近になって食以外にも道楽が増えたと、密かにエルドラドへと告げている。
そんな那由他が、ユルドルードと一緒にいる理由。
それは決して、美味い飯が食えるからだけではない。
こうした何気ない一瞬が、那由他は楽しくて仕方がないのだ。
「ユルドよ。我がタヌキ帝王の一匹を選び、戦うじゃの。世界の頂とはこういうものだと、弱き将軍たちへ示すのじゃ!!」




