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第7章余談「たぬきにっき・激闘!999タヌキ委員会!!⑤」

「……きゅあらぁ?きゅあららら~?」



 闘技石段に叩き落とされたホロビノは、可能な限りバカっぽい鳴き声を上げて、場の空気を誤魔化し脱走を狙っている。

 なんで自分がこんな所にいて、よりにも寄って那由他が率いるタヌキ軍団に囲まれているのかが分からないのだ。


 そもそも、リリンサによって夜のホテルに呼び出された時には既に、嫌な予感がしていた。

 だが、その時点では、まさかタヌキ大集合の現場に行く事になるとは知らず、リリンサから「闘技石段を見てきて欲しい。そこにアルカディアがいるからピンチになったら助けてあげて。……《第九識天使ケルヴィム》」と言われてしまえば、行くしか無かった。


 しかも、ホロビノはその『アルカディア』が、ソドムの下僕の『アルカ』だと知らなかった。

 だからこそ、リリンサの友達の『アルカディア』という人物が、何かの危険に巻き込まれていると思ったのだ。


 不可視化の魔法を自分に掛けて、こっそり闘技石段へ向かったホロビノ。

 次第に近づくにつれて嫌な気配を感じ始めたが、巧妙に隠されていて正体が掴めない。


 やがて、闘技石段の上に到着し、中を覗き込もうとした瞬間……神をも縛る閃光が轟いた。



「覗き見とは、趣味の悪いドラゴンやで!」

「きゅあらッ!?」



 瞬間的に防御の魔法を構築し対応したものの、自分に掛けていた対魔法スキルを破壊されたホロビノは、そのまま闘技場から発せられた魔法に絡め取られ別空間に隔離されてしまった。

 そして、天に昇って来たエルドラドと戦闘になり、今に至る。


 闘技石段の上で伏していたホロビノは、何事も無く立ちあがると、軽快な挨拶をして飛び立とうと翼を広げた。



「きゅあら~。きゅあっす!」

「待つじゃの、ホープ。丁度いいから戦っていくじゃの」

「そうそう。第一、いくら白天竜だからってボクの結界を簡単に抜けられると思わないで欲しいなー!」


「きゅぐろっ!?きゅあららら!?!?」



 ホロビノは、絶望した。


 この場には那由他がいる。

 それはタヌキ大集合を見れば間違い様が無く、ソドムを含むタヌキ帝王が纏まってダベッているこの光景を見ても明らかな事だ。

 だからこそホロビノは、この場の支配者は那由他だと思った。


 そして、那由他の性格は気まぐれで、やりようによっては脱出できるかもしれないと希望を抱いていたのだ。

 しかし、那由他の横には更なる格上、いや、この世界の理を超えた存在がいた。


 ホロビノは速攻でひれ伏し、頭を闘技石段にこすりつけた。

 ブルブルと震え、薄らと地面が湿ってゆく。



「ふむ、悪逆にビビりまくっておるのー」

「もうボクは怒って無いってのに、ドラゴンのビビり方は半端じゃないよね。そんなんだからタヌキにボコられるんだよ!まったく!!」

「……なんだこの混沌とした空気感。タヌキの試験どこいったッ!?」



 思わずツッコミを入れてしまった程、ユルドルードは困惑している。

 ホロビノはこの世界でも上から数えた方が早い程の格上であり、ユルドルードにとっても敵対したくない化物の内の一匹だ。


 そんなホロビノが怯えまくっている。

 それが、ユルドルードには納得できないのだ。



 なんだこのヘタレドラゴン。天龍嶽で見た時は偉そうにしてただろ。

 まぁ、ナユに怯えるのは分かる。

 アイツはドラゴンを喰い散らかしやがったし、昔の姿のままならいざ知らず、今の弱体化したコイツじゃ止められねえだろうからな。


 だが、悪逆とかいう指導聖母に怯えているのは何でなんだ?

 もともとこういう性格なのか?

 リリンちゃんのペットだというし、実際、コイツに掛ってる魔法は『第九識天使』。

 ランク0の『原初識聖界ケルヴィムオリジン』じゃないあたりが妙にリアルだし、間違い無いだろう。


 リリンちゃんのレベルは7万。

 そんな微妙なレベルの人物に使役されている。

 少なくとも、命令されて来たってことは、対話をする立場ってことだよな?


 ……謎だ。

 今日になって謎が増えまくってやがる。が、恐らく、悪逆の正体は……。



 答えを導きだしそうになり、ユルドルードは思考を打ち切った。

 触らぬ神に祟りなし。

 英雄という立場上、わざわざ禁忌に触れに行く必要はないとの判断だ。



「きゅあら?きゅあららら?」

「なぁに、取って食おうという訳ではないじゃの」

「そうそう、ボクらはお祭中でね、キミにも参加して欲しんだよね!で、やる?やらない?」


「きゅあっす!」

「うむ!頼むじゃの!ホープ!!」

「是非、タヌキに眷皇種はこういうもんだというのを教えて欲しいね!タヌキは食い意地優先で、イマイチ迫力が欠けるしさ!」


「きゅあららら!!」



 平服の体勢から直立不動の二足歩行へと切り替えたホロビノは、空に立つ絶対者に礼を尽くした。


『伝説のドラゴン、タヌキに最敬礼をする』


 ユルドルードは、胃のあたりが痛くなった気がした。



「で、ナユ、コイツに何をさせる気だ?」

「ふむ、現状、タヌキ将軍に勝ち目はないじゃの。だから少し難易度を下げる。サービス問題じゃの!」


「伝説のドラゴンを、サービス問題扱いするんじゃねえ!」

「じゃが、実際、お前さんと比べても今のホープは弱いからの」


「ん?そうなのか?」

「体内の魂の残量がほぼ無いじゃの。あと一、二度死ねば転生は不可能となり、事実上の死を迎える。そうじゃの?ホープ」



 那由他の視線を受けて、ホロビノはたじろいだ。

 ソドムを中心とした一部のタヌキ帝王にはバレているとはいえ、こんな大っぴらに暴露して欲しく無い。

 だが、那由他の問いに沈黙できるはずも無く、可能な限り弱々しく鳴いて誤魔化すのが精いっぱいだ。


 ますますヘタレドラゴンだと思ったユルドルードは、「なんか、難しい理由とか無く、普通に飼われているだけな気がする」と謎のひとつに答えを出した。



「つまりコイツは死にかけで、弱ってるからタヌキ将軍でも勝ち目があると。そういう事だな?」

「そうじゃの。もともと、そこの『ニライカナイ』『ニブルヘイム』『ヴァルハラ』はタヌキ帝王になる地力はあるじゃの。試験にも20回ほど落ちとるしの!」


「それは、資格がねえから落ちてるんだと思うんだが?」

「そんな訳で、たまにはサービスをしてやってもいいと思うじゃの。もちろん、タダ働きではない。ホープにはそうじゃの……情報を教えてやるじゃの!」


「情報?」

「ふむ、ホープよ。お前と戦い傷ついた『鎧王蟲がいおうちゅう・ダンヴィンゲン』は三回の羽化を繰り返し、完全態に戻っておる。気をつける事じゃの」



 那由他がホロビノに与えたのは、誰の耳にも明らかな、忠告。

 だが、それはホロビノだけに向けられたものではないと、ユルドルードは理解した。



 今の忠告は、俺に対しての恩賞でもあるんだろうな。

 ナユの奴は遠回しに、俺にも注意しろと言ってるはずだ。


 鎧王蟲・ダンヴィンゲン……。恐らくは蟲量大数の眷皇種の中でも最上位。

 そして、今の俺じゃ恐らく――。勝てない。


 その名、覚えたぜ。

 ……サンキュー、ナユ。



 ユルドルードは視線を那由他から外すと、ホロビノへ向けた。

 そしてホロビノは真っ青な顔で「きゅあら!?」っと鳴いている。


 あ、これはまったく期待できねぇ!と、ユルドルードはしみじみ思った。



「さぁさぁ!話は纏まったかな!?じゃあ、再開するとしましょうか!!ほい、じゃ、始め!」

「何事も無く始めやがっただと……。しかも雑だし!」


「「「ヴィギロアッ!」」」



 必死になって闘技石段にしがみつきながら様子を窺っていたタヌキ大将軍たちは、千載一遇の勝機を見い出し、興奮した。

 なにせ、目の前の白きドラゴンは圧倒的に弱そうなのだ。


 このタヌキ将軍たちは、今まで20体の皇種や超越者と戦闘をしている。

 基本的には皇種であったが、たまに混じる変な蟲の時など、本気で死を覚悟するほどだ。

 いや、実際に、死亡した事が数度ある。

 その度に那由他の手により蘇生され事なきを得ているという、ある意味で超苦労タヌキ達なのだ。


 だからこそ、レベル6万に満たないドラゴンなんて、脅威とは思わなかった。

 各々が鼻息を荒げ、召喚していた悪喰=イーターを構える。


 そして、速攻で喰らい尽くしてやる!と、それぞれが最も得意とする方法でホロビノに襲いかかった。



「「「ヴィィギロア“ァ”ァァァ!!」」」

「………………………。きゅあはぁん《天王の環(ウラヌスインパクト)》」


「「「ヴッ!?」」」



 チュドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!


 当然ながら、ホロビノは戦闘形態だ。

 ついさっきまでエルドラドと空中大決戦をしていたのだから、普通に当たり前の事だ。


 エルドラドは鎧を召喚しておらず本気ではなかったが、ヴァジュラを覚醒させており殺傷能力は十分。

 それに対応するためには、ホロビノも魔法陣を複数展開しての全力戦闘形態を取るしかない。


 だからこそ、戦っていいとヤジリが口にした瞬間、速攻で頭上の魔法陣へ魔力を巡らせ、必殺技を放った。

 怒りと、恐怖と、苛立ちと、殺意と、不快感と、殺意と、優越感と、殺意。

 様々な感情を乗せたホロビノの咆哮は、闘技石段の一角を粉微塵に吹き飛ばしてゆく。


 そして、土煙が晴れたあと、タヌキの毛一本すら残されてはいなかった。

 光の極地たるその閃光を受けて生き残れる者など、この世界に100匹も居ないのだ。



「これはエグィィィィィ!!白天竜、まったくの容赦なし!!タヌキが木端微塵に爆裂し、成仏していく姿すら見えなかったぞ!?」


「あー。これは本当に死んだって奴か?ナユ?」

「この程度で、神のシステムが破綻するわけがなかろう。しかも、今日作り変えたばかりじゃし」


「……話が矛盾してるぞ?そう簡単に壊れないなら、何で作り直す必要がある?」

「そりゃ、お前さんの子ユニクルフィンが、覚醒グラムで神の魔法陣をぶっ壊したからじゃの。割と危険じゃったし、思わず止めてしまったじゃのー」


「……は?」



 何事も無いかのように告げられたその言葉に、ユルドルードは固まった。

 自分の息子の名前が信じられないタイミングで出てきた上に、その内容も大問題だらけだったからだ。


 ギギギ。っと渋い首を軋ませ、ユルドルードは空を見上げた。

 その手には、神愛聖剣が握られている。



「答えろ、ナユ。さもなくば……観客席のタヌキをぶち殺す!」

「くくく、出来もしない事を吠えるでない。タヌキ帝王が集結しておるこの場で、お主ごときに何が出来るというじゃの」


「あぁ、そうだろうな。タヌキ帝王は俺と戦っても生き残る。が、下位タヌキは全滅だ。神愛聖剣の能力、忘れたとは言わせねえぞ?」

「ふむ。この儂相手に脅しとはの。まぁよい、この場でその剣を冒涜する訳にも行かんしの、答えてやるじゃの」


「……勝った!」



 ユルドルードは内心で勝ち誇った。

 戦闘では元より、口論でもユルドルードは那由他に殆ど勝った事がない。


 世界最高の知識を持つ相手に、口舌戦で勝つ。

 それは、神に挑むのと同じだとユルドルードは知っている。


 だからこそ、ユルドルードは捕虜を取る。

 基本的には飯で釣るが、部下想いの那由他にはタヌキを捕虜に取ることも有効だと、最近になって気が付いたのだ。


 そして、ユルドルードの思惑通りに那由他は口を開いた。

 すごく楽しそうな、良い笑顔で。



「うむ、アルカディアの人化が仕上がったからの、早速、ユニクルフィンを誘惑しに来たじゃの!」

「速攻で大問題だ。だが、流す」


「で、闘技石段で今日の練習をさせようと思ったじゃの。だがしかし、ここで予定外が一つ。ユニクルフィンとアルカディアは別の組に分かれてしまったじゃの!」

「あぁ、ユニクは午前の部で、アルカは午後の部だったのか。まぁ、あのレベルの見た目じゃ、そうなっても不思議じゃない」


「で、ユニクルフィンはグラムを覚醒させたじゃの!」

「大事な所が何も分からねぇ!?つーか、一般人相手にグラムを覚醒させたのか!?確実に死んだだろ、相手!」


「死んでおらん。相手はエルじゃからのー」

「……。は?」


「ユニクルフィンと戦ったのはワイやで!いやー、闇雲にグラムを振りまわすとか、子供に包丁を持たせるようなもんや!」


「んだよ。そりゃ、よ、くねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇだろッ!?」



『ユニクルフィンは闘技石段でグラムを覚醒させ、神の闘技場をぶっ壊した』

 これだけでも大問題であるが、その相手は、タヌキ。


 ユルドルードの額に浮き上がった青筋が、ビキビキと音を出して鳴る。

 一方、那由他はものすごく楽しそうだ。



「おい、ナユ。俺が留守にしている間に、ユニクにちょっかいを出したって事か?ん?」

「儂は見てただけじゃのー。ちょっかいを出したのはエルじゃの!」


「お前が命令したんだろうが!で、ユニクがグラムを覚醒させた?なんでだ?」

「エルの持つヴァジュラを見て思い出したんじゃないかの?昔はよく遊んだと聞いておる」


「……俺は初耳なんだが?ユニク、やけに上達が早いと思ったら、俺に隠れてグラムを使い、しかも、タヌキに稽古を付けて貰ってただと……」



 それを聞いて、ユルドルードは肩を落とした。


 蟲量大数との戦いの最中、時間を見つけてはユニクに稽古を付けていたユルドルード。

 そして、ユニクルフィンは、教えていないグラムの技を使って来る事が時々あったのだ。

 それを見て、「アプリの子に負けず劣らず、俺の子も天才か!」と内心で喜んでいたのだが、その理由がタヌキだったと知って悲しみに包まれているのだ。


 ……よし、この戦いが終わったら温泉にでも行こう。ナユを置いて。


 この瞬間、ユルドルードの次の目標が決まった。



「ちなみにの、儂がちょっかいを掛けたのは、セフィナ・リンサベルの方じゃの!」

「なんだとッッッ!!!!」


「何やら面白そうな事をしとったからの、ちょいと儂の加護を与えてやったじゃの!」

「空前絶後の、大問題ッ!!!」


「で、メリクリウスを持っておったから使い方を教えてのー。無事に覚醒させおったじゃの!なんと、教えてから1時間もかかっとらん!恐るべき才能じゃの!!」

「たったの一時間だとッ!?どんな裏技を使いやがった!?」


「悪喰=イーターじゃの」

「……。は?」


「セフィナは元々、ゴモラの加護を持っておった。しかも親和性が高く、コツを教えてやったらすぐに悪喰=イーターを出しおったの。儂がこの世に生を受けて幾千年。これほど才能に恵まれた奴は初めてじゃの!」

「……。つまり、セフィナちゃんは悪喰=イーターを出せるってことか?」


「そうじゃの!」

「なんじゃそりゃぁああああ!?俺よりも装備が上なんだけど!!負けたんだけどッ!!」



 人類最強だと、ユルドルードは世界の人々から敬られている。

 そして、英雄・ホーライ(妖怪じじぃ)という例外を除き、ユルドルードと戦って勝てる人類はいない。


 だからこそ、ユルドルードは信じられなかった。

 まさか、蟲量大数に対する切り札に成りうる存在が爆誕していたなど、そう簡単に信じられるものではない。



「大問題すぎる……。人類初の悪喰=イーターを持っているのが、セフィナちゃんか……。アプリ、天国から見てるか?お前の娘達は、お前好みのドSばっかりだぞ。嬉しいだろ……?」

「ん?人類初では無いじゃの」


「……なに?」

「後は、ノウィンにでも聞くがよい。お前に対する恩賞はここまでじゃの!」



 強制的に話を打ち切られ、ユルドルードの青筋はビキビキビキと鳴っている。

 今すぐにでもブチ切れそうだが、ナユの言った『思わず止めに入ってしまった』という言葉を思い出し、踏みとどまった。



 ちぃ!イマイチ分からねえ所があるが、ユニクは闘技場でグラムを覚醒させたらしいな。

 で、グラムを暴走し掛けて、ナユが止めに入ったと。


 記憶が無い状態でどうやってグラムを覚醒させようとかと思っていたが、手間が省けた。

 こうなっちまえば、俺が直接出向いて、ユニクに稽古をつけたほうがよさそうだ。


 ちっ。言いたかねえが、ナユに借りを作っちまったみたいだな。

 ……いや、よく考えたら原因もナユで、むしろ、問題を積み上げまくってやがる。

 プラスマイナスで言えば……。絶対零度だ。



「はぁ。もういいや、試験も終わっ……そういえば、アルカを斬った気がしねえな?どこ行った?」

「う”ぎるあ!?バレたっ!?」


「アルカ、お前、ユニクんとこに行って来たんだってなぁ。聞きたいことが山ほどあるぜ……。登って来い」

「い、いやだし!!絶対死ぬし!!毛がボサボサになるし!!」



 アルカディアは速攻で身を返し、脱走を試みた。

 だがしかし、その道は塞がれていたのだ。


 800匹のタヌキ将軍。

 死亡し蘇ったことで那由他のバッファの効果が消え、普通な毛並みに戻っているものの、成長した肉体はそのままで。

 非常に屈強な800匹の視線がアルカディアを貫く。


 そんな、800匹のタヌキ将軍一同は、心を一つにしていた。



「「「「「ヴィーギロアァァッッッ!!!」」」」」



『お前も死んでこいッ!』

 そして、タヌキ将軍たちは完璧なフォーメーションでアルカディアを捕らえると、闘技石段の上に叩き出した。



「う”ぎるあ!……お、おじさま?……手加減して?」

「……普通なら、ドキリとする上目遣いなんだろうが……。なんだその格好は?タヌキがタヌキを着てんじゃねえよ」


「これは……好きで着てるんじゃないし!ユニなんちゃらに着せられたんだし!!」

「なにやってんだよッッッ!!ユニクゥゥゥゥゥ!?!?」



 ユルドルードの感情は、ついに壊れた。

 聞いてはいたが、まさか本当に『ロリコンで、ケモナーで、巨乳好き』だとは思っていなかったのだ。

 だが、目の前のアルカディアは全ての属性に当てはまる。


 ユルドルードは、本日最大のダメージを受けた。

 育児に失敗した親のように途方に暮れ、地面に手を付いて悔やんでいる。



「すまん……。すまんな……ユニク……」

「おじさま?」

「ふむ。今なら倒せるかもしれんの。アルカ、やってしまうじゃの!」

「精神攻撃から始めるとは……。アルカディア、戦闘のセンスあり過ぎだね!」


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