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第7章余談「たぬきにっき・激闘!999タヌキ委員会!!①」

「よく来たのじゃの、アルカ。さぁ、神聖石段に上がってくるがよい」



 最上位のタヌキが一堂に集結する祭典、『999(トリプルナイン)タヌキ委員会』。

 闘技石段の上には、皇たる那由他とその眷属たるタヌキ帝王の群れ。

 観客席には、数え切れないほどのタヌキ将軍の群衆。


 恐ろしき集団を前に身の毛を逆立たせそうになりながらも、アルカディアは勇猛果敢に闘技石段の上へと視線を向けた。



 ……こ、怖い!怖すぎるしッ!?

 ソドム様だけじゃない!!ソドム様と同じくらいの絶大なオーラを放っているタヌキ帝王様が、8匹もいらっしゃる!?

 なのに遅刻しちゃったし!!怒られそうだし!!

 見ないで!

 こ、怖いから……見ないでッ!!



「どうしたじゃの?アルカ?」




 アルカディアはタヌキ帝王たちから発せられるオーラに当てられ完全に委縮。目に涙を浮かべている。

 今から自分が辿るであろう運命を想像しようにも、恐怖が強すぎて思考が止まっているのだ。



 こ、こんなヤバい空気だとか、聞いてない!?

 ソドム様が「まー。慣れだ慣れ。一回目で合格は出来んと思うが、五本の指で数えられるくらいで合格できたら褒めてやるぞ。リラックスして挑め、アルカ」なんて優しい言葉を掛けてくるなんて、変だなって思ったし!

 ゴモラ様やエルドラド様も妙に優しかったし、みんなで私を嵌めていたぶるつもりだと思う!!う”ぎるあ!


 今すぐに平伏して許しを請おうとしたアルカディアは、地面に膝を付けた。

 そして、真っ直ぐに地面へ向かい頭を付けようとした瞬間、那由他の隣に立っていたタヌキ帝王が怒り、口を開いた。



「おい。我らが皇たる那由他様の命令が聞けないのか?この愚図が。さっさと上がって来い」

「う“……う”ぎるあぁ……」



 アルカディアは電撃を受けた様な衝撃を受け、一生懸命に足を動かし――。

 その結果、両手両足を全部同時に前に出し、盛大にすっ転んだ。



「おい……。ぶっ殺してやろうかッ!!愚図めッ!!」

「落ち着けよ、『アヴァロン』。アルカは俺が育ててるタヌキ将軍だ。素質は悪くない」


「ソドム、それは何だ?俺様に対する当てつけか?」

「まぁな。お前の将軍時代よりか見込みがあるのは間違いないだろ」


「なんだとッ!!」



 それはただの口喧嘩。

 だが、それでも、世界を支配する強き帝王たちのものともなれば、それだけで弱者を滅ぼす圧力となる。


 アルカディアは本気で帰りたいと思った。

 リリンサのホテルへ帰り、美味しいオレンジを堪能したいと心から願う。


 だが、それは実現する事は無い。

 今夜開かれる999タヌキ委員会。その主役は……アルカディアなのだ。



「ふむ。緊張しておる様じゃのアルカ。じゃがそれは要らぬ憂いじゃの。なにせ、試験を受けるのはお前だけではないからの」

「……う”ぎるあ!?そうなんですか?」


「そうじゃの。あ奴らを全部ここに呼ぶと狭くてしょうがないから上げておらぬが……。ほれ、あ奴らがそうじゃの」

「…………。岩?」



 アルカディアが見たもの、それは、 茶色い岩石の群れだった。



 なにあれ?あんなもの、昼間には無かったし……?

 いや待って、アレ、何処かで見たような……?



 そこまで思考を進めれば、後は簡単な話だった。

 アルカディアはその正体を察し、驚きの声を上げて、その岩に鳴き声を投げかける。



「う”、う”ぎるあ!」

「「「「「ヴィギロ”ォアァー」」」」」」



 その鳴き声を聞いて、アルカディアの疑問は確信へと変わる。



 あの岩は、ソドム様に召喚された後、ワルなんちゃらによってドラゴンの聖地に送りこまれ、那由他様の悪ノリによって無残な姿にされたかつての同胞たち!!

 随分と声が太くなったし、体も大きくなったから一瞬分からなかった。う”ぎるあ!



 ゴワッゴワな毛並みが800匹並ぶ戦慄の光景。

 確かあの中には、自分と同じメスタヌキも居たはずだと思いだし、アルカディアは心の底から同情した。



「うわ……。」

「うわ。じゃあらへんで。固まって無いで、はよ石段に登らんかい!おら!」


「う”ぎるあ!」



 いつの間にか背後に立っていたエルドラドに尻を叩かれ、アルカディアは涙目で壇上へ駆け昇っていく。

 タヌキ的な感性でも、乙女の尻を叩くのは許されざる事なのだ。


 エルドラドのセクハラに対し言いたい事があったアルカディアだが、今はそんな事をしている場合じゃないと理性で押さえつけ、那由他の前に跪いた。



「アルカよ。ここに来たという事は、帝王になる覚悟があるという事じゃの?」

「……。な――」

「あるよな?アルカ?」


「めっちゃあるし!う”ぎるあ!!」



 身近な絶対者ソドムからの圧力。

 それに耐えうる胆力を、ただのタヌキ将軍たるアルカディアは持ち合わせていなかった。


 表情で笑って、心で鳴く。

 アルカディアは段々と社交術が上手くなっていく自分を感じ、野生に戻りたいと思った。

 ……が、今日食べたオレンジ料理の味を思い出し、やっぱりこっちが良いと思い直す。


 タヌキは食に忠実なのだ。



「ふむ、意思があるとみなすの。……それでは、999タヌキ委員会の開催を宣言するじゃの!今宵の議題は『到達せし801匹のタヌキ将軍の進化の儀式!』。新しき支配者が誕生する事を、この那由他が願うものなり!!」



 小さな体を大振りに動かして、那由他は壮大に宣言した。


 そしてその後ろでは、「801匹って多過ぎだろ」とか、「数だけ数だけ」だとか、「腹減ったなー。バナナ持って無い?」とかいう雑談が聞こえてくる。

 それらは那由他の近くで控えているタヌキ帝王たちが発した声であり、999タヌキ委員会においてはいつもの事だ。


 そもそも、この999タヌキ委員会とは、那由他を中心とした強きタヌキ達が集まり雑談会を行う催しもの。

 今回は明確な議題として『条件を満たしたタヌキ将軍の進化の儀式』というネタがあるだけマシな方で、大抵は食べ物の話で終わるのである。


 そして、それを見守るのは、観客席でひしめく数万匹のタヌキ将軍の群れ。

 このタヌキ将軍は、それぞれのタヌキ帝王に師事しており、皇たる那由他を一目見ようと集まったタヌキ達。

 さらに、それぞれ近くにいるタヌキ将軍同士で情報交換をしており、議題はやはり食べ物の事だ。


 そんな、食い意地張ってる魔獣共の中で緊張して身構えているのは、アルカディアと岩タヌキ軍団。

 アルカディア達は「助けて!」という意味を込めてソドムへ視線を向けてみたが、既に仲の良いタヌキ帝王たちと雑談を始めており、見ていない。


 アルカディアは心の底から帰りたいと思った。

 そして、その視線を皇たる那由他へと向ける。



「あの、那由他様。今日は何をするんですか?」

「聞いておらんのか?ここの闘技場を使って、戦闘を行うのじゃの!」


「誰と……?あの岩タヌキ達?」

「いや、違うじゃの。ま、それの説明は召喚してからするかの。《強制召喚サモンフォース=ユルドルード》」


「う”!?おじさま!?」



 那由他の前に出現したそれは、魔緑に輝く転移魔法陣。


 ただし、強烈な光が点滅し、どんな物体でさえも強制的に呼び出す力を秘めたものであり、他者の干渉を受けづらい。

 名実ともに、この転移魔法陣に干渉できるのは、『蟲量大数』か『不可思議竜』くらいであり、人知を超えた何かである事は間違いない。


 そんな綺麗な光景をアルカディアが眺めていると、魔法陣がフワリと飛び上がり、そこから段々と人間の足が出てくる。

 そして、匂いでユルドルードだと理解したアルカディは、「……なんかカッコ悪い」と呟いた。


 やがて完全に召喚されたユルドルードは、考えていた文句を那由他に告げる為に、演技じみた動きで視線をぐるりと一周させ――。


 360度タヌキに囲まれているという絶望的な状況を見て、速攻で叫んだ。



「なんじゃこりゃああああああああ!?」

「くくく、流石の英雄ユルドルードも、驚きを隠しきれんようじゃの!」


「こんなヤべえ状況で叫ぶなって方が無理だろ!!て、うおぉお!?タヌキ帝王がいっぱいだとッ!?!?」



 ワルトナの接待中に召喚されたユルドルードは、右手に割りばし、左手に酒の入ったコップという晩酌スタイル。

 それは当然、強きタヌキ帝王が蠢く魔郷に行くには、大変に心許ない装備品だ。


 そんな軽装備なユルドルードは最低限の備えとして、箸を持った手を突き出した後、コップに残った酒を飲み干して、抱いている最大の疑問を那由他に投げかけた。



「つーか、ここどこだよッ!?何でこんなにタヌキがいやがる!?いくらなんでも居過ぎだしッ!!」

「999タヌキ委員会じゃの!」


「お前がたまに開いている謎集会かッ!?何で俺を呼んだ!?俺には関係ないだろッ!!」

「ちょっと協力して貰おうと思っての!」


「断るッッッ!!!!絶対にロクな事にならねえからな!!!!!」



 ユルドルードの目線では、可愛らしい子供にお酌され、上手い料理を肴にした静かな晩酌。

「こんな贅沢はいつ以来だ?」と随分と楽しんでいたユルドルードだが、無理やり召喚されここに来ている。


 それだけでも腹立たしい事だったが、「ナユの飯を作らねえと、大陸が滅びかねない」と、素直に召喚に応じたのだ。

 だが、そんなユルドルードを待っていたのはタヌキ地獄。


 昔に比べて随分と丸くなったと自覚のあるユルドルードでさえも、この展開は我慢がならなかった。

 鋭くない割り箸の切っ先を那由他に突きつけ、声を荒げて、叫ぶ。



「ふっざけんな!俺は良い気持ちで晩酌してたんだよッ!!久しぶりに会った子と思い出話を語りながらな!!それなのにこんな、地獄以上に地獄な場所に呼び出しやがってッ!!」

「なに?儂というものがありながら女と晩酌だと?二重の意味で腹立たしい。晩食をするなら、なぜ儂も呼ばないんじゃの!」


「お前の顔を見たくなかったからだけどッ!?いいだろ別に!天龍嶽で散々好き放題やってたじゃねえか!!」

「あれは憂さ晴らし。晩酌は腹ごなし。そして今は暇つぶしじゃの!」


「俺から全部奪っといてそれ言うッ!?」



 悪びれることなくキッパリと言い切った那由他の顔を見て、ユルドルードはついにキレた。

 体に巡っている酒精を飛ばす為に魔力を活性化させ、体内浄化。

 ついでに複数のバッファを起動し、那由他に詰め寄る。



「まず俺を呼んだ理由をはっきり言え。ナユ。話はそれからしようじゃねえか。えぇ?」

「ふむ。では率直に言ってやろう。今ここでタヌキ将軍たちと戦うのじゃ!」


「あ”あ”!?分かるように言えよ!!」

「もの分かりが悪い様じゃの。仕方があるまい。しっかりと説明してやるとするかの」



 かなりの温度差がある二人の態度。

 それを見ているタヌキは様々な感情を抱いているが、その中でアルカディアはラッキーと拳を握りしめる。


 実は、アルカディアも自分が置かれている状況を把握しておらず、どうすればいいのか困っていた。

 ただ漠然と、「出てきた敵をぶっ飛ばせばそれで良い」などという適当な話しかしていないソドムのせいである。


 だが文句を言えるはずもなく、流されるままここに来た。

 状況を理解する千載一遇のチャンス。

 アルカディアは速攻で日記帳を取り出すと、二人の会話を聞きながらメモを取り始めた。



「ユルド。お主は超越者じゃの?」

「は!何をいまさら。当たり前だろうが」


「では、儂の部下のタヌキ帝王も超越者だという事は知っておるか?」

「……そうだろうなとは思ってたが、やっぱりそうなのか?」


「無論そうじゃ。タヌキ帝王とは、いわば英雄と同じもの。タヌキか人かの違いでしかないじゃの」

「段々、話の筋が見えてきたな。だとすると、タヌキ将軍と戦うってのは……?」


「レベル上限突破に必要な条件に、お前さんはぴったりじゃしの!」



 そして、那由他の満面の笑顔を見て、ユルドルードは固まった。

 利用されるのが嫌だったのではない。

 その前段階の、『レベル上限突破に必要な条件』とやらが気になったのだ。



「待て、ナユ。英雄の資格を得る為に必要な条件にぴったりって、お前、条件を知ってるのか?」

「儂は全知の能力を神から与えられし『那由他』じゃぞ。当然知っておるに決まっておろう」


「……。マジか」

「マジじゃの」



 長い沈黙。

 那由他が平然と口にしたそれは、人類が長い歴史を費やしても未だにたどり着けない、未知なる情報だったからだ。


 そしてその情報が喉から手が出る程に欲しいユルドルードは、態度を改め那由他に向き直った。



「お前に協力すれば教えて貰えるのか?」

「もちろんじゃの。そこに美味い飯を用意するという保証が付けば、さらに盤石じゃの!」


「よし。保障してやる!」

「よかろう。超越者になるための条件とは――。無数にある条件の中から5つ達成する事じゃの」


「……5つだと?」



 5つと聞いて、ユルドルードは指折り数えて自分の過去を振り返る。

 その条件に該当しそうな物を思い出しているのだ。


 そして、決定的な要因と思われるものを4つ見つけたが、最後の1つが分からない。

 しばらく考えてみたが結局分からず、答えを那由他に聞いた。



「ダメだ。思い当たる節が4つしか出てこねえ。ナユ、知っている条件を全部話してくれ」

「いいじゃの。よく聞くがよい。これが条件じゃ」



 そして、超越者になるための条件が告げられた。


 ・レベル99999になること。

 ・完全人化を会得し、神と同じ姿を得ること。

 ・皇種を含む超越者を殺害すること。

 ・神の因子、もしくは、神の名を冠する武器を覚醒させること。

 ・皇や超越者から複数の加護を得ること。



「……などが一般的じゃの。他にもいくつかあるが難易度が跳ね上がる。例えばレベル999999(ミリオン)を3匹殺せば、無条件で超越者になれるのー」

「おうそれは無理だ。ミリオンって言えば、『銀』とか『アマタノ』クラスって事だろ?そんな事が出来るなら、当たり前に超越者だろ」



 なるほどこれは良い事を聞いたと、ユルドルードは内心で笑みをこぼす。

 それぞれの条件は難しいものの、絶対に不可能なものではない。

 むしろ、予め条件を知ることで、効率的に超越者へ至れるだろう。



 そうか。一つ心当たりが無かったのは、俺が人間で、そもそも神と同じ姿をしているからか。

 もともと超越者システムってのは、皇種に対応するために人間が開発したものだというし、納得だぜ。



 未だ戦力的には不安の残る息子や親友の子を思いだしながら、ユルドルードはさらに話を促す。



「大体の経緯は理解した。さっきの話から察するに、超越者たる俺を倒して条件の一つを得ようってことだな?」

「そうじゃの。いつもはそこら辺にいる超越者や皇種を捕まえてくるんじゃがのー。色々あってお前さんが適任なのじゃ」


「色々あって?そこ重要だろ。話せよ」

「今回、タヌキ帝王の資格に挑戦するのは、アルカディアを含む、タヌキ将軍801匹じゃの」


「多いッ!!」

「で、それこそ、普通の皇種とかじゃと数の暴力に負ける可能性があるじゃの?一応、儂が直々にバッファを掛けておるしの」


「お前がバッファを掛けたってまさか……天龍嶽を襲撃したあの岩タヌキ共……うわ!良く見たら居るじゃねえか!!というかここ、闘技場だったのかよッ!!岩があるから山かと思ったぞ!!」

「タヌキ帝王はSSRじゃからの。あんまり増えてもありがたみがのー。という訳で、お前さんの出番という訳じゃの!」



 その言葉に、ユルドルードは凍りついた。


 もし、もしもの話しだが。

 801匹のタヌキ帝王が爆誕なんて事になったら、世界はどうなる?


 ……おう。普通に滅びるな。おそらく、1か月もかからん。



 ユルドルードが出したその計算は、昔戦ったソドムを参考に出した答えだ。

 実際にはタヌキ帝王と言えども、その戦力にはバラつきがあるということには気付いている。


 だが、ユルドルードは知っていたのだ。

 タヌキ帝王……すなわち、『那由他の眷皇種』になるという事は『悪喰=イーター』の使用権限が与えられるという事なのだと。

 その凄まじい光景を想像して、ユルドルードは身を震わせた。



「つまり、今ここでタヌキ共を蹴散らさねえと、タヌキ帝王が量産されるって事だな?」

「そうじゃ。ここにおるのは、条件を二つ手に入れたタヌキ将軍じゃ。アルカディア以外は、『レベル99999と儂の加護』。アルカディアは『完全人化と儂の加護』じゃな


「おう、人類絶滅の危機じゃねえか!」

「お主を倒せば三つ目の条件を満たし、『タヌキ帝王見習い』になる事が出来る。ワルトナバレンシアのレベル10万と同じ状態じゃ」


「ん?あぁ、なるほどな。直ぐにタヌキ帝王になる訳じゃなく、前段階があるのか。俺の記憶じゃその状態から抜け出るのが大変なんだが……。ルールを知ってりゃ簡単だよな」




 正確には、超越者とは『レベル100001』以上の事を差し、ワルトナは厳密に言えば『超越者見習い』でしかない。


 那由他が告げた条件を考慮し、それをワルトナに置き換えてユルドルードは思考を巡らした。

 そして、一つの答えを出す。



 なるほどな……。英雄見習いになるのに条件が3つ必要で、さらに追加で2つの条件を満たすと英雄になれるって訳だ。

 だとすると、ワルトが得た条件ってのは『レベル99999になる』と、『完全人化を会得し、神と同じ姿を得る』。そして、『神の名を持つ因子、もしくは、神の名を冠する武器を覚醒させる』この三つか。



 で後二つは、『皇種を含む超越者を殺害する』と『皇や超越者から複数の加護を得る』か。

 前者は分かりやすいが、後者は数の問題だけじゃなく、質も関係してるはずだ。

 たぶんだが、加護から与えられる力が重要なんだろう。



「警告をしておくがの、無暗にこの条件を広めると世界が傾くからの?……事実、英雄が溢れる様な状態となった時は、世界は滅んでおる。増長した人間が互いに戦争を引き起こし、挙句に儂ら始原の皇種に挑み、全滅に近い打撃を受けての」

「過ぎたる力は身を滅ぼすってやつか……。ん?それって、タヌキ帝王でも同じ事が言えるよな?腹をすかしたタヌキ帝王が町を襲撃する未来しか見えないんだが?」


「もちろんじゃの!今のタヌキ帝王はそれぞれ領地を持っておるが、タヌキ帝王同士で縄張り争いなどが起きようもんなら、世界中が火の海になるの!」

「なるほど……世界滅亡の瀬戸際か。くっくっく!……タヌキ共、全員ぶっ殺してやるッ!!」



 そしてユルドルードは覇気を纏い、傍観しているタヌキ将軍にオーラをぶつけた。

 英雄として、いや、人類の一人として、世界の主導権をタヌキに渡してはならないと奮い立ったのだ。


 そんな光景を見て、アルカディアは死を覚悟しながら帰りたいと思った。



「では、早速始めるとするか――」

「面白そうな事してんじゃん、悪喰プアフード。その勝負、僕が審判をしてやるよ!」



 突然掛けられた声は、空から響いている。

 そして、とすんという軽い音を立てて闘技石段の上に着地したのは、マイクを持つ解説者。


 闘技場の管理者――ヤジリだ。



「ふむ、良いのかの?……悪逆アトロシス

「良いも何も、むしろ実況したくてうずうずしてるくらいさ!『英雄VSタヌキ』。こんなワクワクする試合、見れなきゃボクが罰を当てるよ!」

やばい……。

息抜きに書いてるはずなのに、全然息抜きになって無い……!


あ、活動報告、書いときました!

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