表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第7章「仇敵の無敵殲滅」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

331/1329

第84話「夜のお茶会(終)」

 う”ぃぎるあっ!?

 しまった!!リンなんちゃらにバレた!?


 ど、どうして……?

 上手く隠していたし、あとちょっとでユニなんちゃらを私の毛並みの虜に出来たはずなのに!


 と、とりあえず、誤魔化さないと……。

 だってそうしないと、ソドム様に何をされるか分からない……。


 私にとって、毛並みは命!

 絶対に誤魔化し通して見せる!ぎるぎるっ!



 リリンサに核心を突かれ、アルカディアは決意を固めた。

 そして、どうにかして誤魔化し、窮地を脱出しなければならないと、密かに奮い立つ。


 対するリリンサは、悠然と構え、勝者の余裕さえ醸し出していた。

 平均的な微笑みの中には絶対的優位を宿し、のんびりとフルーツ牛乳を飲む余裕すらある。


 追う者と追われる者の立場は逆転し、ジリジリとリリンサは間合いを詰めていく。



「もう一度言う。『あなたはタヌキ』。間違いない!」

「そ、そんなこと無い!私はタヌキじゃないし!う”ぃぎるあ!」


「とかいいつつ、鳴き声が出ている」

「う”ぎぃるあ!?しまった!!」



 鳴き声を出さないとか無理!!

 十年以上もタヌキをやってるし!う"ぃぎるあ!


 鳴き声をツッコまれるという致命的な不覚を取り、アルカディアは一気に窮地に立たされた。

 そして、心無き魔人達の統括者のリーダーとして、あらゆる人間を窮地に追いやって来たリリンサが、その隙を見逃すはずもない。


 リリンサは、勝負を一気に決めに行くため、アルカディアへと鋭い視線を投げつけた。



「アルカディア。あなたの話に嘘が無いのなら、あなたはタヌキ。これ以外に説明はつかない!」

「ち、違う……私は、えっと、その……。じゃ、じゃあ逆に説明して!私がタヌキだと、説明して!」



 追い詰められたアルカディアの反撃は、非常にお粗末なものだった。

 自分ではタヌキじゃないと立証できず、敵対しているリリンサに答えを聞くという暴挙。


 これはある意味、仕方が無いことだった。

 当然だが、タヌキは野生動物であり、口論なんかしない。

 タヌキの集落では、拳がすべてなのだ。


 勝敗を分けた要因は、人間としての経験の差。

 そしてリリンサは、躊躇なくトドメを刺しに行く。




「疑問に思ったのは、あなたが私達に最初に出会ったという森。あの時、私は鳶色鳥を捕らえる為に『失楽園を覆う』を発動し、指定した範囲を閉じ込めている。当然、中には人影はなかったし、深い森の中では遠くから観察することもできない」

「えっと、木の……そう、木の上から見てた!」


「あり得ない。索敵に使った魔法は『戦線の見取り図(マッピング)』という、空間を三次元的に把握する魔法。当然、木の上に人間なんかが居れば認識できる」



 リリンサの使っていた『戦線の見取り図』は、空間地形を把握する為の魔法だ。

 連続で使用することで、移動している物体、すなわち動物を把握するという仕組みであり、小さな動物が木の上でじっとしていた場合、見落とす事がある。

 しかし、大きな動物となれば、話は別だ。


 特に、動物として類を見ないほど特徴的なシルエットを持つ人間は判別しやすく、見落とすはずもない。

 リリンサの索敵能力は、妙な勘の鋭さも相まって、心無き魔人達の統括者で最も優れているのだ。


 平均的な悪人の笑みを浮かべながらアルカディアに詰め寄ったリリンサは、容赦なく第二撃を繰り出した。



「次に、森ドラとの一戦。あの時も、邪魔が入らないように周囲を警戒していた。だけど、あなたの姿はなかった」

「遠くで見て――」


「その言い分は通らない。さっきあなたは、『森ドラから助けて貰ったお礼に、ユニクに葉っぱを渡しに行った』と言った。そして、あの時ユニクが助けたのは人間じゃなくてタヌキ。当然、葉っぱを貰ったのもタヌキ。……もうこの時点で確定的」

「う“……。」


「その答えに辿り着いてしまえば、後は簡単な事だった。カミナや私の技を知っていたのも、私達の行動を把握していたのも、森に住んでいたという事も、タヌキパジャマに怒ったのも、すべて『アルカディアはタヌキだから』で説明がつく!」

「う”ぃ……ぎるあ……」


「さぁ、タヌキ将軍・アルカディア。間違っている事があったら。訂正して欲しい!」



 ふんす!と鼻を鳴らして、リリンサはアルカディアを指差した。

 それはまるで、有名な探偵ドラマのワンシーン。

 ともすれば、犯人たるアルカディアの取る行動も、おのずと絞られてくる。


 アルカディアは、滴る汗を隠しもせず、一歩だけ後ずさる。

 そして、見るからにションボリし、ポツリと呟いた。



「どうして……?どうしてバレた……?例え疑わしくても、普通、タヌキが人間に化けているなんて思わないって、ソドム様も言ってたのに……!」

「ふ。あなたにとっては残念なことに、私の実家にはとっても可愛い実例がいる。動物が人に化けるのは見慣れているということ!」


「う”ぎるあ!?それはずるい!!」

「ふふふ。文句なら、白銀比様に言って欲しい!」



 う”ぎるあ~ん!無理!これはもう無理!!

 あぁー。どうしよう。

 おじさまの正体は、場合によってはバレても良いかなって思ってた。

 バレても、ユニなんちゃら所に潜り込めれば、那由他様が守ってくれると思ったし。


 でも、私がタヌキだってバレたのが、那由他様やソドム様にバレると、凄く怒られる!

 そして怒られた後、角刈りにされて笑い者にされてしまう!


 どうすれば、どうすれば……。

 ……う”ぎる?バレたのがバレなければ?



 いくらアルカディアの諦めが早いと言っても、美しい毛並みが賭かった問題をそう簡単に投げ出すわけにはいかない。

 そして、悶え苦しみながら出した答えは……泣きながらの懇願だった。



「……誰にも言わないで。お願いだから、誰にも言わないで!」

「どうして?」


「私がタヌキだってバレると、怒られる!ものすっごく怒られるっ!!だから言わないで!!」

「ユニクにも言っちゃダメ?」


「それが一番ダメ!!」

「そう……。」



 ふむ。っとリリンサは考え込む。



 アルカディアは本気で嫌がっているっぽい?

 どういう理由かは知らないけど、タヌキだとバレると困るらしい。


 うーん?タヌキのルール的にダメって事?

 だとしたら、流石にタヌキの知り合いはいないし、調べようもない。


 アルカディアが言っている『那由他様』とは、たぶん、話に聞いた始原の皇種『那由他』の事だよね?

 白銀比様と同等、いや、神話上では格上の存在とか、私がどうこう出来る存在じゃない。


 問題は、アルカディアはそんな超上位の存在に怒られる危険性を犯してまで、ユニクに会いに来たということ。

 私が森ヒュドラの花粉にやられた時も、薬になる葉っぱをくれたし、アルカディアが義理がたいのは間違いない。

 ……ものすごく好感度がアップ。

 というか、普通に可愛いので、飼いたい。


 闘技場で懐かしいタヌキも見かけたし、ちょっとだけ、タヌキとの思い出に浸りたい気分。

 ユニクはアルカディアの胸に興味があるみたいだし、たまに遊びに来てくれるのなら、それも良いと思う!



 アルカディアがタヌキだと判明したことにより、リリンサの心にも変化が起こった。

『ユニクを狙うライバル』から、『ユニクに飼われに来たタヌキ』へと認識が変わり、アルカディアの存在を全肯定。

 積極的に友好を深めるべく、リリンサは策謀を始める。



「……じゃあ、内緒にしてあげる」

「ホント!?」


「うん。そもそも、私はあなた……あのタヌキ将軍の事は嫌いじゃない。むしろ、どうにかして仲良くなろうと思っていた。ご飯もあげたし」

「その節は、どうもご馳走様でした。でも、普通、レベル7万のタヌキを人間は恐れると聞いた」


「それは問題ない。私の妹もタヌキを飼っていたし、見慣れてる」



 リリンサは幼き頃、自宅に住みついていたタヌキの事を思い出している。

 その、頭にピンク色の星マークがある珍しいタヌキは、セフィナが「ゴモラ」と呼んで飼っていたペットだ。


 一応、セフィナはゴモラの存在を隠していた。……が、バレていない訳が無く。

 リリンサと母のダウナフィアは、知らんぷりをしつつ、普通にペットを飼っているつもりでいた。


 ……なお、父たるアプリコットは、ゴモラが飼われていたことを最期まで知らなかった。



「という事で、秘密は守る。安心して良い」

「う”ぎるあ!絶対だよ?絶対に誰にも話しちゃダメ!!」


「うん。分かった。私達二人だけの秘密」



 リリンサとアルカディアは、朗らかな雰囲気の中、握手を交わした。

 急転直下の電撃的、和解。


 これは、現在風呂場にて幽閉されている英雄の息子が知ったのならば、半狂乱になって伝説の剣を振りまわす程の暴挙だ。

 なにせ、魂に恐怖を刻み込んでゆく大悪魔と大魔獣が、手を取り合って和解したのだ。

 その衝撃たるや、冥王竜と出会った時を軽く凌駕している。


 しかし、この和解が、ユニクルフィンに伝わることはない。

 アルカディアの目線で見れば、『友人同士の契約』。

 リリンサの目線で見れば、『主人とペットとの約束』は、そう簡単に破られるものではないからだ。


 若干温度差のある二人だが、握手だけでは物足りず、体を寄せ合いハグまでし始めた。

 人間とタヌキが盟約を結ぶという歴史的快挙、『秘密タヌキ同盟』設立の瞬間である。



 **********



「へー。そうなんだ。アルカディアの師匠というのは、あの星タヌキの事だったんだね」

「そう。ソドム様は超スパルタで、めちゃんこ厳しい!むしろ、鬼畜だとすら思う!!この前なんか……」



 アルカディアとリリンサの談笑は続いていた。

 話題はもっぱら、ソドムに対するアルカディアの愚痴だ。


 タヌキ将軍にとって、『タヌキ帝王』という存在は、本能に刻まれた抗いがたき絶対者。

 そんなソドムの弟子になるというのは光栄な事であり、どんな苦行を強いられようとも、普通のタヌキからは羨望の眼差しを向けられるだけ。


 結局の所、アルカディアには理解者はおらず、思い切り愚痴を言える友達も居なかった。

 だからこそ、アルカディアは、ほんの少しだけ調子に乗った。


 普段は言えないからこそ、ちょっとだけ大げさに文句を言う。

 感謝も抱いてはいるが、同時に、怨嗟も随分と溜まっているのだ。



「いつの日にか、必ず、ソドム様を鳴かせてやりたい!」

「頑張って。きっと出来ると思う。あ、そういえば、あなたは星タヌキと屋台村で一緒に居たよね?あのタヌキとは仲がいいの?」


「どっち?」

「星が桃色の方」


「ゴモラ様は私の師匠じゃない。私はあくまでもソドム様のシモベ。会ったのも数回しかないし」

「そう。ちょっとお願いがある。出来れば今度、ゴモラを連れてきて欲しい。お礼を言いたい」


「お礼?」

「そうお礼。ゴモラは、一人でお留守番をしていたセフィナの遊び相手だったから感謝している。たまにおやつを分けてあげたけど、今なら昔よりも美味しいものを食べさせてあげられる」


「分かった。今夜会うし、話してみ……ああああああ!う”ぎるあ!!忘れてた!!」



 アルカディアの突然の悲鳴に、リリンサは何事かと視線を向けた。


 目に映ったのは、顔面蒼白になりながら、慌てて玄関の方に走っていくアルカディアの後ろ姿。

 事態が飲み込めず困惑するリリンサだったが、現在の状況だけはしっかり把握していた。


 アルカディアは失楽園を覆うに阻まれ、入口の前で立ち往生。

 必死にガリガリとドアをひっかくも、そう簡単に開くはずもない。



「開けて!ドア開けて!」

「急にどうしたの?」


「う”ぎるあ!夜の集まり忘れてた!!みんなもう集まってるかも!!」

「それは言ってた集会って奴だよね?もしかして、その集まりもタヌキ?」


「もちろんそう!遅刻なんてしたら、戦う前に殺される!早く開けて!早く!」

「それは、私も行っても良い感じの奴?」


「え”。えっと、ダメ!リンなんちゃらを連れて行ったりしたら、バレたのがバレてしまう!」

「まぁ、それもそう。じゃあ、間違っても近づかないようにしたいから、開催場所教えて?」


「昼間の闘技場!リンなんちゃら、絶対に来ちゃダメだからね!」

「うん。私は行かない。《失楽園を覆う、解除》」



 魔法が解除された瞬間、アルカディアは慌ててドアを押す。

 無理やりこじ開けたせいでドアノブが曲ったが、気にも留めずに飛び出そう……として振り返った。



「リンなんちゃら、また遊びに来ても良い?」

「もちろんいい。そうだ、その時は服でも買いに行こう。……今度は破裂しない下着を選んであげる」


「分かった。じゃ、集会も頑張ってくるね!う”ぎるあ!」

「うん。気を付けて行ってらっしゃい。う”ぎるあ!」



 二人の少女はハイタッチをかわし、アルカディアは薄暗い廊下に消えて行った。

 しばらくその後ろ姿を見送っていたリリンは、ふと、思いついたことを呟く。



「あ、結局、『おじさま』ってのは誰だったんだろう?……まぁ、アルカディアが敵じゃ無いなら気にしなくてもいいね。そのおじさまも、たぶんタヌキだし!」



 そしてリリンサは、室内に戻って行く。


『アルカディアはタヌキ』という事実に辿り着いたリリンサと、『アルカディアの背後に立っているのはユルドルード』という事実に辿り着いたユニクルフィン。

 しかし、全ての答えが出揃いながらも、二人が辿り着いたものは、未だ真実から遠い場所にあるものだった。


『アルカディアはタヌキであり、皇種・那由他から命令で、ユルドルードの支援を受けつつ、ユニクルフィンと恋人になる為に会いに来た』


 こんな超展開など、予想すること自体が不可能なのだ。

 そうして、ユニクルフィンとリリンサの『敵探し』は振り出しに戻る。




 ……だが、その『敵探し』は、もう二度と行われる事はないだろう。


 刻一刻と、運命の瞬間は近づき、そして……。

 リリンサとセフィナは明日、邂逅を果たす。


 その為の脈動は、もう、動きだしているのだから。



 **********



「お?やっと来たかいな。遅いで!アル……カ?」

「ご、ごめんなさい……」


「何やその格好!?タヌキがタヌキを着とるやと!?どないな状況やねん!?」

「えっと、ユニなんちゃらとリンなんちゃら所に遊びに行ったら、着せられた」


「な、なんやと……?ユニクルフィンの性癖ヤバすぎやろ……」



 軽いノリでツッコミを入れるエルドラドは、マジマジとアルカディアの姿を見て、噴き出した。


「色んな意味で前代未聞や!タヌキがタヌキのコスプレしてるで!」と爆笑し、しばらく笑い転げる。

 そして満足したのか、キリリとした顔つきに戻り、足早に歩き出した。



「アルカ、お前は『999タヌキ委員会』に出席するんは初めてやな?詳しい話はソドムから聞いとるか?」

「えっと、帝王試験に勝てれば合格して帝王になれる!う”ぎゅりおん!」


「そうやで。ま、そう簡単な話やないけどな。さ、そろそろ気を引き締めとけよ。っと、その前に……覗き見はアカンで」

「う”!?」


「リィンスウィルの嬢ちゃんもぐいぐい仕掛けてくるな。アルカ、第九識天使が掛ってたで」

「い、いつのまに!?」


「ソドムには黙っといてやるけどな、遅刻したら、ホンマにぶち殺されるで?ほな、急げ!」



 そして、褐色肌の男女は、闇を纏う闘技場の中へと消えてゆく。


 最上位のタヌキが一堂に集結する祭典、『999タヌキ委員会』。


 闘技石段の上には、皇たる那由他とその眷属たるタヌキ帝王の群れ。

 観客席には、数え切れないほどのタヌキ将軍の群衆。


 恐ろしき集団に身の毛を逆立たせそうになりながらも、アルカディアは勇猛果敢に闘技石段の上へと視線を向けた。



「よく来たのじゃの、アルカ。さぁ、神聖石段に上がってくるがよい」



 ……アルカディアの戦いは、これからだ。


こんにちは(こんばんわ)青色の鮫です。


えー。ここでお知らせがあります。

壮大な前振りをしていた、『アルカディアの帝王試験編』ですが、本編にまったく1mmも関係がありません。

そして、物語の進行上、ここで番外編を入れるのは流石にどうかと思います(真顔)。


ですので、全カット……はせずに、第7章が終わった後の余談『たぬきにっき!!激闘!帝王試験編』という形で、後から書きたいと思います!


次回で物語の裏側を語った後、いよいよ、第7章の山場へと進みます。

リリンサとセフィナ、ユニクルフィンとワルトナ。それぞれの感情は、果たして……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ