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第67話「バトルトーナメント22 決勝戦、毒吐き食人花VSアルカディア」

「カッコいいガントレットをしても、結局、剥くのかよッ!」

「剥いたな。だが、タイタンヘッドも根性を見せたと思うぞ。全裸になった後、5分くらい耐えてたもんな」


「……おう。確かに凄い事だとは思うんだが……なんというか、絵面が……ぶるんぶるんしてたな」

「ドストレートに18禁だ。あいつ、公然猥褻で捕まるんじゃねえの?」



 今のは酷かった。

 もう、擁護のしようが無いくらい酷かった。


 アルカディアさんVSタコヘッド。

 メナファスの言うとおり、苦戦を強いられたアルカディアさんは、だんだんと追い詰められていった。

 タイタンヘッドは不安定機構の支部長というだけあって、その名に恥じぬ堅実な戦いぶりを披露。

 認識阻害の魔道具を使用し先手を取った後は、自分が優位になるように立ち回り続け、アルカディアさんを圧倒したのだ。


 いやほんと、マジでアルカディアさんが負けちゃうんじゃないかと心配したぜ。

 タイタンヘッドは、戦闘の組み立て方が非常に上手く、姿を隠す魔道具をあえて見せつけることで、アルカディアさんの狙いを固定。

 腰に付けている魔道具をアピールする様な動きをして牽制を仕掛けていたし、あれじゃ、罠に引っ掛かってもしょうがない。


 ……問題は、その後。

 アルカディアさんは、アホタヌキ・ガントレットに似ている例のブツを召喚した後、速攻でタコヘッドを追い剥いだ。

 さらに、殴打の雨を降らせて、容赦なく痛めつけ始めた。


 で、タコヘッドは、そこそこ長い時間、アルカディアさんの猛攻を耐えやがったのだ。

 そのせいで、引き締まったケツが織りなす肉体美が、5万人の観客の前でぶるんぶるん舞う。

 アルカディアさんの純粋な美しさを相殺してブッチぎる、見るに耐えないタコ踊りだ。


 あまりにも酷過ぎる光景に、そこら中から悲鳴が聞こえたぞ。

 恐らく、『全裸三人集の長』として、長い歴史に名前を刻む事になるだろう。



「アルカディアさん……。どうしてあなたは、敵を剥いてしまうんだ……」

「驚異の追い剥ぎ率100%だ。しかも、最後の砦(パンツ)まで奪い取る完全な追い剥ぎ。悪逆非道の心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)だって、そこまでしねえってのにな」


「……。ま、俺の知ったこっちゃねえから、不問にするとしよう!」

「ち。逃げやがったか」



 そうそう、逃げるが勝ちってもんだ!

 現実逃避は、生きる為に必要なんだよ。とくに、大悪魔さんと旅をしている俺みたいな奴にはな!


 俺はアルカディアさんの暴挙を見なかった事にし、現実に戻る。

 準決勝第二試合の勝者は、アルカディアさん。

 つまり、決勝戦は毒吐き食人花(リリン)VSアルカディアさんとなった訳だ。


 ん?そう言えば、懸賞金ってどうなったんだ……?



「なぁ、メナファス。リリンとアルカディアさんが獲得した賞金っていくらなのか分かるか?」

「分かるぞ。オレは職業柄、金額とかを覚えるのは得意だからな」


「マジか。無敵殲滅さん、マジ有能」

「おうともよ。金勘定ならワルトナよりも早い自信があるぜ!」


「……それは、人として誇って良いもんなのか?」

「いいもんだろ。で、二人の稼いだ金額だったか?そうだな、まずはアルカディアの方から言うと……」



 アルカディアさんが自分に賭けた懸賞金10億エドロは、すべて借金らしい。

 10億エドロというと、普通の人生では、まずお目に掛れないであろう金額だ。

 ……だが、キングゲロ鳥一匹分と聞くと、そうでもない。


 ぐるぐるきんぐー!って鳴いてれば手に入る訳だし、実際、リリンの懸賞金8億エドロの出所は、ヤツを売り飛ばした金額から出ている。

 うん、10億エドロなんて大したこと無いな!



「アルカディアが獲得した賞金は、『3億5千万エドロ』『3億5千万エドロ』『4億8千万エドロ』で、合計『11億8千万エドロ』だな」

「アルカディアさん、すげぇぇぇ!もう借金分、稼ぎ終わってるじゃねえか!」


「そりゃ、闘技場で勝ち残れば稼げるさ。むしろ、金額の伸びがあんまり良くないと思うぞ」

「え?マジで?」


「アルカディアには固定ファンが居ないからな。アルカディアの勝利に賭かった金額が多ければ多いほど、手に入る賞金は増えてくし」

「あぁ、そう言えばそんなシステムだったな。だとすると、リリンが稼いだ金額って……」


「リリンが手に入れた金額は、『6億エドロ』『5億エドロ』『3億6千万』。合計『14億6千万エドロ』だな。久しぶりにしちゃ、いい稼ぎだ」

「リリン、強えええええ!」



 うちの大悪魔さん、マジ、高給取り!

 たったの半日で14億エドロ以上も稼ぐとか、凄すぎて笑いが止まらない!


 ……なお、バトルロイヤル優勝者の俺が手に入れた金額は、たったの1億エドロ。

 決して少ない金額じゃないのは分かってるが、リリンと比べると大変にショボく感じる。

 やっぱり今夜のディナーはタコ焼き三昧にしよう。

 飽きたら別の屋台で豪遊だ!食券もあるし!



「よし、これで心おきなく決勝を楽しむ事が出来るな。アルカディアさんがリリンに喰われても、純利益が出るという事になるし」

「そうだな。これで、アルカディアを応援しなくちゃいけない大義名分が消えたって事だ。で、お前はどっちを応援するんだ?ん?リリンか?それともアルカディアか?」



 うわぁ。なにその質問。

 どう答えても、地獄に直結している気がする!


 メナファスはニヤリと不敵に笑い、俺の返答を待っている。

 くくく。と悪い笑い声が聞こえてきそうなほどに楽しげで、確実に俺で遊んでいるっぽい。


 くっ!頑張れ、俺!

 どうにか無敵殲滅さんの攻撃を掻い潜って、このピンチから脱出するんだ!



「そうだな……。色んな不幸が重なって、引き分けとかにならないかな!?」

「あー。あるかもなー引き分け。でも、そうそう起こるもんじゃないし、午前の部で引き分けは使っちまったから、在庫切れかもしんね―なー」


「くっ!お前に文句を言いたいぜ、エル!」

「鏡でも見て、自分に文句を言っとけ。で、答えろよユニクルフィン。リリンか、アルカディアか。……大丈夫だぞ。4人と1匹にしか言わねえから」


4人と1匹(大悪魔さん)に知られたら、全てが終わるだろッ!?ワルトあたりが、俺を抹殺しに来る可能性が非常に高い!!」



 ちょっと待ってくれメナファス!

 とりあえず、その電話はしまってくれ!!

 力ずくで電話機を奪える気がしないので丁寧に説得しつつ、俺は考えを纏める。


 正直に言えば、リリンもアルカディアさんも、どっちも応援したい。

 リリンは、色々と頼りない俺に文句も言わず、嬉々として地獄の訓れ……レベルアップに付き合ってくれているし、感謝をしてもしきれない。

 神が授けた神託なんてのもあるし、本当に、かけがえのない大切なパートナーだ。


 一方、アルカディアさんには、魅力がいっぱい。

 具体的には、メロンサイズの魅力が実っている。

 顔だって美人だし、活発そうな笑顔だって眩しい。

 もう、見ているだけで、ドキドキと油汗が止まらない!!


 神によって選ばれたパートナー『リリン』か。

 はたまた、初恋の人『アルカディアさん』か。

 究極の選択だが……決めた。


 俺が選んだのは……!!



「……リリンだ。俺はリリンを応援するぜ!」

「おっと。それはリリンにバレる事を危惧してのパフォーマンスか?」


「違うぞ。俺がリリンを選んだのは、リリンの方が大切だからだ。ま、単純にリリンが勝ちそうってのもあるけどな。応援している方が負けるのは悔しいし!」

「案外、まともな事を言うじゃねえか。……なお、アルカディアを選ぶようだったら、結果が出る前にオレがお前を血祭りにあげて、色んなもんを闇に葬ってたぞ」


「あぶねぇぇぇぇぇ!!命が賭かってたッッッ!!」



 俺の、心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)戦の成績は、0勝3敗。

 いや、ホロビノを含めれば、0勝4敗か。


 ぶっちゃけて言おう。

 俺は大悪魔さん達に勝った事がない。

 ワルト戦では良い所まで行ったかと思ったが、そもそも、戦いのステージにすら上がっていなかったし。


 そんな中、戦闘力最強と名高い無敵殲滅さんと戦うなんて、絶体絶命すぎる。

 つーか、壁に『自殺志願者(挑戦者)、募集中』だって張ってあったし、殺意、溢れすぎだろ。



「さて、自分の立ち位置も決めたし、じっくり戦いを観戦して、楽しませて貰うとするか」

「そうだな。個人的には、アルカディア優勢だと思うが、リリンも成長しているだろうし、どっちが勝つか分からないな」


「なぁ、ちょっとだけ思ったんだけどさ、さっきから割と適当な事を言ってるよな?アルカディアさんが負けるって散々聞いたが、蓋を開けてみれば圧勝も良い所だったぞ?」

「くくく、バレたか」


「やっぱりワザとか。何でそんな事をしたんだよ?」

「だって、お前をからかうの面白いしな」


「まったく悪びれもせずに、言いきりやがった!!」



 ちくしょうめ!

 メナファスは意外と常識人なのかと思ったが、性格が歪んでいやがった!

 ホントに、心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)って、一人残らず悪党ばっかりだ!!


 俺はやれやれと肩を竦めながら、闘技石段へ視線を送った。

 そこには、リリンとアルカディアさんが居る。あとマイクを持った野次馬ヤジリさんが、退場したタコヘッドに罵倒を浴びせていた。



 **********



『あー!これは酷い!解説者権限で試合を止めようかと思ったぐらいに、すっげぇ酷い!おいタコヘッド、お前のケツ、汚すぎだろ!』

「うるせぇ!ケツは汚えもんなんだよ!!おっさんのケツに夢見てんじゃねえッ!!」


『というか、負けっちゃったけど、今夜の飲み会はどうすんだよ!私のタダ酒は!?』

「あんだけ痴態を晒した俺に、酒をせびってくるんじゃねぇ!負けたんだから、奢る約束も無しに決まってんだろ!』


『えー。別にいいじゃん!お前は泥酔すると脱ぎ出すし、全裸を晒すなんていつもの事だろ。ちょっと今回は人数が多いけど……』

「居酒屋と闘技場を同じにするんじゃねえ!ふざけた事ばかり言ってると、お前の頭ん中にビールぶち込むぞ!?」


『オレンジの話をしてたし、カシスオレンジカクテルにしてくんない?……とまぁ、私語はこれくらいにして、決勝戦の紹介に移りたいと思います!』



 色んな物を失ったタイタンヘッドは、それでも、剛気に振る舞い続けていた。

 アルカディアに敗北した直後、待機場所に転送されたタイタンヘッドは、一瞬だけ目を見開いた後で何故か深呼吸。


「裸ですが、何か?」な雰囲気を纏わせ開き直った後、洗練された動きで予備の鎧を召喚し装着。

 普段通りの姿を取り戻し、容赦なく罵倒をしてくるヤジリに反撃をしていた。

 ……心の中で悲鳴を上げていようとも、タイタンヘッドは僅かに残った男の矜持を、守り切ったのである。


 そんな心無きやり取りを横眼で見ながら、リリンサは闘技石段の上に登って来た。

 平均的な表情の中に、鋭い視線と猜疑心を隠して。



 ……今の所、アルカディアが敵であるという確証は無い。

 でも、その可能性は十分にあるような気がする。


 襲撃を仕掛けてきたブライアンはランク6で、技量の高い冒険者パーティーだった。

 もし、敵にブライアン達の敗北が把握されていた場合、次の刺客はより高位の人物が来る可能性が高い。

 少なくとも、ブライアン達が絶対に勝てないと判断する敵がいる。

 私の周りに強者がいるのと同じく、敵の周りにも同じくらいの強者が複数いても不思議じゃない。


 それにもし、アルカディアが敵じゃないにしても、なんか妙な引っ掛かりがある……気がする。

 なんとなく、感的な何かだけど、ユニクの事をチラチラ見ているような気がするし。


 ともかく、友達になることを申し入れて、OKを貰っている。

 探りは入れやすいはず。



 リリンサは、アルカディアを一目見て、警戒心を抱いていた。

 そして、先手を打つ為に友人関係を結び、布石を打っていたのだ。

 ……なお、ナインアリアが『友達になりたいであります!』と言いだした時もリリンサは警戒し、レジェリクエに預けて鑑定して貰おうという目論みもあったりする。



『えー。決勝戦はちゃんと選手の紹介をしないとね!それじゃ、毒吐き食人花から紹介行ってみよ!毒吐き、キミがこの拳闘大会に出場した理由はなんだい?』

「私の目的は、殿堂入りのメナファス・ファントを倒す事。それと、旅の資金の調達もついでに行っている」


『ほうほう。メナファスをねぇ。彼女は強いけど、勝つ自信あるの?』

「勝つ自信は……『そこそこ』といった所。最終的には運も必要になってくるし」


『運ね。無敵のメナファスを倒すには、確かに運も必要だろうねー!』

「……ヤジリ、ちょっとアルカディアとお話したい。時間を貰っても良い?」



 当たり障りのない答えを提示し、リリンサは本題へと踏み込んだ。


 アルカディアは『敵』か、それとも、『ただの友人』になるのか。

 リリンサは心の中で「よし。」っと意気込むと、アルカディアに視線を向けた。


 そして、リリンサの高まっていた警戒心が、音を立てて崩れていく。



「……。おいしい?」

「とても美味しい。二重の甘さが絶妙だし。う”ぃぎるあ~ん!」



 リリンサが瞳で捉えたアルカディアは、チョコバナナを貪り食っていた。


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