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第40話「バトルロイヤル終・優勝者」

「あらま。愛しのユニクルフィンが馬鹿にされてるぜ?いいのか?リリン」

「……。」



 激しい罵声が飛び交う観客席の真っただ中で、赤い髪の女メナファスはニヤケながら野次を飛ばした。

 その野次が向かった先は、話題の中心たる『魔法の鈴蘭・リリンサ』。


 その言葉は、メナファスやリリンサの近くに座る見知らぬ観客たちとは温度が違う。

 ユニクルフィンへ罵声を飛ばしている観客達は、リリンサがこの場に居るという事を認識できていない。

 リリンサもメナファスも自前の認識阻害の仮面を取り出し、その効果を発揮させているためだ。


 だからこそ、観客たちは一切の躊躇もなく暴言を吐き散らかし、当たり前にリリンサの耳に届いている。

 そして、その事に腹を立てているであろう友人をからかうべく、メナファスは言葉を発したのだ。


 しかし、リリンサから返事が返ってくる事は無かった。

 不思議に思い、リリンサの顔を覗き込んだメナファスは、予想外の変なものを見た。


 リリンサは平均的な表情を崩して、緩み切った笑みを浮かべている。



「リリン?」

「……メナフ。ユニクの宣言を聞いた?」


「やけっぱちに叫んだあれのことか?」

「そう。ならば話は早い。……今、私はユニクに愛の告白をされた!リリンは俺のパートナーだって、誰になんと言われようとも、リリンは俺のものだって、ユニクは宣言した!」


「若干、意味が違くないか?」

「何もおかしくない!これで、私達は相思相愛になったということ!神に祝福され、お互いに好意を持っている!もう私達の関係は誰にも壊せない!たとえ、皇種であっても不可能!!」


「いや、皇種ならどうとでもされるだろ。と真面目に言ってみる」

「これはもう、あいさつ回りに行かなくてはならないかも!?きっと白銀比様も祝福してくれる!」


「色んな意味でやめておけ。それこそ、機嫌を損ねたら一貫の終わりだぞ?……聞いちゃいねえし」

「今夜は新しいタヌキパジャマを着た方が良さそう!タヌキパンツも履く!!これでユニクはイチコロとなる!!」


「……それでいいのか?何か間違って無いか?それ……」

「ワルトナも大丈夫だって言ってた!」


「そうか。ダメだこりゃ」



 ***********



『……バトルロイヤル部門、決勝戦……開始ですっ!』   



 開始の合図とともに、俺達はそれぞれが望んだ間合いになるべく、動きだ――そうとして、謎の浮遊感に襲われた。

 そして俺は、闘技石段の右端に移動してしまっている。


 え。何が起こったんだ?



『あ、言い忘れてましたが、戦闘が始まった瞬間にランダムにワープします。こんな近くにいたんじゃ魔道師に不利過ぎるしね!』



 だからそういう事は先に言えよ!!

 雄叫びといい、今のランダムワープといい、解説者ならもう少し仕事をして欲しいんだが!


 おっと、愚痴をこぼしている場合じゃないな。

 俺は見失ってしまったギアドックとヒットフォースを探す。


 ヒットフォースは……魔法の詠唱中。防御魔法かバッファだな。

 で、ギアドックは……ん!後ろか!!



「死ね!」



 背後から迫る気配を感じ振り返ると、ギアドックも後ろから振り返るような姿勢で二本の剣を俺へ叩きつけようとしていた。

 言うならば回転切りとでも言うのだろうか?

 体の回転を利用し、コマのように遠心力を乗せた剣撃は、相応に威力の高い攻撃だろう。


 素早く第九守護天使を発動しつつ、双剣の進路方向にグラムを潜り込ませる。

 金属のぶつかる音が響き、ギアドックの持っている双剣のみが、火花を散らす。



「反応されたか!」

「当然だろ?目を瞑ってたって余裕で対応できるぜ」


「ぬかせ!大剣じゃこの連撃は防げないだろうぜ!」



 ギアドックの持つ双剣が、別々の方向に動き出した。

 グラムの側面を滑り上げるように動く一本と、再びエネルギーを溜める為に、ギアドックの元へと引き戻る一本。


 ぬるりとした変な感触と共に、グラムの力は上へと逃げていき、ギアドックの左腕が無防備な俺を狙う。

 このままだと、俺のどてっぱらはバッサリと切り開かれ、勝負が決するだろう。


 ……第九守護天使が無ければ、だが。

 このまま剣を受けてしまっても、致命傷どころか、傷すら負わない。

 そんな普通の剣撃、痛くも痒くもないんだよ!


 だが、それはあえてしない。

 そもそも、攻撃なんてのは、喰らわないに越した事は無いしな。

 大悪魔さんはアホタヌキを狩る時にも、雷人王の掌を使う(全力を出す)というし、ならば俺も、その教えに答えよう。



「惑星重力制御、発動!!」

「ぐおおお!?重……くぅ!」



 ギアドックの双剣の片方は、まだグラムと接触している。

 ならば、このまま押しつぶしてしまえばいい。


 上へあげられていたグラムの重量を増大させ、一気に振り降ろす。

 ギアドックは増大したグラムの重さに耐えきれず、よろめいた結果、後ろに吹き飛んで行った。


 弾かれた双剣から、バギリという鈍い音が鳴る。

 音の発生源に目を向ければ、剣先が破損し、欠片がポロリと落ちていった。

 なるほど、その剣は意外と脆いようだな。



「ぜえ……ぜえ……なんだ今のは?」

「この剣の能力だよ。今のはざっと……重さ500kgって所じゃないか?」


「ごっ!?何だそれは!?そんな事ある訳ないだろ!」

「それがあるんだよ。とりあえず、10回ぐらい打ち込むから耐えて見せろ。……《瞬界加速スピーディー》」



 バッファも掛けたし、よし、行こう。

 無造作にグラムを振りまわし、適当に威力をつける。


 グラムの位置と空気を切る音が乖離し始めたのを確認して、一気にギアドックに詰め寄った。



「行くぜ!おら!そら!そい!うりゃ!とう!えい!ぐる!ぐる!ぐるげッ!!」

「ぐ!う!ぎ!や!が!お!が!げ!っ!げぇぇ!」



 重量マシマシのグラム十連撃。

 あえて絶対破壊は発動せず、惑星重力制御のみを使用したのには理由がある。

 エルとの戦いで、俺はグラムの真価を見た。

 だが、アレはリリンの言うとおり、威力が強すぎる。


 今は死なないという保険があるからいいが、ひとたびこの闘技場を出てから戦えば、お互いに掛けるものは命となる。

 いくら敵が俺達の命を狙おうとも、俺個人としては、人殺しなんて進んでしたくない。

 ましてや、敵は俺の過去を知る人物な可能性が高く、昔の俺がやらかしていなければ、それなりに友好的な関係であったはずなのだ。


 だから、うっかり殺してしまわないように、ここは全力で手加減をする。

 あぁ、素晴らしきかな。拳闘大会。

 まさに実験し放題!リスクもないぜ!!



「ぐる……ぐる……げえ……」

「一応生きてるか?よし、生きてるな」


「なにしやがった……?剣を受けた感触じゃなかったぞ……」

「あえて切れ味を悪くした状態で、滅多打ちにしただけだ。体の急所は狙ってないし、まだ戦えるだろ?」



 問いかけておきながらも、ギアドックの意思を確認せずに、間合いを詰める。

 会話で意識を逸らしてからの、奇襲。

 まさに外道だと思うが、俺は悪名高き心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)なので、慈悲とかない。


 俺の動きに反応し、立ちあがるギアドック。

 その真正面から突っ込み、突進の威力を使った突き攻撃を俺は繰り出した。

 グラムの重さを増大させた突きは、並みの腕力じゃ押し返せない。

 なにせ、理不尽な重量の鉄の塊が、普通の剣と同じスピードで突っ込んでくる訳で、受け止めようとしようものなら骨がメキョ!ってなる。


 そういえば確か、戦闘時間は1分が良いんだったよな?

 だったらそろそろ、沈まないとな。



「どぐぉぉぉぉ!?ぐふっぐふぅ!メキョ。ぐおおおおお」



 ……あ。やべ。


 ギアドックはグラムの先端をいなそうとして、失敗。

 ぶつけてきた双剣は弾き飛ばされ、腹にグラムが激突した。


 間一髪のところでグラムを引き戻したものの、ギアドックは吹き飛んで三回バウンドした後、沈黙。

 これは、やっちまったか?


 なんてあっけないんだろうか。こんな簡単に終わってしまうのかと、俺は唖然。

 内心でギアドックに応援を送ると、ピクリと動いた。

 とりあえず、死んではいないらしい。



「死んでないな。よし、この手応えを覚えておこ……」

「《ファイアーボール!》」



 困惑と安堵を俺が感じていると、側面から炎弾が飛来。

 素早くグラムで迎撃し、その炎弾を切り裂く。


 グラムを覚醒させた時に、斬った対象物をグラムに取り込むという事が出来るようになった。

 これで、安全に魔法を処理する事が出来る。

 今までは魔法を切り裂こうものなら有爆して、少なからず精神的なダメージを受けていただけに、大きな進歩だ。


 俺が自分の成長を肌で感じている隙に、ヒットフォースはギアドックに駆け寄って手を差し出していた。



「……大丈夫?」

「すまん……。助かったぜ」


『お~と!宣言通りに連携だ~!いいタイミングで援護射撃を行ったのは、ヒットフォース!しっかりと練り込まれた魔法弾をブラックドラゴンスレイヤーへぶつけたぞ!完全に二対一の戦い!いいぞ!もっとやれ!!』



 つーか、ホントに連携してくるのかよ!


 ギアドックはヒットフォースの手を支えにして立ちあがり、ふら付きながらも双剣を俺に向けた。

 若干剣が震えているが、未だ戦意はあるらしい。


 よく見ればギアドックの腹は血が滲んでシミが広がっているし、相応のダメージは受けたようだ。

 どうやらグラムの先端がしっかりと刺さってしまったようで、どんどんシミの大きさが大きくなってゆき、次第にぽたぽたと血が落ち始めた。


 ……やべ。あれは普通に致命傷っぽい?

 時間が経てば俺の勝利になるのは間違いないだろうが、俺の目的、『殺さずに無効化して勝利』的には敗北となる。

 これはさっさと決着をつけて、勝負を終わらせた方が良いな。


 勝負が終了すれば、白衣を着た大悪魔さんの住処へ搬送して、事無きを得ることができる。

 あくまでも練習として、本番と同じ想定で行動しないとな。



「そろそろ限界か?降参しても良いぜ」

「……。かかってこいやぁ!」



 負けを認めるなら今のうちだぞと、ギアドックに問いかけた。

 その答えとして、ギアドックは必死の虚勢を張り、俺を睨みつけて拒否を示す。


 勝ち目が無いって分かってるだろうに。

 しょうがないから、さっさとトドメを差すか。


 お互いに前傾姿勢となり、攻撃の予備動作に入る。

 俺はグラムを振りかぶり、ギアドックは……怒濤のタックルを繰り出してきた。


 何故にタックル!?と思いつつも、身体能力に任せて回避。

 ついでに足を引っ掛けて、抉られている腹にボディーブローを見舞ってやる。

 ぐえ。っと小さな嗚咽を漏らしたギアドックは、ギョロりと瞳を反転させ、地面へ落ち――ない。


 地面に激突する前に、ギアドックはくるりと体を翻し、剣を投げつけてきた。

 思わず体を仰け反らせてかわすと、杖を突き出しているヒットフォースの姿が見えた。



「や”れ”!ヒットフォースッ!」

「行くわ!《ファイアストーン!》」



 なに!?息の合った連携だと……!?

 こいつら……何で打ち合わせもせずに連携ができるんだ?


 ヒットフォースは炎で出来た数珠を作り出し、俺へ向けて放ってきた。

 炎の数珠は、杖の動きに連動して鞭のようにしなり、合計十個の珠が連続して俺を狙う。


 鮮やかなオレンジ色から察するに、それなりに温度の高い炎なんだろうが……飛んでくる速度が遅い。

 それこそ、普通のボールを投げた程度のスピードしかなく、回避することは容易だった。


 ひょいっと回避し、唖然とするギアドック向かって突進。

 苦し紛れに突き出された双剣を、絶対破壊を起動して細切れにスライスしてから、柄の部分でギアドックの顎を強打。

 ほげっ!っと魂の抜けたような声を出し、ギアドックは事切れた。



『おおっと!ギアドック、まったく見せ場が無いうちに敗北ぅ!威勢が良かったのは口だけだった!まさにぃぃ噛ませ犬だ!』



 けらけらと笑いながら指差し、ギアドックの敗北を告げるヤジリさん。

 その表情たるや、俺の知る聖母そのものといった感じだ。

 愉快犯ともいう。



「ギアドック!……よくもギアドックをやったわね!《戻りなさい。リターン!》」



 事切れたギアドックに躓いてこけたらカッコ悪いので、場外に投げ飛ばして、と……。

 そんな隙だらけな俺へ、回避したはずの炎弾が向かって来ていた。


 炎の数珠は再び勢いを取り戻し、ヒットフォースの杖に連動。

 ん?そういえば誘導できるって、ヤジリさんは言ってたっけな。


 誘導性があるというか、有る程度の操作ができるってことだな。

 イメージ的には、ワルトの凍結杭(アイスジャベリン)に近いのだろう。

 だが、見た感じ、威力には雲泥の差がありそうだ。

 受けても問題なさそうだし、よし、無視しよう。


 再び放たれた炎の数珠は全て俺に着弾。

 そして、俺は無傷だ。

 は!こんなもん、大悪魔さんの魔法どころか、タヌキの通常攻撃にも劣るぜ!!


 ニヤリとうすら笑いを浮かべて、俺はヒットフォースへ近寄る。

 そしてヒットフォースは、悲鳴をあげた。



「きゃあああ!?来ないで!変態!」


『なんという事でしょう!ブラックドラゴンスレイヤーがか弱い女性を襲おうとしています!これは神様もびっくりの18禁展開となってしまうのか!?』


「ならねえよッ!!」



 ヤジリさんの解説を聞いて、更なる冷たい殺気が観客席から迸る。

 しかも、物凄い強大なオーラが二つもある。

 最早、目の前のヒットフォースの事なんかどうでもよく、俺の危機感はその発生源に向けられた。


 ……あ、そこに居たのか。リリン。

 そして、お前は絶滅しろ。クソタヌキ。



「……《重力流星群》」



 これは色んな意味でヤバいと感じ、さっさと勝負に決着をつける。


 俺は場外に向けて重力流星群を放ち、引き寄せる対象をヒットフォースに設定。

 重力流星群の影響を受けたヒットフォースは凄まじい勢いで場外へぶっ飛んでいき、落ちていた噛ませ犬に激突。


 打ち所が悪かったようで、意識を失った。



『あ、当て馬が噛ませ犬にブチ当たったぁ~~!これは文字通り当て馬です!有言実行!名は体を表すってね!!』



 無慈悲な罵倒で追い打ちをかけながら、ヤジリさんは闘技石段に降り立った。

 そして、俺の腕を取って上に挙げ、勝利宣言を行う。



『さてさて皆さん、ご存知ですか!?ご存知ですよね!今回のバトルロイヤル形式の優勝者は……ブラックドラゴンスレイヤー!なんと初出場にして優勝という偉業を達成し、何人目だか分からない優勝者の栄光を手にしました!さぁ、ここでインタビューをしてみましょう!ほら、喋れ!』

「……………………。勝ったぞーー?」



 控えめに勝利宣言をして、様子を窺う。

 俺の予想が正しければ、この後の展開はきっとロクなもんじゃないはずだ。

 そして、俺の読みは的中した。



「「「「「「誰かあいつをぶっ殺せー!」」」」」」


「「「「「「魔法よ!魔法で滅多打ちにするのよ!」」」」」」


「「「「「「俺達が見たかったのは、お前の敗北だ!」」」」」」


「「「「「「……爆死。リア充は爆死」」」」」」


「「「「「「姉上に言いつけてやるー!」」」」」」


「「「「「「よしよし、レジェンダリアに返りましょうねぇ。執務もあるしぃ」」」」」」


「「「「「「なんだ、全然本気出してないじゃないか。不甲斐無いねぇ。意気地が無いねぇ」」」」」


「「「「「「歯応えなさ過ぎてつまらんの。まだそこらのタヌキの方が面白い戦いをするというもんじゃの」」」」」」


「「「「「「……ヴィギュリオオ―ン。息がるんじゃねえぞ、紅団子め!」」」」」」


「「「「「「なんか締まらねえ決勝だったな」」」」」」


「「「「「「うん。それは仕方が無い。ユニクは最強だから、空気を読まない!」」」」」」



 おい!!いくらなんでも、罵倒が酷過ぎるぞッ!!

 前半はその他大勢。後半は聞き取れた個人の意見だ。


 基本的に誰が言ってるのか分からなかったが、発信源が特定できた奴が二つあったぞ!

 その発信源は、食い意地張ってる大悪魔さんとクソタヌキ。


 俺は薄暗い感情を滾らせつつも、ぐっと飲み下し我慢。

 現状、報復をする手段は無い。

 クソタヌキに報復を仕掛けるとしたらグラムの覚醒は必須となるし、そんな事をすればこの闘技場が滅茶苦茶になるしな。


 お前に構ってる暇はねえんだよクソタヌキ!ひっそりと絶滅しろ!



『ふむふむ!ま、歴史は勝者と共に有りとも言うしね!その内、理解されるさ、はは!』

「諸悪の根源が笑うんじゃねえよ!この聖女め!」


『おや?良く分かったね。私が準・指導聖母マザーだってこと。悪辣に聞いたの?』

「……マジで聖母なのかよ!?」



 どおりで口が悪いと思ったぜ!

 まさに『聖女ここにあり』って感じ。納得の酷さだ!!


 一応誤解を生むといけないので、ワルトは関係ないと訂正をしておく。

 ついでに、俺の敵かどうかも聞いてみた。



「ワルトは関係ないぜ。その性格の悪さから判断して、聖母だと思っただけだ」

『そうかいそうかい。案外、感が良いんだねぇ。正体を見破られたのなんていつ以来だろ?』


「顔に聖母ですって書いてあるレベルだったぞ……ったく。こんな所に居て良いのか?仕事はどうした?」

『あ、いーのいーの。私はこの闘技場を管理する為に居るんだし。ノウィン様も認めてくれてるよー』


「ここで野次を飛ばすのも仕事ってことか……。ちなみに、他の仕事は?親父や俺を捕まえようとかしていたりしない?」

『しないしない。見たり聞いたりするだけで満足さ』



 見たり聞いたりするだけで満足……?

 ワルトみたいに情報を仕入れているってことか?


 敵意は感じないが、後でワルトに聞いておいた方が良いかもな。

 まぁ、拳闘大会に出ることは知っているんだし、問題があるなら言って来るような気がするけど。



『と、言う事で、優勝者はブラックドラゴンスレイヤーでした!これで魔法の鈴蘭はキミのものだ!今夜は寝かさないぜ!!』

「さらに煽るんじゃねえよ!」



 結局この後、散々いじり倒され、俺が解放されたのは1時間後だった。

 ぶっちゃけ戦うよりも疲弊した。……精神や自尊心が。


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