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第33話「バトルロイヤル⑦戦いの果て」

 深淵暗黒色のグラムが新たな色を発生させた。


 それは、虹色に輝く銀河の光『クエーサー』。

 クエーサーとは、光速を越えた速さで縮退する重力渦(ブラックホール)の中から発生する、究極の光。

 重力渦の内部に溜められていたエネルギーが臨界を迎えたことによる放出であり、そのエネルギーは一つの銀河を終焉へと導き、そして新たな銀河を誕生させる。


 虹色に輝く今のグラムは、同様の状態となっている。

 覚醒体『神への反逆星命ハイオーダー・コラプス』になって以降、様々な物質を取り込み、糧としてきた。

 そして、ヴァジュラの膨大なエネルギーを吸収したことにより、グラムの容量は臨界となったのだ。


 あらゆる物質が溶け込んだエネルギー光がグラムの刀身を包み込む。

 天地万物と呼ぶべき虹色の輝きは、世界の理から外れた事を意味している。


 異常にして異質。

 温度という概念は存在せず、この光を構築している物質が何なのかすら不明。


 ただ言える事は、銀河を生まれ代わらせるほどのエネルギーを秘めたこの光は、何もかもを破壊し尽くす、破滅の光であるという事だけ。


 そして、俺は……グラムを奮った。



「うおらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



 根性論であろうとも、かけ声は欠かせない。

 命尽きるまで、魂すら燃やし果てるまで。


 この一閃で、全てに蹴りを付ける。



「ワイも本気じゃ、ボケナスがぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」



 だが、エルもタダではやられてくれないらしい。

 俺と同等かそれ以上の雄叫びをあげて、エルはグラムに対抗を始めた。


 エルの持つヴァジュラが無数に分裂し空間を埋め尽くしてゆく。

 それらは各々がグラムと同等の光を携え、様々な形の刃を宿す。

 膨張を続ける数万の刃はエルの意思のもとで一つとなり、数万回の衝撃を絶え間なくグラムに叩きつける。


 一撃の重さでは、圧倒的にグラムの方が上だ。

 だが、無限なのではないかと思う程、ヴァジュラは延々と絶え間なく降り続き、少しずつ、ほんの少しずつ、グラムの勢いが削られてゆく。


 程なくして、戦いの終止符が見えてきた。

 俺とエルが同時に、それぞれが持つ神殺しへ、力の全てを注ぎこんだからだ。



「ぶっ飛べ、エルッッッ!!」

「それはお前の方や、ユニクルフィンッ!!」



 交差する光の果て。

 耐えきれなくなった空間が、空と地面を巻き込んで、崩壊。


 行き場の無くなったエネルギーが暴走し、俺とエルを巻き込んでーー。




 **********



「おかしい。あれはユニクじゃない?」

「何を言ってんだリリン。どう見てもユニクルフィンじゃねえか」


「違う。今戦っているのはユニクじゃない。ユニクには独特の癖があって、走り出す時は必ず右足からで、止まるときは逆に左足で勢いを止める。ほら見て、今も右足で止まった」

「そんなとこによく気が付くな。これも愛のなせる技ってか?」


「茶化さないで欲しい。今はそれどころじゃない。ユニクに何かが起こっている?助けに行こう」

「おいおい、それは、大賛成だ。行く……ぞ……?」



 二人は立ちあがり、それぞれが自分の武器を手に持った。

 鋭くバッファの魔法をかけて準備し前の座席に足をかけた瞬間、とてつもない閃光が、二人を、いや、観客席に居た全員を襲う。


 光は膨張し熱を周囲に撒き散らし、それを受けた全ての人物の危機本能が警笛を鳴らす。

 生きるという本能を刺激され、観客席に居たすべての人間の意思が統一された。

 闘技石段の上に立っている者はこの世界の覇者であり、抗う術は無いのだと、理解したのだ。


 統一された思考の中に異物が混じっていた人物は、たった三人だけ。


 その内の一人であるリリンサが抱いていたのは、不安と心配。

 光の中心に居るはずのユニクルフィンの事を想い、いつもの平均的な表情は崩れて、消えた。



「ユニクッッッッッ!!」



 **********



「しっし!あっちに行け、ほら、行けっての!いっておくれよ……」

「ヴィギル~~ン!」



 ワルトナは今のなお、膝の上の大厄災と格闘していた。

 背筋を凍りつかせるほどの恐怖で、うっすらと涙声になりながら。


 ワルトナはタヌキ帝王を恐れている。

 どんな生物よりも、何よりも、それこそ、皇種と比べてもタヌキ帝王に軍配が上がるほど、恐れている。


 それは、文献などによって、世界の歴史と史実を知っていたから……ではない。


 幼く、感情の乏しかったあの日。

 優しく頭を撫でてくれたユニクルフィンが、ワルトナの世界の半分だったあの頃。

 その時に見た絶望が、トラウマになっているためだ。


 その日は、唐突に訪れた。

 無気力どころか、己の意思すら持っていなかったワルトナはユニクルフィンに手を引かれ、森を散策していた。

 その時に出会ってしまったのだ。

 正真正銘の大厄災。タヌキ帝王・ソドムに。


 ワルトナにとって、力の象徴であったユニクルフィン。

 そんなワルトナの知る限りの最高戦力が、手も足も出す事が出来ずに敗北。

 それらは、何度も何度も何度も何度も繰り返され、そしてとうとう、たったの一度もユニクルフィンはソドムに勝つ事が出来なかった。


 タヌキ帝王。

 別名……『カツテナイ(勝利する手段がない)・タヌキ』。


 調べた文献にそう書かれているのを見つけた時に深く頷いてしまった程、ワルトナの中でそれは絶対の真実だった。

 そして、そんな化け物と同等の存在が、なぜか膝の上にいる。


 それをワルトナが理解した時、頭脳は恐慌状態となり、本気の金切り声をあげた。



「ホントにどっかいけ!しっし!ほら、しっし!しっし!!」

「ヴィギル~~ン」


「行けよ……う、行けってば……しっし!」

「ヴィギル~~ン」


「……。ぃってよぉ……」

「ヴィギルル~~ン」



 聞く耳を持たないゴモラは、ワルトナの膝に腹を預けて足を投げ出していた。

 完全にリラックスモード。

 最早どうしたらいいのか分からないワルトナは、涙声でゴモラへ訴えかけるも、微動だにしない。


 それを横で見ていたセフィナは、ワルトナが本気で嫌がっているのを察し、ひょいっとゴモラを抱き上げた。



「ゴモラ、ワルトナさんが嫌がってるでしょ!め!」



 飼い猫を叱責するように、セフィナはゴモラを落ち上げて視線を合わせた。

 あまり迫力のない声であったが、ゴモラはセフィナの声を真摯に受け止め、ションボリし始める。


 ……え”。


 っと、声にならない声を出したワルトナは、信じられない物を見たとばかりに絶句。

 奇妙な沈黙が辺りを支配するも、すぐにワルトナは自分のやるべき事を思い出し、立ちあがった。



「セフィナ。僕は用事を済ましてくるけど、その間、タヌキをずっと捕獲しておいておくれ。絶対に手を離しちゃダメだ。絶対だぞ!」

「……はい。ゴモラも大人しく観戦してようね。あ、バナナチップス食べる?」

「バナナ!ギルギル!!」



 ゴモラの心地よい返事を聞いて、セフィナはバックからバナナチップスを取り出した。


 それを横目で確認したワルトナは、三秒ほど経過を観察。

 安全を確認すると、深呼吸をした。


 はぁ………。

 ………はぁ。

 よし。今行くよ、ユニ。



「それじゃ、い……《シェキナ!!》」



 闘技石段から発せられたエネルギーを受けて、ワルトナの本能が持ちうる最大の手段を講じた。


 第七の神殺し、『神栄虚空・シェキナ』。

 事実と架空を入れ替える『想像と創造の神器』であるそれは、使用者の願いをことごとく叶える事ができる。


 今ワルトナが願ったのは、『完全防御』。

 全ての影響を遮断し、現在の状態を固定するという荒業は、未覚醒状態のシェキナでは完全には実現できなかった。


 それでも闘技場の観客席は発せられたエネルギーから遮断され、闘技石段場で起こっていた事象の結末を見る事になった。


 もうもうと湧き立つ土煙りの中、そこでは――。



 **********



 光に飲み込まれてしまった後、目は役に立たなかった。

 視界は全て塗りつぶされ、”白”としか認識できなかったからだ。


 他の感覚器官も同様だった。

 鼻も口も耳も役に立たず、グラムを持つ手の感触だけが、俺の存在がまだここにあると教えてくれる。


 そして、グラムの剣の向かう先からは、いまだ衰えぬ殺気が放出されている。

 エルはまだそこに居る。

 ならば、俺が先に手を放すわけにはいかない。


 五感の最後、手の感覚が無くなるまで……いや、俺かエル、どちらかの存在が無くなるまで手を放してはいけないのだ。

 持ちうる全てを振り絞り、無理やりに、グラムを押し込む。



「俺はお前に勝つ!なんでって、そりゃあ、負けられねえからだよ!リリンの為に、なッ!!」



 そう、俺は負けられない。

 グラムを覚醒させたことにより、心の奥底に、燻る何かが目覚めている。


 理解したのだ。

 俺はリリンを守る。どんな理由があれど、好きだと言ってくれるリリンを、守るんだ。

 今度こそ、絶対に。

 何者にも、それが皇種であったとしても、奪わせはしない。


 想いは力となり、グラムはそれに答えた。

 触れ合うグラムとヴァジュラの火花は激しさを増し、その境界は歪む。

 あと少し、あと少しで俺が、勝利を。


 ―バギリ。―


 均衡が崩れたのは、ほんの一瞬の出来事だった。

 グラムとヴァジュラの境界面に小さな黒い球体が出現し、双方のエネルギーを喰らったのだ。

 極限のエネルギーはゼロとなり、その反動で俺達は吹き飛ばされた。


 闘技石段は消し飛び、粉々になって錯乱、俺とエルは二人揃って場外へ足を付けた。



「なに……?何だ今のは……?」

「『悪喰=イーター』や……」



 思わず呟いた俺の声に、エルが答えた。

 驚愕というよりも畏怖に彩られた瞳は、フラフラと彷徨い、やがて俺へ向けられた。

 その目はどこか残念そうで、諦めの悪い色をしている。



「悪喰イーター?なんだそれ」

「さてな。この闘技場の安全装置みたいなもんやろ?それよりも……」


「あぁ、これは、引き分けって奴か?」



 俺達は今、闘技石段の外に居る。

 というか、闘技石段そのものが消滅した。


 グラムとヴァジュラの衝突は、思いのほか凄かった。

 神が作ったとされる闘技場だった物は変貌を遂げ、ぶっちゃけた話、瓦礫の山になってたりする。


 闘技石段の石と、参加者の装備品などの残骸。

 装備品の残骸はグラムに飲み込まれたはずだったが、なぜか出現し、そこら中にボロボロの状態で転がっている。

 あ、参加者もちらほら混じってるな。


 ぱっと見た感じ、大災害の現場。

 レスキューが必要なくらいに大惨事だぜ!


 そんな中、興奮した声で実況をしている人物が一人いる。

 ボロボロの衣装が色んな意味でギリギリに張り付いているだけの格好で、ヤジリさんは俺達を指差し終戦を告げた。



『これはこれはぁぁぁ!?どうしたことだ!まさかバトルロイヤル形式でこんなハイレベルな戦いが見れるとは思っていなかった!これにはビックリだよ!きっと神様も満足さ、ははっ!……さて、バトルロイヤル剣部門の優勝者争いを制したのは、この二人、『ブラックドラゴンスレイヤー』と『黄金の支配者』!もう、特例の特例で二人で優勝という事でいいよね!』



 どうやら、俺とエルの二人ともが優勝という事になったらしい。

 何気に自体を把握していたらしいヤジリさんは、起こった出来事を観客に説明し始めた。


 俺は手元に視線を落とす。

 お互いの神殺しは戦闘開始時の通常形態に戻り、沈黙を保っている。

 こんな状態だと再び戦えないし、これはもう引き分けという他ない。


 で、俺達は情報を賭けて争っていた訳だが、どうしたもんかな。

 俺はエルと協議するべく視線を向けた。



「引き分けになっちまったな、エル。で、どうするよ?」

「せやなぁ……。このまま何も無しってのは味気ないし、一個ずつ情報を交換するってのはどうや?」


「情報の交換か……それでいいぜ」



 俺はエルの申し出を受けた。

 絶対に確認しておかなくてはならない事があるしな。


 正直に言えば、質問3つとも聞きたい。が、しょうがない。

 予期せずグラムに覚醒形態なんていうもんがある事が分かったし、それについて詳しく語り合いたいし、俺の過去を知るというのならその事も聞いておきたい。

 だが、欲を出したばっかりに「じゃ、無しで」と話が流れてしまっては困るのだ。


 何よりも優先させるべきは、リリンの安全。

 エルが敵かどうかは、絶対に確認しとかねぇとな。



「じゃあ、俺から先に質問して良いか?」

「ええで。何でも答えたる」


「今のお前の目的。ここに来た理由と、ぶっちゃけて言えば俺達の敵なのかどうか、それを教えてくれ」

「くくく。それはやなぁ……」



 確信を突く俺の質問を聞いて、エルは不敵な笑い声をあげた。

 さらに、これ見よがしに悪そうな表情を浮かべ、重苦しい雰囲気で語り始める。



「金貸せって言われたんや。友達に」

「……は?」


「ワイの友達は金持ってなくてな。ちょっと必要になったから貸せって言われたから、こんな所にやってきたちゅう訳や」

「金を貸しに来た……?いや、それだと拳闘大会に出ている意味が分かんないんだが?」


「続きがあるんや。ざっと10億エドロほど金を渡した後、何か面白そうなもんないかなーとブラブラしてたら、なんとそこには英雄の息子らしき人物がおったんや。ラッキーやろ?」

「……何で俺が英雄の息子だと分かった?」



 確かにエルは商人だと言っていた。

 だが、貸金業だなんて聞いてねえんだよ!


 なに、何事もないかのように10億エドロも貸してんだよッ!?

 結構どころじゃない大金だろ!キングゲロ鳥一匹分だぞッ!?


 ……あれ?10億エドロって大したこと無いのか?

 ちょっと不安になった。が、そんな事は無いはずだ。


 比較対象が悪かったな。

 森ドラゴンがたしか3億エドロくらいだから、大体3匹分。

 複数の高ランク冒険者チームでやっと倒せる存在3回分なら、相当に高額のはずだ。


 ……同ランクのドラゴン200匹の群れが居た事は、度外視しておく。

 今更、取りこぼした価値を考えると、すごく悲しいから。



「分かるも何も、兄ちゃんの事は、ワイらの業界では結構有名な話になっとるんやで」

「有名な話になってるだと……?どんな風にだ?」


「ユルドルードの息子は、メスタヌキの尻を追いかけ回しているって話やな」

「ふっざけんなぁぁぁぁぁ!!」



 ふざけんなよッ!?

 誰が好き好んでタヌキの汚ぇケツなんぞ追いかけまわすかッ!!

 俺にケツなんて向けてみろ。今さっき覚えた『終焉銀河核クエーサー・クロス』をぶち込んでやるぜ!!


 つーか、どうせこれもお前の仕業だろ。ワルト。

 謎のタヌキ押しが止まらない。

 リリンもレジェリクエ女王もタヌキパジャマを所持しているし、カミナさんに限ってはアホタヌキを捕まえて飼うとか言いやがったし、心無き魔人達の統括者、タヌキ好き過ぎだろッ!?


 近い将来、タヌキがメンバーに加入しても不思議じゃない。

 交代要員はホロビノが良いだろう。

 ホロビノはペット枠だからな。子守りで忙しいだろうし。



「つまり、金を貸しに来たついでに、英雄の息子らしき人物を見かけたから声をかけに来たってことか?」

「せやで。一応明言させてもらうけどな、ワイは兄ちゃんに敵対する気なんか無いで。兄ちゃんの勘違いだったって訳や」



 ……敵じゃねえのかよッ!!

 勝手に覚悟した俺も俺だが、神殺し(あんなもん)を持ち出されたら、勘違いしてもしょうがないだろ!


 エルの表情を見るに、間違いなく嘘ではない。

 剣を交えている瞬間から思っていたが、エルは真っ直ぐな性格だろう。

 もしこれで裏があるのだとしたら、タヌキ並みに酷いもんだが、エルは人間だしそれはないと思う。


 真実が明らかになった今、違う方の質問を選べば良かったとちょっと後悔。

 この質問をする以外に選択肢が無かったのは理解しているんだけどな……。グラムの秘密、すげぇ知りたい。



「まぁ、お前が敵じゃなくて安心したよ。あんな戦いをこの闘技場外でやりたいとは思わねぇしな」

「せやな。神殺しを相手にするんはマジでビビるで。がっちりと”鎧”を着こんでしまうわ」


「鎧じゃ防げそうにねえけどな!さて。俺の質問に答えて貰ったし今度はお前の番だぜ、エル」

「そうやった。それじゃ、美味いバナナ料理を教えて貰おうかいな」


「……結局、バナナかよッッ!」



 なんでバナナを選んだ!?

 英雄の息子に興味があるのなら俺について、スリーサイズについて興味があるのならリリンについて質問しろよ!

 答えるのは使える魔法の数についてだが、少しくらいなら情報を増やしてやろうと思ってたのに。


 しかし、エルが選んだのはバナナだ。

 しょうがない。

 もったいないが、アレを出すしかないか。


 俺は腰に付けているバックから、バナナチップスを取り出した。



「ほらよ、エル。美味いバナナ料理だぜ。良い戦いだったし、現物をくれてやるよ」

「……舐めとんのか?おい」



 ひぃ!すっげぇオーラを感じる!

 この感じはタヌキ帝王に匹敵するぞ!?

 流石は神殺しの所有者だ。大物感が半端じゃない。



「何がバナナチップスだ。ふざけとんのか?新しい料理を教えろゆうとるんや。そんなもん、1000年前のタヌキですら作っとるわ、ボケ!」

「いや、なんていうか……俺は料理が出来なくてな」


「出来なくても食ったことくらいあるやろ?言えや」

「バナナはそのまま食うのが一番うまいと思うぜ!」


「ちっ。」



 そんな露骨に舌打ちすんじゃねえよ!

 そんなにバナナが大切なのか?

 バナナ命なのか?実際うまいけどさ、バナナ。



「バナナなら、輪切りにしたバナナの上にマシュマロを乗せて焼くとおいしい。サクふわとろーり」

「リリン?」



 求められえている答えが用意できずに困っている俺の元に、救世主がやってきた。

 その名も、リリン。

 よく食べると噂になっている大悪魔さんだ。


 リリンは何処か安堵したような表情で、俺達の会話に入ってきた。

 そして、エルが求めた質問に的確に答えてゆく。



「それ、美味そうやな」

「おやつにちょうどいい。他にも、クリームと一緒にパンの中に入れたり、お砂糖と一緒に煮込んでジャムにした後、牛乳と混ぜてドリンクにしてもいける。他には……」


「ちょっと待ってくれや!メモ取るで!」



 すらすらと料理を羅列するリリンと、一字一句漏らさず高速でメモを取っていくエル。


 ……なんだこれ。

 あ、これが平和って奴か。


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